魔法科高校の姫騎士~Alternative Order~ 作:無淵玄白
魔法競技『クロス・フィールド』
ざっくり言えば魔法模擬戦をスポーツ化したものだ。
模擬戦をスポーツ化したというと、何と言うかどういうこっちゃ?と思うかもしれないが、まぁ殺人武芸の剣が、剣術競技、精神修養として銃火器が広く普及しながらも現代に息を繋いだように、魔法戦闘をスポーツ化するという試みはまぁ分かる。
もっともそのルールは色々と煩雑であり、一対一の決闘形式もあれば、同人数同士で戦うチーム戦。はたまた人数に上限がないバトルロイヤル戦・サバイバル戦などがある。
「勝利条件は敵のフラッグを奪う。敵方のセンターフラッグを一定時間占有する。ランタオ島(?)で最後の一人になるまで戦いマギクス・ザ・マギクスを決める―――」
ずぞぞぞぞぞ!と食堂にていつも通りに大食していた少女。
大盛うどんの汁までを飲み干すアーシュラは、その説明をここまで聞きながらも、そんな危険すぎる競技を説明されてなんだというのだろうと思う。
が、話は続く。
「サバイバル、バトルロイヤルの戦いでの相手の戦闘不能条件は事前に設定してあるから当然、オーバーキルが発生しないようにはなっている……定型的な文句は『後遺症が残る深刻な怪我はご法度』ということだが」
「ふーん」
机の対面に座る司波達也の言葉に『それがどうした?』という想いを抱いてしまう。
「前置きが長すぎたが……来週の日曜日に、クロス・フィールド部は第三高校を招いて交流戦を行うようだ……これには、どうやら現・3年生も参加する―――ようするに追い出しコンパ、引退試合、記念試合のようなものだ」
「そいつは結構なことね。何かを作れってのならば、別にやってあげるわよ。幸いにもその日は弓道部も休みだからね」
そういうことかと思いつつ、メニューを考え出したアーシュラだったが来年度からの副会長である司波達也からすれば、そうではなかった。
「本題はここからだ……その引退試合に、アーシュラ。お前が出場してほしいとのことだ」
「誰の要請なの? というか主旨が変わっていない?」
「ああ、本当にそう思うが……十文字先輩としてもこのまま一高を卒業するのは心残りがあるんだろ……最強の個であるお前がいるからな。そして、三高としても知りたいんだろ。お前との差を」
「意味が分かんないわー。あたしゃただの弓道部員でしかないのに、なんでそんな地球がリングだ!みたいな戦いに参加しなきゃならないのよ?」
「まぁそうだよな……だが、十文字先輩に花道を作ってやりたい。力試しをしたいという当初の目論見は、どこぞの皇叔殿の登場で色々と予定違いになったわけだ」
「つーても、ワタシだと「すりこぎ棒」でも笑いながら克人さんをどつき回せるわよ? それぐらいチカラの差はあるわよ?」
どこぞの
「せめてもうすこしまともな武器で俺と戦ってくれぇい!!」
横から巌が飛び出してくるのであった。
「「いたんですか?」」
驚いてビックリしつつも、この場に一番ふさわしい人物の登場であった。
「いたぞ!! あまりにも
思わず絶叫しちゃう十文字克人(18)に対してアーシュラは……。
「というも、ワタシに接待試合しろってのも何か違うと思いませんか?」
「別にそれは求めていない……当初は、司波の言った通り三高の一条を中心としたチームが引退試合の相手だったんだがな。俺も三高も、一高どころか魔法科高校生徒の最強に挑みたくなってな」
意図を曲解されたことに少し憤慨してから、それでも正しく伝えるべく言葉を重ねる。
「そして、十文字先輩の引退試合は俺達一高の後輩が務めるべきだという意見も多くてな。それでシッチャカメッチャカな様相に」
その説明を聞きながら整理するに、三高は本来ならば引退試合を行わせる相手だったのだが、校長である前田千鶴が妙な仏心を出したのか、三高一年生たちの『アーシュラ・ペンドラゴン』と戦いたいと言い出したことを受けて、それを一高に通達した。
そしてそれを受けてクロス・フィールド部だけでなく、現・三年生などもアーシュラ・ペンドラゴンと戦いたいと言い出して、一高の誇る伝説世代(93年生)を送り出すのは自分たちだと何か使命感を出した一高一・二年生たちが噛みついて混沌は極まった―――というところだろうが……。
「最大級の問題は―――『私』はどういう立場で戦うんですか? まさか全員を篩にかけて、最後の最後で私に対する挑戦者一名のみを厳選するとか言うので?」
「むぅ。なんて的確な指摘」
考えてなかったんかいと、ツッコミたくなる克人の唸るような声で呆れてしまう。
流石に後輩の女子からその視線は居たたまれなさ過ぎたのか、咳払いする。
「しかも、どれだけ人数を厳選したとしても参加人数は100は下らないでしょうから、演習林でやるには手狭じゃないですか?」
ネオホンコンにたどり着く直前の乱戦で落とされる各国のファイターの如く、何かあるかもしれないが……。
「アーシュラには何か軍事の才能があるのか?」
「あのね。ワタシはこれでもブリテンの騎士なのよ。そして魔術師ってのは、かつての王宮では
人差し指で達也を指しながら呆れるように言って、ただの一般教養だとしておく。カリスマという軍団統率のスキルはあるが、それを今のアーシュラは封じている。
軍略という軍団指揮のスキルは無いが、それなりにそういったことには明るい。
王様の娘だからだろうか?というダメンズの考えを打ち切るように、どうするんだ?と視線で問いつつ、自分の腹案を話す。
「とりあえず、私は第3軍として一高・三高の緑軍と紅軍を相手取りましょう」
「「―――マジか?」」
ビックリするダメンズたちに畳み掛けるように、提案を述べていく。
「その過程で一高と三高の間で小規模な同盟が出来上がってもワタシは構いませんよ。諸共に叩き潰すだけですし」
「もしかして……円卓の騎士を利用するのか?」
確かにルール上、『使い魔』『パペット』『ゴーレム』などの使用は不許可とは書いていないが、まさかそう来るとは思っていなかった達也は驚く。
「それ以外にエリセとカリン、ボイジャーもね。この間の戦いに参加していなかったことが、随分と不服そうだからね」
六高の面子を呼び寄せるという提案は是とするかどうかだ。
「確かにそれぐらいは許容範囲だが……だが―――」
「克人さんもワタシにチャレンジしたいんでしょ?じゃあこれが一番の妙案でしょうよ」
「……ううむ」
「そもそも、アナタの花道をわざわざワタシのようなクラッシャージョウならぬクラッシャードラゴンが乱すつもりはありませんよ。一番いいのはワタシが戦闘後のBBQでシュラスコを焼いていることですけど」
原点に立ち返らせることで、ここまでの全てを無かったことにしてしまうのが一番の判断だとするアーシュラの考えは……。
結局のところ、服部会頭、中条会長に全て了承されてしまった上で、演習林では明らかに手狭なことから―――。
「ならばカルデア式の
アーシュラにとってのマスターである藤丸立華の提案が通り、全ては定まってしまった。