魔法科高校の姫騎士~Alternative Order~ 作:無淵玄白
そしてカレンが擬似鯖の憑坐になることも――――。
しかし大変なことがある―――――――
『カレンが―――スカートを履いている、だと……?』
きっと霊基再臨が進むごとに―――最終的に『TKB』が勃った状態で見上げカレンが――――。
色々、混乱しているようだ。そんなこんなで新話お送りします。
深雪のとんでもない試合を見たあとに、エキシビションの方に画面を変更する。
一高陣営としては色々と驚天動地な試合で決めたものだったが、果たしてこれ以上のものが出てくるのか―――。
「いやはや、深雪さんはすごかったけど……アーシュラさんはどうなのかしら?」
「練習の通りの試合運びならば、アーシュラはまず自陣の防御から入ると想います。そうして
達也の言葉は、アイスピラーズの練習に参加しなかった人間たちの耳にも入っていた。だが、達也もこの試合に入る前にアーシュラと話をしていたので―――
「「「が?」」」
摩利、真由美、花音という女子先輩たちが疑問符を付けてきた。達也からの言葉の続きを促されて、達也はできるだけ平静を装って言葉を吐く。
「アーシュラ曰く『22試合もやるのマンドクセー。おっかない想いをさせて全員を恐怖でリタイアさせる』とのことです」
「な、なによそれ!? 挑戦者全てを怖がらせるなんてどうやってあの子やるってのよ!?」
「か、花音。落ち着いて。どういう手法かは……聞いていないよね?」
やはりというか予想通りというか、なぜか達也に食って掛かる千代田 花音。それを抑えながらも詳しい手法を問う、千代田の婚約者たる五十里 啓だが、当然、その辺りは分かっていたようだ。
「ええ。ですが、立華があれこれ動いて持ち込みを許可させた『アッド』も、持っていかなかったことを考えれば―――何かはあるんでしょうね」
達也のもったいぶった言い方だが、要は―――『何もわからない』ということだ。
だが、万が一にでも彼女が負けることがあれば、300ポイントが入ってしまうのだ。
今まで勝ち続けてきたとはいえ、ここまで不安を覚えるなど信用がない証拠。何とも言えぬ表情をしながらも舞台は動く。
そして出てきた相手選手は、午前の試合で三高の十七夜に負けた佐埜という四高の選手だったか。
衣装は変わらず。CADは特化型から汎用型に変えたようだが、その程度の違いが何かを変えることはないだろう。
だが代わりに―――。反対側の昇降機が動いたあとに、そこにいるのは―――。
「まぁ服に関しては自由なんだけどね……」
五十里の苦笑気味の言葉に誰もが同じ想いだ。
一高指定のジャージ。確かに先ほどまで深雪も着ていたが、その下にはちゃんと巫女の服があったのだ。
「ちゃんと聞いておけば良かったわ。何かの衣装を貸し出すことも出来たのに」
頬に手を当ててため息を突きながら言う真由美に同意する。すると大会委員としても、これから予定では20試合以上もするのに、これはマズイと思ったのか、それとも提携の放送局、ようはテレビ映えを意識したのか、妙なアナウンスが告げられる。
聞いた千代田が……。
「あったま来るわね! しょうがないから私のしふ『待って花音! その必要は無さそうだ』―――え?」
モニター画面から踵を返して選手控室を出ていこうとした千代田に対して掛けられる言葉。
モニター画面には、先ほどまではいなかったインドや中近東辺り―――亜熱帯・乾燥帯の民族服、もしくは、占い師を思わせる衣装をした『美女』がいた。
金色の髪に翠色の瞳。フェイスベールで隠れてはいるものの、紛れもなくアーシュラの姿がそこにあった。
砂漠の風が吹き荒ぶ……。
「ど、ど、どんな『魔法』を使ったのよ!? ウソでしょ!?」
「ぼくにも良くはわからない。ただ、衛宮さんがコートでも脱ぐようにしてジャージを脱いだあとには、あの衣装の―――」
「―――チョット待って啓。つまり……あの子がストリップした瞬間を『また』アナタは見たわけ!?」
「いやいや! 『あの時』と同じく、僕の眼にはそういったシーンは見えなかったんだよ。第一、あの時は花音が、僕の眼を塞いでいたじゃないか!! 終わった後に見えたんだけど……」
恋人どうしの痴話喧嘩的なやり取り。
その中で聞き捨てならない言葉があったのを、達也は聞き咎める。
「ちょっと待ってください五十里先輩。つまり、ああいう『衣装変更』的な『術』を、前にもアーシュラは使っていたんですか?」
「う、うん。君も見ただろうけど、アッドくんを巨大剣にしていた時の衛宮さんの衣装。アルトリア先生と同じく『騎士鎧』的なものは、ブランシュ事件の際に校門での迎撃で、彼女がどうやってか纏ったものなんだ。おそらく『魔力』で『何か』をやったんだろうけど―――『どういう理屈』であるかは、本当に分からないんだ……」
五十里(眼塞ぎ中)の言葉が、全員に伝わる。あの時、校門前にて魔槍の英雄『クー・フーリン』と互角以上の戦いを繰り広げたアーシュラの様子は映像でも拝見していたが、まさかあの衣装が術によるものだったとは……。
「魔術師の術理では、そこまで珍しくないのか……?」
摩利の今更ながらの呆然とした声。
サイオンによる『物質生成』ないし『物質転移』―――正確に申せば『有質量物体瞬間移動』というものは、現代魔法における不可能領域であり、再現不可能として研究を諦めた分野である。
だが、それに答えるものはいない。知っているだろう人間も明朗なことは言わないだろう。
つまりは『何もわからない』ままに、超絶な技能を見せられるということだ。
係員からの戸惑うような再開の指示に対して2人は動き出す。
CADを一つも持たない姿。何人かは気付いている。だが、本格的にそのことに気付けるものは少ない。
それとは別に達也は思うことがある。
奇しくも、あるいはいみじくも、深雪の衣装とは象徴的かつ対照的に『正反対』なものだ。
白い単衣に対して黒いドレス。
鮮やかなまでの緋袴に対して薄紫色のサイドスカート。
そもそもが『和装』に対して『洋装』という話なのだ。
見ていけばいくほど、『ブラック・オア・ホワイト』あるいは『ヴァイス・シュヴァルツ』といった風な言葉が似合う。
(あんなハイヒールを履くこともあるんだな……)
溌剌かつ快活な印象を持つアーシュラはスニーカーを好む。学校から指定されるわけではないが、エリカですら履いている女学生愛用のローファーを好まない。
だから意外な想いだ。
深雪とは違い、背丈の高さが『正しい意味』でのモデル体型をしているのだから、本当に映える。
そんな色んな意味で『アホの子』『元気の子』から
そして―――戦いは始まる。
練習通りノーマルに、先ずは自陣の補強から始めるアーシュラ。
堅実だ。だが、その手法は少々練習時よりも『強烈』だ。
「達也君、アーシュラさんの―――」
「いえ、あのように『キューブ』状の結界を使ってはいません。どちらかといえば『城』を思わせる堅いものです」
会長の質問を全て聞く前にレスを放つ達也。
魔法による『野戦築城』とでもいうべきものが出来るアーシュラの手とは、少々毛色が違う。
手を向けて命じただけで自分の陣地を脅かすことを許さないのは、大したものだ。
CADによる打鍵の時間すら彼女には隙でしかない。
相手選手も様々な術を施そうとしているが、どれもこれも黒いキューブというカーテンの向こうに通らないのだ。焦る相手選手に対してすでにアーシュラは余裕だ。
「―――、一通り絶望感を味あわせたあとに―――」
「達也君?」
疑問符を浮かべた会長だが、画面の中でのアーシュラは、佐埜が全ての氷柱を強化したのを見届けたあとには―――。
「―――全てを貫く『必殺技』で終わらせる……」
そういう手順を理解した……。
『いっくぞ――――!! がお―――!!!』
「あの子、いったい何歳なn―――――え゛」
カメラアングルが俯瞰ではなくアーシュラ正面に合わされたことで、『不幸』にもモニターで見ていた人間たちと、佐埜側の応援席にいた人間たちは見た。
咆哮を上げた瞬間、アーシュラの姿に重なる『竜』の姿を―――。
力が高まる。この上ないそれを前にして解き放たれるは――――現代魔法や古式魔法の括りに囚われない慮外の力。
『天地万象! 変幻の鱗もちし大いなる魔蛇、その軍勢・分体を世界に解き放て――――――。
言葉と同時に、アーシュラの『中』から一匹の『巨大竜』が飛び出る。蒼黒の鱗を持ち、金眼をした巨大な竜が、自身から巻き起こる黒炎の津波ごと佐埜の陣に襲いかかる。
その様子はまさしく魔的な幻想……幻想が確かな『殺傷力』『破壊力』を持って顕現する……。
「ひっ! ひぃいいいい!!!」
「あだだだ!! か、花音、大丈夫!?」
己の眼球を圧迫されたことよりも、腰を抜かして悲鳴を上げる恋人を心配する五十里に感心しつつも、モニターに映る『竜』か『蛇』の姿は増えていく。
黒炎の波間に幾度もその身を躍らせながら、佐埜の陣に襲いかかる竜蛇の攻撃は一瞬。
だが、視ている人間たちは、その攻撃が五分以上にも及ぶものに思えた。
以前に見たワニ園の餌やりか、それと同じように投げ込まれた餌に殺到する養殖魚のような無残な食い散らかし。黒炎の大津波の殺到の前に、佐埜は何も出来ない。
全てが終わっても一匹の大蛇が黒炎のわだかまる陣でとぐろを巻いて残って―――。
ガラスが割れるのではないかというほどの遠吠え一つをあげて、全ては夢幻の如く消え失せた……。
「なんなの、あれは……」
力なく呟く真由美が着込んでいる、九校戦選手服の背中が濡れていた。
よく観れば、背中だけでなくセットされた髪すらも崩れるほど―――全身から汗を吹き出していた。
同時に達也も気付く。自分が持っていた機械端末が大量の水で濡れていることに……。
(ああ、そうか……)
水は達也から出た汗だった。
2095年の機械製品の防水効果を信じつつ、適当な布で画面を拭きつつ達也は思う。
(これが……『恐怖』という『もの』なのか)
妹の危機というものにしか、それを覚えなかった達也が得た本質的なもの。
自分こそが地上最強だと自負することはなくとも、それでも自分を脅かすものなど居らず、自分が『無くなる』という『事象』が『あり得ない』と想っていた達也の矮小さを思い知らされた―――のだが……。
『ワタシの『覇王昇龍拳』を破らぬ限り、お前に勝ち目はない!!』
『『『やった――! カッコイイ―――!!!』』』
『一般』観客席にいるだろうアーシュラの関係者の声が届くと同時に、割れんばかりの歓声が上がる。
魔法関係者の大半は正直、拍手だけにとどまっているが、だがそれでも―――。
(もしかして、これが狙いでもあったのか?)
九島閣下の言っていた、毒電波を受信している高校生たちの毒電波放出大会。
そんな風な見方を崩すためには、まずは視覚で圧倒することが、重要なのだ……。そう無言で揶揄しているようなアーシュラの、無言でのメッセージが見えているようだ。
そして何より―――。
「九島老師の真逆のことをやっていますね」
「……それはキミの妹もじゃないかと思うけどな」
摩利(汗だく)の呟きに応えずに達也は考える。
工夫とか、そんなものはない。力任せに切り裂き噛み砕くやり方は、九島烈へのアーシュラなりの意趣返しだろう。
―――お前の思惑になど乗ってやらない―――
扱いづらい暴竜を連想させるアーシュラへの挑戦は、この後には止むことになる。
彼女をある種のチーズチャンピオンだと想っていた連中は、即刻挑戦状を取り下げたのだから……。
「今日の夕食会では絶対に質問攻めにして、ついでに言えば下着の洗濯代も要求してやるんだから」
現在のホテルでは、どの部屋でもそういった簡易の『洗濯機・乾燥機』というのは付いている。文明進化の賜物というやつだ。
会長が言うような、そんな電子マネーを使ってまでのことは無いはずなのだが……。
ソレ以上に分かっていない『問題点』がある。
「あの会長。それをやるには一つ問題点があります」
「それは?」
「あの懇親会以来、アーシュラと立華はホテルの夕食会には出ていないんですよ。食事はホテル外か自室で取っているようなので、絶食しているわけではないんですが」
『『『『――――――』』』』
達也以外の先輩四人が『絶句』する。
確かに一高全員で仲良しこよしで食事を取ることもないが、それにしたって、まさか―――
そこまで単独行動を取っていたとは……。
「な、なんでそこまでするんだ!?」
「間の悪いことに、その懇親会で食いすぎたせいか、厨房担当の人が『驚天動地』したらしくて、エリカなどアルバイトたちから窘められたことで不機嫌に」
「別に食材が足りなければ、近所の食材卸や近辺の料理店とかからも融通出来るはずだろ!? なんだってエリカはそんな意地が悪い事を言ったんだ!?」
そう。昔から飲食店というのは、そういう『持ちつ持たれつ』というのが共通理念とも言える。
このホテルが軍関係だからと、食材に関してそこまで徹底したチェックをするほど暇ではない。
「まぁエリカとしては、『食いすぎるな』程度の気持ちだったのでしょうが……それがアーシュラにとっては、気に食わなかったというところです」
現在はアーシュラほどの大食らいが10人は来ても大丈夫なように、食材のストックも大丈夫なのだが……その発言以来、アーシュラは頑なな態度で望んでいるのだ。
逆にこのままアーシュラが来てくれなければ、いくら保存技術が進んでいるとはいえ、冷蔵庫の中で『悪くなる』食材も出てくる。
そうなる前に、使えばいいのだが……。それでも、廃棄せざるをえないものも出てくるだろう。
「――――――そこまで食べなければ、彼女の身体はもたないのかな?」
「コレに関してはおそらくその通りです。現在の彼女は『様々なこと』に魔力のリソースを注いでいる。そのせいで補給のタイミングが早く、そして多いのでしょう」
魔法師としては納得いかないのだが、魔術師の使う『魔力』―――
極論してしまえば、『空腹』の状態ではまともに魔力も生成出来ないとのこと。
詳しい理屈はまだ知れない。だが、聞かされた士郎先生の話すところを想定するに、アーシュラが、ギャラハッドなる騎士の『使い魔』など何名かを解き放っている以上、それで『力』が不足しているとも言える。
(更には死徒だ。恐らく夜中に、アーシュラと立華はそちらに対しても何かをやっている―――)
考えてみれば昼夜問わず動き回っているようなものだ。そんな中でも、これだけのことが出来る……。
「―――達也君、私と真由美も手伝うから、何とか衛宮と藤丸を引っ張ってこよう」
「分かりました。難題ですが、何とか夕食会までには引っ張ってきましょう」
摩利の言葉に本当に難題ではあると感じる達也。
だが、あの『アスラ・シュレーシュタ』なる術は、ともすれば戦略級魔法に類する威力も発揮できるかもしれない。
だとすれば、驚異的であるし―――何より―――
(想ったよりも、アーシュラの『引き出し』というのは多いのかも知れない……)
典型的なルーンファイターであり対人戦のエキスパート。魔法や魔術の効果範囲はそこまで広くない―――そんな風な印象は完全に掻き消えた。
士郎先生の言うとおりだ。達也に人を見る目など全く無いのだ。それを思い知らされるばかりの女の子である。
(教えてくれないか。それとも―――)
アーシュラとの間にあるか細い友誼を頼りたい達也だが、果たして―――。
そして夕食会は始まる……。
新人戦が進行している現在、競技結果に対してアレコレを述べる者の多くは一年生である。
そして今日までの結果からか、女子と男子はきっちり分かれて、食事を取っている。
ろくな大将首も『首見分』に持ってこれない連中は、冷や飯を食うしか無いのだ。
明暗分かれた男女だが、明るい方の女子も少しだけ暗い表情を見せている。
女子の中心にいたのは、女子の躍進の原因となった司波達也だが、それでも女子の中には少しだけ暗い顔を見せるものもいた。
「司波くん。衛宮さんと藤丸さんは何処に行ったんだ?」
「アーシュラと立華は……一応、エキシビションが終わったあと、チャレンジキャンセルが全て出たあと―――渡辺委員長と一緒に迎えに行ったんだが、捕まえきれなかった……」
暗い顔をしていた里美スバルが懸念事項を話してきて、それに素直に答える。
千里眼とも言える真由美会長のマルチスコープと連携しながら、何とか捉えようとしたのだが。
まるで消え去るように、アーシュラはいなくなっていたのだ。
「お礼一つ言うことも出来ない。悔しいなぁ」
「そりゃ結果を出していれば、成果主義・実力主義の魔法科高校の校是通りだとしても……」
一年の誰かが呻くように言う。結局の所、突き詰めれば―――アーシュラと立華の態度は、未来の魔法科高校の姿なのだ。
多くの転換が無い政治体制において、腐敗と汚職が蔓延り、富めるもの・権力者だけが正しいという、そういう人間ならば『何をやっても許される』という社会の空気が醸成された時代と同じくなる。
まぁどんな時代でも、そういった犬神佐兵衛と佐兵衛の娘3人のような連中はいるのだが―――。
公的な場での犯罪すらそれを適用するとなると、社会には『そういった空気』が蔓延する。
公徳心の欠如―――その姿をアーシュラと立華は見せているのだ。
(俺たちにそれが無いのは分かったさ。だからといって―――)
お前達が悪者になる必要があるのか。そこまで魔法師の悪辣さを認識させたいのか。
くさくさした想いを抱きながらも、言葉を吐き出す。
「明日こそは何とか連れてこよう。どうやってもボードの準決・決勝があるんだ。
そもそも……あいつにCADが不要で、CAD担当者がいないということが、この事態を容易に招いているんだよな……」
そんな達也の空手形にはしないという意気込みと諦観に対して―――。
「あれ? 衛宮さん。大会委員にCADを提出していたよ。確か指輪型のものを」
「そうだったね。検査委員も『何も入っていない』ということに何度も疑問を浮かべていたが、まぁ持ち込みは許可されていたな」
春日と里美の何気ない言葉に、遠くのアングル。モニターから気付いたエイミィが言う。
「あれアシスタンツだったんだ。とはいえ、左手の薬指に着けるだなんて、えっみーにアレを贈ったのは誰なんだろうねー?」
ロマンチック〜などと両頬に手を当てておどけて言うエイミィ(顔は紅潮している)の言葉を皮切りに、他人の恋バナで盛り上がる女子たち。
今ならば、今ならば、まだ『傷口』は浅いままで済ませられる。
今のうちに白状しといて……。
『そんな意図は無かったんだ。士郎先生からのテストも兼ねて、一番魔力の通りがいい所に指輪を着けてあげただけなんだよ。アーシュラに対してセクハラだよなスティーブ(?)。HAHAHA〜♪』
とでも軽く言っておけば、妙な勘ぐりは、これ以上されなくて済む。キャラが違うとか、そんなことは今はどうでもいい……。
だが、中々にそれを言えない。きゃぴきゃぴして会話に嵌る『ほのか』の心身に影響が出るかもしれない。
こんなナーバスな話題を切り出せない。自縄自縛に陥る達也。そんな達也の変化を、目ざとく『理解』した存在が一人だけいた。
それは実妹である司波深雪であった。
だが、達也が隠し事をしていることに気づけても、その事を切り出すには―――少しだけ恐怖があった……。
自分が解放したいと想っていた達也の『呪い』。深雪にだけ従順であった達也が、他にも眼を向けてくれる嬉しさ―――けれど、それで『本当』に兄が、深雪のそばから離れていってしまうことの恐怖が自分を縛る。
(なんで、あの子なの……)
まだ決定ではない。まだ言葉に出ていない。
けれど。
『そうだから』と言われた時に、深雪は―――それを素直に認めるわけにはいかないのだ……。