魔法科高校の姫騎士~Alternative Order~   作:無淵玄白

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第157話『人類否定者』

 

「結局のところ、ヴァン・フェムの大ぽか込みということだな」

 

「しかし、このリストは危険なんですか先生?」

 

「あの船の闘技場で使われる『魔獣』は本物(オリジナル)に近いが決して本物ではない(フェイク)。人形使いであるヴァン・フェムの船のスタッフが作り上げた義体だからな。とはいえ、その再現度はかなりのものだと聞いている」

 

用意された黒天丼を食べながらヴァン・フェムが用意した端末から立体投影で出てきた『盗まれた魔獣』の数々を見る。

 

「べゾラゾフの手元にいるアンドレエヴナが七人だからこそ七体盗んだのかもしれないけど、選りすぐりの魔獣を盗んだわけね」

 

大きめの海老天を食いながら、アーシュラの眼は九つの首を持つ魔獣に向けられている。

 

それはギリシャ神話でも最強の呼び声高い魔獣だ。

 

かの大英雄でも甥が首の根本を焼くという「手助け」ありきでしか倒せなかったのだから、その強さも規格外なのだろうと気付ける。

 

「士郎先生、アルトリア先生。疑問なんですが……死徒、吸血鬼に対して有効な攻撃手段はあるんでしょうか?」

 

特に我々、現代魔法師は?という言葉を伏せながら深雪は質問をした。ちなみにイカ天を食っていたりする。

 

深雪の質問に対して少しだけ難しい顔をしながらアルトリア(天丼3杯目)と士郎(ごはんをよそっている)は口を開く。

 

「まずは死徒というものがどういうものかを講釈しておこう―――と思うが、明智。お前さんの方で説明できるか?」

「イエッサー!ふふふ。ヴァン・フェムから宝物を得た私は今、上機嫌です―――まずは、死徒というものの定義を解説するよ」

 

人理の定義としてそれは多くの魔術師などによって規定された。

 

英霊とは人類史を肯定するモノ。人間世界の秩序を護るもの。

死徒は人類史を否定するモノ。人間世界のルールを汚すために存在するもの。

 

「人類史を肯定する影法師が英霊ならば、人類史を否定する地球そのものの影法師が死徒。この関係は相関しあうものなのよ」

 

「何故、そんなことに……」

 

「単純に言えば、まぁ死徒の発端が月にいたエイリアンにあるからよ。このエイリアンこそが現在にまで残る死徒二十七祖のシステムを作ったわけだけど」

 

明智英美という魔術世界に造詣が深い魔法師の口から放たれた言葉に殆どの現代魔法師は沈黙をする。

 

だが、それでも深雪は色んな思惑ありでエイミィに大声で問う。

 

「え、エイリアンって、じゃあなんですか?某忍者漫画のごとく、チャクラの大本は銀河の彼方からやって来るはた迷惑な宇宙人みたいに、死徒とかいう吸血鬼がエイリアン発とか意味不明すぎますけど!!!」

「深雪さん。あまり他人の家で大声を出さない。不謹慎ですよ」

 

深雪を嗜めるは四葉真夜であり、その関係性は公になっていないはずであり、関係者たちはちょっとばかり動揺するが、ともあれ話は続く。

 

「月の王……俗に「朱い月」と呼ばれる存在が地球を侵略しようと地球側の「生態系」(システム)に介入するために地球に働きかけたのよ。最初は「真祖」と呼ばれる地球側で自然発生する超越種に対する改造からだったそう」

 

「そんな風なことが……」

 

「地球……ガイアとしても自分の内側(なか)から発生した人類を受け入れていたんだけど、星が色々と改造という名の様々な開発などが為される度に「なんかちがう」と感じてきたわけで―――そういう「人類」を粛正し懲罰を与える存在を作り出そうとした―――それが受肉した精霊種「真祖」」

 

その後……月の王を参考にして「戦うもの」としての機能を付け加えられた真祖は、人間世界を正すべく活動を開始した。

 

時に、魔術師ないし当時の信仰を得ていた神官の中にはその神にも等しき力を持った真祖に心酔し、望んで従者など仕えるものになったものは多い。

 

「そういう朱い月による真祖が出てきた頃の人々が「見れる」「会える」殆どの神様は「異形」とも「機械的」ともいえる存在が多い中、真祖は見た目だけならば美しき「ヒト」の姿を保っていたから、自分たちもその神懸かりな力にあやかれる。近づけるかもしれないと考えたのかもね」

「生臭い人間たちですね」

 

そういう深雪の言葉に全員がそれぞれの顔をする。だが、現代においても目標とする人間を設定してそこに向かって努力することは当たり前だ。

 

ファッション雑誌の特集で紹介されるモデルの服装からスポーツにおける目標とする選手のプレイスタイルに至るまで、そういうことはあったのだ。

 

「まぁ、ガイアから発生した真祖は言わば自然そのものだからね。ドルイドなんかもそうだけど、信仰心から彼らの従者になったものもいたのかも―――しかし、その発生した真祖には看過できぬエラーコードが含まれていた」

 

エイミィの言葉が真剣さを増した。その事に気づけた人間たちは、気付く。

 

「それはもしや吸血行為なのか?」

「―――発生した真祖は、人間たちへの懲罰をするべく強大な力を持っていたけど、それとは別に真祖は人間を愛していた。人間が星にとって害なことをしていたとしても、その一方で彼らは自分たちの発生の因となった人間たちを愛したが末に―――吸血行為を及ぶようになった」

 

達也の問いにエイミィは答える。

 

「真祖が持つ吸血衝動とは真祖の元となった「朱い月」が持っていたものであって、彼らは自分たちの「中」にエイリアンたる「朱い月」がいることに気づいていた。けれど、彼らは精霊・妖精のわりには働き者だったから悪いことをした人間を懲らしめる度に―――その力をすり減らしていき、段々と抑えつけていた吸血衝動を解き放ざるを得なかった」

「もしかして、真祖はその「チカラ」とやらの大半を己の吸血衝動を押さえつける為に使っていたのか?」

「うん。そして、自分たちの従者となっていた人間たちから己の「血袋」たるものを選抜して、そして少しでも解消しつつやっていたんだけど……中々に無理があったんだよね」

 

悲しそうな顔をするエイミィ……その心中は分からない。

 

「吸血衝動を抑えつけられず気の向くままに人間を襲う真祖は「堕ちた魔王」として同じ真祖によって狩りとられる対象になる。そして……真祖の血袋であった人間たちもまた己の意志で主たる真祖の支配から脱して野に出始めた……」

 

それこそが死徒―――。語るエイミィの言葉は巨大すぎたがそれでも理解は出来ていた。

 

「まぁ、ここいらでいいでしょう。死徒自体の説明は」

「もうちょっと聞きたいんだがな……」

 

話を打ち切ったエイミィ。中々に興味深かったもので、もう少し聞きたかったのだが……。

 

「いま必要なのは現代魔法師で死徒に対抗できるかどうかって話でしょ?」

 

そういえばそうだった。しかし、神秘という人間が本来持っていた「尊さ」を欠いた現代魔法師では、どうしても……。

 

「いや、忘れたのアナタ?確かに原理血戒を開放する前にアナタに与えた武器でディープ・マンジュリカを穿ったことを」

 

少しだけ呆れた顔をするアーシュラによって九校戦での出来事を思い出した。

 

「そういやそうだったな……では英霊由来の武器であれば現代魔法師でも死徒を倒せる?」

「ピンキリね。死徒にも階梯というものがあるから、けども多くの場合、只人が宝具を用いたとしても死徒には意味がない。宝具の持ち主である英霊自身か、あるいはそれを正しい意味で「解放」出来る存在だったりね……」

 

死徒に有効な手段は限られている……。

 

「現代魔法では無理なの?」

「モスクワ事変―――かつての新ソ連の首都を壊滅させたのは4鬼の死徒二十七祖とその配下ともいえるもの10鬼……たったそれだけで、モスクワはヒトが住めない汚染大地へとなったのです」

 

戦術級魔法あちこちから放たれても死なぬ吸血鬼たちの姿が立華の映像に映し出されている。その中にはどう考えても尋常ならざる様相のものたち……九校戦で観客席に現れたグールたちまでいる。

 

「まぁ民間人の被害など考慮せずに放たれた核反応兵器や戦略級魔法とやらが最終的には、モスクワを壊滅させた原因ですけどね」

「そしてその中から生き残っていたというよりも吸血によって支配下に置いたのがべゾラゾフなわけです」

 

そしてべゾラゾフは何の因果か原理血戒を継承してしまって、己の「娘」たちと共にこの極東でアリサを狙い、さらなる災厄を齎そうとしている。

 

「……対策はあるのか?」

「あるというよりも倒すわよ。そしてこの事態に達也もそうだけど、魔法師はあまり出ないことよ……ヴァン・フェムも言っていたけどアンタが「魔法」を使えばそれだけ「人理版図」が歪み腐る……それは地獄を招くわ」

 

その言葉にまたもや仲間外れかと言わんばかりの不満が渦巻くわけだが……。

ヴァン・フェムから教えられた「事実」を前にしては、達也も少しだけ考える。

 

「では―――私達がどれだけ戦えるかをアーシュラさんには実地で見て欲しいものです」

「僕たち黒羽家は四葉の実戦部隊として数々の修羅場を駆け抜けてきました。それに比することのない大黒特尉の力を侮るなど許せません」

 

そんな達也の苦悩を見抜いたのか何なのか知らないが黒羽の双子が立ち上がってアーシュラへの挑戦を叩きつけた。

 

「待ちなさい二人とも、ここはゲストとして招かれたというのにそのような不義理をするんじゃない!」

「例え父さんの言葉であっても止まらない!!」

「私たちは達也兄様の心を侮辱する騎士王の姫を許せないのです!!」

 

立ち上がって息子と娘を抑えようとする黒羽貢だが双子は止まらない。そして語った言葉から大方の予想通りであった。エイミィは少しだけ驚くが、まぁ予想はしていた節はあった。

 

「そして―――つまりバトルしなきゃ心が収まらないと、そう言うわけね?」

「「そのとおりです!!」」

「だから待ちなさい!いと気高きブリテンの姫騎士!!私の娘と息子の愚言を見逃してください!!お願いします!!」

 

やる気マンマンの子供とは違って、父親は土下座をしてでもこの戦いを抑えようとする様子に双子は驚く。

そこまで、この姫騎士は……自分達では叶わぬ存在なのかと悩む。

 

しかしながら最終的には、衛宮家の家長が場を収めた。この家の主の言葉なのだから従うしかない。

 

「まぁ親戚の兄ちゃんを貶めているイヤな女というのがウチの娘に対する評価ならば仕方ないな」

「士郎さん……そんないいもんじゃないですよ」

 

不貞腐れるように言う貢に対してお茶を出しながら、娘に対しても言う。

 

「アーシュラ、2人の相手をしてやりなさい」

 

―――ただし、分かっているな?―――

 

念話で言外に指示を出してきた父の言葉を聞きながらも。

 

「分かった」

 

そうして―――エクストラバトルは、デコピン2発という二刀流のアーシュラによって道場の床で転がりながら悶絶する双子という結果が訪れるのであった。

 

 

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