魔法科高校の姫騎士~Alternative Order~ 作:無淵玄白
TMエースを買って、色々と見て思ったこと。
『奈須さんも武内さんも、俺たちを見ててくれていたんだ』
一番には『でもにっしょん』の管理人『めれむ』氏とかなのではないかと思いつつ、安心してください。switchは手元にあり、大画面テレビと繋げてあります。
即ち―――いつでも8月を迎えてもオーケーということだ。
色々と語りたいことはあるが、とりあえず新話どうぞ。
雫が望んだ戦いに受けて立つことを決めた深雪。
アイスピラーズの決勝戦を三名一高で占めた現状において、無駄ごとではあったが、それでも戦うことを望まれ、そして練習時点から深雪との戦いを望んでいたという彼女の心を知っていただけに、断るという選択肢は無かった。
しかし……仮にもしも、アーシュラに戦いを挑めるのならば、深雪はそちらとも戦いたかった。
(別に挑もうと思えば挑めないわけじゃない。けれど―――)
兄はそれを諌めてくるだろう。次期当主候補の最有力として瑕疵を着けないために、何より―――いざとなれば『本家』から逃げるためにも……。
「……」
兄のために自分を捧げると決めた深雪にとって、アーシュラも立華も、鼻持ちならない相手である。
アーシュラは、その暖かな家庭の在り方と、兄の心をかき乱す在り方に。
立華は、その公に出来ない公徳心のために、多くのヒトを混乱させる先読みに。
そして全てが起こった後に、その意図が伝わる。あの2人だけが『正解』を知っていて、達也や深雪の考えや生き方を唾棄に捨てるべきものだとする態度が腹立たしいのだ。
イライラする。ムカムカする。
だからこそ―――深雪は、雫との戦い前に、一条将輝とアーシュラの戦いが見れてよかったと思える。
アーシュラの泣きっ面を見れる可能性があるとすれば、この試合だけなのだから。
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「いよいよ始まるんだね……」
「バトル・ボードの決勝もあるってのに、こんなスケジュール無茶苦茶だよ」
フルラウンド打ち合ったボクサーが、ダメージを抜く期間もなしに、一週間後にリングに上がるようなものだ。
そう感じるクラウド・ボール新人戦女子の敗者たち。
そんな一高の観戦の面子の中に、アイスピラーズで疲労困憊した明智英美がいることは、かなり意外であった。
「エイミィ、大丈夫かい?」
「だ、大丈夫……この試合だけはナマで見ないとならないわ」
「そうなの?」
スバルの質問に荒く息を吐きながらも答えたエイミィは、予感を告げるのだった。
「私は、この試合をどうしても見届けなければならないのよ―――」
そんな直感があるのだと言うエイミィに、スバルも菜々美も何も言えない。それはきっと―――勝敗に関わらないものなのだと気づけたから。
片や他のところでも、似たような会話が繰り広げられていた……。
「十師族の一条に挑まれるか……本格的に賞金首だね」
「アイツ一人で、トータルバウンティが10億超えとかありえるからな」
ここ最近、夕食時に現れなくなったことで、ついにアーシュラと対面することがなくなった幹比古とレオがつぶやく。
「………」
「エリカちゃん。怖い目しているよ」
「……だって、私のせいみたいに言われて、みんなから責められていい気分じゃないんだもの」
その言葉に、声掛けをした美月を筆頭に苦笑いをしてしまう。
アーシュラが夕食時にこなくなった原因の一端として、エリカが三巨頭に責められたのはつい最近の話だ。
彼女としても色々とホテルの厨房の事情やアーシュラの身体を気遣った上での発言だったのだが、それが彼女にとっては癇に障ったのである。
実際の所、ホテルの対応としてそういう大食らいの客がいるとなれば、懇意にしている卸売・納入業者でも何でも、その他―――様々な同業種(近場)から食材を用意するだけの、緊急時の『協定』というのは、寒冷化前から廃れてはいない。
ある種、飲食店というのは大なり小なり『持ちつ持たれつ』という原則があり、いいものや利益は全て独り占めにしていくという魔法師的な価値観とは真逆のところがある。
市場を社会全体で支えていかなければならない面もあるわけで―――唯一の例外事例としては、国家全土・世界全土に蔓延するような『エマージングウイルス』の罹患が発生した場合ぐらいだろう。
「一度、謝って『食べに来て』っていわなきゃ、本格的に食材が悪くなっちゃうよ」
「わ、分かってるわよ……」
アーシュラが食べなくても大丈夫と言えるほど、保存期間が長くはないものもあるのだ。
そんなわけで、今日がラストチャンスと言ってもいい。ゆえにエリカはちょっとした緊張感を持って、それを見ることにするのだった。
他方では……。
『イヌヌワン!!』
「おーよしよし! カヴァスはいい子だなー。ワンパチって名付けたくなっちゃうぞー♪」
『イヌヌワー』
それはご勘弁だワン。とでも言いかねないカヴァスの返答。それをどう受け取ったかは分からないが、渡辺摩利は、白いコーギーをいっそう深く抱きしめて愛でていた。
「摩利が動物好きなんて、初めて知ったわ……」
親友の意外な一面。
「まぁこの時代に愛玩動物なんて珍しいだろ。それもコーギー犬だなんて、すごくいい毛並みだ。これはアニマロイドでは出せないものだ〜♪」
カヴァス3世を抱きしめて頬にすりすりさせる摩利の顔は、平素のキリっとしたものとは真逆すぎた。
てっきり好きな動物は『千葉の麒麟児』だけかと思った、という言葉を呑み込みながら、真由美は戦いのフィールドを見る。
女子の決勝は、この戦いのあとに行われる。
大会委員が、両試合の注目度を考慮しての配慮であると分かった。
あるいは、雫と深雪の戦いなど、見方を変えれば対抗戦ではない私戦でしかないのだから、こちらを優先したか―――どっちかである。
とはいえ、観戦をずらさなくてもいいのはいいことだ。
そして、この戦いで十師族という山に亀裂が入ることは明白であった。
(お父様は、むしろ『その意気や良し』と一条君の態度をよく思っていた。つまり師族の中でも意見は割れていたということなのね)
寧ろ、あの謀略好きな父が、これを承認したものだと思った。
そして、戦いは始まる―――最初に『リングイン』したのは、
別に昇降機の台座に青色で染め上げられているわけではないのだが……。
プロボクシングの形式で言えば青コーナーに立つは、赤色のコスチュームを纏った日本の魔法師の王者の一人。
赤色の騎士甲冑―――当然、『本物』ではない。派手なクリムゾンアーマーを纏った彼の姿に、女性は黄色い声援マックスで応える。
「アクセントとして黒いラインも入っているし、金色の装飾もある。誰の発案なんだか分からないが、いいじゃないか」
「邪龍ヴリトラを倒す英雄でも模しているのかしらね?」
髪も丹念にセットしたらしき姿に、一条に対する声援が、これ以上なく響く。
完全に会場を味方につけたともいえる一条将輝……だが―――。
「会場全体が一条クンの勝利を期待している。まるでサッカーで言う所のアウェー、野球で言うところのビジター……」
「けどさ、こういう時に……」
「全員を悉く黙らせたら気持ちいいでしょうね……」
イッヒッヒ! と悪巧みをする三人の女子。
藤丸立華の言葉に同意する女子小学生2人を見ながら、ちょっとだけ将来を心配する十文字克人の考えとは裏腹に、赤コーナーにリングインをしたアーシュラの姿。
奇しくも一条と同じく騎士鎧に似ているが、少しだけ違う。
その姿は伝説の騎士を思わせるもの……幻想が色濃く残り、それこそが世界の在りようだった時代の姿。
青色のリボンをつけて、金色の髪を少しだけまとめたアーシュラの姿。ブランシュ事件のときとは違い、ブレストプレートは無いが、ソレ以外は殆ど同じである。
ホワイトローブとも言えるものだが、金色のラインと黒色のラインが施された前掛けと、オーバーニーブーツがアクセントとなっている―――編み込まれた模様は、一般人はおろか魔法師にも分からない。
世界から失われて久しい精霊文字の刻印―――。
裏地には鮮やかなブルーカラーをあわせた彼女の姿に、誰もが驚く。
もしかしたらば、その手に持つ『剣呑な得物』にド肝を抜かされたのかも知れないが―――ともあれ、チャンピオンであるアーシュラの登場で舞台は整った……。
相対する一条将輝はある意味、呑まれていた。
互いの距離は空いている。だが、そんなものは関係ない―――。
(こうして正面で向き合うと分かる。彼女は特級の戦闘者だ。何よりあの剣? 槍? 杖? どうとも取れる武器が凄まじいな……)
予め係員から言われていた通り、衛宮アーシュラは、今回『魔術礼装』を使うと告げられていたが……。
(―――どうでもいい)
どんな思惑があるかは分からない。どんな狙いがあるかは分からない。
けれど―――。
(俺は勝つ! 一条の看板は安くないことを示すんだ!!)
優しげな顔を
(悪いわね。アナタには日本の魔法師界を背負う夢があり、その
マルミアドワーズを振り回しながらパフォーマンスをしていたアーシュラは、それでも決意する。
(―――ワタシにも譲れないものがあるのよ。ここで砕け散ってもらうわ。ロード・ワンウェイ!!!)
プリンセス・ガードという競技前にこの男を凹ますことが出来れば、勝利の確率は上がるのだ。克人の戒めを超えなければ、狙わない理由は無い。
そうして、戦いの撃鉄は起き上がる。
ランプが点灯していくにつれて、両選手に動きが出る。
一条はそのマゼンタカラーの銃型を向けて、反対にアーシュラは、そのブラックグラブを口に当てて、片手で草笛でも吹くような仕草で眼を閉じていた。
読めない仕草を前にしても読み込まれる術式、解き放たれる『竜の炉心』の魔力……。
見えるものは見てしまう、アーシュラの膨大なまでのチカラ―――。
そしてスタートランプが点灯する。
コンマゼロ秒の中で発動する現代魔法。一条の爆裂が、アーシュラ側の氷柱全てをターゲッティング。
一条将輝の望んだ現象が具象化しようとした時―――。
その刹那に挟まれる、呪文ですら無い吐息一つ。否、吐息ではなく―――それは『息吹』。
解き放たれたアーシュラの口蓋の奥から放たれるドラゴンブレス。
『かぁっ!!!!』
後より出でて先に断つ―――というほどではないが、それでも現代魔法にはあるまじき術理で以て、一条将輝の打ち込んだ魔法式が全て
それだけならば、次弾を放つだけ。
しかし―――。
(衛宮の息吹は、まるで嵐か台風のように、フィールドに『今でも』吹き荒れている!! 俺の魔法を届かせない!!)
将輝が見た事実をどれだけの人間が認識しているかは分からない。
本来的に魔法式は、終了条件が完了しない限りは、そのまま対象物体ないし何かのエイドスに留まっているはずなのだ。
だからこの吹き荒れる嵐が収まれば、それを再動させることも出来るはずだが―――。
しかし、将輝は確実に見た。術式解体よりも『高度』で『深層』に達するかのような
そして、一条将輝が―――四高 佐埜の轍を踏まないように、先んじて自分の陣地を最大強化。
だが、そんな戦いをした時点で将輝の戦術ではないということが確定する。
(十師族として磨いてきた、俺の『爆裂』を無為にするとは……!)
干渉力で上回れないのはなんとなく理解できていた。四十九院の言葉通りならば、魔力も『深く』『濃い』ものである……。
だからこそ『速攻』で決めたかったのだが……。
(速さで上回れても、衛宮は見てから『手』を変える……後出しジャンケンで勝てる類だな―――)
奥歯を噛み締めてしまうぐらいの差。こっちの出方を見てから何をするかを決められる。
現代魔法師が求めてきた
そして―――。
「―――疑似宝具展開、アッド!!」
(
嵐の展開だけでは終わらせないという意気で、アーシュラはマルミアドワーズを使って『城』を構築することにしたのだった。
『おうさ!!』
「祖は全ての罅、全ての悔恨を癒やす彼方の故郷――」
黄金に光り輝く巨大剣。誰もの眼を灼き尽くさんばかりの光量ではあるが、その光は決してヒトの眼を害することはない。
その光は救済の威光。
輝きの元に集いし騎士たちの、誉れ高き家。
光り輝く剣を、運命の姫騎士は、射台の真ん前に突き立てた。
刃ではなく柄尻を叩きつけたとはいえ、全てのエイドスが『ひっくり返る』ほどの衝撃が伝わる。
「顕現せよ―――ロード・キャメロット!!!」
―――そして白亜の城、輝ける聖都が顕現する。
その時、会場の内外に散っていた円卓の騎士たちは、眼を四方八方に鋭く向けているのだった―――。
当然、アーシュラのマスターである立華も、魔眼を輝かせて『探す』のだった。
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『『キャ、キャメロット城―――――!!!!????』』
思わずスタンディングオベーションして、アーシュラの氷柱を守るように顕現した巨大な白亜の城に対して驚愕を示す、エイミィと美月の言動と行動。
そして、誰もを驚嘆させた全ての声が集まり、一気に溢れ出す。
何も言わずとも『ご唱和ください 我の名を!』と体現するアーシュラの絶技で、既に会場の声から一条を呼ぶものは無くなっていた。
現代魔法の理とか、古式魔法の術であるとか、そういう括りではないアーシュラの技。
巨大な白亜の城。現代魔法の常識において、何の意味もない形ある魔力の被造物。
だが、そんな理屈を屁理屈と称させるだけのものが、そこにあった。
再現された造形の見事さ。
再現された巨城の威容。
再現された神秘の光量。
古来、ヒトは巨大なるものに神性を見ると言われてきた。
古き時代より連綿と人々の遺伝子に刻まれた、『畏敬』とも『畏怖』ともいえる感覚。それをデミヒューマンである魔法師であっても感じさせるのだ。
そして相対する一条将輝は、この上ない畏れを抱いていた。現代魔法の理屈において、形ある魔力というのは所詮は幻影であり、仮にそれが攻撃をしたとしても、所詮は催眠術の類であると信じられてきた。
だが、これはそんな理屈とは真逆のものだ。
現れた『王城』の庇護を受けた氷柱に、魔法を浸透させる?
不可能だ!
そう冷静な判断を下したとしても、戦いの場に立った以上、将輝は戦うしかない。
目に見えている白亜の城に、干渉をしかけたとしてもびくともしない。そもそも、かけるべき『エイドス』そのものが視えないのだ。
かといって『氷柱』を探したとしても視えない。
これは―――。
「撃て! マルミアドワーズ!!」
「走れ! スピュメイダー!!」
「弾けて! シャスティフォル!!」
―――詰みだ。
剣から放たれる黄金の琉光が、将輝によって情報強化された氷柱2本を跡形もなく消し飛ばし。
薙ぎ払うような黄金の『飛ぶ斬撃』が、距離を超えて将輝の氷柱3本を切り裂く。
将輝もプライドを捨てて、氷柱を動かすことで生き残った氷柱を守ろうとするも、蒼き光の奔流が上空に打ち出されて、空中で幾重にも分裂・屈折して頂上から氷柱を溶かしていく。
雨滴のごとき
(残るは2本だけ!! けれど、このまま終われるかよっ!!)
あらゆる魔法を試して『城』に瑕疵をつけるべく試す。しかし、そもそも城が『何処』にあるかも分からない以上、これは無駄撃ちとなり得る。
こちらの魔法で何一つ動じない堅固な城の元、攻撃にも転じれる。
ただ一人ですら戦場の勝敗をひっくり返す存在―――。
(これが―――剣製のエミヤ!!)
「蹄を鳴らせ! ラムレイ、ドゥン・スタリオン!」
黒、白の馬―――サラブレッド種なんて目じゃない強壮な馬の化成体が、城から出てきて将輝の至近にある2本の氷柱に向かってくる。
「させるかよ!!!」
単調な魔弾―――術式解体ほどではないが、サイオンの塊を以て、進撃を止めようとするも、
至近距離で砕ける氷柱でダイモンドダストが発生、思わず目を瞑るも、それでも前を見据える。
遠く彼方―――というほどではないが、それでも遠い距離にいる衛宮アーシュラの姿を見る。
その姿―――薄く目を開けながら笑みを浮かべる顔。それは将輝に向けられたものではない。
戦いの結果ではなく、それ以上に深いものを思わせる笑みを前に……一条将輝は己の矮小さを認識するのだった。