魔法科高校の姫騎士~Alternative Order~ 作:無淵玄白
まぁ何というか―――書きたい場面のために、色々とカット。カットカットカット!!(爆)
ただ原作の一番のツッコミどころはどうしたものかと思う。入学編の時点からものすごい設定の粗ばっかりだったんだよなー。
壬生先輩だけでなく、立てこもった人間全員に一人一人に呼びかけたアルトリア先生は、項垂れた様子の全員の頭を優しく撫でる様子。
母親としての『顔』を持ったからこそなんだろうな、と何となく妬み心を持った娘は、それでも母の在り方に感謝しつつ、全員に心身賦活のブレスを掛けておくのだった。
「壬生! ―――なんでお前は、こんなことをしたんッ!?」
「問答ならば相応しき場がありましょう。事実、討論には応じるのでしょう? ならば、この場で問いただす必要がありますか? ミス・ワタナベ」
掴みかからん勢いであった渡辺摩利を手一つで気勢を制したアルトリアは、教師というよりも『守護者』に見えた。
いや、そもそも教師というのは教導するのもあるが、生徒を守る必要もあるのだ。
そして烈火のごとき反駁の火線は、放たれる前に水でも吹っ掛けられたかのように出てこなかった。手一つの制止で、誰もが自らの行為を恥じるように口をつぐんでいたのだ。
「討論の日程はどうなっているのですか? ミス・サエグサ」
「ええと……一応、今度の土曜日にでもとは考えています―――」
「ならば、それまでに必要な資料などを渡して精査させたりさせる時間は必要ですね。貴方がたはそれを受け取りに行きなさい。通したい意地があるならば、『問答』に打ち克つというのならば、これは『挑まれた戦』です―――勝敗はあなた達一人一人に懸かっていますよ」
「―――はいっ!」
七草会長に問いかけたあとに、紗耶香を中心にした同盟に話しかけたアルトリア。
そして同盟と生徒会の面子が廊下に去っていくのを見た後に――――。
「―――随分と稚拙な行いをやろうとしていたようですね」
『『『『『………ッ』』』』』
教師から言われる一言。周囲を見渡してのただ一言だった。だがその一言は圧倒的な重みを伴う。
「ですが、放送室の占拠を行ったのは不法行為です……これをどうにかしなければならなかったのは確かなんですよ」
反論を試みる渡辺摩利だが、その気勢は間違いなく弱いものだ。
「で、そのために卑怯な騙し討ちのような口八丁の工作をしようというのならば、その時点で身の恥が汚濁となりましょう。彼らの意見に何一つ耳を傾けなかったことが、今回の決起でしょうが。そもそも―――電源を切った時点で籠城が不可能なのは当たり前でしょう。時間が経てば自然と出てきますよ。例え私やシロウが教えた『強化術』で排泄をいくらか制御出来たとしても、せいぜい2時間が限度」
「そ、そりゃそうですけど―――……」
「相手が犯罪行為を行ったからといって、彼らが決起を行うに至った経緯に対して無理解を示すのは、あまりにも稚拙でしょうね。第一、これが治安維持の職務を公的に持つ警察官ならばまだしも、同じ学生からやられていい気分はないでしょう」
その言葉に、何とも言えぬ空気が流れる。実を言えば『心情』が理解できないわけではない。
特に達也は―――けれど、その一方で……どうしても
「一つ、問いを投げかけましょうか。特にタツヤ―――魔法師というのは『人』か、それとも『獣』か?」
そう破廉恥極まる考えを見抜かれたかのように、衛宮アルトリアは、達也に視線を向けて問いを投げてきた。
「――――魔法師を代表するわけではないですが、我々は『人』です……」
なんで俺が、そんな問答に答えるようなんだと少しだけ面倒な思いをしていたが、次の瞬間には達也は問答の中心に置かれてしまう。
「では、なぜそのようなことが出来るのですか? サヤカは言っていましたよ。
『大きな目標がある人間だから、小物には構えない』と、かつて『先輩』から言われたことと同じことを『下級生』から告げられたと―――」
それは確かに達也のことだろう。だが『先輩』というのは誰のことなのか―――深く顔を伏せる摩利の顔が、少しだけ気になった。
「……俺は実技においては、優秀でなくてもいいんです。魔工を学べれば、それで……確かに今考えれば無慈悲な言葉だったかもしれない。けれど、そう告げることが悪いんですか?」
そんな達也の責任回避の取り繕った言葉に対して、断罪が告げられる。
「悪いですね。完全に悪役です。その前に彼女は言っていたんじゃないですか?『今までのことで自分の全てを否定されたことが許せない』と……」
それは一度目の会話であったことだと達也は思い出す。
段々とムカつきを覚える自分を自覚しながらも、アルトリアの目は達也を離してくれない……。
「共感を覚えろとまでは言いません。それは思想の強要ですからね。ですが、少なくとも彼女は打ちひしがれていたんですよ。そこにアナタが現れた―――もちろん。生臭い『事情』もあるでしょうが―――」
一拍置いてからアルトリア先生は口を開く。
「少なくともアナタだけが救えた。千千に乱れ、懊悩するその心に一片の理解を示し、『違う視点』を教えることも出来たはず―――なのに、アナタがやったことは、全くの真逆だった……それが私は悲しいんですよ」
何故、俺にそんな大きなことを求める。二科で風紀委員だからか、壬生紗耶香が擦り寄った相手だからか―――。
「―――それが誰であれ、傷つき打ちひしがれた者に向ける拳を持たないからこそ……私達は『人間』なのです。
振り上げた拳を振り下ろす時に、そこに『何があるか』を一度は考えなさい。でなければ―――アナタは違え続ける」
それは理想論でしかない、などと返すことは出来たかもしれないが、その言葉には、どうしようもない重みがあった―――そして、『チカラ』を持ちながらも人間としての生き方を捨てたからこその後悔が見えていたのだ。
けれど――――。
「―――アンタに……『俺』の何が分かるっていうんだ!? どうしようもない『俺』なんかに、何故縋る!?縋られたって『俺』にはどうしようもないんだ!! 『俺』には優先すべきことがあるんだ! それを無視は出来ないんだよ!! どうしようもないんだ! どうしようもないことに―――『俺』を巻き込むなよ!!」
いきなりな大声。空気が震えるほどに今までの司波達也のイメージを壊すぐらいに、『感情的』な言葉に誰もが一歩後ずさる。
巌のような十文字会頭ですら圧されたが、衛宮母娘と藤丸は変わらずである……。
「分かりますよ。そして一つ教えておきましょう。私はあなた達の母親―――今は、亡き女性と話したのですよ」
「「!?」」
その事実を兄妹は予想していなかったわけではない。だが面を合わせて言われたことと、話の内容のナーバスさに緊張が走る……。
「そういうカタチに『育てたこと』を、彼女は床につきながら最期まで後悔していました。
如何に、そうせざるを得なかったとはいえ、多くの『言葉』を掛けることで変えることも出来たはずなのに―――せめて『ヒト』としての生き方を言い含めていくべきだったと―――『達也の生き方を縛りつけた』と泣きながら……」
そんなもの遅すぎる。今さらそんなこと言われて―――俺が変わるものか―――。俺は人の世ではどうしても『異端』なようにカタチがあるのだから。
(そうしたのはお袋―――あんただろ!!)
不満が顔に出ることもない達也は、これ以上この場にはいたくなかった。
「―――事件は終わったんです。俺はこれで失礼させて貰います。いいですよね委員長?」
「あ、ああ……けれど達也君―――」
「失礼します」
いまはこれ以上、自分に触れられたくない。一礼をして場を辞する。追いついてくる深雪を感じ取りながらも、自分は冷静ではいないことを深く自覚するのだった……。
† † † † †
「お母さんも言うよねー……」
(アナタのお母さんは、王様だもの)
内心でのみ立華は思いながらジュースを飲むと、娘の言葉に、アルトリアは応える。
「一つごとに執心して他のことに眼を向けないところはかつての
もったいないでしょ。彼ならば、『全て』を変えられるはずなんですから―――それなのに、情愛が向けられる相手のためだけに、その手にある花束を向けるなんて……情が無さすぎでしょう」
言いながら、カフェラウンジでケーキを次から次へと嚥下する母娘に、対面に座る摩利と克人は汗を掻きながらも、紅茶だけを呑みながら考える。
「先程はありがとうございました―――が、先生と衛宮、藤丸は、『司波のやり方』を咎めたんですね?」
「そりゃあんな薄情なやり方をして、恨みが残らないわけないでしょ。まぁアレは殺しても死なないヴァンパイアみたいな気もしますけどね」
不死殺しの武装でイケるか? などと心中で考えながら、ブルーベリーケーキを食べるアーシュラと立華。
その答えに克人は、深刻な話をする。
「反魔法師活動は、当校では許せない―――しかし、彼らが其処に走った原因を理解してあげるべきだった……こちらにいる渡辺や七草から聞かされた、一週間前の娘さんの言動を考えていました」
「日本の魔法師の人口が少ないからこその国是なのかもしれませんが、まぁそれにしてもそこは何とかするべきでした。
『人は城、人は石垣、人は堀、情けは味方、仇は敵なり』
人あってこその国であり集団なのですよ。1と2という区別で人心が離れた集団、調略が簡単に成されるに決まってるじゃないですか、誰も
まるで戦国大名か古い時代の王のような価値で動く人だ。
思わず克人は、己の家の『人の無さ』に嘆いてしまう。
「ですね……七草は、差別意識云々はお互いの心の持ちようだなどと言っているんですが―――それで解決は難しいでしょうね?」
「持つものは持たざるものの『心』を理解できない。魔法は『先天的な才能』によって決まる以上、努力ではどうしようもない壁がある。その意識の壁を取り払うには―――やはり魔法を学ぶ機会を与えることでしょうね」
誰にどのような才能があるかを一目で見抜ける人間は、『今の世界』には居ない。
そしてその教師が少なく、資質も教科書どおりのことしか出来ないのだ。
名コーチであれば名選手が生まれるわけではないが、凡な指導者の元からは、自分で筋を伸ばして鍛えただけの選手が出てこざるを得ないのだ。
それならば名指導者、名コーチが必要なのだ。かつてクロックタワーにて教えることは傑物と称された男のような……。
「ワタシにも『お兄ちゃん』がいればなぁ……まぁそれは『在り得ざる流れ』かぁ……」
「あきらめなさい。その流れは失われたのだから」
アーシュラと藤丸の言葉に摩利と克人は疑問符を浮かべたが、苦笑するアルトリアは構わず話をする。
「二人に話したいのは、以前の司波達也襲撃事件の際のことです。入ってきなさい」
言葉でカフェラウンジに入ってきたのは赤毛の少女。一年の一科生。
エイミィ・明智である。
緊張した表情を少しだけ解せたのは、クラスメイトがいるからなのか。ともあれーーー。
エイミィの語ることは、三巨頭の内の2人の耳目を集めた。
「司波が襲撃される前に、司が接触していた……?」
「ええ、何というか、屋上での監視をしていた時に、1−A の北山さんと光井さんは司波君に注目していたんですけど―――私は違う方を見ていたんです」
「司波に挨拶したあとの司を、か」
頷くエイミィ。それによると、路面にあったルーン魔術の発動と同時に、司 甲が眼鏡を外して司波達也の様子を注視していたというのだ。
「だが、その辺りの時刻の前後の様子は確認したぞ。あんなものが地面に書かれているならば、誰かしら不審な行動をしている人間もいただろう」
風紀委員長・渡辺摩利はそう言って、現場検証は終わっているとしたが、少しだけ魔術師たちは考える。
考えたことで、前後の映像―――特に、司波達也ではなく司が実験棟から出てきたあとの映像にフォーカスしてみる。
「―――なるほど〜こいつは盲点だねぇ」
「勘所が悪すぎましたね。下手人は間違いなくこの人でしょうね」
生徒会のIDを使って、当日の並木道の監視カメラ映像を引き出した立華。特に実験棟から出てきた司甲にフォーカスした映像を見て確信する。
「衛宮、藤丸―――お前達2人だけで納得していないで、俺達にも説明してもらえるか?」
少しばかり不機嫌を患ったような声と言葉に、軽く『失礼』と応える立華とアーシュラ。
「結論から申せば、司先輩こそがルーンを使って第一の襲撃をした人間です。サーヴァントのマスターではないのでしょうが、間違いなく彼が第一の犯行の犯人です」
その言葉に様々な表情だ。
2科生がどうのこうのとまではいかずとも、ここまで高度な技能を隠していたなど、少々信じがたいことのようだ。
「どうやって『これだけのルーン』を用意したんだ?」
「歩く、というよりも靴の
現代では殆ど出会わないが、『冠位指定』の魔術師が行っていた離れ業の一つである。
「そんなことが―――本当に出来るのか?」
「やろうと想ってやるやつはいませんね。力ある『言葉』を刻めるかどうか、それすら力量のうちです」
驚愕した渡辺摩利に平素で返した藤丸立華。
「司の技量はどれほどのものなんだ?」
「まぁ一流には届かずとも、二流の上位ほどはありましょう」
冠位指定の人形師は『特級』ではあっただろう。そんな感想を出すも、脅威判定は出来まい。
だから、あまり『ちょっかい』をかけるなとだけ言っておき、司甲への警戒を少しだけ強める。
エイミィにありがとうと伝えて退室してもらうと、渡辺風紀委員長は顔を神妙にしてアルトリアに口を開く。
「……アルトリア先生は、土曜日―――何かあると想っていますか?」
「戦いが起きるでしょうね。まず間違いなく」
「……穏やかじゃないですね……」
「むしろそうならない可能性を探す方がおかしい。あなた方の心はすでに分断されている。
かつて、『ブリテンという島』を守るために『異民族』を引き入れた魔竜王ヴォーティガーン。
『島に生きる人』を守るために、『異国の王族』を円卓に入れた赤竜王アーサー。
どちらも自分の大切なものを守るために戦い、そして果てる運命を互いに知った。
―――あなた達が守りたいものの中に、サヤカのような存在が一人もいなかった時点で、激突は当たり前で、妙な団体に毒されるのは当然の話だったのですよ」
その言葉の意味を考えるまでもない。無情の限りで不都合な人間を切り捨て、『学舎』にとって有益な人間ばかりを残すのならば―――そうなるのだと。
アルトリアの考えは、 この上なく二人を打ちのめして―――。
「ついでに言えば、土曜日に私とシロウは、百山校長に同道する形で、霞が関の文科省にお呼ばれしていますので、あなたたちだけで何とかしてみなさい。特にアーシュラ、リッカ。
いざとなれば『展開』しなさい―――オルガマリーからもそう言付かっております」
『『―――御意』』
その上で、土曜日に起こるだろう『戦い』において、2人の教師がいないことを少しだけ不安視するのだった。
3年とは別に、2人の一年女子は、『マンドクセー』と考えるぐらいに意識は乖離しているのだった。
そして土曜日の