魔法科高校の姫騎士~Alternative Order~   作:無淵玄白

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松野さん……いやいや、早いよ。とはいえ……脳出血かぁ。本当にヒトはどう死ぬか分からない。ブギーポップが出始めた頃の『ラジオ電撃大賞』のリスナーだった青春時代の自分が思い出しつつ。安らかに旅立てるように心から願っています。


第142話『聖杯戦線~交叉戦場~3』

 

「ふむ。どうやら倒れているのは沢木先輩だけですね」

 

「足跡から察するに、辰巳は逃げたか」

 

ゴツい顔同士でウエイトを誤魔化すには難しいことを理解していたのか克人が地面にあるものを見ながらそんなことを言う。

 

だろうなと想いつつ、意地を持って3年の先輩を逃がした沢木自身は戦維喪失はしていないので胸につけてあるワッペンを取り―――。

 

『首!討ち取ったり!!』

 

という言葉が再生されて気絶してピクピクしていた沢木碧は大会が設定した医務室へと強制転移されるのだった。

 

「さて、どうします?」

 

「静かに一人ずつ消していくか?」

 

「それメチャクチャ味気ないですよ。この聖杯戦線は克人さんと戦いたい人間たちがわんさと来ているわけなんですから」

 

「まぁそうだな」

 

「というわけで―――やっていきましょうか」

 

言いながら、全身のチカラを放射して『おれたちはここにいる!』とアピールすることで、敵を釣ることにするのであった。

 

この送別戦を飾るためにも多くの人間を連れ込んでの乱戦こそがベストだ。

 

つまりは……。カサカサと草摺れの音が早く近づいてきて―――

 

「送別戦の一番手ではなくてもお相手仕る!!」

「そうか」

 

木々の間からやってきた桐原の剣に対して、克人は慌てず騒がずシールドを展開して高周波を封じ無力化。同時に押し相撲で寄り切ろうとした瞬間。

 

桐原よりも早く強烈な勢いで飛んできたサムライガールをアーシュラは迎え撃った。

 

いち早く十束剣に変化したエクターで野太刀の一撃を迎撃するが、かなり重い。同時に奇襲のタイミングとしてはなかなかであった。

 

「二段構えの戦法とはやりますねぇ」

 

「生憎、最初は私一人で戦おうとしたところにしつっこいぐらいに組もうと言われたからそうしただけ」

 

「ヒドイッ!!!ドイヒー!!」

 

投射されるシールドを斬ったり避けたりしながら、壬生の素気ない言葉にコミカルな反応を示す桐原であったりする。

 

とはいえ、戦い自体は激しく繰り広げられていき、その有り余るサイオンとエーテルの波動の混合が、多くの人を呼び寄せることになるのだ。

 

 

山中に転移したあと都合よく3高の卒業生2人と合流できた吉祥寺真紅郎。本来的なクロス・フィールド送別戦では、この形式が最もである。

 

一条将輝の参謀を務める真紅郎としては少し不本意ではある。だが、最終的に取るべき(ワッペン)生命戦維(いふく)は、衛宮アーシュラと十文字克人である。

 

このまま3人のフォーメーションで将輝と合流出来れば、勝率も上がる。

 

……などと自分にとって都合の良い展開を考えていた真紅郎としては不本意な結末(てんかい)が出ようとしていた。

 

探知を欠いていたわけではない。だが、この山の中はカルデアが所有しているある種の霊地らしく、自然のジャミング(探知妨害)が効いてしまうのだ。

 

それでもサイオンだけでなく音や空気の流れを強化した身体で感じ取る。様々なものに気を張っていたというのに。

 

何の前触れもなく死神が現れたのだ。

 

「―――ッ!!!」

 

音1つ立てずに、こちらの側面に躍り出たのはアーマーを着込んだ長身の男。されど巨漢というわけではない。

 

一高の魔法技術者にして実戦経験豊富な男。自分たち3高の九校戦優勝を阻んだ主因の一人。

 

「司波達也!!」

 

「いちいち言わんでも自分の名前くらいわかっている」

 

吉祥寺に返しながらも、達也は細かな魔法と体術を駆使して、3高の三年生を沈めようとしたのだが―――。

 

「甘いぞっ!一年!!」

 

浸透する圧。掌底の一撃を腹にお見舞いしたというのに、三年生は耐え抜いた。もっとも口角によだれが出てしまうのは仕方ない威力だったようだ。

 

「ぐっ!!」

 

驚いた達也に対する『不可視の弾丸』が襲う。幾らかは膨大なサイオンによる膜で防げたが、本質的には『指定した場所に圧を掛けるという情報』を叩きつけているわけで、概念強化をすることで『己の存在を強める』ことで、それらを無力化する。

 

右手の指をタクト(指揮棒)でも振るようなモーションで動かして放たれる弾丸だが―――。

 

「どうやら、追撃は無いようだね。案外、何処かに伏兵でもいるかと思ったんだけど」

 

「生憎、俺はワンマンアーミー。たった一人の軍隊なんだよ」

 

ゴルゴ13(デューク東郷)かっ!?というツッコミが三高3年生から聞こえてきたが、答えずにこの包囲をどう崩すかと思案した時に―――。

 

強烈な魔弾が山の斜面から雨霰と降り注ぐ。ここまで接近に気付けなかった理由は、単純に司波達也へと意識を振り向いていただけだが。

 

魔弾は吉祥寺のように隠密性に優れているわけではない。単純に強烈なチカラの塊を弾丸にして飛ばしている。

 

なんて粗雑で原始的な魔法!魔法と呼ぶのも烏滸がましいのだが、その魔弾は確実に魔法師の障壁などの防御術、はたまたエイドス・スキンを砕いて、突破してしこたま身体を痛めつける。

 

霊衣の破損率がオーバーダメージしたのか3年生2人の姿が消える。

 

そして―――ホントウの死神が斜面から滑るようにやってきた。それは美しく可愛らしく―――。

 

(卑猥すぎるんだけどっ!!)

 

もう衣装が色々な意味でアウト過ぎる美少女。光の当て方次第で黒とも藍色とも見える髪をした少女が―――。

 

「そりゃーーー!!! カレン先生直伝!!! 戦維喪失斬り!!!!」

 

やってきた死神が手に持つ黒色の剣が吉祥寺の霊衣でありアーマーを切り刻む。そしてマッパ(真っ裸)になって空中に漂った吉祥寺。

 

『戦維喪失!!!』

 

土井先生のような声がどこからともなく響くと同時に、吉祥寺は何処かに転移させられた。何処かとはいうが麓の失格者の待機スペース。要は医務室であり、観覧席のようなものに送られた。

 

「ちょっとばかり失敗だなぁ。もっといい感じの戦維喪失が出来るはずだったのに」

 

いい感じってどんな感じだよとツッコミたい気分を持ちながらも、死神―――宇津見エリセは、ようやくのことで達也に向き直った。

 

「で、アナタも私と戦う?」

 

「……その前に宇津見さんは何を目的にしているんだ?」

 

「アーシュラと戦うってところかな。横浜での戦いは別件で私は同行出来なかったけどね。強くなっていく『成長する英霊』である彼女との差を私は知りたいのよ」

 

「―――ならばアーシュラを見つけるまで俺と組まないか?」

 

「おや。予想していなかった提案だ」

 

「そうかい?」

 

達也としては、ここでエリセと戦うことで克人と戦えなくなる(かもしれない)のは本意ではない。何より……アーシュラとエリセの戦いを間近でみたいのだ。

 

「まぁいいよ。私としても、アナタとここで戦って消耗したくないしね」

 

そんなカルい調子で同盟とまでは言わんが、宇津見エリセと共にアーシュラの探索に出る。この山では、どうにも達也の『エレメンタルサイト』がさっぱり効かない。見ようとすると途端に『ジャミジャミ』……昔のテレビであったようなノイズが発生するのだ。

 

だが―――。

 

強烈な波動が全身に走る。不意のサイオン励起に緊張をしながらも、爆発音を探る。どうやら自分たちよりも上の方で派手に戦っている連中がいるようだ。

 

「どうやら上のようね。それじゃ川上りしますか♪」

「それってどういう―――なにぃいいい!!!???」

 

瞬間、達也の腕を掴みながらジャンプしたエリセは、清流の只中に飛び込んだ。見事な白い丸石などで形成された河原を飛び越して清流に着地した瞬間。

 

「―――船!?」

「エハングウェンとは違うけど、コレもなかなかの舟だからね。さぁ飛ばすわよ!!」

 

着水する前に現れた木造の舟。そこまで大きくないが、川下り、川上りどちらもいけそうなそれで―――向かおうとした矢先。

 

「私から達也さんを奪って行かないでぇええええ!!!」

 

夜に枕元でうなされそうな叫びを持って達也とエリセの舟を狙おうとするのは―――。

 

「ほのか!?」

 

一高での同級生(ガン泣き中)であった。

 

「まさか水上戦・渡河作戦を想定していた?」

 

事実、当て推量ではあるがSSボード・バイアスロン部の全てのメンツだろう人間たちが、陸と川では用途こそ違うがボードに乗って水上にいたのだ。

 

そんな中でも一番槍を狙うのは、『ほのか・雫』のコンビであり、達也としては予定していない、ボード部としては願ったりかなったりの水上戦が繰り広げられる。

 

そして―――……。

 

 

「司波さん。俺と組みましょう!衛宮アーシュラを狙い十文字さんを狙う俺達は共闘できるはずです」

 

「―――分かりました。では、エスコートお願いしますね。一条さん」

 

一と三の『男女十師族』がコンビを結成するのであっった。

 

 

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