魔法科高校の姫騎士~Alternative Order~   作:無淵玄白

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第27話『変化する世界』

一瞬にして炎に巻かれた部屋の中、炎を分解して火災を何とかしようとしたが、あまり減少せずに―――。

 

「深雪、頼む!」

 

「はい。お兄様!!」

 

達也の求めに応じて、延焼を抑えた深雪の手際に感謝する。

 

アレだけの炎が回っていた部屋の中から、あらゆる延焼が消え去ると同時に、次にやってきたのは剣の乱舞だった。

 

銀色の複雑な細工が施された実用的ではない剣は、次から次へと上方から降り注ぐ。その剣を防御術で防ごうとした矢先に、銀細工はあらゆる糸に変じて、直立した銀糸か銀の針として降り注ぐ。

 

「むっ!!! ぐっ―――!!!!」

 

「克人さん!!」

 

率先して盾役となった十文字克人に襲いかかる銀糸。リフレクターやファランクスなどの防壁を突破した銀糸は、水に落ちたハリガネムシのように克人の巌のような体を貫いていく。

 

それを見た立華が「開放」して全力で戦う前に……天井をぶち抜いて飛来する黄金龍が出てきた。

 

「アーシュラ!!」

 

いきなりな登場に、立華だけでなく司一も瞠目を果たして―――。

 

「やれ!!!」

 

それでも最大の戦力に奇襲をかける辺り戦力評価は間違えていない。

 

杯から「現れた」白銀の美女たちが、炎を、風を、土を、水を次から次へと叩きつけていく。

 

だが――――――――。

 

それらが、飛来したアーシュラに痛痒を与えることはなかった。

 

「対魔力のスキルか!?」

 

「―――そういうこと! 聖杯のホムンクルスであっても、その魔術はワタシを害することはないわよ!!」

 

「ならば銀だ!!! 無銘・剣! 無銘・爪!!!」

 

アーシュラを最大級の脅威と判断した司の攻撃が着地したアーシュラに向かうも、一切構わずその飽和攻撃を受けた。

 

如何に魔術や現代魔法を無効化出来るとはいえ、飛来する銀糸も銀針も等しく、物理的な殺傷力を持ったもので―――。

 

盛大なまでの土煙が上がる。床をぶち抜いたと思しき攻撃の結果は―――。

 

「中々にいい攻撃だったけど、お生憎様。ワタシを害したければ、もう少し含蓄あるものを放つべきだったわね!」

 

常人では纏えぬほどの量の魔力を身に纏い、それを防御フィールドとしたアーシュラの姿が見える。

 

背中には―――竜翼……それにも見える魔力の翼が放出されているようにも見えた。

 

「……さて、勝機は無いわ。外にいる連中は全員倒しちゃったし、いざとなればユーウェインとトリスタンが増援を倒すわよ」

 

近衛としてのつもりなのか、図書館棟にてアルトリアに拝謁していたギャラハッドという少年騎士が、アーシュラの近くに佇む。

 

絵になる美男美女(ミドルティーン)だが、その様子になんとなく達也は「苛立ち」を覚えた。

 

しかし、そんな風なこちらの心情など構わずに、 戦いは始まろうとしている。

 

「全く持って手前勝手な連中だ……。何故、お前たちカルデア派は魔法師などという人理腐食の根を守ろうとする? お前たちは、いや―――お前たちだから分かるはずだ。この「歴史」は違えているのだと、なのに分岐点でお前たちは……」

 

心底の怒りをもってアーシュラと藤丸を見る司一の姿に、冷笑ではなく微笑を持って答える。

 

「さぁね。「蜘蛛」が居なくなったことで、その動きは加速しちゃったからこそ、責任を取ろうとしているんじゃないの?」

 

「生憎ながら、サンゴ礁にいるコブダイは「サンゴ礁の一部」などと思える非人間性は無いので」

 

その言葉の意味を噛み砕くには、誰もが少しだけ知識不足であった……。

 

「ミスター、アナタのプロフィールはそれなりに知っていますよ。その上で分かった「つもりでの」言葉を掛けさせてもらいますよ。アナタが人類全体のことを考えて行動している、立派な人間だということは分かりますが、その為に―――犠牲にするものは多すぎる」

 

帳尻が合わないのだから終わりだとする藤丸の態度に諦めのかぶりを振りつつ、それでも前を向いた司一氏は、服を脱ぎ捨て奇態な「インナースーツ」とでも言うべきものを晒しながら、口を開く。

 

「並行線、いや平行線か―――所詮、並び立つものは無い……ならば―――」

 

「お互いの譲れないものの為に剣を執るのみ。これぞ乱世の裁定法―――こんな結末なのね」

 

「悲しむこともあるまい。君たちは、「私が認められないからこそ」戦いに来たのだろう?」

 

「私は違う。ほっとけば「壊れるもの」を、わざわざ派手に壊しに来て相手の寿命を延ばしてやる「始末」なんてしない。ここでアナタ方を力づくで黙らせれば、次は違う人間が、「ツカサハジメ」になり、その下に再び「ミブサヤカ」「ツカサキノエ」が生まれるだけ。だから、ここには立ちたくなかった」

 

―――それが、2人が来たくなかった理由か―――。

 

反魔法師活動を違法だとして、「魔法師」が言葉ではなく力づくで黙らせれば、またそういうのは生まれる。

 

連鎖する。人の意思は―――止められない。

それを捻じ曲げた時に、人の意思を、無理やり変えた時に―――。

 

 

―――■■■は目覚めるのだから―――。

 

司一が声を上げる。杯より構成された「ホムンクルス」たちが現象改変を、銀剣をうちはなってくる。

 

その攻撃の苛烈さの中に平然と飛び込む騎士2人。

 

ホムンクルス(人造人間)を殺すというのは、あまりやりたくないのですけどね」

 

「ワタシだってやりたくないわよ。アレはどう見てもワタシのお祖母ちゃん(血縁なし)の似姿だもの」

 

だが、2騎の魔人は炎も水も土も風も構わずに突き進み、杯を砕いていく。

 

女の絶叫を耳朶に残しながら、飛来する銀剣を吹き飛ばしながら斬り殺した後には、司一のみになり―――。

 

無銘のスカカードを、次から次へと発動させていく。

 

必死の抵抗。それを鼻で笑わない。生きる意思、必死な思いでそれを発動させる。

 

生命力を魔力に変えるインナースーツの限界を超える前に―――アーシュラとギャラハッドの斬撃は、カードから発生する黒い剣や槍、爪、斧、矢―――すべてを叩き壊しながら進み。

 

「死なないでよねっ!! というか死ぬんじゃね―!!!」

 

暁光炉心の模造品を付けたインナースーツを粉微塵に刻んだ上で―――。

 

ゴンッ!!!!

 

という音と共に後ろからラウンドシールドで頭を叩かれた司一は気絶する。

 

―――倒れ伏した司一に対する拘束が即座に行われ、これにてブランシュという反魔法師団体の一高に対する事変は終結を迎えたのだった。

 

 

 

その後、語ることは『多い』。結局のところ、反魔法師団体というよりもテロリストじみた襲撃と同時に明かされた魔法大学付属(世間一般の名称)の授業実態は、大いにスキャンダラスなものに書き立てられて、多くの圧力を受けることとなった。

 

まず第一に、一科、二科制度―――。

 

全ての魔法大学付属がこの制度を取っているわけではないが、この制度を採用している一、二、三の高校では激しいマスコミによる攻撃が行われた。

 

そもそも『国立』の看板を掲げておきながら、科によって授業内容や受けられる授業の質が違うとは、どういうことだという話に飛び火した。

 

当然、学校の管理職の任にある人間は、その火消しを行おうと躍起になっていたが、世間一般ではないが、知る人は知るとおり―――

 

―――講師が就いていたほうが魔法師のレベルは高くなる―――。

 

 

そういう理屈が大衆にも『浸透』していただけに、舌鋒は鋭くなり、中々に火消しは上手く行かなかった。

 

これが『私立』の学校法人ならば理解できる話であった。ある種、『特進』や『芸術・音楽コース』などといった『専門家』(スペシャリスト)を養成するためという名目はつくし、授業内容にある種の『違い』が出て当然なのだが……。

 

同じ学費を支払っておきながら、その実は受けられる授業内容が全く違う。挙げ句の果てには、ウィードだのブルームだのということの『実態』が知れ渡れば、火に油は注がれる。

 

『22世紀の岡田更生館事件』

『学習指導要領の逸脱・未履修問題』

 

―――などと言われることになる。もちろん上記のはあまりにも過激な論調だが、ある程度は的を射たものであった。

 

「一応、この学校も魔法指導においては、多くの専科高校と同じく学習指導要領を『文科省』に提出していたそうで、ただそれらが全て虚偽記載。まぁ粉飾ですよね。本当ならば未履修として『あるべき』ところ。『指導員』がいるべきところを『なぁなぁ』で済ませていたんですから」

 

『『『………』』』

 

三巨頭はすでにグロッキー状態だ。ハチミツ漬けのリンゴを摘みながら言う藤丸の言葉は、かなりキツイ。

 

 

「今回の顛末は、別段どこにでもあるような『怨恨』の積み重ねだったわけですね」

 

「………マスコミ対応も随分と効きが悪い―――確かに社会的な義を欠いたものだから対応がキツくなるのも仕方ないが……」

 

 

ここまで酷くなるとは、ただの反魔法師的イデオロギーだけとは言えそうにない。

 

当然、机の対面にいるアーシュラと立華は『答え』を知っている。そもそも、魔法師は全てを『制御』出来るなどと思い上がり過ぎなのだ。

 

 

「百山校長が己の詰め腹切ってでもやろうとしたことが実を結ぶことに期待しましょう。たまには『待つ』ことも必要でしょう」

 

「………アルトリア先生と衛宮先生が文科省に同道していた理由を、お前達は知っていたのか?」

 

「知らずとも察することは出来ていましたよ。あの人の求めることは『親友』の『帰還』。寧ろ、それ以外に手段はないなと思っていたんですよ」

 

 

渡辺摩利は、その言葉に額を抑えて身体を傾けていた。疲れ切った表情をするのを見ながらマンドクセーと想う。

 

 

「まぁいいじゃないですか。2科にも真っ当な講師が就くんですから、これぞ教育ルネッサンス。我々は時代の生き証人、生き字引きとなれるわけですよ」

 

 

他人事すぎる立華の発言に、更に渋面を作る3人。これ以上は例え十師族や有力な魔法師の家の人間であろうと、どうすることも出来ない。

 

舞台装置はすでに『政治的』なものに移ったのだ。

 

当然、国立学校としての資格を剥奪することも出来ず、かといってこれで『なぁなぁ』な決着を着けることも出来ない。

 

魔法大学を出た面子の殆どが『軍』や『研究所』のセクションに就職する以上、そちらからすぐさま講師や教師を就けることも出来ない。

 

魔法師であっても職業選択の自由があるというのは、それなりにリベラルな話だが、今は置いておく。

 

 

「私は、『あなた達』ならば、この状態を、閉塞された魔法科高校に新しい風を吹かせてくれると思っていたのに……」

 

真由美が言う『あなた達』という中には、あの(ヤバい)兄妹も存在しているんだとすれば、大いに見込み違いだ。

あの2人にあるのは、自分たちにとって有益なものだけを残して、ソレ以外を全て排除する―――

 

徹底した排他主義的な考えだ。

 

水清ければ魚棲まずというのを理解しない。

 

軒先に巣を作る蜘蛛は、家に侵入する小虫・羽虫を取る益虫としての側面もあるのだが、あの兄妹にとっては、自分たちの虫の居所が悪い、目障りというだけで殺虫する手合なのだから―――。

 

 

「―――我、地に平和を与えんために来たと思うなかれ。我、汝等に告ぐ、然らず、むしろ争いなり」

 

立ち上がりながら言われたことに、三人は虚を突かれた。

 

「今から(のち) 一家に5人あらば3人は2人に、2人は3人に分かれて争わん」

 

立華の後に言ったアーシュラの言葉に更に虚を突かれたが、それでも続く言葉を聞き逃さない。

 

「―――父は子に、子は父に、母は娘に、娘は母に、姑は嫁に、嫁は姑に、分かたれるだろう……」

 

全てを聞き終えたものの中に、これを理解できたものは―――。

 

「聖書の一節か。主ないし御子の地上への再臨がもたらすものとは『平和』ではなく、『分裂』と『対立』……。正しくこの状況を捉えた言葉では在る」

 

―――十文字克人だけであった。

 

それに応える立華は説明をする。未来の予感を加えて―――。

 

 

「ええ、ルカによる福音書12章49節からの言葉です。結局、他とは違うものが現れても、それが人々の慰めになるとは限らない。

むしろその『メシア』の寵愛を得んと、住まいを共にする家族ですら争い合う。

一つ所に住まうものですら価値観を共有出来ず、誰かが先んずれば戦いは起こる―――」

 

その言葉は痛烈すぎただろう。そして、現在―――魔法師として突出していく3人にとっても分からぬ話ではあるまい。

 

「あの兄妹がもたらすものは、決して『救い』なんかじゃあない。無慈悲な思考放棄と自己防衛だけが達者なんだもの。そんなの人間のやることじゃない。

単純な生存競争だとしても、負けた側を思い返すこともしない。負けた側は思い返すことも出来ないのに、そこにあったものを刻みつけることもしない。人の営みをどれだけ崩したとしても、『俺に噛み付くお前らが悪い』ってだけで終わらせる―――卑劣漢だ」

 

 

「『顔も知らない相手だから殺せる』なんてのは、『人間』として卑劣な行為ですよ。『人間』は、『顔を知っている者とだけ戦う』べきなんですよ。と、いうわけで―――帰らせていただきます」

 

これ以上は、何の益も無い話だ。

 

どう考えたって、コレ以上は何の意味もないのだから。

 

 

去りゆく2人に掛けられる言葉が克人から出てきた……。

 

 

「―――藤丸……お前が望むものとは、なんだ?」

 

「人理の先を見る―――」

 

「―――衛宮……お前が望むものとは、なんだ?」

 

「星の行く末を見る―――」

 

超然とした理解を拒んだ解答を、『あの時』のように迷宮に迷い込ませるように言われて、それでも―――変わらないのだなと思えた。

 

 

克人には関係ない。そういう態度がある種の仲間はずれ―――起こった事変と合わせ鏡の似鏡だと思えていても。

 

彼女らは変わらないのだ……。

 

校門前で戦うマスター藤丸に指揮された、『円卓の騎士』のサーヴァント3騎。

 

それと相対する霊基違いのクー・フーリン3騎の姿―――それと4騎目のクー・フーリンとそのマスター……彼らはまだ生きているのだと分かっていても、容易に手出しは出来ないのだと克人が悔しさで拳を握りしめていても―――。

 

 

 

『―――最上の結果だったでしょう。アナタがある種の分解術を使ったのも、特に何も言われなかったのでしょうし』

 

「そうですね。ですが、殆どのブランシュ構成員たちは地下に潜り込んだと思われますが?」

 

アジトに乗り込んだ時に、司一以外のブランシュのメンバーがいなかったのは結局の所、彼がブランシュの『解散』を命じてメンバーたちに好きにさせたからだ。

 

一方は一高の襲撃に加担をして、最後まで暴れまわって被害を拡大した。

 

一方は下野して一市民になるなり、別組織に転向したとも思われる。

 

最後にメンバーの好きにさせたというのは、司一なりの『残務処理』『債務整理』というところなのだろうか。

 

それが『魔法師』ひいては『四葉』の利益に繋がるかといえば、全然そんなことはないのだが―――。

 

『放っておきなさい。それとも達也さん。そんな『小者』をネチネチと『眼』で追跡してまで殺したいの?』

 

一応、どんな人間であるかは押収した資料から分かっていたがゆえの『予防的行動』を咎める真夜に、一瞬だけ怯んだ。

 

「―――いえ、そこまで陰湿ではありませんので」

 

『ならばいいですよ。向かってくるというのならば、叩けばいい。ただ鉄火を以て向かい合えばいいだけ』

 

「分かりました」

 

結局の所、当主である真夜がそれを望まないならば、特にやることもあるまい。だが、あの『シグマ』とかいう男―――自分と同年ぐらいだろう男は深雪に銃を向けたのだ。

 

許せないと想うも―――どうしてだろうか。あの男に勝てるというイメージが出せないのだから。

 

『では、あとで今回の事件に関して詳細な資料提出を、葉山さんにお願いしますね。それと、アーシュラちゃんと『コウマ・クドウ・シールズ』との関係を探っておいてください』

 

前半部分よりも後半部分に重きを置いた真夜の言葉に変な気分を覚えながらも、今夜の通信は終わる。

 

そして、何故『コウマ』という男に叔母が拘り、そして……アーシュラが男と付き合っていたという事実に、今はとてつもない苛立ちを覚えるのだった。




というわけで、入学編終了です。

色々とはしょった部分もあるんですが、長々と戦闘を増やすのもあれなんで、カットするべきとこっろはカットした形です。
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