魔法科高校の姫騎士~Alternative Order~   作:無淵玄白

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第138話『衛宮さんちのむかしばなし~USNA編~』

 

 

 

「それじゃコウマさんは、クドウ・シールズ家の養子なのか」

 

「そうだね。まぁ自分の来歴(ルーツ)は何なのかは知らないし、知ろうとも思わない。今の家族が俺の両親と妹だからさ」

 

レオの直截な言葉にここまでの質問を全て肯定したコウマ。

 

分かったことは、コウマ・クドウ・シールズという男はまだ赤子だった頃に、USNAの家に養子となったということ。

それを仕掛けたのは、衛宮家だが、本来ならば、USNAに追放された九島 健を当てにしていたそうだが……健の養子にする前に娘夫婦が自分たちがと言ったそうだ。

 

それは、年月次第では高齢でいつお迎えが来るか分からぬ実父で義父を気遣った夫婦の考えもあった。もっと言ってしまえば、仮に成人する前に自分の弟を引き取るようなことになるぐらいならば、最初っから自分たちの子として育てたいということであった。

 

何より……夫婦と違って健はまだまだ魔法関連でUSNAでも引っ張りだこな現役の大立者(おおだてもの)なので、手を煩わせたくなかった。

結果としてその半年後には夫婦の実子も生誕し、シールズ家には男女の同い年の兄妹が出来上がった。

 

「で、アーシュラが時々言っていた義妹が恋人ってのは本当なんですか?」

 

「一応は……いや魅力的な子ではあるんだけど、俺としては、アンジェリーナとは兄妹としての関係がしっくり来るのにな……別に好きな男が出来たらば遠慮せず言えよとは言っておいてはいる」

 

深雪の質問に少しだけ苦笑しながら語る辺り、告白された上に兄妹だから無下に断ることも出来ずにということだろうか。

 

そしてその『グズグズの未練』を象徴するかのように、器用にも手の中で切ったカットリンゴ(Ver,うさぎ)を摘むアーシュラを時折見るコウマを前に、誰もが同じ感想を抱くも黙っていたのだが。

 

「別れた女にいつまでもグズグズの未練を引きずるとか男の風上に置けんな」

 

達也だけはとんでもなく噛みつくのであった。

 

しかし、その言葉は色々とこの場ではアレすぎた。

 

「「「昔の恋を引きずって何が悪いっていうんだ―――!!!???」」」

「男三人で大合唱するな―――!!!」

 

流石に達也の言葉は、この中で元カノ未練マン三人(ダチョウ倶楽部(爆))を激怒させた。

ツッコミの言葉は七草先輩だったりする。

 

「大体、前作でヒロインルートがあったはずのキャラが次回作で前作主人公と絡まないと、なんか色々と察しちゃうものもある!!

メダロットのナエさんとか、レトルトとレディに変装してイッキを助けに行く2人をどんな気持ちで見ていたんだろうとか、君は考えたことはないのか!?」

 

「そんな昔のゲームのドロドロ事情を言われても!!!」

 

「機動武闘伝Gガンダムにおけるレインとて、コロニー大学の同級生でネオトルコのファイターと自分の幼馴染でキング・オブ・ハートのネオジャパンのファイターとの間で揺れ動いていたんだ!」

 

「それは終盤のネオホンコンで当のキング・オブ・ハートがネオスウェーデンの美少女ファイターに揺れ動いたことで、色々と帳消しだ!!!」

 

七草弘一の言動にはツッコめなかったが、コウマの言動にはツッコめていたりする。

 

周囲が思うに先程からコミック◯ンボ◯なフレーズばかりが飛び出ていることはどうなんだと感じていたのだが。

 

「で、シロウはリンやサクラ―――タイガなどに未練とかありますか?」

「俺の未練は君と妖精郷で再会して、アーシュラが生まれた時点で、全ては昇華したさ」

 

一人ほどちょっと違う意見というか、達也には言わんヒトがいたが、概ねグズグズの未練を解消しているのが大人であり、少年はまだまだ解消出来ていないのだ。

 

「アーシュラって罪深い女よね。こんなイイ男を拗らせておいて、本人は誰とも付き合おうとしないんだから」

「別れた男子は『まだチャンスがある?』とか考えちゃうんだね」

 

エリカとエイミィの言葉に言われたアーシュラとしてはなんとも言えない。

 

「千葉さん、明智さん。アーシュラを責めないでくれ。そもそも俺は……先程言ったように生まれが何処の(なにがし)由来かすらわからぬ野良犬(ストレイドッグ)なんだ。だから―――まぁこの結末は相応なんだよ。それにアンジェリーナと恋仲であることは、ここまで俺を育ててくれた両親も認めてくれているんだ。ただ先に述べた通りに妹が別れたいというのならば、別にそれを受け入れる」

 

なんとも自己犠牲が過ぎる青年だ。それ故に、可哀想好きなアーシュラ()が少しだけぐらつくのを察したアルトリア()が、服の裾を引っ張ることで自制を促す。

 

「ふむ。ならば弘真(・・)さん―――私の『息子』になりませんか?」

 

その言葉に一部を除いて絶句。

放った相手が四葉真夜というこの日本の魔法師界を代表する人物で。

更に言えば色々と妙な色香を漂わせる斎藤千和ボイス(?)が、何と言うか別の思惑を感じさせる。

 

というか『裏側』の事情を知っている連中は驚き。

その言葉以前からメガネを外して、四葉真夜とコウマ・クドウを何度も見比べていた美術部の柴田美月はその『つながり』を見抜いてしまった。

 

顔の造形だけでなく、色んなものが見えてしまった美月だけが、裏側の事情を知らずとも察してしまったのだ。

 

「四葉殿! それはどういう―――」

「実を言うと、弘真さんがあの甲信地方の大英雄、武田信玄公の霊基を使用できる存在だと知ってから考えておりました」

 

十文字の言葉に『ざーとらしく』答える四葉真夜。話は続く。

 

「我が四葉の拠点は御存知の通り甲府・信州を中心とした地域。如何に研究所由来の人間とはいえ、地元民であることは確実ですから、まぁそんなわけで―――アーシュラちゃんと交際・結婚を目指すならば、家格としては不適でしょうが……それでも生まれもそうですが、私としてはアナタの一助でありたいんですよ」

 

「―――それはありがたいですが、自分はクドウ・シールズ家の人間です」

 

裏切れない家があると続けるコウマだが、本当に『母』のような表情で言う女性に恥ずかしい気持ちを覚えたのも一つだ。

 

「それ以上に、私と弘一さんは、マスター・ケン(九島 健教授)の兄である九島烈に師事を受けた人間ですから……老師には悪いのですが、確かに教えられた恩義はあれども、お家の事情を聞けば、USNAに放逐された弟さんに同情心が芽生えるのですよ」

 

「先生がもしも弟さんと二人三脚でやっていたらば、今の日本の魔法師界でも何かが違っていたかもしれないとは僕たちも考えるんだ。今度、ケン師父が帰還された時に何かの一助となりたいんだよ。日本の魔法師界が犯してしまった罪を償うためにも、それに適任なのは健師父を祖父に持つ弘真君―――君を助けたいんだ」

 

若干だが二人のコウマという名前のニュアンスが違うように聞こえてくる面子に、もはやバレバレなのだ。

 

『仏心』というよりも『親心』な態度にそういうことかと気付く。

 

ここまでの展開を織り込み済みで米国の九島家に預けたのか!?という想いで衛宮夫妻を睨むように見た真由美だが。

 

平素な顔の前に立てた手を左右に振ることで『違う 違う そうじゃ そうじゃない』などとマーチン(鈴木雅之)のように否定してくるのだった。

 

「……なんだかお二人から言われていると、自分がことさら哀れな存在なんだなと思いつつも、少しだけ……嬉しい気持ちも芽生えてしまう」

 

―――俺は歪んでいる。言外に含んだ言葉を察する。

 

「ですが、やはりお受け出来ません―――もちろん祖父のことには感謝しますが、そういう節操のないことは俺には出来ませんよ」

 

その真剣な言葉―――迷いを捨てた言葉に2人の大人は少しだけ落ち込む。

その一方で心のままに『うん』と頷かない少年の成長を喜ぶも、やはり甘えさせたいと思う心を持ってしまうのだった。 

 

「弘真、そろそろ帰らないとマズくないか? 送り届けてくれたシルヴィアさんが予定していた刻限は近いぞ」

「そうでした―――」

 

楽しい時間を前に時間が過ぎるのは早かったのだが、USNAの軍人である彼は色々と制約がある。

 

「いや、まだ40分はあるじゃない。まぁシルヴィさんが車を回してくるかな」

 

そんな弘真の帰還ということにアーシュラは物申しつつも、そういうことかと納得したのだが……そんな風な道理は親としての情を持つ2人の十師族には通じなかった―――。

 

「そんじゃ。ちょいとルーシャナどいて」

「分かった」

 

アーシュラの腕の中に収まっていたルーシャナ・クラウディウスを横に移動させた上で弘真と隣り合う形となるアーシュラ。

 

「手を出して弘真」

「―――ああ、そういえばそういうことか」

「ええ、まぁすっかり忘れていたワタシも悪いけど、とりあえず次にやってきた時には万全の状態で渡すようだからね」

 

言われた言葉の意味は外野には、いまいち分からないが、それでも次にやられたことはとても刺激的であった。

 

見つめ合いながら両手の指を絡めるようにして繋ぐ密着寸前の男女の姿に―――宴会席という畳の食事場が静かに騒立つとしか言えないものに包まれる。

 

それを見た四葉真夜は口を両手で抑えて眼を潤ませた嬉しそうな様子を見せる。

同時にそんな四葉真夜の肩を抱きながら、いつも真由美が見ているグラサンではなく普通の眼鏡を取って涙を片手で拭っている七草弘一の姿が見られた。

 

「無粋かもしれませんが、アーシュラは何をやっているんですかっ?」

 

少しだけ勢い込んで聞いた達也に対して、士郎先生は茶を啜ってから口を開く。

 

「お前さんが実妹やアーシュラに普段からやっていることさ。弘真には本来ならば、とある大業物というべき得物があるんだが、それを作ったのは」

 

「アーシュラなんですか」

 

「ああ、あの阿房宮の戦いでは出せなかったのは、夏以後のUSNAでの軍務で折れてしまって、それ以来アーシュラに預けられなかったそうだ」

 

言われてみれば、あの戦いの時にアーシュラはそれを察していたのか、コウマ・クドウに大太刀を寄越していた。

 

そんな理屈めいたことは、技術屋で理論屋である達也としても納得すべき筋のはずだが―――。

 

真剣に見つめ合う男女。両方が少しだけ顔を赤らめている様子に納得も理解も出来ないものであった……。

 

 

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