魔法科高校の姫騎士~Alternative Order~   作:無淵玄白

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第36話『魔法科高校生の驚愕』

 九校戦。そのレセプションパーティーとでも言うべき懇親会は、それなりに緊張した空気を持っていた。

 

 緊張した空気と共に喉を通るものは飲み物だけというのが、大半―――そんな中、三高の一年エースは1人の美少女……『美しき雪女』に目を奪われたあとに、何となくその空気と熱を振り払いたくて何かを腹に入れようとした時には―――。

 

「ジョージ、この辺にあったローストビーフサンドはどこに?」

 

「ああ、それならばあっちの娘に全部食べられちゃったよ」

 

 ジョージこと吉祥寺真紅郎は親指で座ることが出来るテーブル席を差す。

 

 そこにいたのは、三高の同級生たる一色愛梨と同じくハーフだろう金髪の女子であった。

 

「あっちの娘?―――、一高生か……―――何なんだ……。あの牛飲馬食の勢いの娘は?」

 

 普及の名作少年漫画『DB』の主人公一派(主にサイヤ人)、同じく名作である『海賊王』を目指すゴム人間の食いっぷりのごときものを見て、先程の司波深雪を見たときとは違う衝撃が一条将輝に発生する。

 

「あの子は、衛宮アーシュラって子だったはず。さっきの司波さんと同じく一高の1年生―――確か、クラウドとボードの2種目に登録しているはずだよ」

 

 三高の参謀役でもある吉祥寺は、すぐさまピックアップしている有力選手の1人だとして、友人に告げた。

 

 エミヤ―――という姓に引っ掛かるものはあったが、とりあえず思い出せぬ将輝は、その食いっぷりに対して感想を述べる。

 

「才色兼備ならぬ爆食完備といったところか……」

 

「上手いこといったつもりだろうけど、全然うまくないからね将輝」

 

 そんな感想を出した後には、衛宮アーシュラは同級生だろう男子と数言言葉をかわす。その言葉は少しだけ、話しばかりをしていた三高男子にとって痛いものだった。

 

「母ちゃんに怒られた気分だ……」

 

「俺もだよ……」

 

 バカ話をしていた男子勢に混じり、衛宮アーシュラの被害にあっていないホテルシェフの料理を御馳走になるのだった。

 

 そうこうしていると―――三高の一色愛梨とその取り巻き2人が、衛宮に近づいていく。

 

 

 気付いたのか、スパゲッティを頬張っていたリスのような顔をしたアーシュラが呑み込んだあとには、隣にいた女子と同時に――――。

 

「「エリセ―――!! カリーン!!!」」

 

 と―――さらりと一色を無視して他校の女子の元へと赴くのだった。

 

 その様子に少しだけ同情しつつも、まぁとりあえず腹を膨らますのだった。

 

 

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「聞いていないよ。2人が魔法科高校に入学しただなんてー」

 

「まぁ……色々あってね。それは私だって同じだよ。お互い、もう少し連絡は緊密に取るべきかな?」

 

「エリセの『お婆ちゃん』が、それを許してくれるならね」

 

 パーン! と笑顔でハイタッチしあったアーシュラとエリセは、そんな言葉の応酬でお互いの近況を話し合う。

 

 その一方で―――。

 

「で、アナタはいまだに『家出』続行中ですか?」

 

「いや、それは『おまいう』すぎねーか、リッカー? ちゃんと『家』には言っておいたさ。出雲で修行するって。立華みたいに、衛宮のご家庭に半ば寄生している人間には言われたくないぜ」

 

 ケラケラ笑うカリンに対して、呆れるように肩をすくめる立華は語る。

 

「そりゃ私はアーシュラのマスターだもの。カルデアの一員としての責務もある。それに―――衛宮家のお食事を知れば、そうしたくもなる」

 

「それは全く同意だ―――」

 

 苦笑し合いながら、立華とカリンが割と剣呑なことを話しあう。とはいえ、事情を全く知らない面子には、その会話は意味不明すぎただろう。

 

 そして――――。

 

「「で、ボイジャーはいつもどおり元気?」」

 

「だいじょうボイ!」

 

 『だいじょうV』のつもりなのか、ピースサインをしながら『ふんす』と鼻を鳴らしながら言う金髪の少年にアーシュラと立華は笑顔を浮かべる。

 

 久々に会って色々と聞きたいことや、『今後』起こるだろうことに関しては、今は聞けない。

 

 何に参加するかぐらいは聞こうとした時に―――。

 

「女子四人に男子一人の集まり―――邪魔する形だが、いいかね?」

 

 やってきたのは一高の親分。顔見知りがやってきたことで、あの東京での夜を駆け抜けた全員が挨拶を果たす。

 

「おや? モンジさんじゃん? おひさでーす♪」

 

「居ないとは思ってはいませんでしたが、お久し振りです十文字さん。ほらボイジャーも挨拶」

 

「ひさしぶりだねカツト」

 

 十師族の嫡男に対して物怖じせず、久々に会った知人に対するフレンドリーな態度に、全員が『何者?』と耳目を大きくする。

 

 それに対して克人も特に拘るものもなく答えつつ、疑問をぶつけることにした。

 

「ああ、久しぶりだ。ボイジャーが六高の制服を着ているということは……選手登録しているのか?」

 

「そう。いまのぼくは六高のいだいなる戦士。みんなのためにも『Stop The One』をやらせてもらうよ」

 

 ストップ・ザ・ワン……一高の三連覇を食い止めるためのスローガンは、一高以外の全校が抱いているものだろう。それゆえに克人は、『ボイジャー』という規格外がやってきたことに緊張を隠せない。

 

 そんな様子にアーシュラも立華も苦言を呈する。

 

「探りに来たのに逆に呑まれてどうするんですか?」

 

「むっ……それを言われると少々辛いな」

 

 ヤクザよろしく威嚇混じりのあいさつ回りをしていたというのに、『人工衛星』の凄まじさを知っているゆえにか、克人は呑まれてしまったのだ。

 

 そんな克人を叱咤するためにも―――。

 

「本当に探りに来たのはエリセのバストサイズですか?」

 

 ―――味方撃ち(フレンドリーファイア)を実行するのだった。

 

「ぶっ!!」

 

「……まぁお互いに年頃になったとはいえ、エロスですね克人さん」

 

「いやマテ、違うぞ宇津見くん。確かに君の体を慮ってはいたが、そういうことじゃない」

 

 バランス良く豊かに育った胸を抑えつつ、半眼で十文字克人を見ながら後ずさるエリセの姿に言い訳をする克人だが、最後には咳払いをして元凶を嗜める。

 

「衛宮、イタズラがすぎるぞ」

 

「『アーシャ』が来た時に、彼女にしたい子とか親しい女子の1人もいないのは、カッコがつかないでしょ? そのためです」

 

「結果的に失敗しているがな……」

 

 溜息を突いて、そういうことならばお前や藤丸でも良くないかという思念(プシオン)を克人から感じたが、普段から男っ気を出していないアーシュラと藤丸では―――アーシャを騙すのは無理である。

 

「なんだ。そういうことならば、エリち。モンジ先輩に協力してあげてもいいんじゃないか?」

 

「まぁ、そういうことならば……克人さんの家の車を事故車両にした上に幽霊車にしてしまいましたからね……」

 

「いや、本当にそういう気遣いは結構だ。それだと、俺が車の代わりに身代を要求している大変下劣な男になってしまうだろう―――ただ皆、あの頃より成長しているんだなと感心したよ」

 

 そんな克人なりの人生の先達としての言葉に―――――、

 

 

 一同(ボイジャー含め)、二歩ほど後ずさるのだった。

 

 人知れず悲しみを溜め込む克人だが、ともあれ話は続く。久方ぶりに会えた女子たちとの話は、何やかんやと楽しいものだから……。

 

 

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 ・

 

 などという、十文字克人のどこの恋愛SLGの主人公だと言わんばかりのハーレムっぷりに、真由美としては不機嫌を覚えてしまう。

 

 確かに、達也に代わり六高の女子と『顔見知り』である克人を送ったわけだが……。

 

「全く親分なのに、巌なのに、我が一高の屋台骨で竜骨的存在なのに、あんなに口角緩ませて。イメージって大事だと思うのだけど」

 

「まぁ、あんな十文字も一高では見られなかったからな。本当に、あの宇津見ってミニスカート改造制服の娘に気があるのかもな」

 

 祝ってやれ、応援してやれという渡辺摩利の言葉に素直に頷けない―――。

 

「十文字は教えてくれないだろうからな。お前に聞きたいんだが、藤丸はどんな呪文を唱えたんだ?」

 

「……そんなに知りたいの摩利?」

 

 正直言えば、あまりにも下世話な言動だと真由美は思えたのだが、摩利は摩利で少しの危機感を持っているのだ。

 

「他者が投射した魔法式を『簒奪』して、『違うもの』に変えるだなんて、あまりにも『異質』すぎる―――場合によっては、ヤツは何の同意もなしに、相手を支配できるのかもしれない」

 

 魔法式の簒奪からあまりにも飛躍し過ぎだが……とはいえ、真由美もそれなりに調べた。調べたのだが―――。

 

「藤丸さんが唱えたのは『メイオール』という一言のみ――――そして私が調べた限りでは、『メイオール』というのは……」

 

「というのは?」

 

 続きを促す摩利に対して、ぐいっとアップルジュースを飲んだ真由美は告げる。

 

 メイオールという単語がネット検索の『サジェスト』で出してきたもの。それは―――。

 

 

「……『消毒液』の名前なのよ」

 

「―――えっ?」

 

 友人の言っている意味が分からずに、問い返した摩利だが、嘆くように再び言う。

 

「どの検索エンジンでも出てくるのは、消毒液のみ。神話や伝説と絡めた検索をしても、出てくるものは全然だもの……」

 

「消毒液の名前が魔法の呪文、か―――まさかお前、『本当』にそう思っているわけじゃないよな?」

 

「まさか。けれど……今の所は―――そんなものよ」

 

 魔法師界の名士たちが続々と登壇していく中、小声での会話―――高校生としてはマジメとは言い難い2人の会話は続いていた。

 

 その名士たちの大半は真由美も知っていた。忌々しいことに父との取引相手も多かったのだが……ともあれ最後の登壇相手は真由美も然程知らない相手。

 

『九島烈』であると紹介されて―――壇上に上がるのは、ドレッシーな装いの女性だけだった。

 

 しかし真由美の『眼』―――会場の空間全体を歪ませる精神干渉が放たれていることが分かり―――後ろにいる老人を見たあと……。

 

 次の瞬間には、空間全体のエイドス改変を『粉々』にするほどの『豪風』が吹き荒れて、魔法が全て砕かれた。

 

 ―――誰がやったかに関しては、一高生『全員』が理解していた。

 

 会場全体に改変を齎したのが老人であるならば、それを紙切れのように砕いた存在は老人以上である。

 

「やれやれ、まさか息吹一つ(ブレス)で老人のイタズラを諌めるか―――『赤き竜姫』には、困ったものだ……」

 

 そんな悔しげなつぶやきがマイク越しに会場に伝わる。女性の背後に老人の姿が見える。

 

 恐らく老人としては、もう少し遅く登場する予定だったのだろうが、『フーディーニ』の腹部を殴ってネタ潰しと彼自身を殺した『ジョセリン・ゴードン・ホワイトヘッド』の関係のように―――早期の登場をせざるを得なくなっていた……。

 

「諸君、私が―――九島烈だ」

 

 その少しだけ落胆したような言葉に真由美は同情しておくのだった。

 

 

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