魔法科高校の姫騎士~Alternative Order~   作:無淵玄白

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第133話『戻る日常』

 

 

あの横浜事変から一週間が経った。

 

マスコミの取材は加熱をしていき、そのまま―――などということは無かった。

 

これもまた神秘を世間に流布すべからずな魔術協会と聖堂教会の手並みなのだろうが、しかしながらその為に魔法師が矢面に立たされるのは、どうなんだろうという深雪が憤りを覚えるものがありつつも。

 

甲種戒厳令が敷かれていた都内及び南関東に位置する県の国民たちは、この一週間を以て長い待機期間を終えたわけだがそれだけで日常に戻れたわけではない。

 

とはいえ学生の本分は学業なだけに魔法科高校もまた通常登校へと戻ることになる。

 

しかし―――。

 

「カドック先生、まだシロウ先生は戻られないんですか?」

 

未だに完全では無い面はあったりするのだった。

その一つがE組及び2科の主任講師の不在である。

 

「残念なことにな。そして、シバ。お前は気楽に聞いているが、あのヒトが動かざるを得なかった事件というのは、お前が想像しているよりも大事(おおごと)なんだ。あまり気にせず集中しろ。とりあえずしばらく授業は俺が続けるぞ」

 

E組の代行教師としてやってきた神経質そうな顔をしているが、実際は結構取っつきやすい『ロックンローラー先生』(談・立華)の言葉にそういうものかと思いながらも実技授業は―――シロウ先生と遜色なく、人によってはそれ以上に分かりやすく実践的にこなせるのであった。

 

(B組にアーシュラと立華が来ているか……知りたいな)

 

主に前者のほうが達也にとっての関心事であったりするのだが、A組にいる深雪など妹に知られるのはマズイと思いつつ、昼休み時間に探ると。

 

「えっみーもりっちゃんも来ていないね。やっぱりカルデアというよりも、時計塔としてもここまで『大事』になると第一原則執行局……バルトメロイが出ざるを得ないんだよ。だからその関連でもあるのかな?」

 

一番、この学校では魔術界隈に関して事情通である『明智英美』によって詳しいところが解説されるも、いまいち要領を得ないわけで達也の関係者一同が食堂で聞くことに。

 

「神秘の流布はご法度。というのは魔術師にとって守るべき原則。なんだけど、どーしても世間に出てしまった時にそれを収拾する部門がある。それこそが、時計塔において学科(カレッジ)でありながら法の番人を気取る学科でありながら学科ではない。

俗称はロードの家名から『バルトメロイ』、法政科……第一原則執行局というところなんだ」

 

「聖堂教会だけでなく魔術側にもそういうのがあるのか……まぁ当たり前といえば当たり前か」

 

だからあの九校戦において立華もアーシュラも『事後処理』をやっていたのかと思い返す達也。

 

「―――とはいえ横浜の『あの様子』からしてどうやら大方の事は終わったみたいだね」

 

エイミィの視線が向いている先、食堂の大型キャビネットには、色々とあった横浜での様子が報道番組などの中継で映し出されていた。

一週間前にはとんでもない惨状になった港湾の復興も、建物の一棟一棟など町並みの様子も既にいつもどおりになり、何処だかの外国の企業が経営している豪華客船が寄港している様子だ。

 

その船を見た瞬間に、エイミィの眼が鋭くなる。

 

「……挑むか、カジノに」

「あの船、世界的なカジノ船って世界を周航するものなんですね」

「けどこの国では違法も公営も賭場は許可されていないわよ」

 

船を見たエイミィの言葉に、言葉以前に船が気になっていたのか端末で調べた美月が言い、それに対するツッコミがエリカから入る。

 

その豪華客船なのだがなんとなくだが……精霊の眼を介すれば遠見出来そうだが、内部を透かそうとした瞬間。自分の眼玉を取られるような気持ちになった。

何となく……その豪華客船がとんでもない『魔城』にも見えたのだ。

魔城なるものが、どんなものかわからない知らないのだが、想像力や発想力など感性に関するその手のイマジネーションに乏しい達也でも連想してしまうのだ。

 

ちなみに2科の専任教師たちがどよめき、『勝てない』『リスクとリターンが合わない』『士郎先生はよく勝てたものだ』などという言葉が続く。

 

どういう意味なのか―――と思っていると……。

 

「アーシュラから連絡だ……」

 

鳴り響く端末。通話ではなくメール着信であり、読み上げると以前にコウマ・クドウ・シールズに言っていた衛宮家での食事会の案内であった

 

それによると招待される……入れる人数の事前通達と、そのメンバーの事前での連絡を寄越せということであった。

そして……その選定は、達也に一任されるようだ。

日時は指定されている。その時間帯も夕飯時を指定されているので部活関連でのこともなければ特に問題無さそうだ。

 

(十文字先輩と七草先輩が来ることは確定なのか)

 

それでもあちらの方で、来客が規定路線となっている人物は2人ほどいたようで、そこは補足されていたのだった。

 

2人とも達也、深雪とは違って隠れていない十師族だから当然。そもそも前者に関しては、庶子関連でも世話になっているのだから当然だ。

 

そして十文字先輩は分からないが、七草先輩の方は父親は同伴で来るのだろう。

 

どんなことになるか分かったものではないが……。

 

とりあえず参加の可・不可をこの場にいる通称・達也組へと問うと……殆どは『行く』というのだが……。

 

「私は―――遠慮しておきます」

「私も」

 

ほのかと雫が揃って参加辞退を申し込んできたのだ。その理由は……アーシュラと親しくないからというのもあったが、それ以上に年明けからの『出発』に備えなければいけないというのもあったのだ。

 

「そうか。分かった」

 

だが、だからと必要以上に何も聞いてこない達也に少し胸が痛む思いが出来る。特にほのかは明確に達也に好意を示しているのだ。

あの夏休みの海水浴で、あんなこと――――自分はまともな人間じゃ無いなどと言われたというのに……。

 

(……お姫様だから違うの?)

 

達也を見ていると、アーシュラに対しての態度だけが他の人間…ほのか含めて誰とも違うのだ。彼女を見ていると……何だか自分たちがぶりっ子している風に見えて思えてくる

……被害妄想かもしれないが、連想してしまう。

明け透けに男子に対応するのが一概にいいとも言えないが、それでも何というか……複雑ではある。

 

古代ブリテンの王様……如何にそういった風なファンタジックな事柄とは無縁の現代魔法師ではあるが、アーサー王の名前と円卓の騎士ぐらいは知っている。

 

多くの創作物でモチーフとされてきたものであるのだから。

しかし、それがまさか『女性』であって、さらに言えば『現代人』と子供をなしているなど予想外にもほどがある……。

 

「それならば私は参加したい!! つい最近、グランマから言われたことを本当の意味で確かめたいんだ!」

 

ほのかと雫の代役というわけではないが、エイミィが参加を熱望したことで、おおまか集まってしまった。

別に定員まで集めろとは書いていないので、これで集まった形ではある。

 

そうして学校再開の初日は恙無く終わったのだが……司波兄妹にとっては恐るべきことが待っていたりするのであった。

 

帰宅してすぐさま家の端末に連絡が入った……相手は、本家の当主である。

 

『再度、申し上げますが衛宮家の鍋パーティー、上質の甲州牛を手土産に参加しようと思います』

 

大型画面に映し出された女性の顔は表面上は冷静そうに見えて、内側ではウキウキしているなと想像することが出来るものであった。

 

「……正確に言えば10日前ですが、アノ時と同じ質問をしますが叔母上、どういう謂れがあってそのようなことを?」

『貴方は知らないでしょうが、我が家は衛宮家と少々繋がりがあるのですよ。達也さん、アナタに継承された『原理血戒』(イデア・ブラッド)のことでも色々と骨を折ってくれた家なのですから』

 

アノ時よりも深い説明をされたが、それだけで当主自ら『甲府』から『関東』に出てくるなど……。

 

「他の理由があるのでは? 例えばアナタが泣く泣く他家に養子に出さざるを得なかった息子がいるとか」

『―――何を言っているのかしら達也さん。如何に噂に疎いアナタとて、私が母親としての機能を失っているのはご存知でしょう?』

「ではあのクドウ・コウマと名乗る御仁は何者なんですか? アナタはアーシュラが一高にやってきた時に、彼との関係を探るように言っていましたよね? 恩義がある家の娘さんの男女関係を探るなんてあんまりにも下劣な行為だと思わなかったんですか? その名前を聞けば無頼の輩が全て震え上がる四葉の当主がそのことに気付け無いわけがない」

 

多弁になった真夜に対して畳み掛けるような言葉を吐き出す達也。その言葉に真夜の百面相を見たが……。

 

「それとも……四葉の腫れ物である俺をアーシュラとくっつけようとしているので?」

「お兄様!!!!!!」

 

そんな探りの言葉にいっちゃん先に反応したのは隣の深雪であり。

 

『そんなわけないでしょう!! アーシュラちゃんを好いているのは私の息子である弘真なのだから、あなたは妹と禁断の愛を育んでなさい―――』

 

次に激昂しながら言った叔母だが、途中で映像が途切れ。昔懐かしのテレビ映像の中断の……不適切なモノが放送された場合のようなものが流れる。

 

――― 一部映像が乱れました。しばらくお待ち下さい―――

 

というものがキャビネットには出ていたりする。

 

10秒ほどの後に出てきたのは、執事長である葉山であった。

 

『奥様は少々混乱なさっているので私の方から説明を―――といっても奥様が指定された日に衛宮家に向かうことは衛宮家の方々も承知済みですので、お二方には気をつけていただきますよう』

「気をつけるも何も、もう他の十師族にはバレているんじゃないですか?」

 

深雪の素朴な疑問。それは達也も抱いているものである。

しかし葉山は……。

 

『奥様もまた『上』の方からの指示でお二方を四葉の魔法師だとは宣伝出来ないのです。同時に……手放したくなかったものを手放さざるをえなかった奥様のお気持ちもお察しください』

 

抽象的なようで、結構核心を突いている葉山の言葉にそれ以上は言えなかった。

 

 

『リトル・アーサー……アーシュラ・ペンドラゴンは人理腐食解決の鍵の一つ。その手助けは四葉のみならず魔法師全体の利になることは確かなのです。ご理解くださいお二人共』

 

葉山のその言葉は……恐らく達也というよりも深雪に対して言われたものであろうと考えた。真意とか言葉に対する理解は浅けれど……そう考えてしまうものが言葉に込められていた―――そして、衛宮家主催の夕食会にしてある種の説明の場は設けられるのであった。

 

 

 

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