魔法科高校の姫騎士~Alternative Order~ 作:無淵玄白
いや、人間の生き死にはどうなるか分からないが、ええ……田中敦子さんが亡くなられた。
やっぱアニメだけじゃ、その人の現在は分かんないよな。音声の収録だけはスケジュールの関係上、先に録音してアニメーションは後からというのが普通だしな……。
いや、本当に残念ですよ。いまUBWの再放送やっているけど新規でhollowとかやることになったらば……「葛木メディアでございます」の声は、敦子さんじゃないんだな。
ショックですが、安らかな旅路を祈っております
終わりよければ全て良し。
という訳では無いが、ともあれ全てが終わった後には某海賊漫画よろしく宴のごとき立食となる。
つまり……エミヤ式BBQであった。肉も野菜も多くの場所で焼かれている。流石に何人かに分かれてのBBQであるのは仕方ないのだが。
その中でも、ファイナリスト5人がいる辺りでは、そのうちの一人でもある少女が主に動いている。
「はーい。焼けたよ」
あれだけ動いたあとでも構わずに焼き肉娘(?)をやっているアーシュラは、全員の紙皿にほぼ均等に網の上で焼けたものを乗せるのであった。
「一応、タレも塩もあるが、普通に食べても美味いな」
「ドラゴンベーコンも焼いたものが美味しいわ」
十文字と壬生の言葉、言葉通りに確かにそうだ。
先生が、この夜劫の山に着いてから漬け込んでいた豚も牛も鶏も……凄まじく美味しく、壬生がドラゴンベーコンと呼んだ保存肉もまた焼かれてさらなる美味しさとなる。
「うーん野菜も美味しいわ」
「デスソースぶっかけて食うのとどっちがいい?」
「こっちでいいわよ」
九校戦でもちょっと見ていたが、宇津見エリセはとんでもない極辛党であるようだ。そうして食べていると、周囲からのやっかみのような視線が届いてくるのを感じる。
「アーシュラ、焼き鳥そろそろ返すぞ」
「そこのトング使って」
居心地の悪さを解消するわけではないが、自分もアミの仕事がしたくなったのだ。
「手でやるさ」
「無茶すんな。アンタは技術者でしょ?繊細な手を潰さないべき」
ともっともなことを言われて素直にトングを使うことにするのであった。
その様子に少し遠くの二年組(桐原、五十里、千代田…etc)の方から囃し立てるような声が届く。
すぐさま冷気が届き二年組の炭火を絶やそうとするが、それを察したアルトリア先生が、箸を使ってその冷気を消し飛ばす。
そしてルーシャナに対して焼けた肉などを取ってあげるのだった。
「それにしても、今日の戦い……クロス・フィールド部の送別戦にして、聖杯戦線はいろいろな意味で自分が上がるのを理解できた。後輩の一人が、あのような口を叩くぐらいにはな」
「超エキサイティン!というヤツですね。テンションアップしすぎましたよ」
「満足出来ましたか?」
達也の申し開きの言葉の後に、エクターとマッハに食事を与えていたアーシュラが尋ねる。
それに対して十文字克人は。
「―――ああ、満足した。この戦いで俺がやるべきことは終わった」
送別戦にて多くの人間と戦い、後輩達と矛を、魔法を合わせてきた克人は、全てに満足した……。この後輩達ならば任せられるのだと。
最後の5人に、後輩が4人もいたということは様々な意味で満足出来たのだから。
「一高を頼む。司波達也、衛宮アーシュラ。分かっての通り、多くの争乱は望むと望まざるとに関わらず一高に舞い込む―――お前たちが柱となり支えてやってくれ」
「「――――――――」」
その言葉に息を呑んだ。ロールサンドイッチを食べながらのセリフだが、それでも聞き逃してはならん言葉だと思えた。
「―――お前たちこそが魔法科高校の『未来』だ。頼んだぞ」
その重い言葉に『はい』とアーシュラと達也が答える前に―――。
「十文字さん!俺も『魔法科高校の未来』ですよね!?柱ですよね!?」
「十文字先輩!!アーシュラとお兄様だけでなく私も、私も『未来』ですよ!!」
いきなりやってきた王子とお姫の疑問と自薦に中断させられることとなった。
更にそれを皮切りに……。
「十文字先輩!俺と壬生も一高の柱ですよね!?」
「無理に私を含めないで」
ヤマシギの焼き鳥串を食べていた壬生紗耶香が呆れるように桐原の言に言って―――。
「十文字・元会頭!私と啓も魔法科高校の未来ですよね!?ベストカップルですよね!?」
怒涛のごとく十文字印の手形を求めてくる連中ばかりになるのであった。
それを躱しながら焼き肉は続き……。
「ほらほら散れ! それぞれの席に特製のドネルケバブサンドを置いていくんだからな」
士郎先生の執り成しで、ファイナリストのテーブルに
「格付けチェックよろしく、二流のみなさんがたはテーブルにお戻りをとか出来れば良かったんだけどね」
「まぁそれは魔法科高校らしいものだが、アーシュラはそういうの嫌いだろ?」
「そうね」
とはいえ昼食を邪魔されてイヤな気分になったというところか。士郎先生から渡されたドネルケバブサンド。あの九校戦の際にアーシュラの手作りとして食べたのよりも数段の旨さを誇るそれで舌鼓を打つ。
大口開けて食べるアーシュラを見る。よく考えれば、あのオータムデートの際にも彼女は肉を食べていたか。
ふと何気なく違う方向を見ると、調理台の方ではなく山の方に向かう士郎先生の姿を見る。何かの『面』を付けて余ったドネルケバブサンドと酒瓶を盆に乗せて、山の方へ向かう様子を見てしまった。
その様子は近寄りがたい雰囲気……神然としたものを感じさせた。
誰も気付いていない様子だが……。
「士郎先生が奥に行くがいいのか?」
「いいのよ。『お供え物』を捧げなければならないから。夜劫の神様は別に生贄を欲するような存在じゃないけど、祭事の最後に、神様の前でちゃんと締めくくりをさせなければならないのよ」
達也が知らぬ話ではあるが、この山のもともとの管理者である一族は、カミサマの欠片の継承の際に大規模な祭事であり『神事』を行うことで、神秘の減衰を防いできたという事情がある。
その際に山はとてつもなく鳴動を果たす。
「むぅ。士郎先生一人でいいのか?」
「あんまり多くの人間が行っても神様は萎縮しちゃうかもしれません。というより『秘事』でもありますので、ワタシですら覗いたら切りつけられるかもしれません」
十文字の言葉にそう警告を発しておき、全員にも聞こえるようにしておく。
「我々の役目は先程までの闘争で完了しています―――そして……まぁ普通に食事を楽しんでおきましょう」
それが自分たちに出来ることだとしておく。そして―――。
(なにか……マイナスのプシオンとでも言うべきものが山の頂の方に流れていくな)
観戦であった美月や幹比古が達也と同じく気付いたが、アーシュラの目とハンドサインで『気にするな。吸われていろ』とされて、そのままだった。
「宇津見さん大丈夫なの?」
「ええ、問題ないです壬生さん。こればっかりは私の特異体質でしかありませんし、いずれ同じくらい溜まっちゃいますしね」
中でも勢いよく吸われているのは、壬生の隣でデスソースをケバブに掛けて食べるエリセな訳だが、そんなわけで気付けるもの気付けないもので、それぞれだが……。
ともあれ最後の儀式は終わったようで、アーシュラなど数名が感じていた山の鳴動……実際に山が鳴り響いているわけではないが、そう言える現象は終わりを告げた。
「―――お父さん」
それから5分後。全てを終えたらしき士郎先生が少しだけ困憊して、英霊エミヤのように肌を黒くして髪を白くした様子で戻ってきた。それは流石に誰もが注目したのだが、すぐさまアルトリア先生が寄り添って肩を貸す様子。
「みんな、構わずメシを続けろ。アーシュラ、シメの調理は任せたぞ」
「―――はい」
その言葉にアーシュラは、自分の姿をコックコートに変えた。どうやらシメの料理を作るための衣装のようだが……。
(どうせならば、裸エプロンとか―――)
「お客さーん♪心の中の願望がダダ漏れよー♪これ以上のセクハラは追加料金もらうわー(怒)」
「笑顔で縦トレイとはな。とはいえ、俺が怒らせてしまったのは事実だからな。俺も手伝おうか」
トレイを縦方向から達也の顔面に押し付けるアーシュラ。
しかし、その行動が結局のところ2人を近づけることになる。それを見た深雪はとてつもない不機嫌をする。
深雪が不機嫌になるとそれを解消するために動くはずの兄は何もしない。本当に何もしないのだ。
とても悔しくなる……。
「司波さん。どうされたんで? ほら僕たちも焼きそば作りましょう」
シメはある意味、BBQの王道たる焼きそばであった。ルーシャナちゃんが持ってきた中華麺と野菜の数々、そして士郎先生特製の調味液とが……。
「ええ、やりましょう一条さん!!アーシュラとお兄様には負けません!!!」
「はい!リベンジ・マッチですね!!」
士郎先生が既に九割方の工程を終えた焼きそばにおいて、それは意味あるのかなー?などと想いながらもトングなどを使って火の上に置くものを鉄網から鉄板へと変えた栞は、とりあえずトッピング用の肉や野菜はいっぱいあるのでそれを使ってもらおうと思うのだった。
各自で少しずつ変化をした焼きそばを食べては、シェアリングをしたりするのだが……。
やはりというかなんというか司波深雪はトップ5の鉄板にちょくちょく向かうのは予測通りすぎた。そして栞の親友である愛梨もまたアーシュラと達也の合作焼きそばを食べに行く。
そしてちょっとした諍い(主に司波深雪の突っかかり)が起きたりしながらも、冬に至る前の秋のイベント。
一高・三高合同開催の聖杯戦線にして三年生送別戦は、大成功に終わり……己のレベルアップを実感した者たちを多数にしながら終幕へとなる。
「あっ、優勝賞品の聖杯などを贈与するの忘れていた」
「誰も宝探しじゃなくてバトル&デュエルに興じていましたからねー」
カルデアのマスターである藤丸立華の小ポカに、一高生徒会長は焼きそばを食べながらレスするのだった……。
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―――2095年12月某日。遠く北米地域からとある一家の長男と長女と、その爺が『渡日』と『帰国』を果たした。それは多くの魔法師関係者と、日本政府の関係者の耳目を集めるものであった。
国際旅客機の搭乗ゲートから彼らが現れた……。
「ココがグランパの故郷、ジャパン!!どう?ナツカシイ!?」
「ジイちゃんの出身は
喜色満面で外国に来たことを喜ぶ孫娘に朗らかに笑みを浮かべながらも、そう指摘する爺だが……やはり顔が綻んでいるのは隠せない。
「今回のことで、全てが変わらないのが申し訳ないです」
「コウマ、私はそんなことのためにキミを引き取ったわけじゃないよ。とはいえ、ジイちゃんも色々と昔の旧友に会いたいから、家に居続けるとは限らない―――頼んだぞ」
何を頼まれているのか分からないが、横にいる妹が『ガンバるわ!』などと意気込んでいると、羽田の出入国の最終ゲートに日本政府の関係者と思しき人間たちがいたわけで。
「俺が行ってくるよ。リーナはジイちゃんとそこで座っていて」
長旅というわけではないが、疲れているだろう祖父と妹を長椅子に座らせて、USNAのクドウ・シールズ家の長男として責務を果たすのであった……。
そんな兄であり孫の姿を見た『2人』は、少しだけ内緒話をする。
「アンジェリーナ、本当にがんばりなさい。アーシュラちゃんには悪いが、『僕』はコウマとアンジェリーナこそが、ちゃんと一緒になるべきだと思っているからね」
「ケン・グランパ……ウン、ケド―――アーシュラは強敵すぎるモノ」
「それでもだ。アンジェリーナの気持ちが離れない限り、一人の男の子に抱いた原初の気持ちは忘れてはならないよ」
いつでも祖父は、大事なことを教えてくれる。それは、かつて少年時代に出会った『青色の魔法使い』との約束事でもあると教えられた。
原初の気持ち―――どこかでコウマよりも夢中になれる男子が現れると思っていた……。義理とはいえ
けどダメだった。いつでも一緒にいてくれた兄が騎士王の姫と一緒にいた時に全てが崩れた。
幻想世界の姫が兄を拐った……そして、そのことが彼女との対決を引き伸ばした。
姫は自ら身を引いたのだ―――その後釜に座っただけだという事実が全てを引き裂いていたのだ。
「アーシュラには負けんなよ。魔法も、恋もな」
「オフコース!スノーフィールドの女は砕けない!!」