魔法科高校の姫騎士~Alternative Order~   作:無淵玄白

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注意

タイトルにラブリーかつこないだ宝具レベルをあげることが出来たタマモの名前があるが、特に関係はない!!(爆)

逆境ナインに被せただけのタイトル―――。

適切なタイトルが浮かばない……これが、これが―――逆境!!!

逆境とは!? 思うようにならない境遇や不運な境遇のことをいう!!

そんな訳で―――島本語録を引用しつつ、新話お送りします。




第43話『逆境タマモナイン』(前書きに注意あり)

―――2人の後ろ姿が見えなくなると同時に2人は呟く。

 

「……達也さんは、衛宮さんのことが好きなのかな?」

 

「そんなわけがない―――と断言したいのですが……」

 

基本的に達也はかなり『狭量な人間』だ。いわゆる自分に好意的ではない相手は冷遇するというか、どうでもいいとする心根の持ち主で、転じて妹である深雪にも害を成すような人間には更に冷たい―――のだが……。

 

アーシュラは心の底から司波達也を嫌悪している。

 

口先だけでのツンデレ的な嫌いではなく、本当に人間として、その人格を認めない態度なのだ。

 

これでアーシュラの全てが司波達也より劣っているというのならば、それは小物のやっかみ程度で終わっていたかもしれないが。

 

深雪にとっては『残念なこと』に、アーシュラの全ては、達也と深雪を上回る。

 

達也の推測と八雲の話によれば、『分解魔法』とてアーシュラには通じない。つまりは最強の兄にとっての天敵。

 

だからこそ、いずれは自分たち『兄妹』の害になるんじゃないかということで、警戒をしていた。

 

……そうであったはずなのに……。

 

士郎先生もアルトリア先生もそうだが、彼らは自分たちの在り方を『卑劣』と断じてくる。

そんな風な『立派な大人』が周囲にいなかっただけに、かなり心が痛かったのだ。

 

害を成すわけではなく、『お前のやり方は間違っている』と断罪しに来るやり方に―――深雪は、少々腹立たしい一方で、人間としてはそちらの方が正しいのだと理解していた……。

 

「まぁ、お兄様は自分を慕う人間には無条件に好意的ではあるから、いずれはアーシュラみたいな、お兄様に厳しい評価を下す女からは自然と離れるわよ。そして、お互いに男女としての好意とかは無いわね」

 

「そ、そうだよね! 流石は深雪!! 妹として分かってる発言ありがとう!!」

 

そんな訳で、美少女2人はそうして納得した。 そんなガードが緩くなっていた2人を狙って、他校の男子が声を掛けようとした時に―――。

 

「司波、光井―――同席しても構わないか?」

 

「じゅ、十文字会頭!? ど、どうぞ!! 先程まで衛宮さんと達也さんが掛けていた椅子ですけど」

 

「ならば失礼する。二人掛けの椅子というものが見つからなくて、少々難儀していたところだ」

 

いきなり現れた巨漢の上役の登場に、光井ほのかは恐縮しながら先程までいた人間の名前を差しながら、木下藤吉郎よろしく温めておきました(間違い)と指差すのだった。

 

「―――……?」

 

だが、生徒会役員として、それなりに上役の立ち位置を知っている深雪は、ここに十文字会頭がいることに少々怪訝な想いであった。

 

そして、それほど関わりのない光井ほのかとも話を弾ませる『軽い男』系の十文字のキャラ変に面食らいつつも、彼の登場で、周囲に居た他校のナンパ男子が退散したのも事実なのだった。

 

どういうことなのかは分からないが、ともあれ深雪はそのフォローを受け入れつつ、五十嵐亜実の疾走の準備が整ったようだ……。

 

 

 

礼装起動(プラグ・セット)。砂漠に満ちよ。恵みを満たせ。『イシスの雨』―――第二礼装起動(プラグ・セット)―――『応急手当』(リカバリィ)―――」

 

ウェットスーツの右腕―――切り裂かれて素肌を見せていた、渡辺摩利の『右腕全体』に蟠っていた黒々としたサイオン―――いや、治療をしていた立華曰く、忌々しく言う『わっるい魔力』とやらと、腕の『人面瘡』のようなものが消え去ったのだった。

 

「た、助かった。ありがとう藤丸」

 

痛みが無くなったのか、ほっと胸を撫で下ろした摩利に特に答えず、治療に使っていた『星』を全身のアクセサリーに戻した立華は、アーシュラに次の指示を与える。

 

「アーシュラ。『調律』してあげて、演奏曲は任せる」

 

「分かったわ。委員長―――出来れば眼を瞑って音に集中してください」

 

「う、うん―――」

 

借りてきた猫のように大人しくなっている渡辺摩利が眼を瞑ってから、アーシュラの手の中にあるヴァイオリンが弾き語られる―――。

 

知りうる限りでは基本的なヴァイオリンの保持姿勢。体を揺り動かしながらも出る音は見事なものだ。

 

不心得者が弦を弓で弾こうものならば、最高に耳障りな不協和音が出るというのに、一度たりともアーシュラにはない。

 

そしてその音には、一昨日の夜の幹比古を揺り動かした『チカラ』があった―――。

 

摩利の復調をするために集まった面子の調子が『ついで』で上向くほどに、見事な曲目は何なのかは知れない。

 

それでも立ち向かおう。前を向こう。諦めない―――そういう『敗北からの勝利』を望むものが感じられた。

 

……所詮は美術的感性が皆無な達也の所感なので、合ってるかどうかは分からないのだが……。

 

ともあれ―――弾き終わる(フィナーレ)と同時。ほぼ同時に眼を開けるアーシュラと摩利。

 

「――――――ありがとう。と素直に言いたいが、ここまでしてくれていいのか?」

 

頬をポリポリ掻きながら赤い顔で困ったように言う渡辺摩利に対して、バイオリンをアッド(しゃべる小箱)に戻したアーシュラは言う。

 

「アスリートとしては、フェアではないでしょうね。ですが、委員長を襲った『感染呪術』は、体力と魔力を奪って成長を果たしていましたからね。奪われた分を補填しただけだと想いますけど」

 

時々出る―――人を突き放すような冷たくて乾いたアーシュラ。通称ドライアーシュラ(命名:達也)になりながらも、その言葉はちょっとだけ優しさを持っていた。

 

「つまり?」

 

問い返す摩利に対してアーシュラは、前髪を上げながら言う。

 

「―――優勝を決めてきてください」

 

「――――ああ! 任せろ!! チャンピオンベルトは私のものだ!!」

 

人を乗せるのが上手いな。そうアーシュラに感心しつつも、飛び込んできた大事(だいじ)。五十嵐亜実が、五高のクラッシュに巻き込まれて大怪我というもの。

 

眼には見えない様々な不安・恐怖が一高テントを包もうとした瞬間。

 

「落ち着け! たとえ多くの艱難辛苦が立ち塞がろうとも、我々は多くの修養と先達の技を見て、かつ『冥獄のデスマーチ』を越えてきたのだ!五十嵐のトラブルは私が取り戻す!! 今は事象をあるがままに、冷静に、論理的に認識して―――自分のできることをやるべく動け!」

 

右腕(・・)を振り上げて、戦女神のように声を張り上げる

 

「ま、摩利さん!! 一生ついていきます!!」

 

治療の邪魔だとして、アーシュラに二度の平手でふっ飛ばされた千代田花音……両頬がアンパン○ンのように膨れているが、声がくぐもりながらも、起き上がってそんな言葉で思慕を伝えている。

 

それを皮切りに、テント内に動きが出る。

 

そんな中、全員に気付かれないようにアーシュラと立華は―――テントの中に居た『十文字克人』と共に出てしまって、達也もまた摩利のCAD調整を任されてしまい、2人を追うことが出来なかったのだ。

 

(見事な退場と見るべきか、はたまた逃げと取るべきか……会頭との逢引と見るか、微妙な所だな)

 

三番目は一番あり得ないと分かっていても、なぜだか、ちょっと嫌な気分にはなるのだった。

 

結果として――――。

 

その日の本戦バトルボード決勝は準決で勝った三名による巴戦となり、優勝を決めたのは一高・渡辺摩利であった―――。

 

 

 

「つまりアレは、『アナタ達』にとっても予想外だと?」

 

『―――』

 

「ふん。確かに生き延びてしまった神秘の側の片肺としては、少々手助けしたいのですが……アナタ方との不可侵条約にも抵触する。しかも―――ここにはあなた方が人蛭と同じく、蛇蝎のごとく忌み嫌う『人造人間』(異端者)どもが多い。全員一律ではないが、あなた方が十大研究所の連中を血祭りにした上で、磔刑に処したことを恐怖している『ニンゲン』たちは多いのですよ」

 

『―――――――――』

 

「まぁその辺りで手打ちでしょうかね。あなた方の邪魔立ては致しません。ええ、どうぞ善き―――主の御心にそったお勤めをなさってください」

 

その言葉を最後に立華が見ていた画面から話し相手は消え去り、立華の話し相手は、頭の上に妖猫を乗せた金髪の姫騎士になる。

 

「どうやら極東に逃げ込んだ死徒は、あり得ざることに『水』の属性を持っているようです」

 

「水魔スミレ、霧の死徒ルヴァレ……まぁいないわけではないけど、そこを使うのね」

 

「或いは、それに類する使い魔を所有している五十嵐亜実への『ちょっかい』の根本も、その辺にありそうね」

 

「けど、あの感染呪術は別口?」

 

「恐らく、ね。あの手の術は、ちょっとしたところにいけば幾らでも手に入るからね。CADにでも細工しといて、特定の打鍵やある種の術式を使えば、そうなるように細工は出来るわね。遅効性のトロイってところね」

 

「CADの中で白い馬巨人が暴れまわってるのね」

 

「そういうことね」

 

「フォフォーウフォフォフォ(特別意訳:デジタルワールドはキミ達の隣にある)」

 

2人と1匹が納得し合ったところで、明日から新人戦ということで寝ようとした瞬間―――端末に連絡が入る。

 

呼び出してきたのは、七草会長であった……。

 

無視するのはアレだなと想いつつも、無視したい想いで―――結局行くことにした。

 

こんな時間―――もう快眠安眠スヤリスト生活になりたいところだというのに、だからこそ居並ぶ面子の中に司波兄弟などがいたことに―――。

 

((うげぇ))

 

と、内心でのみイヤな想いをするのだった。

 

おくびにも出さない態度で会長の薦められるままに席に掛けて話を聞くに―――大怪我をして、裾野病院に入院している五十嵐亜実の出場する予定だった『本戦ミラージ・バット』に、誰を出すかということだった。

 

現在の状態は『一応は一高がポイントで有利』だが、下にいる『六高の隠し玉』次第ではどうなるか分からないという状況だ。

 

得失点差とか現在の状況とか―――話の流れからして、特にアーシュラと立華がいる意味は無さそうだったのだが……。

 

「私達は、当初は衛宮アーシュラさんに五十嵐さんの代役をと思っていました。入院している彼女も、深雪さんとアーシュラさんならば……アーシュラさんをという話でしたが」

 

「ワタシに気遣いなく。ボード部部長であるミス・五十嵐には、まぁ適役を選んだといっておけばよろしいかと」

 

「そ、そう……」

 

「それに、アーシュラにはジェネラルから妙なペナルティが課されています。そして―――『ブリテンの騎士』として、『フランク王国の騎士』から挑まれて、応えないわけには行かないわよね?」

 

「トーゼン。まぁあの子、本戦ミラージに出るらしいけど、そっちよりもクラウドで戦えた方がいいでしょ」

 

アーシュラのにべもない返答に七草真由美が戸惑うが、畳み掛けるようにマスターである立華が、『戦う理由』を与えることで、異論は封殺された。

 

分かりあった受け答えだが、上役たちはあまり納得していない。何故、そこまで深雪を代役にしたがらないのか?

 

「それはトーゼンよ。アーシュラ。私も五十嵐先輩も、ほのかもスバルも―――渡辺委員長も―――アナタに勝てなかったんだからっ」

 

「深雪……」

 

悔しげに声を振り絞った深雪であったが―――。

 

「がんばって〜」

 

「ア、アーシュラ……!」

 

気楽に返されて涙を溜めながらも、反論しても冷気を当てようとしても、息一つでカウンターされてしまう理不尽があるので、何も出来ず。

 

ぐぬぬ顔をしていた深雪に対して、アーシュラも言葉を返す。

 

「別にアレもコレもやらされても、ワタシの体は一つしか無いの。ウチの母親みたいに『ノウダラケ遺伝子』よろしく、『数多のアルトリア』なんて出来ないのよ!!! プレジデント武内のアルトリア・マジックなんて出来るかっ!!」

 

「い、意味は良く分からないけど、納得せざるを得ないものが、今の言葉にはあるっ……!」

 

勢いあるアーシュラの言葉に後ずさった深雪だが、それに対して再び言葉が叩き込まれる。

 

「第一、アナタ最後の練習の際に言っていたじゃない。確か、い、イーエルティー(ELT)の飛行魔術の器具が司波君の手で完成した暁には、ワタシにも33−4で勝てるとか」

 

 

「「「「「「――――――」」」」」」

 

誰の会社がエブリリトルシングだ。というツッコミを入れる前に、アーシュラの暴露に全員が絶句するのだった。

 

巌のような会頭ですら、表情を完全に凍らせて沈黙してしまったのだから……。

 

その衝撃たるや、察して有り余るものがある。

 

「も、もしかして達也君! 飛行魔法をミラージで披露するつもりなの!?」

 

「つい最近発表されたばかりなのに、随分と早くに落とし込めたものですね―――」

 

「キミもキミの妹も規格外だとは想っていたが、まさかそんなことを考えていたとは、恐れ入る……」

 

会議室にて、興奮しきりの上役たちに詰め寄られて戸惑っている中―――。

 

「お前達、如何に防音がしっかりしているとはいえ、現在の時間を考えろ。そして――――」

 

十文字会頭が、そんな言葉で窘めてきたが、最大に言いたかったことは……。

 

「―――衛宮と藤丸がすでにいなくなったぞ」

 

全員が絶句してしまうほどに見事な逃走を果たされてしまったのだ。達也と深雪に先輩方が集中していたのは、時間にして五分もなかったと思うのだが……まさしく早業であった。

 

 

「も、もうちょっと話したいこともあったのに……」

 

会長の少しだけ子供っぽい言動を耳にしながらも、次に口を開いたのは十文字会頭であった。

 

「司波、今日の五十嵐のアクシデント、同時に五十嵐と渡辺に関連した四高と七高のCADトラブルなどの原因は分かったか?」

 

正しく、それこそが2人に問いたかったことなのだが……。

 

「いえ、五十里先輩と解析を行い―――級友の吉田と柴田にも見てもらったのですが……」

 

「だろうな。コレ以上は時間の無駄だろうから、やめておけ。

奴らが言っていたよ。『細菌しか見れない顕微鏡で、ウイルスの正体を見ようとするようなものだ』とな……」

 

その言葉で、今回のアクシデンツに関して、あの2人は既に『何か』を知っていることが理解できた。理解できたからこそ―――教えてほしいのだが……。

 

「ともあれ、明日から新人戦だ。特にアーシュラは午前一発目のボードだから、もう寝せてやれ」

 

「……分かりました。では俺たちも失礼します。お休みなさい先輩方」

 

「はい。お休みなさい。明日は馬車馬のごとく働いてもらうわよ♪」

 

その言葉に苦笑をしてから、会議室を辞する達也と深雪だったが――――。

 

「申し訳ありません。失言でした」

 

「いや、いいんだけどな―――、ただ……」

 

よくそんな深雪の捨てゼリフを覚えていたもんだ。と、少しだけアーシュラに感心してから、明日はどんな『とんでも』を見せてくれるのかと、少しだけ楽しみにしておく――――。

 

 

……例え 雫のシューティングとバッティング(時間が重なっている)ことをド忘れしていたとしても、その時の達也は、そんな感情を抱くのだった。

 

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