魔法科高校の姫騎士~Alternative Order~   作:無淵玄白

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第42話『天下分け目の関ヶ原(偽)』

 

2日目の夜―――九校戦の全ての面子を集めた一高が貸し切ったホテルの会議室―――空気は重い。沈痛と言うに相応しい。まだ『勝負』が決まったわけではないのに、完全にお通夜ムードであることが、立華・アーシュラとしては嘆息せざるを得ない―――。

 

 

「明日も戦いが続く中、急遽の招集をして申し訳ないわね。中々に予定違いが出てきているから。まぁ……敗戦の弁なんて聞き苦しいとは思うけど―――聞いてもらうわ」

 

七草会長の言葉から始まった、今日の『予定外』の敗北に対する弁だが―――。

『敗軍の将は兵を語らず』とはなれないのが、魔法師という人種である。

 

結局の所……。

 

「十文字……お前の敗因は何だ?」

 

渡辺摩利の言葉に対して、十文字はいつもどおりの口調で答える。

 

硬質な言葉が紡いだものは―――。

 

「ボイジャーに対して俺の力が優れなかった。単純な『力負け』だ」

 

その言葉にいっそうざわつきが広がるも、録画された十文字克人 VS 宇津見ボイジャーの映像を見れば、それは納得せざるを得ない。

 

それは―――アーシュラと克人の戦いを思わせるものだが、それとは、ちょっとばかり違う。ファンシーな王子様ファッションのボイジャーが振るうおもちゃのようなサーベル。

 

CADではなく『コードキャスト』でもなく、どちらかと言えば英霊武装(weapon)に近いものだ。

 

薔薇の華を思わせるサーベルが振るわれる度に、ファンシーな魔法攻撃が披露される。

 

金色の星―――スターアタック。綺羅びやかな星の魔力体が、様々な形で克人の氷柱に襲いかかる。

 

ディフェンスに関しては、サーベルを振るうことで『対星結界』が氷柱全てを覆う。

 

そしてその結界―――円環する銀河を思わせる。

星の渦が氷柱を包み込んだ時に、克人はそれを突破する術を失った。

 

「私の場合は、十文字君が負けたことを知った動揺もあった。そこを付け込まれる形で、六高のカリンさんにしてやられたわ……」

 

「三位は取れたんだ。達也君、ありがとうな」

 

「いえ、自分は特に何もしていませんので」

 

ベスト8にて散った十文字克人の情報が流れてきた時の、クラウドでの真由美の様子は、普通ではなかった。

だからこその、達也なりに落ち着きを持たせたことが勝因となった。

 

だが、何にせよ色々と予定違いが出てきているのは間違いなかった。

 

「……六高なんて完全にノーマークだった。一条と一色を有する三高が対抗馬だと思っていた所に、これだからな……」

 

「………十文字君は宇津見ボイジャーの実力を知っていたの?」

 

渡辺摩利の言葉を受けて七草真由美は、十文字克人に声を掛ける。

腕組みしながら目を瞑っていた克人は口を開く。

 

「ああ、知っていた―――そして正体を知りたいだろうから言っておくが、端的に言えば彼は『英霊』だからな。魔法師や魔術師だのという括りには無いんだ」

 

その言葉に最大級のざわつきが広がる。英霊―――その分け身たる『サーヴァント』の実力は、4月の一件で肌身どころか骨身に痛いほど刻まれている。

 

「いや、それは―――『いいのか』?」

 

動揺しきった摩利に対して、再び嘆息しつつ口を開く。

 

「事実、彼は魔法科高校の生徒として修養をして、この大会に出る資格を得ている。まさか体をひん剥いて、人間であるか否かの証を立てろなどと言えるのか?」

 

委員会に申し立てをするとしても、立証責任はこちらにこそある限り、それは不可能な話だ。

 

『人型の使い魔』というものが持つ力を軽視していた、現代魔法師の敗北である。

 

「―――まぁ傍目には、中条先輩と同じく発育不良な少年にしか見えませんからね。仕方ないですね」

 

「立華さん。ボイジャー君はどういう英雄なんですか? 四月の際に見たケルト神話のクー・フーリンとは……なんていうか、違いすぎて」

 

クー・フーリン(狂)を見て、その情報量を知った瞬間に失神した中条あずさは、それとは真逆の何とも……可愛らしい姿のボイジャーが、あれと同類だとは思えぬらしい。

 

ただ、それはエリセからすれば、契約違反だと言われそうだ。だから立華に言えることは少なかった。

 

「まぁ詳しいことは、エリセとの『契約』から言えませんが、ボイジャーの正体は、クー・フーリンのような神話系統(マイソロジー)のものとも、史実体系(ヒストリア)とも言い切れませんが、まぁ星々を往く英霊とだけ言っておきましょう」

 

「サン・テグジュペリの―――『星の王子さま』とかですかね?」

 

「そう見えます?」

 

「こんな感じだったらばなぁ、とは思いますけどね……」

 

自分と同じく『ちびっ子』組として親近感を覚えている中条あずさだが、正体は『無機物』と知ればどうなるのか。

 

(まぁヘルメス・トリスメギストスでも信仰していそうな中条先輩ですから、もしかしたらばとは思いますが)

 

どうでもいいことだが……。

 

「ボイジャーはこのまま明日に、男子ピラーズの優勝を決めるでしょう。そして、六高のプリンセス・ガード『新人戦』の部に、ボイジャーが登録されているということは、まぁそういうことでしょうね」

 

「……正直言えば本戦モノリスにまで出てこられたらば、どうしようかと想っていたが……」

 

六高の目的は『一高潰し』(クラッシュ・ザ・ワン)。だが、これは戦略の常道だ。

 

結局の所、魔法師が如何に常人とは違うとはいえ、当たり前のごとく感情を持ち、様々な言葉を交わす『人造人間』たちだ。

 

つまり、相手チームの柱を叩き潰すことで、希望の芽を持たせない。

野球における四番バッターの役目が、敵のピッチャーをマウンドに沈めることにあるならば、ボイジャーもカリンもその役目を全うしたということだ。

 

「……アトランティス(ロストベルト)の状況に似ているわね」

「軍師系のサーヴァントでもいるのかしら?とはいえ予想出来たことでもあるわ―――」

 

アーシュラの小声での言葉に返した立華であるが、案外予想できたことだ。

 

事実、鈴音と克人に意見具申したわけだが、まぁ登録した競技から考えるに、あまり考慮してもらったわけではないのだが。

 

「そういえば、藤丸さんはこの事態を読んでいたフシがありましたね?」

 

今更に思い出した鈴音が問いかけてきたので、立華は答える。

 

「まぁそうですね。三年間も競技種目に変更がなくて、登録選手にも変化がないならば、六高にエリセたちがいなくても、どこかしらが三巨頭を『凹まし』に来るだろうとは想っていました」

 

その言葉に少しだけ静まり返る議場。しかし、それは『あり得ない』ことだと想っていただけに、寝耳に水だった。

 

三巨頭を筆頭に現在の一高三年生には、かなりの力が備わっている。それを覆すほどの道理など……あり得るのだろうか。

 

「私が一番に危惧したのは、『三高』の一条将輝だか一条マサキリトだかが、本戦アイスピラーズに出てきて、克人さんを倒しに行くことだったわけです―――ですが、それに対して克人さんは言いましたよね?」

 

「ああ、『一条は俺とは戦わない』―――成程な。確かに慢心だ―――」

 

「ええ、十師族のある種の談合的な思惑が見透かされたんですよ」

 

「克人さんの家は土木建設会社なんですから、そういうのは不味くないですか?」

 

この大会において十師族の力というものにケチが着くのが嫌で、例え『同じ者同士』での戦いでも、負けた方が侮られるのはマズイと考えた『暗黙の了解』こそが、この事態の核心にある。

 

「生臭いことを言えば、『下請け』『孫請け』に関して仕事を回す上では、『そういうこと』もあり得る。ビジネスの世界とは『弱肉強食』だけでなく、『持ちつ持たれつ』というのもある―――が、そこを狙われたわけか……」

 

「そういうことです。ですが、一条家がリングから降りた時点で終わっていたはずですが―――まぁボイジャーはそこに来たわけですね」

 

結論を述べれば『油断・慢心』していたところに、ガブリとあの星の子は噛み付いてきたわけだ。

 

顎の力・獲物を噛みちぎるという『力比べ』では、陸上水上どちらでも覇権を狙えるアリゲーターが、時にジャガーに喉笛を切り裂き噛みつかれて、そのまま絶命・好餌となるようなものだ。

 

その贄として『七草・十文字』が選ばれた。そういうことだ……。

 

「どの道、『余程のこと』が無い限りは、選手の競技種目の変更は出来ませんし、古式に倣えば『賽は投げられた』ということです」

 

無策ではあるが、ソレ以外に方法はないのだ。

 

どの道、現在の様相は『混沌・乱戦』の類。六高のダークホースの様子に、他校が猛追をかけてくるのは目に見えている。

 

それでも勝とうとするならば……。

 

(この空気は良くないと思うんですよねー)

(同感)

 

若干、冷めた思考をしていた2人を呼んだかのように……。

 

「空気の入れ替えが必要だ―――」

 

そういう風に呟く司波達也を認識しつつも、本戦三日目はどうなるやらと思うのだった。

 

 

九校戦三日目。

本戦男子ピラーズに出場していた一高選手全てがボイジャーに潰されたことで、女子ピラーズと男女バトル・ボードの決勝戦までの日程が組まれている。

 

「お前はバトル・ボードの女子でいいのか?」

 

「観戦するのが、って意味ならばそれしかないじゃない。千代田さんはワタシのことキライだし、かといって渡辺委員長の試合を見ていなければ、あれこれ言われそうだしね」

 

成程と思いつつも、立華がいないことが気がかりだ。そうこうしている内に、渡辺委員長の準決勝レースはスタートする。

 

一高、三高、七高が争って戦う形式。

 

当然のごとく一高が優位だが、昨日の結果から空気に妙なものを感じる。連日の波乱で金星を落としてきた一高にとって、この空気はマズイ。

 

「委員長が呑まれることは無いだろうけど、ある種のホームタウンディシジョン的なものは形成されているよね」

 

「判官贔屓があるのか―――まぁ球場の雰囲気で左右されて、ストライク、ボールの基準が変わるわけじゃないから大丈夫だろうが……」

 

アンパイアが居なくても何かはあるか?

 

達也が、そう想いながらもレースは予定通りにスタートする。

 

一昨日の如く軽やかにしなやかに―――はたまた荒々しく駆け抜ける水上のマーメイドたちの戦いが刻まれていく。

 

大歓声に構わずに駆け抜けるマーメイド達の中で抜き出たのは―――。

 

「渡辺委員長がリードしているな。七高を大きく引き離して、三高を『かなり大きく』引き離している」

 

「海の七高とか言われても、ここは陸上の淡水。潮流もなければ波風も殆ど立たないならば、ヴィヴィアンの意地悪さえなければ委員長が勝つに決まっている」

 

アーシュラに言われてみれば、確かにその通りであった。海と川ではかなりの開きがある。『水の七高』で無かったことが、不幸の始まりか。

 

「もしかしてお前は、その事も織り込んでいたのか?」

 

「当たり前。海には海の道が。川には川の道。湖には―――湖の道がある―――知っている? 四川は重慶の川。嘉陵江を源流に遡って牽く船引きは、急流・浅瀬などの要害をものともせずその筋肉(マッスル)で引いていたんだから」

 

モーターボートなど『人力』以外でそういった難所を遡っていた時代を語られて、少しだけ興味を引く。

そう考えると人力での船引きと変わらぬのが、バトル・ボードのような競技なのかもしれない。

 

「例えサイオン活動が、それらの機械的な馬力を擬似的に発揮したとしても、使うのが人間である以上は、そういった道理からは逃れられない。それだけ」

 

「―――お前がCADに関して一家言ある理由が良くわかったよ。確かに……そう考えれば……自然の機運を逸脱するだけの機械式術構築が、『道理』に沿わないことも理解できた……」

 

エコロジストというほどではないが、アーシュラの言っていることが最近になって分かってきた。

だが、それを認めることが『何故か』出来ない。

 

魔法技能がある人間全てに簡便な魔導器を与える……その人間には、技能の上下などほとんど皆無。確かにそれならば、1科2科だのという区別は要らなくなる。

 

本人に足りない部分は機械などが補う。『そうであるべき世界』が理想のはずなのだ。

 

『それ』をお前は成し遂げるべきだ。そうアーシュラは、無言で詰っているのだ。

 

「………お前は俺に対して厳しいな」

 

「甘やかしてほしいならば、深雪ちゃんにどうぞ。ワタシは、アナタが嫌いだから」

 

「「―――」」

 

アーシュラの素気ない言葉に、深雪とほのかが硬い表情を見せた時に変化は起こる―――。

 

「ん?」

 

最初にそれに気付いたのは、アーシュラであった。エメラルドのような翠眼が見抜いたものとは、七高のオーバースピードである。

 

明らかに制御を逸脱している様に、気付いて何かのトラブルかと思う。

 

「―――水精が暴れている……よろしくないものが機械に紛れ込んでいるか」

 

「あのままだとフェンスに激突するぞ―――」

 

「問題ないでしょ。委員長ならば対処出来るわ」

 

「―――え?」

 

ビッグトラブルの予感を感じて、渡辺摩利はボードを制動させる。リードは開いているし、既にカーブを曲がった段階。

 

しかし、無視することも出来ない人情ある彼女は、七高選手がふっ飛ばされ、フェンスに激突することを予測出来たので……。

 

『バナナの皮で止まってもらうか』

 

そんな嘆くような言葉でCADを操作しつつ、他にも『違う術式』を構築するのだった。

 

そして、構築された術式が水面を操作して―――水の大玉が出来上がる。表面に水が循環しているところからしても、かなり高度なものだ。

 

「衛宮さん! あれって!?」

 

水の大玉は、いつぞや部活歓迎会の際に、マグダラの聖骸布を用いてエアバッグを作り上げたものと同様。

 

気付いたほのかが言うが、アーシュラは何も言わず、ただ結果だけを見届けた。

 

進路方向上にそんな奇っ怪なものが出来たことで驚いた七高選手と、その後ろに居た三高選手が驚くが、制動を効かせられない七高選手は―――。

 

「助けてやるから、恐れないで突き進め!!」

 

止めていたボード上から声を掛けた摩利の言葉で意を決して、それでも眼を閉じた七高選手が大玉に突っ込む。

 

瞬間、入り込んだ七高選手が大玉の中で揺蕩う様子が見えた。そのままでは息が出来ないはずだが、どうやら『呼吸』が出来ることから察して、ただの水ではなく水中でも自発呼吸が出来るように操作されているようだ。

 

恐ろしく高度な術だ。魔術世界では強化一つだけでも、水中素潜り『ワンアワー』程度は軽く出来るとのことだ。

 

もっとも、本人の術力……端的に言えば魔力量次第とのことだが……。

 

だが、七高選手はそういうことではないようで、大玉の中に捕らえた摩利もそういうことをやったわけではない。

 

理屈は分からないが、ボードに掛けられていた術が解されて態勢を取り戻した七高選手は、今度こそ海の七高の字名通りに、人魚のような遊泳で玉の頂点から顔を出した。

 

「あ、ありがとう渡辺さん!! けれど、これを解除しないと!!」

 

「ああ、構わないな!?」

 

「どうぞ――――!!!!!」

 

三高の水尾選手が、『流石』に近づいてきていることを認識した短い大声でのやり取り。それを終えた後にはボードを手にして玉の底面にまで反対に泳いだことを認識した摩利は、水の大玉の解除をした。

 

「ま、まずい! 三高の人がもう30mもない距離までやってきている!!」

 

「……アンパイアは何をやっているんだ?」

 

「事故であるか、はたまた意図した通りだったのか、そういうことじゃない?」

 

「アレをアクシデンツだと認識出来ない可能性もあると?」

 

「むしろ直接干渉的な妨害行為だと取る可能性もある」

 

アーシュラの言葉にいくら何でも邪推が過ぎると思う一同だったが、ともあれ七高選手は手をあげてリタイアをジャッジに申告。プールサイドに上がる様子だ。

そしてレースは続けられていた。先程とは異なり一進一退のレース攻防。

 

「何か渡辺先輩の調子、悪くありませんか?」

 

「そうだな。あの種の術の効率が良くないからなのか、それとも……原因は推測できるか?」

 

「現代魔法的な感覚は分かんないけど、魔法師のサイオンでも可能なぐらいにダウンサイジングしたわよ。けれど、それでも不調になったのならば―――アクシデントを起こした七高の選手の『勢い』『干渉力』(パワー)が強すぎたとか、そういうことかもね」

 

つまり、あの七高選手を暴走状態に陥らせた原因は、摩利に『必要以上の力』を要求させられるほどの『何か』があったということだ。

 

恐らくそれは『物理法則』の世界ではなく、何か『違う世界』の原理であろうと、昨日の真由美の戦いから達也は察した。

 

ともあれレースはデッドヒートを繰り返して。結局のところ僅差で渡辺先輩が勝ったとしか見えない、アングルの違いで三高の水尾佐保もそう見える場面はあるのだが、それでも渡辺先輩の方が有利。

 

なのだが……『協議中』という電光掲示板の表示が出る。

 

「映像では渡辺先輩の方が勝っているのに―――まさか、アーシュラの懸念どおり!?」

 

深雪の言葉に考える。いくら何でも、そんな不可解極まるジャッジを下せば審判団に対するブーイングが起こる。

 

ボードの上に座り込みながら激しく息を突いている渡辺摩利の様子―――三高の選手も、眼を伏せて無言だ。これで進出しても『試合に勝って勝負に負けた』であろう。

 

 

『―――長らくおまたせしました。審判団による協議結果をお伝えします』

 

10分後、会場アナウンスに伝わるは髭面の男―――魔法大学の関係者だろうかという男がマイクを手に話す内容だ。

 

要約すると……。

 

・七高の選手は何かしらのアクシデントによってフェンスに対するクラッシュ寸前であった。

 

・原因は調査中。

 

・その上で、一高 渡辺摩利の行動は、人道上の観点から魔法による直接干渉とは言えない。

 

・場合によっては、三高選手にも何かしらの影響も出ていた。

 

・よって一高の決勝進出を認める。

 

・しかし、三高 水尾佐保選手も何かしらの救護活動をしていたと見られて、ボードの静止状態を維持していたので、状況からして例外的に決勝進出を認める。

 

そういう協議結果であった。

 

「三決はどうするのかしらね?」

 

「タイム差で決まるか、もしくは第二レースも2位までを通過させるか―――どっちかだろう」

 

アーシュラに言いながらも達也の考えでは、恐らく後者が採用されるだろうという推測が為されていた。

 

ボード上で握手し合う2人のマーメイド達を見ながらも、アーシュラは椅子から立ち上がっていた。

 

「何処にいくんだ?」

 

「委員長の様子を見に行く。完全回復させるのはちょっとフェアじゃないけど、『あれ』はいくらなんでも『無いわ』」

 

「――――――」

 

アーシュラの言葉で渡辺委員長の様子を見ると、腕を押さえているのが確認出来た。

つまりアーシュラは、委員長に『起きたこと』が分かっているようだ。

 

「俺も行こう。少々気がかりだ」

 

「お兄様、私も―――」

 

「いや、次のレースの出走は五十嵐先輩だ。ほのか1人でというのはマズイだろう?」

 

その様子(2人は不満顔)を見ていたアーシュラの視線が鋭くなる。

 

「………」

 

「だったらば、『アンタが残れ』と言わんばかりの視線を向けるなアーシュラ」

 

「面白くないわよ。きっと見たくないものも見る」

 

「それでも、俺とお前は風紀委員のコンビだろ?委員長の見舞いぐらいは同道するさ」

 

そんなやり取りをしてから、一高一年風紀委員コンビは観客席から去っていくのだった……。

 

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