魔法科高校の姫騎士~Alternative Order~   作:無淵玄白

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第45話『戦いの爪痕』

競技を終えたらば、アレコレを終えて、とりあえず一高の選手などが集まるテントに集合。そういったことをしつこく言われていたアーシュラは、ウェットスーツの上からジャージを着て、競技場から出ていく。

 

その途中で―――。

 

 

「「アーシュ姉!! カッコよかったー!!!」」

「アリサ! マリカ!」

 

小学生高学年程度の女子2人。顔見知りである少女に呼びかけられ、捕まり応対することに。

 

 

「もっと早くに来ると思ったのに、どうして初日から来なかったの?」

 

「色々あるけど、やっぱり『知っている人』の試合を見たほうが面白いかなーって♪ あとお父さんとお母さんが、患畜の緊急応対と出産間近の牛の世話があったから」

 

「どんな生物であれ出産は一大イベントだから、良太郎先生はドクター・ドリトルも同然かな?」

 

 

黒髪を撫でてマリカに言いつつ、そういうことならば仕方ないかと思うアーシュラ。アリサの方の理由は何となく理解できていた。

 

何も言わずとも苦笑するアリサにアーシュラも苦笑しつつ、元気そうで何よりだと思う。

 

 

「姉さんの次のレースも期待しています―――けど、十文字さんから聞いた限りではアイスピラーズっていう種目にもエキシビションで出るとか」

 

「そこまでのお金は無いからなー……」

 

少しばかり暗い顔になる2人のJS。ここに来るまでの交通費や旅費などを、『本来』ならば、アーシュラも立華も出そうとしたのだが。

 

遠上夫妻は、それを『やんわり』と断ってきた。如何に招待されたとはいえ、年齢としては『ハイスクール』の女子から、そこまでの贔屓をもらうわけにはいかない―――大人としてのプライドがあったのだろう。

 

 

とはいえ、夏休みに遠出出来ないということに不満を漏らし、両親のように魔法に対して禁欲的に生きてはいない茉莉花の『駄々』を融通する上での妥協点が―――『アーシュラちゃん、立華ちゃんの試合分の交通費と旅費は出す』。そういうことなのだ。

 

 

「ううむ。ワタシから出してもいいけど、絶対分かっちゃうよねー」

「ええ、叔父さんも叔母さんもそういう所は厳格ですから……」

 

 

アリサの母であるダリアが『魔術協会』で取った『特許料』ならば、それなりにあるのだが、それでも、無闇矢鱈と使えない―――。

 

そんなアリサの気持ちを察するものが現れる。

 

 

「そういうことならば、俺から出そう」

 

女子3人の会話にいきなり入り込んできたのは、保護者役として2人のJSに付いていた十文字克人である。

 

「えっ、そこまでしてもらって……いいんですか十文字さん?」

 

 

奢ってもらえることに何かの『下心』を感じるアリサ。同時に茉莉花も少しばかり警戒心を持つ。

遠上家と十文字家の関係にも少しばかり踏み込んだもので、アーシュラとしては、『仏心出しすぎだ』と内心でのみ言いながら、克人の耳を抓りたい気分だった。

 

 

和樹(父親)から『どこまで』を許されたかは分からないが、随分な接触にアーシュラは、どうしたものかと考える。

 

 

「お二人の保護者はあんまりいい顔はしないでしょうが、私なりに2人に―――特にアリサさんには、頼っていただきたいんです」

 

その言葉にアリサは少しだけ弾かれた気分だ。もしや、という表情が全てを物語る。

 

 

「克人さん」

 

その言葉で諌めるも、時既に遅しだろうとアーシュラは感じた。自分の失策を恥じる。

 

だが許してくれよ、などと言ってくる克人に諦めつつも……。

 

 

「衛宮、一旦2人をホテルに送ってもらえるか? 俺はテントに行って、七草と話し合わなければならない」

 

「―――分かりました『十文字先輩』」

 

 

返す言葉でのアーシュラの硬質な対応に、克人も少しだけ呻いたが、このぐらいはいい薬だ。

とはいえ、いいタイミングでの分断だろうと思いながら―――2人を伴って宿泊先ホテルに向かう。

 

克人の背中を時折振り返るアリサの背中を擦りながら、大丈夫、と元気づけることは忘れない。

 

 

「アーシュ姉、十文字さんって、そのアリサの……」

 

「流石にマリカは察しちゃうか……ダリアお母さんのこととか遠上家のことを」

 

「以前、死んだ母が言っていたんです。私の父親は偉大な魔法師だったって……それじゃ克人さんが―――――」

 

 

今は離れさせておいて正解か間違いだったかは分からないが、落ち着く時間は必要だろう。そう納得していたアーシュラだったが……。

 

 

 

「―――十文字克人さんが、私の『父親』だったんですね」

 

 

「どわ―――!!! なんでアーシュ姉、何にもない所でズッコケてるのさ―――!!!!」

 

 

予想の斜め上を行く『解答』に、聞いていれば、流石に『会頭』もズッコケていたに違いないと思うアーシュラ。

 

 

「い、いや、あのねアリサ―――ああ(・・)見えても、克人さんはまだ17、8歳だからね?

自分の年齢を考えて、もう一度よーーーく考えてみなさい?」

 

よろめきつつ立ち上がりながらアリサに言うが、本人としては、それで納得していたらしい。

 

 

「けど色々投薬とかやって、無理やり『精通』した上で―――やだアーシュ姉さんってば、そんな『装甲悪鬼村正』(FULL METAL DAEMON)な出自が私だなんて、考えたくなかったのに……」

 

 

「ええ゛――……」

 

やだわこの娘、耳年増などと思いつつも、マリカだけは何となく察して耳打ちをしてくるのだった。

 

 

「けどさ。何というか十文字さんってハンサムとは言い難いよねー……ちょっとアーシャのお父さんとしては認めづらくない?」

 

 

かなりヒドイことを言う茉莉花を嗜めるように、アーシュラは言う。それは流石に、昔からの付き合いとして言わなければならないと思えたからだ。

 

 

「どう考えてもアリサはお母さん似だけどね……まぁ克人さんのフォローをするならば、男の価値なんて、面の良さだけで決まりゃしないわよ」

 

 

「「おおっ、オトナ!」」

 

 

「本当の男の価値なんてのは、そこじゃ決まんない。男だったらば、背中(せな)で語って、背中(せな)で泣く。黙して語らず―――その背中の広さで背負うべきものを背負ってこそ決まるものよ。2人だって分かるでしょ? 良太郎先生が北海道に生きる畜産農家の人達の為に背負っているものが」

 

 

その言葉に、茉莉花もアリサも照れてしまう。

 

遠上家は数字落ちの家で、当主である良太郎の考えもあって魔法を捨てた生活をしていたが、それは意固地で意地腐れな考えも根底にはあった。

 

 

だが、どれだけテクノロジーが社会を簡便にしたとしても、最後に必要になるのは人の手だ。

 

 

社会には、どんな人間であれ不必要なものなどない。どんな形であれ、誰かは社会に、世界に寄与しているのだから……。

 

本人がどんな気持ちであっても、その全てが誰かにとって必要なのだ。

 

だから――――。

 

 

「賢しく口先だけが回って、小狡い考えで、人を悪辣な落とし穴に落として、おまけに自分だけは人がましい顔で世の中に幅を利かす。そういう男気無さ過ぎるクソ野郎に比べれば―――克人さんの方が男気溢れてるわよ。男女の区別なく『人』を見る目を養いなさい―――でなければ、悪い男に引っ掛かるわよ」

 

 

そんな風に、いつになく『男』に関して勢いよく語るアーシュラに対して呆然とする2人であったが―――気づく。

 

 

「もしかして、アーシュ姉! そんなクソ野郎(わるいおとこ)に言い寄られたりとかしたの!? だったら許せないよ!!」

 

 

「聞いている限りでは、あまりいい人格では無さそうですね。人格の良し悪しが能力の高低に繋がるわけじゃないんだけど―――そんな人……ちょっと認められません」

 

 

「いや、言い寄られてはいない。ソイツってば、自分の能力が通じない相手は、即座に『自分と妹を害するものだ』とか言う、小心者で小者でネズミのように肝が小さい男だから。本当に男の風上にも風下にも置きたくないぐらいに―――まぁ、関わり合いになりたくないんだけどね……」

 

 

関わらざるを得ない。その結論に、内心でのみ諦めを付けてから、こんな暗い話題は切り上げるのだった。

 

 

「それじゃ、ホテルに荷物とか置いてきたらば、色々と観戦した方がいいよ。他にも楽しいことが多そうだからね」

 

宿泊先のホテル。そこまで荷物運びをしてくれたアーシュラに感謝をしながらも、聞くべきことを聞いておく。

 

「立華姉の競技は今日で決勝まで終えるんだよね?」

 

「そう。私のバトル・ボードは準決勝・決勝が明後日で決する形だね。他に登録しているクラウド・ボールは、明日で決勝までのプログラムを終えるけどね」

 

 

その言葉に、かなりの『過密スケジュール』だなと感じる2人ではある。それに更に言えば、ピラーズのエキシビションまで組まれているとか―――。

 

 

「悪い男に負けないアーシュ姉ならば大丈夫!! ペンドラゴンの『チカラ』を私もアリサも分かっているから!!」

 

「ガンバってください! ブリテンの姫騎士―――スラブ人の血がある私では、激励は少々お門違いですけど……」

 

 

そんなことはない。そんなことを気にするな。そういう意味で、アリサの髪をわしゃわしゃと撫でる。

きゃー♪という嬉しい悲鳴を聞きながらも、番犬ならぬ『番猫』を2人に付けておくのだった。

 

 

『フォーウ』

 

「「フォウ君だあああああ♪♪♪」」

 

 

色々と危険な生物がアイドルも同然に扱われるのはどうかと思うが、2人にとって気に入りならば、これといって言うこともあるまい。

 

―――その出会いの興奮が、自分の時とは段違いで嫉妬を覚えたとしても。

 

別れの挨拶をしてアーシュラは、一高の敷設したテントに赴くのだった。

 

(少しばかり遅れちゃったからなー。まぁ克人さんが理由説明してくれているでしょう)

 

そう信頼を寄せておくのだったが、どうなるか分からない……。

 

そんな風に背中を見せて嘆息しながら、駆け抜けていくアーシュラの姿を見ながら茉莉花とアリサは思う。

 

 

「キライ嫌い大嫌いという感情だけとはいえ……」

「アーシュ姉さんが、あんなにまでも男に関して深く語るなんて、ね……」

 

 

結構な異常事態ではないかということを、馴染みの妹分2人は感じて―――アーシュラが語るその『卑劣様』が、どんな人間であるかを少しだけ興味深く思うのだった。

 

『フォーウ』

 

 

遠吠えをあげるネコだけが知っている『事実』。それはまだ語られないものであった……。

 

† † † †

 

 

「お疲れ様でーす」

 

 

そんな言葉でテントの中に入り込んだアーシュラは、真っ直ぐに電子的なホワイトボードに向かっていき、自身の成績を入力して、諸用を済ませる。

 

全員が動いている。その一方で視線が自分に集中するのを感じる。居心地の悪いものというほどではないが、何か変な空気だ。

 

喉を潤すために、自動配膳機を動かして緑茶を出す。熱々のそれは夏場だからこそ意味があるのだ。

適当に椅子に腰掛けて端末を動かそうとした時に、対面に座るはグリーンのジャケットを羽織った七草会長。

 

何用かと思う―――。

 

 

「アーシュラさん。予選突破おめでとう」

 

「ありがとうございます」

 

「おめでとう……そう素直に言いたいんだけど」

 

「ど?」

 

 

何だというのだ。なぜタメを作る必要があるのだ。そういう悪感情が生まれた―――瞬間……。

 

 

「「「「なんだって『観戦をするな』なんて言ったんだ―――!!!!????」」」」

 

テント内にいた一高の面子全てから大合唱で文句を付けられるのだが。それはアーシュラにとって的外れだった。

 

 

「そうは言っていませんよ。別に見たければ、ゲスト案内ついでの克人さんや1−Eの吉田君、みづ―――柴田さんみたいに見に来れば良かったじゃないですか?」

 

そんなことかとでも言うように、緑茶を飲みながら語るアーシュラに、真由美は圧される。

 

「け、けども今日の朝食の席でアーシュラさん。そんな風に言っていたってのに」

 

「解釈の違いですよ。結局、私は術式のアシスタントであるデバイスも使わなければ、触媒も必要としないわけですからね。

でもって私と開始時間がバッティングしていた北山さんならば、担当エンジニアである司波くんのワザマエごと北山さんの実力も見れるんですから、どっちが、『学ぶもの』が多くて『見応え』があるかは―――瞭然じゃないですか?」

 

 

そう言われて、アーシュラは『来るな』とは言ってはいないことに気付く。ただ単に、自分の試合などつまらないのだから見ないほうが良いという進言をしただけなのだ。

 

だが、ちょっとばかりズルい言動な気がする。確かに摩利や技術スタッフなど含めて、アーシュラがどういう走りをするかは、何人かは知っていた。

 

だから、そんなものを今更見ても仕方ないとする心情は分かるのだが……。

 

 

「実際、北山さん凄い戦い方じゃないですか。はー…『射撃競技』なのに『範囲爆撃』でクレーを発破するか。相変わらず考えることが斜め上だねぇ。弓兵(アーチャー)のクラス適正持ちとしてはちょっと納得いかないものがあるけど、まぁ『勝てばよかろうなのだぁー』ってところか」

 

 

端末を開いて先程の試合の様子を見ているアーシュラの言葉。あっさりと画像加工もされていない試合の様子を看破するアーシュラ。

誰もが興味を抱く。どういう目をしているのか、と。とはいえ、今はアーシュラに対してどう言えばいいのかを悩む。

 

 

「次の光井さんの試合はちゃんと観ればいいと思います――――ううん?」

「ど、どうしたの―――って、え?」

 

 

アーシュラの怪訝さの原因。それは大会側からの緊急アナウンス。そんな表示が一斉に全ての九校戦系列の端末に出ていたのだ。

そして告げられた内容は―――予想通りアーシュラに対する狙い撃ちも同然の内容であった。

 

確かに大会側が、ルールブックが、『こうだ』と決めたならば、それに従うのが選手、プレイヤーではあるが……。

 

要約すればバトル・ボード新人戦第一試合の一位があまりにも、『早すぎた』ので、ここからの予選と準決勝を二位まで通過させていき。

 

決勝戦は四者による巴戦となる―――。

理由としては、競泳競技などのような予選タイムによる足切りでなかったことによる『今回の弊害』を解消するためである。

 

つまりは、第一レース出場 七高の浜田(ハマーD)などは、他のレースでならば一位通過が出来た可能性を考慮してのジャッジ―――そういうことだ。

 

 

「流して走れば良かったわ……平凡な走りでも予選は突破出来たもの」

 

今回のジャッジに対するアーシュラの言動に、テント内にいる一高関係者全員が微妙な顔をする。

確かにアーシュラはやりすぎた。だが、全力を尽くさなければ、それはそれで色々と勝負ごとに対する侮辱に繋がる。

 

出場する前のアーシュラの言動を誰もが思い出して苦渋に歪む、だからこそ真由美は言わなければならなかった。

 

 

「そういうこと言わないでほしいわ―――アナタのせいだなんて思ったとしても、それでもこれは『僥倖』だと思うべき―――斜に構えた発言はしないで、ムードが悪くなるから」

 

「そう気楽に言えてる内はまだいいでしょう。ただ、今後どうなるかなんて分からないでしょうよ」

 

 

『ハナハナの実の能力者』を追い出す連中のごとくなるかもしれないという言を読んだらしく、目を吊り上げて腕組みしながら真由美は口を開く。

 

 

「私をあんまりナメないでよ。確かに『ルフィ』のように大物とは言い切れない、小さなことにグチグチと拘る小物かもしれないけど……それでも『出場選手のせいで苦労しました』だなんて弱音―――誰が吐くもんですか! 私が一高の会長なのよ。例え下にいる家臣の人心全てを集められる神君家康公ほどでなくても、出場選手が快く戦えるだけのことはやっていくつもりよ!―――覚えておいてアーシュラさん。約を違えば私を平手で殴っても構わないわ」

 

 

その長広舌の言葉を聞いたアーシュラは、少しだけ不貞腐れるようにしてから口を開く。

 

 

「………そうであることを願いますよ。七草会長」

 

そんな言葉のやり取りを最後に、テント内は通常通りになる。

 

何とも緊張感と緊迫感を持ったやり取りの後には、レギュレーションを確認して、とりあえず決勝までの試合数が増えることだけはないということをアーシュラは再認識するのだった。

 

 

(目下の敵はエリセか。そしてエリセは、光井さんと同じ出走かぁ……)

 

 

エリセの能力に対して光井は非常に相性が悪い。何せ彼女こそ冥府の(ともがら)。本質的には―――闇だ。

 

光すら飲み込む闇の前では、全てが無意味。そしてエリセの闇は『水』の属性を持っている。

全ての『いのち』は『海』より発する。日本における国産み。

 

混沌をかき混ぜた……神話では混沌を大地と称したが、大地もまた海より生ずる―――転じて『闇水』(えんすい)

 

だが、それを言うことは出来ない。フェアな勝負を心がければだが。

 

 

(あー……リッカめ。完全に流してやがるわーワタシもそうすれば良かった―――)

 

 

だが、予選シューティングにおける藤丸立華の技を見た周囲の反応は決して、アーシュラほど気楽に言えるものではなかった。

 

得点こそ87点とアベレージに比べれば高いが、それでも他に比べれば低い。

 

だが気付くものは気付いた。この女が一番ヤバい敵なのだと……。

 

 

 

「くそっ! 2位通過なんてお情けで予選を通るだなんて、屈辱よ!」

 

「落ち着け浜田(ハマーD)!」

 

「そうよ! 一高の衛宮にリベンジするチャンスが来たと思わなきゃ」

 

 

海の七高の選手たちが、そんな言葉で達也の傍を通り過ぎていった。どうやらアーシュラは予想以上の走りをしたようで、こちらが一高の関係者であることも気付いていなかったようだ。

 

そばでアーシュラへの悪罵(?)を聞いた達也はちょっと居たたまれない。

 

だがそれ以上に達也が気がかりだったのは、恐らくアーシュラの第一レースが終了したあとに感じた胸の痛みであった。

 

(アイツのことだ。俺がいない所で俺に対する悪罵を吐いていたとしてもおかしくないが……)

 

『作ったもの』を渡すことも出来ずに戦いに送り出したのは、少々早計であったかと思う。

 

「………」

 

だが、それでも作ってしまった以上は渡しておくのも筋だったのではないかと思う。

だから―――機会を見て、『これ』を渡そうと思えた。もしも、それすらも、彼女に用無しと見られたならば……。

 

 

「――――――何を戸惑う必要があるのだか。担当エンジニアとしての責務をこなそうとしているだけだ」

 

まるで贈り物をして女に嫌われることを恐れる男のような思考は、あまりにも―――『達也らしくない』と思えた。

 

そんな感情は、そもそも無くしているのだから―――。

 

 

 

だから、これは圧倒的なチカラを持つアーシュラに対して畏怖を覚えているだけだと、達也は結論づけた。

 

 

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