魔法科高校の姫騎士~Alternative Order~   作:無淵玄白

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第152話『魔法科高校の日常?』

 

アリサを衛宮家で匿う手も出たが、それでも勉学を疎かにするわけにもいかず、臨時でどっかの小学校に転入ないし通信教育をと考えた。

 

『それならば、私の方でなんとかします!!』

 

朝一番に、どこからかその話を聞きつけた巨漢の禿頭の勢い良い声と映像を見た衛宮家は

 

『『『『『うおっ!まぶしっ!!!!』』』』』

 

思わず目を背けるほどの光に目を灼かれるのだった。

朝っぱらからそのつるピカハゲ丸なヘッドフラッシュはキツすぎた。

 

『事態解決にどれだけの日数がかからぬ以上、出来るだけ日常通りのことをさせるのが、普通でしょう。学費等々、護衛の類は―――不足でしょうが、お願いします!!私に伊庭アリサさんの日常の支援をさせてください!!』

 

その言葉に悩んだ顔をしたアリサは……。

 

「分かりました。けれど……『和樹さん』は、この事態に関わらないほうがいいです。私のことで、十文字のお家にどれだけの迷惑がかかるか分かりませんから」

 

父とは呼ばない態度にグサリと来たかもしれないが、それでも頭を下げたままに「気遣いありがとう」と言う和樹の男気がどれだけ通用するか分からぬが……それでもどれだけの強権を通したのか分からぬが、その日の内にアリサは都内の小学校に臨時の編入が決まるのであった。

 

 

「元々、そういう風に根回しをしていたんでしょうね。でなければ、如何に十師族とはいえそこまでの横紙破りも出来ませんし」

 

「にゃるほど。それにしてもフェムも焦らすわね……」

 

「色々と『役者』の到着を待っているんでしょうよ。で、問題は―――」

 

立華から渡されたデータを即解析。その事に『ふうむ』と思う。

 

「元々、カルデアスが何を目的に作られたかは分かっているわよね?」

「そりゃモチロン。リッカの遠いお祖父ちゃんが『 』に到達するための礼装だった」

「そう。そしてそれは英霊召喚システムにも繋がるものとなり……どこからか技術が漏れたのか、それとも偶然の産物か、はたまた誰かに唆されたのか」

 

ともあれ妙なことが北米で起こったようだ。故に―――。

 

「あちらのお客様からです」

 

などと食堂のホームヘルパーロボが、夜のバーテンダーよろしくカツ丼(特盛)をアーシュラに、立華にはクリームパフェを寄越したのだった。

 

あちらのお客様ということでロボが指し示した先にいる人間を見ると……。

 

「おや一高で噂の北米のカップル」

「なんなん?カツ丼は受け取るけど」

 

なんとなく用件は察しつつも、先程の会話が会話なだけに友人とはいえ、少しの警戒心を持ちながら問い返す。

 

「いや、色々とお疲れだったそうだから」

「アリサのことは聞いているワ」

 

流石にソチラの耳に届くことを予期していなかったわけではない。

しかし、そういうことではないだろう。

 

この2人が言っていることは……。

 

「フェムの船宴……招待状は俺達にも届いている」

「ステイツの『キョウカイ』が、騒ぐほどのゴーストパニック。何とかする方策がヒツヨウなのよ」

 

その言葉にカルデア所属の人間2人としては色々と考えるが、この事態は……恐らくコチラにも関わってくるだろう。

 

「シルヴィアさんは?」

 

コウマの副官であり、アンジェリーナとも個人的に友誼がある―――というか2人にとっての姉貴分であるあの女性士官次第だ。

 

「既に魔法協会や魔術協会にもアポイントメントを取っている。それ次第だ」

 

どうやら魔法協会の動きが素早いのはそういうことだったようだ。

 

「まぁそれは後々ということで、USNAとしてもなんとかしたい。そしてチカラとして手に入れたい。そんなトコロでしょうけど」

「俗世の欲を捨て去った修行僧のようにはなれない我が国を軽蔑しないでくれ」

 

立華の言葉に苦しそうな顔をするコウマを見つつ、こいつらもフェムが揃えようとしている役者なのだろうなと感じておく。

 

「ソンナわけで………アーシュラ、ワタシと勝負(バトル)よ!!」

「どこに『そんなわけ』があるのか理解不能だけど?」

 

正直、何を言っているんだコイツは?という想いが強いのだが。アンジェリーナの気持ちを察した立華は言う。

 

「恐らくですがコウマがいまだにアーシュラに未練を残して、アレコレと話題に出すから、その未練を切り裂くためにもアーシュラに勝ちたいというところでしょうか?」

「ソ、ソンナミニマムな理由でのチャレンジじゃないワよ!!」

 

ウソつくな!と言わんばかりに顔を真赤にして言うアンジェリーナ。そして咳払いをするコウマ。やれやれと思うも……。

 

「その勝負!!私も参加させていただきます!!!」

 

何故か、この事態に副会長も首を突っ込んでくるのであった。

 

どこからこの話を聞いていたのかは分からないが、カツ丼を食うアーシュラとしては、どんな勝負形式にするのやらと思う。

 

「前回は一人でアーシュラに挑み、そして触れてはいけないものを触れてしまったがゆえに敗北を喫してしまった……」

 

もぐもぐ。カツ丼を食らいながら事態の推移を見守る。

 

「ですが、今回に限り頼もしき味方が出来ました!リーナ!!共に戦いましょう!!」

「エ、イヤよ。ワタシは1on1のマジマッチでアーシュラに戦いたいモノ」

「ええ……そ、そんな……」

「アルトリアさんから聞いているワ。オルタナティブになる逆鱗に触れたそうネ。マァ、ワタシならばそんなことはしないけど」

「ぐぬぬ! だってぇ……」

 

カツ丼をかっ喰らいつくした後にはアーシュラとしては、一人ひとりと戦うだなんて面倒くさいことはしたくないので……。

 

「いいわよアンジェリーナ。深雪ちゃんと一緒に挑んできなさい。ワタシはどんな条件でも戦うわ」

 

ご飯一粒に至るまでお残しせずに食べ尽くしたアーシュラの言葉を受けてアンジェリーナは少し不満に思う。

 

しかし、現実問題……このブリテンの姫騎士に勝てるかと言えば……現代魔法師の現実的な視線を以てしても無理筋だ。

けれど、義兄にして恋人であるコウマの心にいつまでも居座るこのプリンセス・フェアリー・ドラゴンを無くすためには、無謀な挑戦を続けなければならない。

 

彼の視線はアンジェリーナだけに向けられていなければならないのだから。

そんなマジック・バトルの私戦でしかないものは、意外にも承認されるのであった。

 

「アーシュラさんの戦いはある意味、この一高の名物になってますからね。それにUSNAの魔法師が実戦でどれだけのものかを測りたいんですよ」

 

「しかし、ある種のハンデは着けるぞ。今回も前回の司波深雪との戦いの時と同じくフルコンタクトルールである以上、な―――」

 

カルデア方式のルールで言えば『宝具禁止』『スキル一種のみの使用』『攻撃種類はQuickのみ』と規定されているようなものだ。

 

そして、素のままの能力値ではマズイということで諸々のギアスが父親である士郎先生から掛けられた。魔術師の用語で言えば自己強制証文(セルフギアス・スクロール)という今どきめずらしい『羊皮紙』を用いたものが使われた。

 

──権謀術数の入り乱れる魔術師の社会において、決して違約しようのない取り決めを結ぶときにのみ用いられる、もっとも容赦ない呪術契約のひとつ。

 

この場合は士郎先生とアーシュラの血の繋がりを利用したものであり、如何にアーシュラの対魔力が高かろうとこの証文を破れば即座にかなりキツイ縛りが掛けられるそうだ。

 

士郎先生もアルトリア先生も持っていないが、自らの魔術刻印の機能を用いて術者本人にかけられる強制の呪いは、原理上、いかなる手段を用いても解除不可能な効力を持つ。たとえ命を差しだそうとも、次代に継承された魔術刻印がある限り、死後の魂すらも束縛されるという、決して後戻りのきかない危険な術だ。

 

(それは即ち……場合によっては『魔法師』の大元を抑えておけば、いくらでもギアスを掛けられるということか)

 

端からその様子などを聞いていた達也は、そんな感想とも妄想ともいえるものを抱きつつも……。

 

「そして更に制約を着ける。アンジェリーナ、お前が選ぶ霊基をアーシュラは装備する」

 

その言葉の意味、それは……アンジェリーナにさらなる有利を得させるものだ。それでもアーシュラの有利は変わらないんだろうと思うも……。

 

「いいんですか士郎先生?いや、俺はアーシュラがどれだけの()に由来するドレスを纏えるのか知らないんですが」

 

達也としては無情なことばかりをする担任教師に少しだけ突っかかる。

 

「確かにな。アーシュラに想いを寄せるお前としては不服なのは分かる……が、まぁアレだよ。今回のことはローマ帝国のコロッセオみたいなもんだ」

 

いきなりな士郎先生の言葉だが、理解は出来ることはある。

古代ローマ帝国の闘技場は、皇帝の権威を示すための場であった。

その闘技場で戦う剣闘士たちは、あらゆる意味で英雄であった。

 

戦争奴隷としてローマに送られたトラキア人、ガリア人なども自由を得るために闘技場で戦い続けた。特に皇帝にとって特別な日の『観覧試合』などは、ローマ市民に自分の権威を示すための最大の娯楽……エンターテイメントでもあった。

 

絶対不敗のチャンピオン、連戦連勝のグラディエーターをマッチアップさせることもあった。

 

つまり……。

 

「第一高校の第◯◯代皇帝アズサニウス・ナカーザーによる権威発揚のための場ということですか?」

「魔法科高校のインペリウムは政治を分かっているな」

「2人とも好き勝手言わないでください!! 特に司波くんはなんですかアズサニウス・ナカーザーって!?」

 

ユリウス・カエサルの方だと微妙にパロディできそうになかったからですなどとバカ正直に言うことは流石にしないなので沈黙を良しとしておくことに……。

 

「ソレじゃ『コレ』に決めます!!」   

「分かった。アーシュラも大丈夫だな?」

「ワタシに拒否権がある話じゃないでしょ―――うみゅうみゅうみゅ〜〜〜」

 

アーシュラが何を唸っているのか……分からぬものが多い中で、達也だけは分かる。恐らく『借り受け』する英霊と通信しているのだろう。

 

通信が終わった段階(瞑想が終わった瞬間)で―――。

 

「極寒の地の闘士サマは協力してくれた?」

「まぁ一応は、気になるかい?アナタの故郷にとっては仇敵たるアカどもの土地の英霊サマだからね」

「今の新ソ連が正しい意味での共産主義者かどうかは議論の余地はあるし、そもそも『闘士』はそのアカどもが根絶やしにした王族に連なるものだろ?」

「そりゃそうだけどね」

 

分かっている2人の会話をするアーシュラとコウマ・クドウ。

それが達也の心をささくれ立たせる。

 

ともあれ様々な思惑含めての戦いは始まろうとしていた……。

 

その片方で……。

 

 

「いやーやられたねー」

「やられましたね」

 

乾いた笑いを浮かべる褐色肌の美青年としか言えない人間

それに平淡に返すはそんな青年の秘書ともいえる美女。

 

「参っちゃうよね」

「怒られちゃいますかね」

 

かなりの被害であったが、まるで公道のガードレールに車をぶつけてしまったことを嘆くように、公権力のお叱りにビビるような青年。

そうであるとは知らず秘書である美女は問いかける。

 

「怒られるだけですめばいいよ。問題はこの一件と絡めて『滅殺』決定されちゃうことだよ」

「主様ならば、そいつらを黙らせるだけのことはできそうですが」

「野蛮に踊ることも時にはいいかもしれないけどね。そういうのはもう懲り懲りだよ……明日だね。明日の夜にゲストをお迎えしよう。それでもって事態の収拾を図ってもらう。いやホント、マジで」

 

今ではもはや聞かないような俗な若者言葉を末尾にしながら疲れたように言う『吸血鬼』。

舷側が『内側』から破られたかのように、『大穴』を見せる『豪華客船』を前にして嘆く様子は尋常の世に生きる存在と殆ど変わらぬようでいて、色々と間違いを起こしそうなのだった……。

 

そして東京を舞台にしたCARNIVALは、開幕のときを今か今かと待ち望まれているのであった。

 

 

    

 

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