魔法科高校の姫騎士~Alternative Order~   作:無淵玄白

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UBWコミカライズのおまけ『とおさかべ』は衝撃的すぎるわ。

つまり冬木市の位置特定は命に関わる。というか九州弁使う凛とか流石、森山先生。など思いつつ新話をお送りします。



第144話『聖杯戦線~交叉戦場~5』

 

 

水面に足を浸すことなく、足場として戦うプリンセスブレイブ3人。

 

水面歩行という術式を使うまでもなく、天然自然としてそれを行うものは一人。

 

もう二人は少々違うが、ダンス・マカブルは夜劫の川にて刻まれる。

 

アーシュラが、『双大剣』というどれだけのパワーファイターならば十二分に扱えるんだというものを振るえば、それに応じる壬生は全力で打ち返す。

 

「相変わらずの馬鹿力!けれどそれだけじゃ私を倒せないわ!!」

 

「技巧を尽くしたとしても、圧倒的な膂力の前では無為ですけどね」

 

剣の術理、広くいえば武技の理としては「どちらもあり」だ。この場にエリカがいれば噛みついていたかもしれないが、ともあれ足元の川水が盛大に飛沫を上げながら二人の戦いを彩る。

 

「援護するわよアーシュラ!!」

 

魔弾で以てアーシュラを援護するエリセ。達也も克人もそれに倣うかのように援護をする。

 

イデアの改変領域がかなり『乱れている』が、放出する系統の術ならば当たらないわけではない。あたったところで然程意味はないようだが。それでも壬生の剣戟に影響は出ているようだ。

 

やはりこの土地の霊力が色々と魔法師の術を底上げしているようだ。

 

しかし……。

 

(壬生、お前は誰とも組まないで戦うのか?)

 

そんな苦しい想いが克人の胸中に生まれる。

 

今までのことがことなだけに彼女が、そういう態度なのは仕方ない……だが孤狼が荒野で果てるように戦う彼女の姿は痛ましすぎる。

 

彼女が憧れたアルトリア・ペンドラゴンとて円卓の騎士と共同で様々なことをやっていたのだ。

ブリテン救国という険しき道を逝くためにも、彼女は予言の魔術師に導かれるように……。

 

風王鉄槌(ストライク・エア)双連(ツイン)!!」

 

巨大な気圧の塊を剣戟に乗せて放ったアーシュラ。たたらを踏むどころか、吹き飛ばされてカマイタチに切り裂かれたかのように傷を負う壬生。

 

頼光の鎧を超えて与えられたダメージ。

 

(恐らく超高圧の颶風(かぜ)で飛んだ水が原因だな)

 

理論派である達也は、壬生のダメージが水圧……それも「超高圧水」……現在でもダイヤなどモース硬度がありすぎる硬い物質を切断・研磨するための技術と同じもので与えられたと気付く。川に沈んだ石や砂が混ざることで水圧カッターを実現していたのだ。

 

アーシュラはそれを狙ったわけではあるまい。ただ単に彼女の『直観』がそれを行わせたのだ。

 

現にアーシュラならば雷も使えるはずで、魔力付与(エンチャント)で雷を発することも出来るはずなのだから。

 

ともあれ大ダメージを与えたことで追撃の構えを取るアーシュラ。壬生も霊基を底上げしたことで、鎧が先程よりも強固に再構築される。

 

「源頼光アサルトリリィこと丑御前側に寄ったか!」

「赤龍騎士王姫!!アナタと互角以上に戦うためにはそれしかないのよ!」

 

剣に雷をまとわせるどころか、雷を剣のように持っているとしか思えないもの。先程のサンダースラッシュの予告のようなものを持つ壬生。

 

(今度ばかりは俺達だけで防ぐ!!)

 

先程はアーシュラとエリセの防御術も含めて防いだ術。しかし、いつまでもアーシュラやエリセにおんぶに抱っこではいられない。

 

(男には意地があるのだ!!)

 

シンパシーを覚える達也と克人。しかし、ここで予想外が起こる。何かに気付いたのか表情を変えるアーシュラと壬生。

 

「マッハ!!」

 

大剣の内の片方を虚空に放ったことで巨大な猛禽類が『キー!!』と嘶きを上げながら現れた。その猛禽類は急速降下!

 

達也と克人をその鉤爪でがっしり掴んですぐさま上昇軌道へと転じる。

 

「「―――」」

 

無言で男二人で見合わせた後には激水流とでも言うべきものが、下流の方から流れてくる。いや流れてくるという表現は妥当ではない。

 

放出―――放水されるかのようなそれは黄金の輝くものすら見える。

 

つまり……第三者からの攻撃。それは壬生の背後から迫るものだが。

 

「せいっ!」

「ぶっ!!」

 

一刀を放したことが隙となったのか壬生によって胸郭に蹴りを入れられたアーシュラ。ブレストプレートが防御の役目を担ったが罅割れが発生。アーシュラが、まっすぐふっ飛ばされた様子とその際の空気の破裂音からとんでもない蹴りであったことが理解できた。

 

激流が壬生を飲み込もうとする寸前で彼女は何の予備動作も無く垂直に飛び上がり、その雷霆溢るる剣を激流の中に放り込んだ。

 

雷を纏った激水流(ハイドロポンプ)が、アーシュラを直撃するのであった。

災害現場で抗えぬ水の流れに呑み込まれるヒト・モノを目撃してしまった人間の気持ちが理解できそうなぐらいに、とんでもないものだった。

 

ハイドロポンプの勢いは既に止まっていたが蟠る水が大きな渦潮を作り上げているのが分かる。

 

水深浅かった川は一部分だけだが一級河川ほどの水量と水深と流れを湛えている。さらに言えばそこには稲光、雷光とでもいうべきものが時折発生しているのだ。

 

その中にアーシュラは取り込まれたのだ。被害は甚大のはず……。

 

「マッハがまだ剣の形に戻っていないということは、アーシュラは意識を残しているんだろう」

『キーィイイ!!!』

 

克人の推測を肯定するように嘶きを挙げる猛禽類。かなり甲高くて結構、耳元で響くがそれでも今はそれが頼もしい。

 

「下手人は一体―――」

 

すぐさま眼を下流の方に転じる―――間もなく、ここまでやって来たらしき女性の姿があった。

 

「タイミングをバッチリあわせてくれたことを感謝するよ」

「そういう風に言われましたからね」

 

言った方はそれなりにフレンドリーというかフランクな様子だが、言われた方は素気ない感じである。

 

渡辺摩利

 

一高の前・風紀委員長にして前・三巨頭のうちの一人。

その実力は恐るべきものだが、それ以上に……。

 

「天元突破なレールガンナーを上回る恐るべき砲だな」

 

渡辺摩利といえばアドバンス千葉流の剣士。達也が見た限りでは戦いにおけるスタイルは魔法剣士という印象ばかりだったのだが、ここに来てかなりの宗旨替え。

 

手持ち武器としてはあまりにも大きい巨大砲は、鈍器としても使えそうな重量物である。

 

「UDKバーゲストの宝具としては少々『小さいわ』。あのヒトのサイズに合わせてスケールダウンしたってところかな?」

 

「アレで小さいというのか!?」

 

いつのまにかマッハの背中に乗っていた宇津見エリセの言葉に克人は驚く。だがよく考えてみれば、あのバーゲスト肉襦袢を着せた際のことを考えるに―――いや、それにしたってアレで小さいというのは達也は納得出来なかったのだが。

 

「いつまでも観客気分でいるなよ!十文字!!私と壬生のコンビがお前を倒す!!」

「そんなつもりはなかったのだがな!!」

「私もそこまで組みたいわけじゃないんですけどね」

 

砲からウォーターガンを取り外して水流を放ってくる摩利。やはりかなりデカいものから放たれるそれは現代魔法の理を超えてくる。

 

そして壬生はその水流よりも摩利に対して冷たいのであった。

 

(あんな近代的なもの、子供用のホビー玩具みたいなのもサーヴァントの宝具なのかよ!?)

 

納得できない想いは大きいが、これまたよく考えてみればギャラハッド・ランスロットの親子鷹ならぬ親子騎士は近代銃火器の類を宝具と化していたし、アーシュラは同じくウォーターガンをとんでもない武器にしていた。あれも宝具化の一つなのだとしたらば、そういう理(弘法筆を選ばず)が多かれ少なかれ英霊にはあるのだろう。

 

などと考えながらも、壬生と渡辺の攻撃は止まらない。

 

ニビジムのジムリーダーを倒したポケモンワールドチャンピオンシップス優勝者のような攻撃が自分たちを襲う。

 

水流に雷を付与した攻撃の数々が、空中にいる自分たちを撃ち落とさんとしてくるのだ。

 

マッハが機敏に躱してくれているのは幸いなのだが……。

 

「中々のスリル溢れる体験、今にも戻しそうだ」

「出崎演出はノーサンキューですよ」

 

巨大な猛禽類に鷲掴まれながらの飛行体験という未体験ゾーンにいる男二人だが、なんとか魔法を放つ。

 

(アーシュラはまだ出ないのか?)

 

まさか『戦維喪失』(リタイア)したわけがない。となれば、変化はすぐであった。

 

「ゴージャァアアス!! ワタシってば残酷ですわよ!!」

 

バァアアン!という効果音でも付きそうな登場を果たすアーシュラ。

 

原文とは若干違うものの、名台詞を良いながら衣装変更を果たしたアーシュラの姿が水の中から出てきた。

 

水が彼女の登場を演出する。その姿は―――。

 

((九島弘真と海水浴に行った際の写真で見たゴージャスな水着姿だ!!))

 

違いは、背中に浮遊している白と金色で構成された……巨大な構造物。ヘンな話だが、それを見た瞬間に克人は直感的に『城塞』とでもいうべきものを連想した。槍か鋲のようなものが幾つも配置されたそれは彼女の武器なのだろう。

 

「アーシュラ!!夏は過ぎ去り春休みの小笠原諸島(?)もまだだが、何だその水着姿は!?」

 

「聞いて驚け!!見て慄け!! これぞワタシの伯母のお下がり第二弾!! 水妃モルガンフォーム!! 何でもこれを着て立華のおじいちゃんを誘惑したというハワトリアのナンバーワンヴィナスよ!!」

 

興奮気味の達也に返したアーシュラのセクシーポージングと同時の勢いある言葉。お立ち台よろしく水が隆起してアーシュラを目立たせる。

 

既に地上に降り立った達也と克人。そして新たな霊衣を纏ったアーシュラに二人は警戒する。

 

何より―――。

 

(強烈な波動を放ったことで多くの人間たちが集まりつつある!!)

 

これが目的か!?そう推測しつつ、乱戦へと移行する―――その第一歩は……。

 

「達也!! 挑ませてもらうぜ!!!」

「十文字先輩じゃなくていいのかよ?」

 

西城レオンハルトという同級生が河原に躍り出ながら達也に挑戦状を叩きつけてきたのだ。

 

「夜劫の霊気、大己貴命(オオナムチ)込みでもアナタを倒させてもらいますよ!!」

「別に土地の霊力利用を敗戦理由にはせんよ!!」

 

克人に挑むは吉田幹比古である。

 

「うわっははは!!!吉田だけでなく西城まで夜劫の『神』に接続出来るとは!!善哉善哉!!思う存分たたかぇい!!」

 

そんな二人を連れてきたのは巨大な影の蛇……シャドウサーペントに乗っている四十九院 沓子。

 

「続々集まってくるわね!!」

 

沓子に注意を払いながらも、壬生と剣戟を合わせる水着姿の―――彼女いわく水妃衣装のままにアーシュラは戦いを演じる。

 

「こんな楽しい場でアンタだけだなんてズルいわよ!!」

 

山の斜面を駆け下りてやって来るは千葉エリカ。帯同者がおらず、その汚れた姿から察するにどうやら彼女は孤軍としてやってきたようだ。

 

「アンタが奪った道場の看板!! 次兄上に代わって私が取り戻す!!」

「出来ると言うならばね!!」

 

自信満々で返すアーシュラ。彼女が水面で足さばきをする度に黄金の川面となる。

 

それが、彼女に絶対の優位を齎す。

 

(このためのモルガン陛下寄りの霊衣変更だったのか!!)

 

UDKバーゲストを纏っている摩利だけは分かってしまうその目論見。これの前ではエリカの剣戟も鈍るばかり。

 

如何に士郎先生の教導、レアルタヌアの使用などでかなり『器用』に水面歩行などの魔法もできているエリカだが。

 

「っ!!」

「千葉さん!!」

 

黄金色の川面が砕かれてその『砕片』がエリカを襲う。とんでもない現象を前に摩利は―――。

 

「エリカっ!!」

 

水鉄砲で援護をする。余計なお世話と罵られたとしても、看板を取り返そうとする自分の世話になっている流派の娘を助けるのは当然だ。

 

「そうはさせません」

 

返すように青色の光線を小気味よく飛ばす指鉄砲が放たれる。

 

壬生と切り合いながらも、摩利にも注意を払い、更にエリカを寄せ付けぬチカラ。

 

近・中・遠―――全ての距離に対応したアーシュラのフォーム。

 

(手数が足りない。あとせめて四人ほどはアーシュラを攻め立てる人間がいないと押し切られるぞ!!)

 

その摩利の予測を実現するための存在が、山林を凍てつかせながら、遂に川までやってきた。

 

「アーシュラぁあああ!!!」

 

霜の巨人のような咆哮を上げながら、強烈な冷気を解き放ち、川面すらも凍らせようとする一高の一年生……アーシュラを不倶戴天の仇敵として見ている少女がやってきたのだ。

 

 

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