魔法科高校の姫騎士~Alternative Order~ 作:無淵玄白
『実はこういう新商品を出します!』と嘘から出た実という体をとったものにしたり――――――エウシュリーはアペンドで出すんだろうな。ついでに言えば神採りがリメイクで出てくるとか。時間泥棒!
まぁそんなこんなで近年は型月はFGOのネタばかりだが、たまにはかつての葉桜ロマンティックやヒロイン12宮、TMitterみたいなバカ企画も見たいなーと思いつつ、新話お送りします。
「おーす。久しぶりだねー。元気してた?」
横断歩道を渡った先にいたアーシュラの調子はいつもと変わりなさすぎて、拍子抜けしてしまうものだ。いっちゃん先に駆け寄ったエイミィとハイタッチ(片方はジャンプタッチ)する様子は本当にいつも通りであった。
「それはこっちのセリフよ! アンタが今まで横浜でアレコレ事後処理をやっていたことは次兄から聞いていたんだから!!」
「瓦礫の撤去及びそこによろしくない呪詛の残留物がないかどうかだもの。私や立華がやんなきゃエリカのご家族が遺族年金受け取る事態になったかもしれないよ? いやまぁ渡辺先輩の方に行くかもしれないけど」
「んなわけあるかっ!」
訳するにどうやら地雷除去・不発弾処理的な作業にも従事していたと語るアーシュラではあるが。
「エリカの怒りの方向性はいまいち俺にも分からんが、とりあえず中に入れてもらっていいか?」
そういうことだろうと思いつつ声を掛けることで、門前での会話を止めることにした。
「はいはい。どうぞどうぞ―――」
古めかしい武家屋敷の門扉。引き戸型の木製のそれをがららっ!という軽快な音と共に開けるアーシュラの先導で中に入ると。
「……アーシュラちゃんの家ってお金持ち?」
「それはワタシにも分からないなー。けれど、何処に行くとしても、
美月の少しだけ呆然とした質問にあっけらかんと答えるアーシュラ。
家をぐるりと囲んでいる塀、石垣も組み合わせた『多門櫓』から分かっていたことだが、ここまで歴史的な建造物を作り上げるとは……。
「実際、USNAにいた頃も衛宮家はこういった外観でしたよ。
「ほー……ズイブンと深い仲のご様子」
「そりゃ昔から知っている女子ですし元カノでもある。けれどそれ以上に衛宮家の邸宅は祖父である九島健にとっても故郷を思わせるものですから」
もっともこういう昔ながらの武家屋敷に興味津々であったのは、エリカのからかいに淡々と語る男の妹であり現・恋人であったりするのだが。
ともあれ短い距離の間にも色々と話しつつ屋敷の方の戸に着いたわけだが。
「俺達が一着か?」
「いいえ、七草先輩はお父さんと既に到着済みで、克人さんも同じく、あとは―――年齢不詳の若作りのおばちゃんが来ているよ。甲州牛のお土産を持ってね」
そんなアーシュラが戸を開けながら放った言葉だが。
『こらー、アーシュラちゃ〜ん。そういう風な言い方、オバちゃん傷つくわ〜。およよ〜〜』
何故か知らないが最後の方の紹介は聞こえていたらしく、少し離れたところから達也と深雪にとっては聞き覚えのある声音でありながらも、言葉は完全に親戚の叔母ちゃんとしか言えないチョイスの抗議が聞こえてきた。
わざとらしい泣き真似を本気で受け取ったわけではないだろうが……。
「いつまでも若々しくて妖艶な色気を振りまくお市の方みたいなおばちゃんでーす」
『ならばヨシ!!!』
『『ヨシじゃねーよ!!!』』
遠くから聞こえてきたケメ○デ○ックスのような声に思わずツッコミを入れる司波兄妹。
そのことゆえか全員から怪訝な視線が突き刺さる。
そして案内に応じて居間であり来客をもてなす場に案内されると、そこには……。
「あら? そちらが真由美さんと克人さんの後輩にしてアーシュラちゃんの同級生の方々ね」
いやがった! 来てやがった!! という達也と深雪の内心を切り裂くように、用意されていた座布団に座り、来客用の長机にてメインの前の『つなぎ』のようにオードブルを食べるアーシュラが言うような妖しい美貌の女性がいたのだった。
まだ飲酒はしていないが、隣に座る男性―――七草弘一氏との近すぎる距離に、『あっ、これはもう確定だな』と思いつつ、他所様の家でそれは無いだろうと敏すぎる甥っ子らしい弁えたことを思う達也だったが。
「はじめまして、四葉真夜と言います。今回の横浜でのことでこちらにお邪魔させてもらっていました」
『――――』
一部を除いて、やってきたアーシュラフレンズの殆どが固まってしまう事態。聞き間違いではなかろうかと思うぐらいに確かに年齢不詳で、このヒトがあのヨツバの当主―――。
影武者の可能性を考えるほどの余裕もないほどに衝撃的な邂逅を、全員が覚えていたのだが……。
「おー、よく来たな。とりあえず立ってないで各々で座っとけ。座布団が足りなければアーシュラに言ってくれ。もうすぐ出来るから、そこにあるフルーツでも摘んでいてくれ」
その固まった空気を壊すように台所から声がした。
台所の方からようやく気付いた風の士郎先生が、エプロンを着けたザ・シェフならぬザ・
呆然としていた自分たちに対する気付けともなってくれたが……。
「し、士郎先生。これお土産です! 今日の鍋がどういうものか分かりませんが、豊洲市場で買ってきた鰤です! 今日上がったものを神経締めしてあります!!」
「悪いな西城。学生なのに気を遣わせてしまって」
一人だけ抜け駆けして逃走を果たしたレオの背中に恨みがましい眼が飛ぶ。
裏切ったな!! という視線もなんのそので海なし県の男は角○魚類で買ったように豊洲で買った魚を開帳するのであった。
立派な鰤を前にして料理人の目が光る。
立派な鰤を前にして予定が少しだけ変わる。
「青物もまた熟成させた方が美味いが、客人からこれだけ立派なものを渡されたならば、即座に調理しなきゃ料理人としての名が廃る」
「いや、そんな気を遣わなくていいですよ! お土産として持ってきたんで後々にご家族一同で食べても」
「レオン君あきらめて。お父さんの魂のコンロに火が点いた以上、この鰤は今日一日の運命よ!」
アーシュラの言葉に何故かもはや死んでいるはずの鰤。神経締めのワイヤーも入れられているはずの鰤が青い顔をしたように見えたのだ。
「そうと決まれば他の作業はみんなにやってもらうか。手伝ってくれるか?」
「「「「もちろんです!!!」」」」
ここまでの大宴会。更に言えば、何かと世話になっている先生からそう言われれば、否などありえない。
そんなわけで―――。
「餃子作りか……鍋具に点心とはな」
アーシュラが持ってきたボウル(十以上)の中身と他の更に乗せられた『円状の皮』からメニューを察する。
「先程までは私たちが肉餃子を作っていたわけだけど、達也くん指先は器用?」
「なめてもらっちゃあ困りますね。これでも俺は魔工技師を目指し、尚且つ特級面点師も目指そうとしていた男ですよ」
先んじてお手伝いをしていたという七草先輩と十文字先輩、恐らくこのアダルト2人も手伝ったと思しき様子。
長机にて、何だかパーティー料理の定番をすることに少しワクワクする。士郎先生に乗せられていることを自覚しつつも、今度の中身は……ミンチにされた状態では少し不明ゆえ聞くことに。
「食べれば分かるわよ」
「むぐっ―――これタコか!?」
少し乱暴気味にスプーンでボウルの中身を達也に食わせたアーシュラに深雪の敵意が向くも、食べた達也が普通どころか喜色を滲ませるので文句を言うタイミングを逸したのだ。
「先程まで、内臓と墨袋を取って丹念に叩きほぐしをしていたワタリダコのミンチよ。普通ならばそのあとに、煮タコにするんだけど、二度も熱を通すのもどうかと思ってね」
「これだけでもタコのたたきとして通用しそうだがな。熱を通したときにどうなるか……」
達也の言葉に、誰もがそのタコ餃子の味を想像して作ることにするのだった。
「形は各々で、定形に沿うもよし。想像力の限りを尽くしてもよし。皮が足りなきゃ言えよ」
それはかなり独創的な形をしてもいいということだが……。
「アーシュラはそんなフォーマルな形でいいのか?」
「一人ぐらいはマトモなの作っておかなきゃならないでしょ」
至極のドラゴン餃子とか作るかと思っていたのだが、アーシュラの手並みは『普通』だ。
普通とは言うが他の人間と違って殆ど一動作で通常の餃子を作っている。ヒダがついたそれが量産されるも―――。
「アーシュラ教えて!!!」
「はいはい」
不器用の極みというわけではないが、最初にギブアップしたのはエリカでありレクチャーのために達也の隣からいなくなる。それを見た妹が動き出す。
「お兄様、私にも上手な餃子の包み方を教えて下さい」
「いや、俺は人に教えられるほどじゃ、アーシュラの手な―――」
「教えて下さい」
「はい……」
有無を言わせぬ迫力。圧を覚えさせる深雪の言葉に観念してから妹の手並みを見るとやはり自分の指導はいらないのではないかと思う。
「そう言えばさっきからアルトリア先生の姿が見えませんが」
「お母さんは追加の買い出しだよ」
「まぁそれ以前に……アルトリアさんがいないのは、私のせいでもあるんだよ司波達也くん」
アーシュラの言葉に苦笑しながらもタコ餃子を器用に作っている十師族の当主が口を開いてきた。
「……七草弘一さんでしたよね。それはどういう意味で?」
一応、十師族の『現当主』の顔というのは魔法師の界隈ではそれなりに『割れている』ものだ。ゆえに達也の応答は間違いではないのだが、色々と緊張してしまう。
「実を言えばこのワタリダコは私が持ってきたものなんだ。しかし相手方の事情を理解していなかった失策だよ。美味な魚でも人によってということを理解していなかった」
「なるほど、要するにアルトリア先生はタコが苦手だと」
弘一の抽象的な言い方を理解する達也。
アーシュラと違って純粋な白色人種であるアルトリア先生にとってタコ、イカという頭足類は、異界の魔物にしか見えないのかもしれない。
例外なのはギリシャやイタリアの地中海付近の国だが……。
「いや、お母さんのはただの食わず嫌いなだけ。実際、たこ焼きは中身を知らなくてもぱくぱく食べていたらしいし」
「ほー、そりゃまたなんで」
「とあるフランス軍の元帥閣下が召喚するタコみたいな異界の魔物に触手責めされたかららしいわ」
何たる姫騎士の定番をやっちゃってる人なんだろうと全員が思う。
タイトルを着けるならば
『姫騎士アルトリア〜あなたって、本当に最低の屑だわ! この外道!!〜』
というところだろうか。
「おい男子諸君、俺の細君で卑猥な妄想をあまりするなよ」
『『『『『『すみません!!!!!』』』』』』
男衆の不埒な考えを見抜いてきた士郎先生の鋭い言葉が台所の方からこちらに聞こえてきた。
思わずサスケさんならぬシロウさんと言いたくなる士郎先生の言葉で作業に集中していると、玄関のほうが開けられた音が響く。
どうやらアルトリア先生が帰ってきたようだ。
荷物があることを理解していたのか、アーシュラは立ち上がって玄関に向かう。
特に話すべきことでもないとは思うのだが……ツッコまずにいてもいい話かもしれないが……。
「あの七草さん。どうして俺のことを知っていたんですか?」
「そりゃ、今年度の一高九校戦優勝の立役者だからね。そこにいる娘の口からもアレコレ出てくる男子だから」
「お父さん」
少し膨れるような声の真由美先輩。それ以上は踏み込まない様子だが……。
「まぁ以前から龍郎に言われていたんだよ。デキが良すぎる息子が生まれてしまった。対応に困っているとね」
「ーーー親父が?」
まさかそちらと関わりがあったとは、少々面食らう達也だが、よく考えてみれば父親とこの人は一つしか違わないのだ。都内住まいである以上、どこかで関わりは持っていたのだろう。
餃子作りをする隻眼の魔法師は、ちょっとした歴史を語る。いわゆる昔ばなしである。
「俺を含めた君たちの父母世代の青春時代……少年時代というのは、かなり血腥いものがあった。当時はまだどこかの国が暴発して、局地戦から大戦争になるんじゃないかとビクビクしていた。今の世代よりも性能の低いアシスタンツ、かなり信用度も低かったものを用いて、いざ戦争に駆り出される可能性にかなり怯えていたからね。だからこそ多くの繋がりが出来上がっていた。みんな生きたかったからね」
「そうだったんですね……じゃあ、もしかしてその頃の七草さんの『舎弟』だったので」
「言い方は悪いが、その通り。ただアイツは『一つ上だからと何するものぞ!先輩ヅラしてんじゃねぇ!!』と喧嘩っ早い、あちこちに噛みつきまくる奴だったからな……君に真由美が手を焼かされているのもまぁ分かる一方で、アーシュラちゃんにはやられっぱなしなのは、少し痛快」
東京卍リベンジャーズな一面が、この人にもあの親父にもあったことにビックリする。
「なんと言ったらいいか分かりませんが若い頃の親父がそんなだったとは―――」
この人は自分を通して若き頃の親父を見ているのだろう。あのくたびれた親父にそんな血気盛んな時代があったとは……予想外であることを伝えると。
「これもまた時代の流れだな。本来ならば龍郎はそのサイオン保有量から当たり前のごとく『ホウキ』が技術進展しない方が良かった。ところが本人の向かった先は……研究職の技術職だったからな……いや分かっているんだ。アイツは皆にちゃんと生きていて欲しい。誰かだけが残ってしまうようなことにはなりたくない。だからこそ魔法を簡易に使えるようにしたくなったんだろうな」
淋しげな顔を見せる弘一氏。だが…よく考えてみれば親父の
深雪と同じく『四葉』にあてがわれただけのお飾りの役職などと考えてはいたのだが……お袋と結婚する前は研究職の小百合と良い仲であったことを考えるにテクノロジストとしての接点はあったのだろう。
元々、司波家も四葉の係累であることを考えると、少しだけ父親の見方も変わってしまうのであった。
「君が見ている父親の顔も所詮は男の
「……親父の意外な顔を教えてくれましたので、そうしようかと思います」
結局の所、自分は父親と似ているようである。
もっとも、父親の方は技術の進展という抗えぬ流れの中で挫折というか諦めてしまったようだが―――。
(俺にもそういう時が来るのだろうか……)
別に父親の人生を後追いするわけではないが、苦笑しながら言ってきた七草弘一氏の言葉に少しだけ怖くなり。
「ちょっと……なんで私の手を握る? 握るべきはタコ餃子の方よ。鋼根のシェルさんや?」
「渇いた砂漠にあっても青眼虎ミラのように色褪せぬ美しき乙女、俺の言い知れぬ不安を払ってくれ」
そろそろ鍋具に入れるべきと判断して、全員のバットに乗せられた水餃子を取りに来たアーシュラの手を握るという公然としたセクハラをする達也。
ちなみにアルトリアたち買い出し追加組は男2人のシニカルな話をしている間に居間に戻ってきていたのだった。
そして、それに対して客人側の大人である七草と四葉の両氏はわざとらしい咳払いをして達也の行動を諌めていることが少しばかり全員に奇異に思われて―――今にも達也を、アーシュラを殺さんばかりに深雪とコウマはにらみつけるのであった。
「いいんですか?」
そんな様子を台所から見ていた立華(銀髪ver)は達也のE組担任教師にしてアーシュラの親である士郎先生に問いかけるのであった。
「まぁ、こじらせ気味だが現状 生徒の恋愛事情(?)に不用意に介入すべきじゃないだろうな。そして生憎、俺は氷室恋愛探偵じゃないんでな」
「さいですか……」
達也の一方通行の想いではないと士郎先生が判断するぐらいには、何かがあるということだが……。
(やれやれ、アーシュラは、極上めちゃモテ姫騎士すぎますね)
本人は努力の方向性を完全に間違えているというのに、