魔法科高校の姫騎士~Alternative Order~   作:無淵玄白

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私事ではあるが、これまで小説を書いていたタブレットがご臨終なされた。
電子書籍も読んでいけるヤツだったのだが……うーん残念!

まぁAndroidのバージョン更新も9で頭打ちだったからなー。いい機会なので他のを買おう。

書きかけのデータもあったのだが、やむを得まい


第136話『衛宮さんちの今日のごはん~実食編~』

 

 

ぐつぐつと煮えたぎる鍋。その中身に誰もが舌鼓をうつ。

 

少し前までは自分達が不器用だったり器用だったりしながら作った肉餃子(牛肉ミンチ)と海鮮餃子(タコミンチ)もまた鍋の中で良い感じになっているのだ。

 

取り分ける木製のお玉に収まっても崩れぬ具材の数々。浮き粉を使った皮だからか餃子はどっちが牛でどっちがタコなのかが完全に分かったりするーーー分かったところでどちらも美味しいので争いは特に起こらない。

 

「うまっ、士郎先生の料理スキルは特級厨師級か!? こんな美味しいモノ食べたらどんな鍋を食べても物足りなくなってしまう!」

 

「ご馳走になっていながらなんですが、あの士郎先生、こんなご馳走多くいただいちゃってよろしいんですか?」

 

「材料はなんやかんや君たちからももらったし、美味しく料理しなきゃバチが当たるぞ」

 

結構な人数が押しかけてきても、それなりに食事に預かれる家……前々から言われていたとはいえ、こんな『だいごっつぉ』(大御馳走)をいただくと流石に気後れしてしまうーーーただ自然と箸が伸びてしまうのは悲しき性であった。(真由美・克人)

 

「大事な話をする時はそれに見合った料理を出す。まぁ……そういうクセが着いてしまったんだ。空腹じゃあマトモな話も出来ないだろうからな」

 

そういう家の在り方らしかった。なんだか少しだけ羨ましく思うのは……そういう家族的なものとは縁遠いからだろう。いや、どちらも親はいるのだが。

 

ともあれ、ここにいる殆どがあの横浜騒乱で色々あった人間たちだ。そして衛宮夫妻の秘密を知った人間たちもいる。

 

(英霊アルトリア・ペンドラゴン、またはアーサー・ペンドラゴン……)

 

英国人たちにとって今でも再来を願う伝説の王……大陸のローマ帝国からの侵攻、ソレに伴う大陸異民族サクソン人の島への大挙。

またブリテンの内側にいた異民族ピクト人の活動。

そしてアーサーの父ウーサーの最大の敵……卑王ヴォーティガーンのブリテン支配の野望。

 

暗黒時代、混迷へと至ったブリテンを救うべく魔術師の予言と選定の剣を引き抜いた未来の王は、それらを打ち破り―――伝説と栄光の聖都キャメロットを作り上げて……そして―――。

 

今日、こうして招かれる前に少しだけ予習をしてきた克人と真由美だが、そんなヒトの現在の姿は―――。

 

「コラ、アーシュラ。野菜も食べなさい。確かにシロウの作るブリトマト鍋は美味しいですが、バランスは考えなさい」

 

「はーい。シャナ、その餃子はもういいと思うよ」

 

「いただきます! お姉ちゃん!」

 

ーーー母親の顔をしているのであった。

 

娘を窘めて、その娘は引き取られたローマ皇帝の娘を妹として世話している様子。

何というかアットホーム感がありすぎて、そんな伝説の人物には思えないのだ。

 

そして―――。

 

「はい。アーシュラ、取っておいたよ」

「いやいいから。そういうことは……」

「別に俺は『昔からの馴染みの兄貴分』としてやっておいただけさ。気にするな」

 

少しだけ引きつつもそれを素直に受け取って取り分けられたアーシュラの好みの鍋具のラインナップを食べるようだ。

 

渡した相手はUSNAの魔法師部隊の若き俊英にして、アーシュラの元カレたる存在……あの横浜騒乱にて自分たちを援護してくれた魔法師。

 

コウマ・クドウ・シールズ、または九島コウマ―――あるいは、ヨツバコウマ、またはサエグサコウマの可能性もある少年だ。

 

そんな少年を何度か克人と交互に見ていた真由美は―――

 

「33−4……」

「何が言いたいんだよ?」

 

言わんとすることは理解しているが腹立たしいものを覚えて、大体4、5人がつつける鍋の中身を食べることにした。

 

(確かに兄貴分としては彼の方がイケてる顔なのかもしれない。元カレであったらしいし……)

 

何となく釈然としない想いを覚えながらも、用意された洋風の鍋はこの上なく旨くて、山海の旨味のダシの中……今の時期、脂が乗った鰤ーーー西城レオンハルトなど後輩一同おみやげとして持ってきたものが、この上なく主張してくる一品だ。

 

山の幸の中では山中を悠然と泳ぐ(ブリ)の姿がイメージされて。

海の幸の中では海中にて力強く身を振る鰤の姿がイメージされた。

 

「いや後者はともかくブリは山を泳がない。妙なことを言い過ぎよ」

 

「いずれブリもサメ映画のように海中だけでなく様々な場所に行ける能力を持つかも知れない。フリーに生きていく土地を選ばないブリ―――さながら『ブリーチ』(BLEACH)というところだな」

 

くだらなさ百点満点なことを言う克人にもはやどうでもいい気分で、真由美も舌鼓をうつことにした。

 

でなければ―――真由美以上にクドウ・コウマに目線をやっている『十師族の長2人』のことであれな気分になりそうだったからだ。

 

食事以上にそのコウマなる男の不器用な愛情表現に『うなずきっぱなし』の中年の男女に鍋の旨さが半減してしまいそうだったのだから……。

 

人間関係が色々と複雑すぎる衛宮家の食卓―――だが今日、お呼ばれしたのはこの洋風鍋(シメはおじや、うどん、パスタの三種から)を食べに来るためではなかった。

 

お腹いっぱいになったところで、デザートのマンゴープディングまで堪能した所で、話は真剣なものになる。

 

「さて……何から話したものかな?」

 

家長としての席に座って全員を見回した士郎先生は茶を飲みながらそんなことを口にした。親世代ーーーここにいる十師の当主2人は既知であると分かっているから、それを前おいて克人は口を開く。

 

「端的に申せば、我々はあなた方のことが知りたい。十師族の『親世代』の殆どは、衛宮ファミリーや神秘側のことをそれなりに深く知っているようですが、その子供である俺たちは……何も知らないんです」

 

「シロウ先生、アルトリア先生がどういう来歴の人間であるかすら私達は不確定なんです。不躾すぎて恥知らずな限りですが……それを知りたい」

 

その真剣な言葉、克人と真由美の言葉を受けて―――。

 

「あの士郎さん、アルトリアさんも。一から十まで口頭で説明するのも面倒ですから、とりあえず2人の『発端』を外郭投影で伝えることにしませんか?」

 

「ああ、頼む。ただし食後だからなるたけスプラッターな場面は省いてくれ」

 

「分かりました」

 

藤丸立華の提案が入り、長々とした説明はなくて済んだ―――という安堵は一気に消え去る。

 

しかし、士郎先生の言葉から察するにおぞましき魔道の極地……あの横浜騒乱よりも恐ろしいものを見る羽目になるのだった。

 

「スターズ、コスモス、ゴッズ、アニマ、アニムスフィア」

 

詠唱と同時に変わりゆく景色。家の内観を消し去るそれの後にどこかに連れて行かれてゆく感覚を覚えながらも、抗えず、そして……

 

 

 

……一時間後。

 

「―――」

「―――」

「―――」

 

誰もが見せられた過去のことから沈黙を数十秒はせざるをえなかった。最後こそ、ハッピーエンドというよりもビターエンドな終わりだったが……それでも―――。

 

それだけの間を置いてからようやく乾いて張り付いた唇を開けることに成功する。

 

「これが第五次聖杯戦争……士郎先生とアルトリア先生がマスターとサーヴァントとして駆け抜けた魔道の戦争(いくさ)……」

 

「ケルト神話における光の御子クー・フーリン」

 

「ギリシャ神話の女怪にして魔獣達の祖の一つ堕ちた女神メドゥーサ」

 

「神代の魔女にしてアルゴノーツの船長イアソンに恋したコルキスの王女メディア」

 

「英雄達の船アルゴノーツの一員であり、十二の試練(くなん)を与えられるのも乗り越えて全世界に知られる大英雄ヘラクレス」

 

「多重次元屈折現象という『魔法(第二)の術理』に剣で至れた剣豪 佐々木小次郎」

 

前回(4回目)の聖杯戦争より残りしイレギュラーサーヴァント……人類最古の英雄王ギルガメッシュ」

 

言葉にして羅列するだけでとんでもない。

 

横浜の戦いで分かったつもりでいた英霊の力、それが2,000年代の日本の地方都市で夜な夜な闘争を繰り返し、雌雄を決そうと、万能の願望機を得ようと戦っていたなど……とんでもなさすぎる。

 

「そして……己の過ちを消すために、全てを偽り、自身の破滅と断絶を目指した……英霊エミヤ―――」

 

「全くもって、アイツみたいな声でアイツのことを語るなよ十文字。俺はお前と話す度に、あの野郎のことを思い出すんだぞ」

 

本気ではないだろうが、嘆くような調子で言う士郎先生。成長していけば、この人も遠坂凛という少女のサーヴァントのようになったかもしれないが……どうやら何の因果か、士郎先生は、どちらかといえば『裏火影』とか『手芸部の滅却師』とかな印象の声だ。

 

「ぎ、義理の息子になることは無理でしょうか!?」

 

そんな風に言われては、ちょっとだけ考える克人だが……。

 

「気にするな。冗談だ―――とはいえ、今見たことで分かることがあるな?」

 

克人の懸念を破壊しながら、話は進む。

 

「ええ、つまり士郎先生は既に半世紀以上もの年月を生きている―――不老の存在……」

 

「対するアルトリア先生は今とは違いましたよね? それはどういうことなんでしょうか? いや、アヴァロン―――聖剣の鞘の加護があるならば、不老のはずなのに……」

 

珍しいことに、真由美の言葉に加えてきたのは柴田美月であり、やはりそこは気になるようだ。

 

「そうですね……まずシロウの不老に関しては置いておくとして、私が何故、こうなっているのかからいきましょうか。先程の体験映像であった通り、私が『星』(ガイア)との契約がなったのはカムランの戦いでのことです」

 

カムランの戦い……アーサー王最後の戦いにしてキャメロット崩壊の最終幕である。そこにて選定のやり直しを求めた『まだ生きていたアーサー王』は世界との契約と同時に、聖杯戦争に呼ばれることになったのだ。

 

もっともそれは、第四次聖杯戦争という時期の話であり、マスターである衛宮士郎に呼ばれた際の『時間』は少し違うのだが、その辺りの説明は割愛することにした。

 

「英雄と呼ばれるものたちは、その死後、『英霊』という上位の精霊種も同然となります。

その後、『契約』によりて『人類史』または『星』の守護のために英霊の座に登録され『守護者』として時折、『破滅』の場に呼び出され、その原因を解決する―――まさしく世界の始末屋なのです」

 

その言葉に全員が、ぞっ、とする。魔法師にとって欠けている『想像力』と『創造力』というものが、どんどんと埋められていく。

 

それぐらい、現実は魔法師が思った通りにはいかないのだと気付かされてしまうのが、魔術の世界である。

 

「ですが、私の場合は少々違いました。それが『誰』の仕業であるかは議論の余地がありますが、この時間軸における私は世界との契約を打ち切り、疲れ果てた我が身は、妖精郷アヴァロンの招きに応じて、そこに至ったのです」

 

「アーサー王は『いずれ蘇る未来の王』……そうか、英国に伝わる伝説は本当だったんだ!! ブラックモア村の人々が『伝説の王の再現』を希求しても、結実するまで時間がかかったのは―――アルトリア先生が、アーサー王はまだ妖精郷で生きていらっしゃったからなんだ!!!」

 

興奮気味、というか実際に聖杯戦争の映像を見たときから興奮しきりの明智英美(鼻息荒い)の言葉は知らぬものたちが多い。

 

しかし、その言葉の後には、タイミングを計ったかのようにアルトリア先生は手を上にかざして横浜で親子三人で放った聖剣の一振りを見せる。

 

「―――我が名は『アルトリア・ペンドラゴン』。ブリテン王ウーサー・ペンドラゴン、赤龍の巫女イグレインとの間に生まれ、ブリテンの王となるべく『造られた』救世の騎士―――世間の歴史ではアーサー・ペンドラゴンと伝えられている者は、私のことです」

 

剣を膝に置き、安らかなる微笑とともに静かに告げられた事実に、誰もが仰天する。

 

特に英国にルーツを持つエイミィなどは……。

 

「円卓の騎士を束ねし英国人が待ち望む王とは知らず、今までの御無礼。本当に申し訳ありませんでしたぁああ!!」

 

平身低頭して詫びを入れているのだった。

 

「そんなことありましたかね?」

 

担任教師としては、エイミィとの間にそんなことあったろうかと思いつつも、エイミィは違う方向に話を向ける。

 

「えっみーもりっちゃんもヒドイよ! こんな近くにアーサー王がいることを、陛下が母親であることを黙っていたなんて!!」

 

「「気軽に言えることじゃねー!!!」」

 

SDキャラよろしく手をブンブン振り回して抗議するエイミィに2人も当たり前のごとくそんな返しをする。

 

そんな中、妖精郷アヴァロン、妖精域とも言える場所から……何故、この一家が、いやそもそも、そんな所に行けるのだろうか?

 

そういった風な疑問を投げかけると。

 

「まぁ基本的には不可能だな。人理版図の底の底ともいえる本当の意味での『世界の裏側』に行くのは、自発的に行こうとしても『門番』である幻想種に阻まれる。世界の裏側に行った幻想種はとんでもない力を有しているからな。例外的なのは、『裏道』を見つけるか『妖精』に縁あるものに招かれるかだ」

 

「けれど……状況から察するに士郎先生が、アルトリア先生に会うために妖精郷に行ったんですよね?」

 

「まぁな……」

 

「真由美、士郎さんにだって言いたくないことがあるんだ。ただ一人……一度(ひとたび)別れたはずの星の輝きに出会いたかった男のユメに、不躾な質問を言わないことだ」

 

珍しく言い淀んだ士郎のフォローに入ったのは、真由美の父親たる弘一であったりする。

 

「それはアナタが知っていて自分と―――分かりました……男のセンチメンタルジャーニーに女は首を突っ込まないのがマナーなんですねっ!!」

 

面相の変化と言葉の変化が真由美の心情を知らせる。その妖精郷に赴いた理由というかその道程において―――衛宮士郎という苛烈な人生を送ってきた漢の全てがあるのだ。

 

それは、弘一としても心苦しいが、実の娘とはいえ、ハタチにもなっていない小娘に知った顔されたくないほどに、とてつもなく……尊い話なのだから。

 

弘一と真夜に茶娘よろしく緑茶を淹れてくれたアーシュラちゃんが、『ありがとうございます』と小さく言うのを聞いて、この子が元カレとよりを戻してくれればと切に願うのは……仕方ない話なのだ。

 

「じゃあアーシュラの出身は……その妖精郷アヴァロンなの?」

 

「そうだねー。長い旅路の果てにアヴァロンに至ったお父さんがお母さんとにゃんついている内にワタシが生まれたわけだからね」

 

この子の(ワガママ)ハイスペックな理由は、そこにあると知って、問うた深雪としては複雑な気分だ。こんな天然自然すぎる存在―――深雪のような造形物(レプリカ)では勝てるわけがない。

 

兄が自分への愛情を消してまでアーシュラへと焦がれる理由が分かる。

 

だからといってそれを簡単に認められるわけがないのだが―――。

 

「なんで王様の娘たるアナタはそんなにまでも自由なのよ。何にも縛られていないのよ……もう少し、責任感ある立場に就いて誰かを導いてもいいじゃない……アナタは……ズルいのよ!」

 

「アナタをそう見ている人も多いと分かっていて、そういう物言い着けていることが理解できているならばいいんだけど」

 

様々な想いを込めた深雪の言葉を受けてもアーシュラは平素で返す。そうしてもう少し言い募ろうとした先で―――。

 

『ハッキリ言っちまえばよお嬢ちゃん。アーシュラが、こうなのは(・・・・・)、ひとえにアルトリアのせいなんだよ』

 

言葉に棘を隠さないで宣う『箱』その箱の語る言葉に誰もがのまれていくことになるなど知らないが、それでも―――『箱』は、真実を語る。

 

『―――アーサー王は、作られた王サマなのさ』

 

 

 

 

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