魔法科高校の姫騎士~Alternative Order~   作:無淵玄白

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当初、書いていたのはかなりドロドロしたものがあり、丸戸神のような『最低の純愛ですね』という台詞を真由美に言わせる予定だったのですが、ドキュメント保存が上手くいかなかったのか吹っ飛んでしまった。

いま考えればーーーまぁこっちの方が良かったかなとも考えながら新話お送りします。


第139話『日常への帰還』

 

 

衛宮家での夕食会は……コウマ・クドウ・シールズの帰還後には、かなり夜も更けていたこともあり、それぞれで帰宅の途に着くこととなった。

 

七草先輩の方は父親と共に帰った。(with 十文字)

 

親子でなにか生々しい会話があるのではと予想されるが……こちら司波兄妹にとっての叔母は、どうやら家に寄ろうとはせずに直帰のようだ。

 

家令・執事長ともいえる葉山自ら『運転手付きの高級コミューター』で衛宮家に着けてきた時には驚いたが、ともあれ……こちらとの関係を探られないように、衛宮家との会話を多くしている―――というかアーシュラとコウマの仲を取り持ちたいのか、アーシュラに対して色々と言っている様子は、本当に普通のオバさんでしかなかった。

 

まぁ……ティーンエイジャーの恋愛に首を突っ込む中年というのはウザいだけかもしれないが……。

 

『休み明けには登校するわよ』

 

そんな言葉が掛けられたことで、姫騎士の帰還が確約された……。

 

「なんというか、アーシュラがいるとトラブルばかりな気もするけど、いなければいないで物足りないのよね」

「それだけアーシュラ・ペンドラゴンという姫騎士は一高に必要なんだよね。特にB組なんて物凄く低調」

 

更に言えばアーシュラに懸想している剣術部の相津郁夫などは、さっぱり気合いが入っていないようだ。(桐原・談)

 

近場のコミューター乗り場におみや(お土産)を持ちながら歩く一高生徒たちは、場合によっては補導されるかもしれないが……特にそんなこともなく他愛もない話をしながら学生らしく別れられた。

 

その間―――。

 

「お前はアーシュラがよほど嫌いなんだな」

 

一言も喋らずに押し黙ったままの妹に車内で言うことにするのだった。

 

「だって……お兄様には分かりませんよ。女同士のなんというか、縄張り争い的なものがあるんですよ!」

「だからと下劣なことをしたらば、俺はお前の兄でいることに恥を覚える」

「そんなことはしません!」

 

憤慨して窓の方に顔を背ける深雪。彼女にとって初めてのライバルとも言える相手はあまりにもケタが違いすぎた。

その血統、その能力、その容姿……全てが上回っていたのだ。

 

昔懐かしの少女漫画ならば深雪は、雫・ほのかと共にアーシュラに突っかかって―――実際、やったわけだが、かなり陰湿な真似をしていたかもしれない。

しかし、そんなものやったらば100倍返しでやり返すのがアーシュラである。一発引っ叩けば、百発叩くか、一発で体が何回転もするようなビンタを食らわすタイプだ。

 

「士郎先生によれば、今度……クドウ・ケン氏の帰国と共に一高に留学するコウマ・クドウの妹は、お前のいいライバルになるとのことだがな」

 

「私はアーシュラに勝ちたいんです!」

 

それは中々に難しいな……そう思いながらも……アンジェリーナ・クドウ・シールズなる女の子はどんな子かと聞くと。

 

『仮面アメリカとX-メンのエマ・フロストを足して2で割ったような子よ』

 

つまりは一高に4人目のデンジャラスガールが生まれるということだった。

 

ちなみにアーシュラ、深雪、立華が残りの3席を埋めている……序列(危険度)もその順番通りだったりする。

 

そんな考えをしながらも……ようやくアーシュラが帰ってきてくれることに、どうしても嬉しさを覚えてしまう自分を達也は自覚するのだった。

 

 

「ではフェム氏は、あの模造阿房宮の影響を受けて日本に船を進めたということなのか?」

 

「我が主はそう言っております。それが本心かどうかは従者である私には分かりませんが、その旨をメジャー・カザマにお伝えするように仰せつかりましたので、そう伝えさせていただきます」

 

その言葉に何とも言えぬ心地になる風間と藤林、真田、柳、山中……達也を除いた独立魔装の面子が勢揃いしていた。

 

現代に生きる幻想であり偽性の不老不死である死徒の遣いは、如何に自分たちが神秘の世界に疎くてもそれなりに知っており、恐れるものだ。

 

そもそもV&VインダストリーのCEOともなれば、俗な世界とも関わりが大きく多い。現に十師族のうちの一家は、こことの取引が盛んだ。

 

同時にそれら入ってくる情報から、目の前の社長秘書のような格好をした美女が、見たままの存在でないことは分かってもいたのだ。

 

「もう一つお伝えすることもありましたが、そちらは口頭よりも、こちらを参照するようにと主より仰せつかっておりますので―――」

 

言いながら簡単な物体移動魔術で風間のデスクの上に記録媒体をやった女……クーポラと言う女は―――

 

「それでは」

 

―――とだけ言ってから、独立魔装の作戦室及び国防省どころか『市ヶ谷』全体から消え去っていた。

その気配が消え去ったことを受けてから、全員が深く息を吐く。同時に脱力もせざるをえない。体が極度の緊張から開放されたのだ。

 

「あれが噂の七大魔城の内の一つなのか……とんでもない圧だ」

「その正体は自立稼働するゴーレムとのことですが、あらためて見るに傀儡というには精巧にすぎますな……そりゃ神代の頃はヒト形造りの行というのは今よりも一般的であり、その傀儡に魂を与える術もあったのでしょうが」

 

そんなものが、時代が進んだ今であっても何の劣化もせずに、何事もなく動き回ってカードディーラーなどもやっている事実に恐ろしさを覚える。

 

山中が汗をどっぷり掻きながら言う。医者として人体を芸術家と同等以上に見てきた軍医だからこそ、目の前の美女が造り物だとは思えなかったゆえの恐れであった。

 

「……停泊の理由は知れた。かの吸血鬼が横浜を死都にするつもりで来たわけでないことも分かった」

 

「ある意味、いまの地球上で存在の変数がとんでもないのが横浜及び都内ですからね。「カーサ」を開く理由にはなりましょうが」

 

「監視はつけなくてよろしいので?」

 

「既に聖堂教会のスタッフが動いている。如何に目的がギャンブルゲームと言っていても、それが普通だしな。国防軍からも佐伯少将が兵を出したり、酒井大佐が動いているようだが……」

 

真田と柳の言葉に答えつつ……何故、たかだか自分たちのような小さな所帯の部署に生ける神秘の巨魁が関わるのか?

独立魔装は確かに特殊な部署ではある。魔法を専門的に取り入れた隊員で構成された軍務部隊ではあるが……その特殊性も真に極まった魔導の闘争の中では波にさらわれるだけのただの板切れ……カルネアデスの舟板になれればまだマシという程度でしかない。

 

「さて……何があるのか、だな」

 

記録媒体にウイルスを仕込むこともありえる。更に言えば魔術協会では呪術をプログラムとして組み込む実験があったりしたそうだ。

 

現在でもそれらが生きている可能性もあるし、立ち消えになった可能性もある……はたまた死徒であれば思いもよらぬ方法で……想像で妄想の領域は膨らむばかり。

 

だが、軍人は現実に対して直裁に対応するプラグマティストなのだから……そして―――記録媒体にウイルスチェックを掛けた藤林響子から受け取った風間はそれを端末に読み込ませて、綴られている文章に眼を通すのであった―――。

 

 

甲種戒厳令がいまだに布告されている現状であっても、学業は変わらずティーンの義務である。

 

その律から一週間近くも外れていた2人の登校はいろいろな面子を戦かせた。

 

中でもB組の教室に入ると、その変化はあからさますぎた。事前にエイミィから聞かされていたとはいえ、帰還に対する歓迎の意の嵐にどうしてもむず痒い想いは生まれるのだ。

 

「相津君は、なんで泣いてんの?」

「なんでも衛宮さんが大怪我負ったんじゃないかと思っていたんだってさ」

「ちょっとばかり魔法協会の方で『ボランティア』やっていたことを伝えれば良かったのに」

 

そんな風に思うのは、言ってきた十三束 鋼の母親から伝わればよかったのだ。

魔法協会の職員であり、何かと接触の多かった十三束 翡翠氏が息子に伝えていればこんなことにはならなかったのだが……。

 

「はいはい。もう泣くな泣くな。こうして衛宮さんがやって来たんだから」

「な、なんで斎藤がそんなことを言うんだよ」

「慰めてほしくて泣いているからウザいんだよ!!」

 

簡単に男の狙いを看破した斎藤弥生にイタイところを突かれたような顔をする相津郁夫に、やれやれと思いながらも……アーシュラは、この一週間に出されていた座学の課題と宿題をこなすべく端末を動かす手は軽やかであり、あとは実習課題となるわけだが。

 

その前に朝のSHRへとなるわけで、アルトリア・ペンドラゴンという担任の登場。

 

ようやく日常が帰ってきたという安堵に、誰もが包まれているのかもしれない。

 

 

 

そんな中……一高とは別の第三高校で、ある決議が取られていた。

 

「まぁ『追い出しコンパ』よろしくの一高との交流戦は毎年のことだがな。しかし、了承されるかどうかは分からんぞ?」

 

「構いません―――俺も一色も……現在の相手との差を知りたいんですから」

 

その決意を秘めた三高一年生たちの目に、前田千鶴は『ぜひもなし』(しょうがない)という感覚で調整に入ることにするのであった。

 

 

 

 

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