魔法科高校の姫騎士~Alternative Order~ 作:無淵玄白
深雪、桐原と共に入り込んだ達也は、入り込んだ様子に驚く。
自分たちがアルトリアに次いで図書館棟に入り込むまで、数分程度のラグがあったのは確かだが、既に殆どのブランシュやエガリテの面子は、昏倒されて布のようなもので捕縛されていた。
(殺さず……か―――)
手際が素早いとか言うレベルではない。白兵戦能力は、アーシュラと同じく規格外。そして―――
(現代魔法が効かないマジック・キャンセラーか)
精霊の眼を通しては既に見えないぐらいに、図書館全てが真っ白に塗りつぶされていた。
レーダーをジャミングされて
「お兄様……」
「白布のようなもので簀巻きにされている人間を辿っていけば、アルトリア先生に追いつけるだろう。嫌な目印だけどな」
「その先に壬生が……」
呟くような桐原に特に答えずに、それぞれの方法で駆け出す。最終的に特に何の妨害もなく、3階の特別閲覧室―――その手前の広い廊下にまでたどり着くと―――
そこでは白銀の鎧に身を包んだ美女が、戦国の武者鎧に身を包んだ女子と対峙していた。
前者がアルトリアであり、後者が壬生だ。
「―――来ましたか」
何気ない呟きを聞いたが、状況がどうなっているのかを知りたい。
「壬生! もうやめろよ!! すでに俺みたいな一科生たちは、お前達の得た強さを見た。この身で痛苦の限りで受けてしまった……鍛えれば、先生さえいれば、俺たちと同じになれるんだと分かってしまった―――だから、もう! これ以上……戦わないでくれ……」
流れすぎた血が河となりて、この一高を血染めにしたことは紛れもない事実だ。コレ以上の血を求めれば、それは反感を抱かせ、やがて再びの戦いを引き起こす。
怨念返しの連続が、いずれ取り返しがつかないことを起こす……。
しかし停戦をするには―――醸造された怨讐が濃すぎた。
そんな時に―――
『随分とお涙ちょうだいが過ぎるわね。まぁそんな事しか言えないのが、あなた方の限界。呪文という詩歌を無くして、口舌を使うことも無くしたあなた方では―――この程度……』
鎧姿の壬生の横に、いきなり『ゴースト』と呼ぶしか無いローブ姿の霊体が出現する。
「ようやく出ましたか……」
『こちらには姫騎士ちゃんが来るかと想っていましたが、アナタが来るとは……』
「サヤカにあった『憑物』を落とすには、アーシュラでは少々役不足ですからね。それに―――クー・フーリンの霊基1つぐらいは、倒してもらわなければ困る」
厳しさを感じる言葉。だが、慈しみも感じるその言葉に、壬生紗耶香が少しだけだが震えたようにも感じる。
「どちらにせよ。サヤカを拐かしたアナタは、教師として私が止めなければならない」
そして、怒りを持ってローブ姿を睨みつけるアルトリアの怒気が、魔力と共に廊下を圧倒する。
『私は彼女が求める通りに『チカラ』を与えただけなのですけどね。他を圧倒するチカラを。魔法師としての価値は無くてもいい。魔法師という全能を気取るものに恐怖を与えられるチカラを!! だから与えた―――。英霊の魂の一部……憑依させたるは、源氏四天王の首領『源頼光』またの名を『丑御前』―――鬼殺しの大英雄―――随分と相性良く定着したものでしてね』
「リスクを教えずに、そのようなことをしたのか?」
『言えば―――躊躇ったでしょう。いや、言ったとしても躊躇わなかったでしょうね』
アルトリアとローブ姿の会話は分からない。断片的な理解ではあるが、達也の解釈では、新入生の部活勧誘の際の取りつかれた青葉のように、壬生紗耶香も『よろしくないもの』に取り憑かれているのは理解できた。
だが、それ以上に疑問はある。
「リスクとは?」
「詳しい説明を省けば、生命エネルギーとでも言うべきものを消費する。強力な『魂』を受け入れるには、人間という器は小さすぎるのです。アナタがエモーションを犠牲にして、それを手に入れたように―――『何か』を喪失する」
思わず絶句する達也。母はそこまでのことを話していたことに対することと、壬生の状態に対する危機感とがまぜあわせになる。
目を伏せる桐原、そして関わりこそ少ないが、深雪とて女身でありながら、そんなことをした壬生のことを心配する。
『さて話も長くなりすぎたので、そろそろお暇させてもらいましょう。―――行け『バーサーカー』。貴様の最大戦力で―――眼前の敵をすり潰すがいい』
その言葉で、機械的な印象をもたせる壬生の挙動に『エンジン』が入ったように思える。
つまりは、戦闘をする用意が出来ているということだ。
「―――私がサヤカを抑えます。あなた達は閲覧室へ急ぎなさい」
それが一番合理的な判断だ。壬生紗耶香の立ち回りは、既に大講堂で確認済みだ。魔法を発動する前に『ぞんぶ』と斬り裂かれるのがオチだろう。
だからこそ―――
「先生……壬生を―――お願いします……」
深く一礼をした桐原は、アルトリアの後ろでダッシュをする用意をしていた。同時に達也も深雪も、脚を貯めて解き放つタイミングを図る。
刹那の瞬発―――神速の剣客の一撃轟撃とが廊下全体を揺らしたかのようだ。
壬生の剣が、雷撃で廊下全てを帯電させようとする前に、アルトリアの『魔力放射』とでも言うべき盛大なものが、力尽くでそれを抑え込む。
その一瞬を狙って、三人は真ん中で激突し合う2人の剣士を避けて、横を滑るように駆け抜けた。
後ろ髪を引かれる想いがあるだろう桐原が、一瞬振り向こうとしたが、それでも抑えて向かうこととなるのだった。
特別閲覧室……そこでの策謀がどれだけ進んでいるか、それは分からないが、それでも―――それを止めるのは、自分たちに任されたのだ……。
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「―――『ガウェイン』―――『パーシヴァル』!!!」
「ッ!!! 中々にレアな剣技を使う―――」
音速の戦いの中、『呪文』を唱える姫騎士に対して称賛を与える青い槍兵の言葉。そして姫騎士の攻撃は、剣戟を加えるだけではなくなっていた。
通常、大型の武器は一撃必殺か後の先を狙うものだが、アーシュラの膂力と技量は、両手持ちの大剣に、ナイフ並みの交戦点を与えていた。
強大な質量にモーメントを上乗せし、その運動エネルギー自体を破壊力とするマルミアドワーズという『巨大剣』は、その特性をフルに生かすべく、まるでそのスピードを落とさない。 それはまるでアーシュラの肩口を中心に、剣が勝手に回っているようにも見えた。
築かれる分厚い制空権。制圧領域。如何に克人が鉄壁を誇ろうと、その壁を真っ向唐竹割り出来るだけのチカラを備えているのだ。
「会頭、あれは何でしょうか? 衛宮さんの振るう剣戟の軌跡に応じて何かの魔法陣―――というには刺々しかったり
「あまり下級生の女子をまじまじと見るな。と注意すればいいのか、悩んでしまうな。あとで千代田を慰めておけよ。あれは―――彼女が編み出したクレストウェポン、もしくはクレストアーツと呼ばれるものだ」
「
中条と組で防衛を担っている千代田花音の後ろからの睨みも構わずに、五十里 啓は呆としながら呟く。
「彼女が見事な剣の軌跡を刻むと同時に虚空に『転写』される『魔術』は、様々な効果を生む。今は、攻撃系統の
いつぞやの『夜』の仕儀で教えられた『半端なこと』を教える克人だが、彼も知らないこともある。
元々、アーシュラのクレストアーツの原型は、かつて人理を取り戻した国連機関が、再び直面した戦いにおいて戦線に投入使用された
サーヴァントの攻撃に予めある種の『付与魔術』を掛けておくことで、マスターに頼らない自発的な『補助魔術』を発動させていくことは、過酷な戦い……クリプターと名乗る集団……。
カルデアAチームという『魔術師』のトップランクとの戦いに立つ、最弱の『補欠マスター』を生き延びさせたいとして、カルデアスタッフ一同が首っ引きで動いた末に、マリスビリー・アニムスフィアの設計図(共同研究者 トウコ・アオザキ)を元に開発されたものだ。
当初こそサーヴァントの基本攻撃である『バスター』『アーツ』『クイック』の3つを強化する程度に収まっていたのだが……。
後期には再度、大量に召喚されたサーヴァント達も面白がって、オリジナルのコマンドコードを作り出して、その有り様たるや『混沌』の限りとしか言えなかったりしたのは、残されている記録や証言から読み取れるのだった。
「―――ペリノア―――ペレアス!!」
(飛び道具もあるのか………)
武器の延伸であり、追加攻撃的な要素を持つ紋章だけでなく、巨大なブーメランか鏃のような紋章が離れたクー・フーリンを追撃するが、どう考えても柄から穂先まで鉄以上の硬さで拵えられた槍―――伝承に名高い『ゲイ・ボルガ』だか『ゲイ・ボルグ』を棒高跳びの棒のようにしならせて防御する技量は尋常ではない。
弾かれた『矢の紋章』は、あらぬ方向で爆発を果たしたことで威力を察する……。
「飛び道具は意味が無かったわね……」
「その通り。とはいえ、嬢ちゃんにばかり剣を披露させるのは忍びない―――」
「そんな律儀にならなくいいのに」
「既に獣軍の全てが倒されちまった以上―――クランの猛犬として1つ意地を見せねばな……」
「あら意外。もう少し手間取るものだと思っていました」
軽口を叩きあう超戦士たちの会話で、なんとも上級生をナメた発言が出てきたが、反論するものはいない。
2人の戦いの余波が凄まじくて、その余波がどちらにも優勢を齎した。
とはいえ、余波の影響を受けた幸運の度合いとしては一高側に存在しており、余波という援護攻撃を受けての反撃が決まった末、獣性魔術を解かれた連中は捕縛してある。
一高生がいなかったことに安堵するも、本丸たるクー・フーリンは未だに健在だ……。
距離を取った状態で、油断なくこちらを見るクー・フーリンから眼を逸すわけにはいかない。
(ゲイ・ボルクを使う気?
後ろの連中を気にしつつ、アーシュラは思考を巡らせる。
『飛び道具』ならば、後ろの連中を下がらせるようだが、『至近距離』ならば、幸運を引き寄せつつ『自動蘇生』を開始出来るようにしておかなければならない。
マルミアドワーズを握る手をしっかりとした時に―――。
クー・フーリンの表情に苦いものが走った―――だが、それでも最後にはそれを『了承』したかのように顔を顰める様子だ。
次いで朱い魔槍を天と地に突き刺すかのようにしたクー・フーリンだが、そこから多量の魔法陣が天と地に刻まれる。
(アーシュラ!! いまそっちに行くわ!! 状況を教えて―――)
そんな矢先に、いきなりな念話。しかし、それに応えるには『状況』が変わっていく。
「トリスタン!!」
―――承知!!!―――
肉声での呼びかけ。立華との『混線』を回避したカタチだが、いきなりな声に後ろは驚いたはずだ。あるいは一瞬で50以上もの魔法陣が現れたからかもしれないが、ともあれ―――状況が変わる。
(ごめんリッカ、話の途中だけど―――)
トリスタンが『弓矢』で魔法陣を砕いてくれているが、それでも数十体もの『召喚』は免れないはずだ。
「衛宮!!」
後ろで克人が呼びかける言葉が聞こえるが、答えている暇は無い。
魔法陣から現れたのは―――。
(―――ワイバーンだ!!)
そう返した時に『同行者』が『YEAH―――!!』などとちょっと場違いな返事を返したのだが、ともあれ状況はあまりいいものにはならないのだった……。
何より―――アーシュラの眼が幻惑されていなければ、クー・フーリンが三騎に増えたように見えるのだから―――。
次回考えていること。(予定)
『よくぞこのオレを呼んでくれました!! 姫ぇええええ!!!』
『騎士王、獅子王はアルトリア陛下の称号……。俺は烏滸がましくて名乗れない』
『ゆえに自称ながらも名乗らせてもらおう!! オレの名前は『勇者王』サー・■■■■■■!!』
((相変わらず暑苦しい霊基だ―――だが嫌いではない))by 片目・細目
なお実装されたとしたらどうしようかと思ったりします。(汗)