魔法科高校の姫騎士~Alternative Order~   作:無淵玄白

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第150話『Interlude1.0 』

午前授業を終えて、昼食へと向かったわけだが。

 

「クヤしすぎるワ!!遥々ニホンにヒア・ウィー・ゴーしてきたってのにアーシュラに勝てないなんて!!」

 

実技練習の際の敗北をいつまでも引きずる金髪美少女(アメリカン)が、シロウ先生手作りの弁当をつまみながらそんなことを宣うのであった。

 

正月ぐらいからアレコレと衛宮家にお邪魔していた俗称・達也組のメンツは、こんな子だったのかと少しだけ驚くも。

 

(羽根突きでもこんな感じだった)

 

と思い出して、アーシュラの手でかなり高度な漢字を墨で書かれ顔を真っ黒にさせられていた。

 

「むしろ勝てると思っている方がヘンだと思いますけどね」

「ぐぬぬっ!リッカーは、いつもアーシュラの味方でヒイキだわ!」

「オイ、ヒトをまるでゾンビゲームの生物兵器みたいな名前で呼ぶな」

 

かなりキツイ睨みをする立華。しかし、少しの疑問点も浮かぶ。

 

「確かに真っ当な力比べだったわけだが、立華、アーシュラが最後の方に見せたアレはなんだ?」

「アレとは?」

「何か……俺としては明確に言葉にできないのだが、一瞬ではあるがアーシュラの眼が細められた後には、何かのプラスアルファが伝わったように思うんだよ。クラッシュレーンのボールにな」

 

その言葉にこの場にいる3人が少しだけ押し黙りながらも、最後には立華の方から説明が成される。

 

「あれは単純に言えば『魔力振動』と呼ばれるものです。アーシュラの身には竜種由来の魔力炉心がある。それは同時に竜種の固有の能力も再現出来るということ。竜種はその絶大な魔力を視線に乗せて振動させれば、周囲の礼装へも影響を及ぼすことができる」

 

「感覚器官としての受動機能を、外界に働きかける能動機能に置き換えた……といえば、まあ魔術師で言うところの魔眼と同じだ。今回は俺達の術を弱めるために使ったんだろうな」

 

立華とコウマの言葉に、なるほどと思いながらも……。

 

「だが、アーシュラには強烈な抗魔力があるはず。無駄特技な気がするが」

「確かに竜種の対魔力は特級ですからね。ただ想定されている状況次第では、まぁ能動的に静かに敵の魔力を無効化することも必要でしょうよ」

「だからこそのPassiveとActiveの違いなのヨ。ソウシン(FULLBODY)・フタエノキワミとかも出来るって言っていたワ」

 

達也の疑問に応えた2人の言葉に、少しだけ想定を深くすると、あの入学初期の風紀委員として2人で武道場にてのことを思い出す。

 

思い出して、そして……そして、肝心要なことに……。

 

「で、そのアーシュラはどこに行ったんですか?」

 

不機嫌極まりながら、シロウ先生手作りの『イカ焼売』を頬張る深雪の疑問は実にもっともだった。作ってくれたシロウ先生に失礼すぎると実妹を窘めつつ確かにそのとおりであった。

 

このシロウ先生手作りのお重を最初に食べるべきアーシュラは、このグループ及び食堂にはいなかったのだ……。

 

 

☆ ★ ☆ ★

 

「で、克人さんとしてはどうしたいんですか?」

 

昼食に誘われたアーシュラ。それがただのランチのお誘いではないことを最初から分かっていたので、彼女はそれを何の斟酌も無く受けるのであった。

 

十文字克人が今でも私的に利用しているクロスフィールド部の部室にて、特盛の『親子丼』を食べるアーシュラは『説明したこと』全てに対して問いかける。

 

丼の大きさでアーシュラの姿が見えない―――などということはないのだが、まぁそれでも想像を絶する特盛を一昔前の大食いタレントやフードバトラーよろしく食べる女子に、牛丼大盛りを食べる自分が少しだけ負けてる気分になった克人だが、それでも話をするためにここに呼び出した以上は聞かなければならないことがあった。

 

それに対して聞き出した後に、こちらの態度を聞かれたことに呻く。

 

「俺はアリサ君が十文字家を頼ってくれるならば嬉しい。それは別に十文字の魔法師として自分たちの懐に入れたいという下衆な考えからではない。ただ親父の償いをしたいんだ」

 

「ふむ」

 

これだけの大丼をレンゲや大スプーンでもなく箸で器用にも食べ続けるアーシュラは話の続きを促す。

 

「しかし、事態がそこまで大きくなった以上、どうしたらいいのか分からない。何故、こんな事態になったんだ?」

「一つに、これはアリサに課せられた宿命です。魔的な運命からは逃れられない。我々は望むと望まざるとに関わらずそういうものとは対峙せねばならないんですよ」

 

その言葉に、そのような覚悟を決めた生き方をしてこなかった克人は呻いてしまう。彼女はその出自を自覚した時から逃れられないならば、戦わなければ生き残れないと知っていたからこうなのだ。

 

「この事態、既に多くの人間が動き、収束させようと動いているのですが……どうにも、各所でスタンドプレーが続出しているわけでして中々、上手くはいってませんね。アリサの保護にヒトを出してはいます」

 

「彼女を囮に使っているわけじゃないよな?」

 

「そんなマネはしませんよ。別にワタシは高潔な騎士というわけじゃありませんが、知り合いの女の子をそんな風には扱いません」

 

その言葉にホッとする克人だが事態は自分たち魔法師ではどうにも太刀打ち出来ないことだ。

 

だが、それでも表に出なければならない。自分たちの存在証明は、戦場にしか今は無いのだから。

 

「何かあれば頼めるか?」

「ええ、けども克人さんだけでなく十師族ならびに魔法家はあまり出てこないほうがいいと思います」

「何故だ?」

「事態に噛んできているのは多くの組織ですから」

 

場合によっては流れ弾で死ぬことだってあり得るのだ。

 

「そして『噛まれてしまえば』その時はグールとなったあなた達を処理しなければならない」

「……危険度は高いか?」

「かなり。九校戦の時に現れたのはまだ『原理』を受け継いでいない、ただの怪物でしかありませんでした。ただ今回は……」

 

それが最後の言葉なのか、猛烈な勢いで親子丼をかきこみ食らうアーシュラ。みるみる減っていく丼の中身に驚きは薄い。

 

「―――まぁ、とにかくその内に『豪華客船』から何かアクションがあるかもしれません。それを待っていて下さい」

「俺たち魔法師にも話が来るのか?」

「その辺りはCEO次第でしょうね。まぁヴァンデルシュターム社長はその辺りの作法を心得ている『死徒』ですから」

 

沈黙しつつ、克人としては……最大級に考えることは。

 

「守ってくれるのか?お前たち魔術師は、そんな吸血鬼がわんさといる船であっても平然といられるのかもしれないが、魔法師は違うんだぞ」

 

ジェットコースターに乗るのを怖がるのとは同列に考えられない事象だが、それと同じような塩梅で語られそうなことが本当に……。

 

「話を聞くだけならば、ワタシ達だけでもいいんですが」

 

怖いならば無理にとは言わないとでも言わんばかりの気遣いを受けて。

 

「分かった。招待があれば赴こう」

「―――まずはアリサからです。ギャラハッドが保護してくれました」

 

タイミングよくというか、狙いすましたかのような時間に、アリサの保護が成ったようだ。

 

端末から映像を出したアーシュラ。使い魔とのリンク以外にもこういう通信機器を持っていたらしい。

だが、そんな感心よりもその映像の中にいるはリュックサック一つだけで軽装のアリサの姿を……焦燥しきったその姿とボロボロの様子を見て、居ても立っても居られなくなる。

 

「アリサ君!! 大丈夫なのか――」

「克人さん。落ち着いて―――アリサ。もう大丈夫だからね。ガレスお姉ちゃんだけでなく、ギャラハッドとランスロットがちゃんと守るからね」

 

彼女自身が一番混乱しきっているだろうことを忘れていた克人。それを手一つで抑えたアーシュラが声掛けをする。

 

『ご、ごめんなさい姉さん!! 突然こんなことに―――』

「アナタは悪くないわ。今はゆっくりと三人と一緒に我が家にやって来なさい」

『―――うん!!』

 

心を落ち着かせる声音を響かせてアリサに言ったアーシュラ。ようやく笑顔を見せたことで、安堵しつつ―――通信を切らずに数言言葉を交わしつつ、状況を知る。

 

そしてアリサを再度、安堵させてから通信を切った後には……。

 

「とりあえず両親に話してきます。既にこちらの状況も伝わっているでしょうが念の為」

「俺も行こう。流石に今回のことは俺も深く関わらざるを得ないのだからな」

 

そう言った後には2人連れ立って職員室へと向かうのであった。

 

その様子にへんな勘違いをしたメンツが多いのは言うまでもない……。

 

 

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