魔法科高校の姫騎士~Alternative Order~ 作:無淵玄白
まぁまだ分からないことだらけだしな……残り4日を『がんばれゴエモン』の電子書籍を読みながら俺は待つ!!
「殲滅攻撃で『自爆』する余地すら無くして消滅させる。それしかありません」
「出来るんですか……?」
「不可能じゃあない。しかし位置が悪すぎる」
現代魔法で壊せないのは分かっているが、彼らとしても横浜の市街地の真上にある巨大構造物に対しては中々に手を出しきれないようだ。
「そこは母上とマスターがなんとかすると思います。信じてください」
ワンッ!と黒犬がルーシャナの言葉を分かっているんだか分かっていないんだかで吠える。
その証拠という訳ではないが何かの巨大術が発動して阿房宮の位置は、東京湾の海上に移動していた。
どんなトリックを用いたのかは本当に周囲の面子の殆どはともかくとして目の良い達也ですら分からなかった。
まるで『時間を逆行させた』という他無さそうなその御業だ。あれだけの巨大質量がどんな術理で一瞬にして横浜市街から動いたのやら……。
「ルーシャスお抱えの帝国魔導師団の術か」
「はい」
下手人だけは判明した。どうやらサーヴァントの仕業ではあるようだが……。
(アーシュラがやっている
サーヴァントを召喚するサーヴァントというのは珍しくないようだ。あるいは、サーヴァントではないが部下というか家臣的なものを召喚するものはいると達也は推測した。
正面から阿房宮を見据える形となったことで遮るものは無くなった。反転するエハングウェン。最後の戦闘準備が完了していく。
「アルトリアさん……やはり『聖剣』を使われるんですね?」
「ええ、この位置ならば問題なく」
聖剣……アーサー王の有名な『聖剣』といえばやはりエクスカリバー。
七草弘一氏の質問に答えたアルトリア先生の言葉と同時にその手にあった剣が輝く。
「俺もやろう―――君だけに負担を掛けられない」
決意を固めて答えたアルトリア先生に寄り添うは夫である士郎先生……同じく『聖剣』らしきものが握られていた。
「―――はい」
その短い言葉と同時にこの戦い以来、厳しい表情ばかりをしていたアルトリア先生が少しだけ和らいだような表情をする。
花が綻んだとしか言えない表情をしたことで、少しだけ場が和らぐ。
この夫婦に割って入ろうとした自分の親父は馬鹿だろうな。と十文字克人は思いつつ、夫婦の子供たるアーシュラ・ペンドラゴンは……。
二刀の黄金剣を手にしていた。どうやら彼女も『聖剣』を持ち戦うようだ。
素人考えの直感でしかないのだが、その蔦葉が絡まるその大剣とカタナのような曲刀の2つこそが彼女の……『本当の宝具』なのではないかと克人は直感するのだった。
「まぁどこぞの金ピカみたいな声をした軍曹殿のように、『君さえいれば、武器などいらない』ならぬ『アナタさえいれば、聖剣なんていらない』とはならない夫婦なので」
「結局、その軍曹殿だって家庭を持っても守るために銃を持たざるを得ないじゃないか。おまけに『ぱっつんぱっつん』に張り詰めたナイスバディの娘がいるまで
弟がいないことは違うが、ルーシャナが養女として衛宮家に存在するから妹とは言えるか。
などと思っての克人の感想は、絶対零度の視線を向けるアーシュラという結論だけであった。
「達也ならばともかく、まさか克人さんからそんなエロいこと言われるだなんてカルく引くわー」
「むっ、そ、そうか……すまない」
同性同士ならば『牛』扱いされることはまぁ別にどうということはないが、微妙な乙女心があるのだった。
「謝るぐらいならば、まぁとりあえず護衛をお願いします。ワタシも聖剣を放つために集中しなければいけないので」
護衛という言葉を考えるに、つまり―――。
「阿房宮の最後の抵抗か!!!」
あれだけ巨大な魔術要塞なのだからまだガーディアンとしてのソーサルエネミーがいるとは思っていたが、それにしても……。
「最後の戦いだ!!! 全員気合を入れろ!! EMIYA FAMILYが最後の一刀を放つまで一兵たりとも入れるな!!!」
「頼りにしていますよ克人さん」
「おうっ!!」
ノセられていると分かっていても魅惑の笑顔、ウインクと同時の投げキッスを前に今ならば四手の特級呪霊の能力で戦えそうな気分になりながらも、やるべきことは現実的にこなす。
そんな克人に対して羨望を覚える達也ではあったが、自分も現実に対処することになる。
「接近戦スキル持ちには辛い戦いだわ……」
「宝具を全力で振り抜けば斬撃を飛ばすぐらいは出来る。西城お前も剛力の限りで『そこにある武器』を投げていけ」
「お、押忍!!」
エリカの嘆きを聞いた士郎先生の言葉が飛んでくる。同時に魔法特性から少しだけ手持ち無沙汰になっていたレオに対しても仕事を与えている。
そんなレオの仕事……
(英霊の宝具だろうな……確信はなかったが……)
士郎先生は、英霊の武器すらも『鍛造』出来るウェポンマイスターといえる術者なのだろう。
それを
もしかしたらば、あの鍛冶場ではそういう量産体制があるのかもしれないが、ともあれ攻撃が開始される。
一つどころにまとめて林立する朱、黄、蒼の長短違う槍……あのクー・フーリンが持っていた槍に系統が似ているものをレオは次から次へと投げていく。
そしてその槍は一つごとに吐き出されている飛行型エネミーを6体ぐらいずつ鏖殺していくのだが……
「狙いをつけなくてもいいのは楽だが!!数が多すぎる……!」
レオの言葉は道理であり、流石にここまでの戦いで全員が疲労していることは事実だった。
「此度の戦いで、一番働いていたのはアーシュラさんなのです!! この程度で弱音を吐くなど見せないでください!!」
まさか三高の一色愛梨が声を掛けてくるとは思っていなかった一高男子勢だったが、その通りではあったので自分の体に喝を入れて踏ん張ることに。
実際、アーシュラ及び衛宮一家は甲板上の中央部分にて精神集中をしている様子だ。
それが巨大な高まりであることに気付けぬ愚か者はいないのだが……。
緑輝の斬撃を解き放つ一色愛梨はその様子と見事なまでの聖剣に羨望を覚えてしまうのだった。
そしてアーシュラの衣装も変化をしている。
(……まるで幻想世界の姫君―――真祖種族の王『ブリュンスタッド』のようだわ)
見たことなど愛梨とて無いのだが、欧州世界に詳しいというかフランスの出身である母を持つだけに少しだけ欧州における『神秘』に関する事物も知ってはいた。
曰く、西暦300年頃に起きたソロモン王の弟子であった大魔法使いと月の王様との一大決戦など……。
そして事実、アーシュラの衣装は―――。
『おねーさんのとっておき! レシピはこんな感じだからやってみなさーい!!』
などと白い吸血姫のお姉さんに言われて覚えたものだった。
カルデアではその衣装は。
ともあれ時間にして五分もしない内に、準備が完了する。
「前を開けて、聖剣の極大光が飛ぶわ!」
魔弾を放り投げまくっていた立華……髪が完全に銀色に変化していることに驚きながらも、その指示を受けると同時に聖剣を掲げた三人家族の眼前には無人となり遮るものが無くなり―――。
その高まりに明確な脅威を覚えたのか、術者がいなくても意思を持つのか阿房宮が雷霆を響かせながら最後の防御を試みようとする。
それを見た衛宮家と
最後のディフェンスとして張られたそれが彼らにとってマズイものであることに気付いた達也は、乾坤一擲とも言える『術式霧散』を解き放つ。
「た、達也くん!!!!????」
その巨大な術式……阿房宮に比べれば小さい限りだが、それでも解き放たれた術は英霊アスラウグの弓を触媒にして雹弾を放っていた七草真由美を驚愕させ―――。
それとは別口で阿房宮の電磁防御を無にする術がクドウ・コウマより放たれる。
「コウマさん!?」
尊敬する兄と似て非なる術を以て阿房宮の電磁防御を少しでも『薄くしようとする』努力の根源は両者とも―――竜の姫騎士への恋慕ゆえというのが深雪を苦しくさせるのであった。
とはいえ、それを見た
機は、満ちたり。
柄を握りしめる両腕に渾身の力を込めて。
運命の騎士王は黄金の剣を大きく頭上に振り上げる。
錬鉄の英雄は黄金の剣を後ろの方に振りかぶる。
竜の姫騎士は黄金の剣を肩架けに振りかぶる。
光が集う。
まるでその聖剣を照らし飾ることこそ至上の務めであるかのように、輝きはさらなる輝きを呼び集め、眩く束ね上げていく。
苛烈にして清浄なるその赫耀に、誰もが言葉を失った。
「……かつて遠き島を覆った夜よりも暗き乱世の闇を、祓い照らした一騎の勇姿」
黒い刀を油断なく構えながらも呆然としたように言の葉を紡ぐ七草弘一の言葉を誰もが耳にした。
「十の歳月をして不屈。十二の会戦を経てなお不敗。その勲は無双にして、その誉れは刻を超え不朽のモノ……」
これはエハングウェンの内部から聞こえてきたもの。恐らくアッドなのだろうが、いつもの印象とは違ってちょっとばかり厳かな印象を受ける声である。
「輝けるかの剣こそは、過去現在未来を通じ、戦場に散っていくすべての
ルーシャナというローマ皇帝の娘が、敵対国であるブリテンのことを褒め称えるように言うことのアンバランスさを誰もが笑えない。
「その意志を誇りと掲げ、その信義を貫けと糾し、いま常勝の王は高らかに、手に執る奇跡の真名を謳う」
まるで英雄譚を詠う
「「「「其は──」」」」
四者の掛け声に合わせたわけではない。しかし、ついに奇蹟は放たれた!!!
三人のよく通る――――横浜全域に響いてもおかしくない声とともに振り下ろされた黄金の輝き。
光が奔る。光が叫ぶ。光が吼える。
解き放たれた母娘龍の因子に加わる
渦巻き迸る光の全てが、夜の闇を掻き消すようにしながら阿房宮を吞み込んでいく。
直撃を食らった阿房宮という要塞が、白熱しガスに包まれ気化する―――なんてプロセスを全てすっ飛ばして焼却されていく。
そして……阿房宮のあった位置から上下に伸びる形で横浜の海に幻想の黄金樹が出来上がった。
まさしく
黄金の枝から光の葉がありったけ撒かれていく。その光景は不覚にも……現代魔法師が捨て去ったはずの幻想主義を体現するに相応しいものであった……。
聖剣の輝きを以て闘争に終わりは刻まれて―――話は後始末へと向かう……。