魔法科高校の姫騎士~Alternative Order~   作:無淵玄白

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はい。完全に出オチのタイトルなので、あんまり本気にしないように。

というわけでどうぞ


第155話『英美-雀聖と呼ばれた女』

―――勝負の世界でしか生きられない人間たちがいた。

 

己の運と才気をかけて勝負に挑むものたち。

 

―――人は彼らを、ギャンブラー(勝負師)と呼ぶ。

 

その中でも魔術界隈において、最高の勝負師と呼ばれて人々から『雀聖』と呼ばれた女がいた。

 

―――名は明智英美―――人は彼女をお嬢『英』(ヒデ)と呼ぶ。

 

「麻雀を点棒のやりとりだとしか思えない人は永遠に弱者なのよ。麻雀、いいえ『魔雀』は運ではなく『運命』のやり取りなのよ」

 

そう言ってのける明智英美は――――。

 

「ツモ!国士無双役満だ!!」

 

「これでアメリアさんはようやく元の点数に戻れたねぇ」

 

「くっくっく。ミスター・ヴァンデルシュターム、あなた背中が煤けてますぜ」

 

「まぁこれでも僕は吸血鬼だからねぇ。最近じゃ人理が妙に腐っているせいで妙なことになっているんだよ」

 

入り込んだ部屋では薄暗い中で四人が麻雀卓を囲んでいたのだが……。

 

「学生が賭け麻雀なんてやるんじゃないですよ!」

「スンマセン!!」

 

アルトリアの怒りが部屋を圧倒するのであった。

 

「しかもアズマとケンまで一緒になって!!教師大失格ですか!?」

 

「「申し訳ありません!!!」」

 

そして四人面子での麻雀においてコンビ打ちの老人2人にも叱責は飛ぶのだった。

 

「まぁまぁ騎士王殿、アナタ方が来るまでの余興だったもので、ただし私のディールは真剣勝負……そちらの正しく老いている『少年』2人と明智君にはそれなりの商品を進呈しよう」

『『『勝ったのか!?』』』

 

主催者であろうハットを被った……アラブ系らしき褐色の肌に金色の髪をした青年は苦笑気味に大げさなポーズを取りながら説明をする。

 

あまり訳知りではない連中は、この死徒にギャンブルで勝つのは普通ではないのかぐらいに考える。

 

「グランパ、グレート!!」

「お見事です」

「いやいや、それでも負けはあったんだよ。まぁそれでも『場』をアズマと一緒にこちらに持ち込んだからだな」

 

祖父を称賛する2人の孫によって表示されているカウンターを見ると九島健の勝ち点はかなりだった。

 

「トータルで言えば負けちゃったんでねー。まぁ、四人打ちだとねぇ。流石に『ドサ健』のようなケン君を前に『ヒラ』での運は無かったということで……」

 

それで話は一区切りということなのか、麻雀卓の椅子から立ち上がった男はステッキで床を叩いてから自己紹介をする。

 

「知らぬ者もいるから自己紹介させてもらおう。この船のオーナーを務めている、ヴァレリー・フェルナンド・ヴァンデルシュタームという。皆にはヴァン=フェムと呼ばれているよ。以後、お見知りおきを―――現代の異能力者の方々」

 

その言葉と共に……何かを見透かされている気分になりながらも……。

 

(さて、何を言われるか)

 

魔術世界のその最奥とも言える死徒二十七祖が自分たちを招くその理由を探りながらも……。

 

(アーシュラのドレス姿……素敵だ)

 

初めて見るその姿に見惚れてしまうのは仕方なかった。例え、自分の腕を締め付けるような妹がいたとしても達也は、その感激は消しされなかった。

 

そんな達也の心とは構いなく、ステッキを用いてヴァン・フェムはゲストルームとでも言うべきこの場所を変化させた。麻雀卓の類は無くなりポーカーテーブルのような場所が現れた。

 

「アーシュラ、ギャンブルゲームでアリサちゃんの『魔術刻印』を取り戻すのか?」

「わからないわ。それでも私ならばナイスジャッキーを連発させて取り返せるもの」

「君を相手にブラックジャックは少々、分が悪いね。とはいえ、ただのトランプゲームではフェムの船宴には相応しくない―――」

「それじゃ闘技場で―――」

「それやったら君が1ラウンドKOばかりのチャンピオンロードになりかねないよ!」

 

どういう意味なのかは分かりにくいが、ヴァン・フェム氏の様子からどうやらチャレンジャーとしてはアーシュラはディーラー側には、あまり歓迎せざる存在らしい。

 

「場合によっては、『お客様、あちらの豪勢なお食事でご勘弁を』とか言って神代の供物を差し出すことも検討です」

 

事務所に呼び立てることも出来んようだ。ディーラーであるクーポラなる……人間としか見えない美女の言葉に考えながらも。

 

「皆様、着席を願います。ヴァン・フェム様より『ご依頼』の説明がありますゆえ」

 

その言葉にどうやら今回のフェムの船宴(カーサ)は少し違うのだと気付かされる。訳知りの人々の顔が強張るのを見て達也も気を引き締める。

 

そうしてから用意された多くの椅子に座る……。まるで最初からこの人数が来ると分かっていたように、そういう来客の数に合わせた機構かもしれないが、なんとなくこの吸血鬼は分かっていたのではないかと予想させるものがあった。

 

「さて、どこから話したものかな。まずはこの船がモナコからこの横浜まで来た理由から言っておこうか。この豪華客船は確かに世界周遊は出来るぐらいの都市船ではあるが、あくまで僕自身はモナコの管理者(セカンドオーナー)であるから、あまり欧州圏内から出ることを望まない」

 

流れ水は克服したとはいえ、あまり『霊気』が合わない場所は好まない。要するに極東は『水が合わない』場所ではあるらしい。

 

「僕が日本に来た理由は、一つはあの模造阿房宮の影響の調査だ。始皇帝の作り上げたあれだけの機構は僕らにも中々に響くからね。その調査とまぁこの船も老朽化しつつあるから何か利用できないかと思ったんだ」

 

言葉と同時に人差し指を立てるヴァン・フェム氏。

 

「そしてもう一つは、伊庭アリサちゃん。いやアリサ・アンドレエヴナくん。君に関わることだ」

「はい―――」

 

それを予想していたアリサちゃんの言葉は、はっきりとしたものだ。少しだけ苦しくなる克人を横に話は続く。

 

「君のお母さんが来るべき時のために、ここに君の『魔術刻印』を預かってもらうことになっていた。本来ならば彼女……ダリヤくんも『そんな時』は来ない方がいいと思っていたのだろうが、まぁそれでも来てしまったからには仕方がない」

 

「預かっていてもらうことで、『襲撃』は防げないんですか?」

 

「無理だよ。かの死徒にして使徒は絶対に彼女を取り込もうとする」

 

克人の言葉に無碍に返すヴァン・フェム。

 

「そして、倒し『奪う』ことで安寧は出来上がる―――」

「……そんな」

「時に原理血戒というのは、変な形で継承される。この極東では『混沌』と『蛇』の『継承者』としてそこいらの女学生―――もちろん被害者ではあったが、そういう『只者』に『継承』されることもあったんだ。運命という名の『予定調和』からは逃れられない」

 

平然と語るフェムに対して苦衷に染まる十文字克人の表情。ここに来て不明点が多くなった。

 

「どうやら知らぬ者もいるだろうから、少々説明をさせてもらおうか……魔術刻印というものが、どういうものか……ミスター・シバはご存知かな?」

「知っている限りですが……魔術師の多くは、己の修めた魔術を次代……己と血縁あるものに引き継ぐために生体的な刻印としてそれらを記録したうえで、継承させる……ある種の魔導書であり簡易発動装置とも言えるとは聞き及んでいます……そういえば士郎先生も持っているんですか?」

 

フェムの質問を向けられた達也は知っている限りの通り一遍のことをとりあえず話してから、答え合わせのためにこの中でも『魔術師』の世界に詳しい人間に問う。

 

「いや、俺は確かに『魔術師殺し』と巷間で言われた衛宮切嗣の息子だが……生憎、養子だからな。知っているだろ?俺の過去は」

「そういやそうでしたね……」

 

うっかりというわけではないが、いつぞやの鍋パーティーにてのことを失念していた。このヒトの過去を知っているだけに、迂闊な質問ではあったと思う。苦笑気味に答える先生だが―――。

 

「ただ、例外的ではあるが極まった魔術師であれば他者の刻印を己の魔術の起動装置として使うことは出来る。しかし、血縁者がいなければその刻印が『成長』することはない。だからこそ時計塔は『封印指定』された魔術師の刻印は厳重に保管しているんだ」

 

達也の迂闊な質問に対して士郎先生は少しだけ踏み込んできた。

 

その踏み込みを受けてヴァン・フェムはディーラーであり自分の娘であるゴーレムにアクリルケースだろうものに収められた何かをもってこさせた。

 

内部には石版だろうか。そんな風なものに刻まれた『刻印』があった。

 

「我が船でお預かりしていた魔術師ダリヤ・アンドレエヴナ女史の魔術刻印であります。ご確認を、ミス・アリサ」

 

クーポラの言葉に手をアクリルケースに向けて何かのチカラを発するアリサ。

 

長方形の中に十字の線が刻まれたその刻印に力を向ける。五十里家が研究課題としている刻印魔法とはまた違うものなのだろうと思いつつ、その様子を見守る。

 

光り輝く刻印、十秒ほどすると……。

 

苦しい顔をしだすアリサの顔が、それに応じるように刻印に変化が起こる。

……先程まで見ていた淡く輝く線がいびつに変形をしていき、何より鮮血を思わせるようなものを見せていき……。

 

「アリサ、もういいわよ」

「はい―――。ヴァン・フェムさん。やっぱり……」

 

辛い様子を見せるアリサを労るようにアーシュラは、その身体を預けさせてから息を整えたあとの問いかけ。それに答えるヴァン・フェム。

 

「そう、君の刻印は僕の同類によって『汚染』されている。それこそが今回、僕が君たちに依頼したいことの核心だ」

 

一区切り置いた後に、言われた言葉は重すぎた―――。

 

「モスクワ事変にて『消滅』『死亡』したはずの魔法師における冠位指定 戦略級魔法師『十三使徒』における人物、イーゴリ・アンドレイビッチ・べゾラゾフ。我ら死徒における冠位指定たるゆえん、死徒二十七祖の原理血戒(イデア・ブラッド)を継承してしまった哀れな存在―――それこそが、今のミス・アリサの受け継ぐべき刻印を汚染している元凶だ」

 

血のような真っ赤な目を真剣なもの―――とでも言えばいいのか、そこから剣呑さを漂わせるヴァン・フェムにほとんど全員が息を呑んでしまう。

 

有り体に言えば怒りとも言えるか。それを感じる。

 

ともあれ達也ですら知らずに汗を掻くほどに恐ろしい存在……それこそが死徒であるのだと気付かされた。

 

 

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