魔法科高校の姫騎士~Alternative Order~ 作:無淵玄白
そしてそんな話題の中にあんまり『まほろまてぃっく』のことが上らないのが少し悲しいと思いながら、新話お送りします
『えー、本日は、お日柄もよくー。何事もなくこの日を迎えられてまことに良かった。良かった―――』
言葉とは裏腹に疲れとか色んなものが顔に出ている中条あずさの言葉が響く。
雨天中止であれば良かったのにという感じを受けるあずさの表情に同情してしまうのは、この戦いがとんでもない規模になったから以外にもあるだろう。
やけくそ気味な中条に代わり運動会における選手宣誓及び様々なルールを説明するお立ち台に登壇してきたのは、今回の仕儀の実質的な総責任者である藤丸立華である。
口元のマイクに電源を入れながら再度のルール確認が行われる。
『ルールに関しては事前に説明していた通り、魔法競技であるクロス・フィールドに準拠したものです。しかし、チーム戦ということが今回の競技では殆どにおいて意味を成しません。個々人での組程度ならば別に構いません―――ここまではいいですね』
今回のルールは人数に上限がないバトルロイヤル戦。
選手の戦闘不能に当たる失格の条件は『戦維喪失』。各々に支給されている『ワッペン』の確保もまた1つの勝利条件ではあるが……。
そんな戦いにおいては、ハレンチ学園よろしくな絵面が想定されるわけで、今回に限りカルデアの服飾・装飾部のサーヴァント連合Withアーシュラは、夜も押しての作業でちょっとやそっとの攻撃ではそんなことにならない霊衣を量産した。
その中にはかつて人理修復を成し遂げた一人のマスターの魔術礼装もあったりする。公平を期すために、そのスペックデータは事前に参加者・参加校に通達されていた。
または単純に防御力向上及びいつもの
それを着ているものもいる……。
『最終的な勝利条件はバトルロイヤルである以上、殲滅戦になるはずですが……それはあまりにも悲惨なものを見出しますので、ある
それもまた事前に伝えられていた通り―――。
『中にはダミーとして『虎聖杯』などというパチモンも複数用意しております。そちらもかなりの魔術触媒なので、アイテムとして保有しつづけていれば、いいことあるかもしれませんよ〜』
ホントウかよと言いたいが、それもまた事前に伝えられていたとおり。
この聖杯戦線とやらには
『これだけあれば、どれだけ経済変化が起ころうとどんな国でも老年まで悠々自適に暮らせるぐらいの資産が形成出来るわ』
資産的な……俗な価値観で説明を貰いつつも、それを売れるところがなければ意味がない。魔法師的にはどうなのかと聞くと。
『これだけあれば、千人ぐらいのA級魔法師を仕立てられると思う。人によっては数字持ちクラスの能力値は持てるよ』
とんでもない霊基を増強するアイテムであるということが分かった。あの九校戦で市原鈴音が言っていた魔術師的な能力に対する見識が、ここぞとばかりに分かってきた。
『中でもこの『ソウソウの実』は、とんでもないよ。かつてアニムスフィア及びカルデアが見つけたというブリシサンレベルの伝承遺物……その実を食べればとんでもない魔術行使が出来るという話だし』
自害しろといえば自害を被術者の意思を捻じ曲げて強制する魔力を放つものだとのことだが。
そんなことを思い返しながら……卒業生送別戦という追い出しコンパにおいて、主賓を務めるべき相手をそれとなく見る。
剛体を鎧で包みこんだ巨漢。それが願う未来とは何なのか……。
総勢250人以上もの魔法師が演習林以上に広い山の中で戦う。
(東京都内にこんな土地があったとはな)
いまでこそカルデア及びアニムスフィア所有の土地らしいが幹比古によると元々は違う家が所有していたものらしい。とある縁があってこの広すぎる一等地を手に入れたようだが……。
(何か巨大なものがいるような気がする……)
達也の鋭敏すぎる感覚が、何かを感じ取っていたがともあれ立華の説明によると各々の足元に出た転移陣に乗ったあとにはランダムで山の中に飛ばされるらしい。
(何処に誰がいるかは詳細に分からないが、事前に持たされた端末で反応そのものは拾えるらしいな)
それ以外に各々で『使い魔』『魔眼』などで確認することは特に制限しない。これもまた事前の通達通りである。
そして、バトルロイヤル戦が始まろうとする前に―――。
『ちなみに宝箱の中にはウルトラレアアイテムとしてアルトリア先生のブロマイド、『殿方の喜ばせ方は知っています』とみぎゃあああ!!!』
『―――では聖杯戦線・交叉戦場
立華を吹っ飛ばして(ハリセン)登壇したのは一高の美人教師にして知っている人は知ってしまったかつてのブリテン島の王様だ。
有名なメイド型アンドロイド(どちらかといえばバイオロイド?)のような名台詞を言ったアルトリア先生の宣言によって全員の前に転移陣が現れて一歩を踏み出した後には、どこかへと飛ばされる。
そして―――大魔法戦争が始まる……。
・
・
・
「全員を公平にバラけさせるための転移陣なわけで、ヤゴウの山は色々と広すぎる」
「キュイ!」
アーシュラのちょっとした嘆きに応えるは、特徴的な姿をしたシャチの使い魔であり。つぶらな瞳に惑わされると危険な存在である。
「が、しかし……待つなんて消極策はワタシにはない。こちらから赴いて叩きのめすのみ!!」
「キー!」
イヌワシの使い魔が、某サスケェのネットミームよろしく声をあげたところで……。
「そんなわけで克人さん。どうします?」
「まさかこのタイミングでお前と近場に出るとはな……」
正直言えば、即座にはっ倒されることも予想していた克人であるが、こうして話すことが出来るならばまだ交渉の余地はあると思っていいだろう。
「本来的に軍団戦で三国志大戦なものが展開されるはずだったが、こうなったらばお前と『共闘』するチャンスはあるようだな」
「ふむ」
正直言えば、克人はそういうのは嫌だった。自分がこの卒業生送別戦にて本当にやりたかったのは。
「アーシュラ、俺のサーヴァントとして俺と戦ってくれ」
アーシュラと共に戦い抜く。彼女との
「いいでしょう。正直、ワタシもこのまま克人さんを立てないで勝ち進むのは、色々とアレな気分でしたのでね」
そういう先輩を立てる気持ちをこの後輩が持っていたとは意外な気持ちを持ちながらも、陽光が燦々と降り注ぐ林の中で『同盟』が成立するのであった。
向けられた手を取る克人。このゴツゴツするも柔らかなものを色んな男が握ってきたのだなと、思春期の少年らしい嫉妬を覚えながらもその手に触れられたことに対する嬉しさを覚える。
そして―――。
そのやり取りが終わるのを待っていたわけではないだろうが、あちこちで戦いの火蓋が切って落とされていく。
そんな中、2人の近くの林がざわつき、そこから出てきたのは一高の生徒であった。
「じゅ、十文字と衛宮が手を取り合っている!?」
「ま、まさか!? て、撤退―――!!」
哀れな獲物というわけではないが、組んだらしき辰巳と沢木の2人の姿が見えたあとには―――。
「すまんな2人とも!!」
「この場で出会った不幸を噛み締めて! 銀河の果てまで!!」
無情すぎる特級術者2人の攻撃。対物障壁を以て二人の行く先を封じた十文字。そこを狙って光り輝く魔力剣を投射する衛宮。
盛大なまでのチカラの迸りは多くの人間の肌をざわつかせる戦いの号砲。
法螺貝が吹かれ、陣太鼓の音が鳴り響くように爆発音が山を震わせるのであった―――。