魔法科高校の姫騎士~Alternative Order~ 作:無淵玄白
だがごめんよボイジャー君。
僕には君を重ねてスーパーボイジャー君には出来なかったんだ…(間違い)
未来を切り裂くタフなハートが無くてすまない。(CV ジークフリート)
意外と歌詞を読むとビーストウォーズⅡのオープニングはボイジャー君にあっている気がしてならないとヘビリピで聞きながら新話お送りします。
――――放課後になり、生徒会室に行こうとする道中で司波兄妹と出会う2人。
「お前たちも生徒会室か?」
「そうだけど、司波君も何かの役職推薦を受けたの?」
「深雪が強弁を振るってな。俺に実力があると言って、それに渡辺委員長が興味を持ったんだ」
それでなくても何かしらの思惑を持って動いている七草会長は、風紀委員に達也を推薦してきたとのことだ。
聞いたアーシュラとしては、そりゃ結構なことだと思う。
「殤不患の武勇伝(誇張あり)を街中往来で語る凜雪鴉ですか、アナタは?」
「いいじゃないですか! 別に実力がないわけじゃないんですから!! お兄様は蔑天骸を倒せるほどの実力はありますよ!!」
半分、昨日のCAD談義(さすおに)を思い出した立華が呆れながら深雪に問うと、強弁を振るう深雪の姿が……。
「こんな感じだったわけね?」
「そう。こんな感じだったわけだ」
(まぁロズィーアンの連中も欲しがるんじゃないかな。この眼は―――)
とはいえ、『列車』からの招待を受けるほどではないということかな。そうアーシュラは結論づけながら、達也の先導で生徒会室に入る。
入ると、そこには女子四人と男子一人がいた。察するに全員、先輩だろう。即座に『見』でレベルを測るのは忘れずに……。
((いついかなる時も、『話の途中だがワイバーンだ!』などと言われてもいいように、相手を測っておく……どういう意味なのかは未だに不明だけど))
カルデア式の警戒というやつであるが、未だに立華もアーシュラも分からなかったのだ。
そして、眼の前にはワイバーン以下のエネミーとも何とも言えぬものがいた。
『フォウフォウフォウゥウウ』
「そちらにいる衛宮さんと藤丸さんであれば、適任でしょうが、過去に2科生を風紀委員に任ぜたことはありません!!」
激烈な話し合いだが、総合して聞き届けると司波達也の能力には疑問があるから、風紀委員就任は考え直せという副会長の言動であった。
それに対して、司波深雪が食い下がり、やんややんやと言っている。
言い争いを見ながら、どうしたものかと思っていると―――。
「お二人はどう思います?」
「やりたくはないと言っている相手に無理強いするのは、どうかと思いますが……」
「やる気があるならば、やればいいんじゃないですか?」
問いかけた先輩、地黒な肌にエキゾチックな魅力を感じる長身の女子に返した言葉は、達也と副会長にも届いていた。
「司波くんは『違う』と思いますけど、別段、最良で最優秀な人間ばかりが『結果』を出せるとは思えないし、何よりその結果が、ヒトにとって尊いものであるとも言い切れませんしね」
「―――過程が重要だといいたいのか?」
耳ざとく聞いていた副会長(?)が、半ば摩利との言い争いの喧嘩腰のままに立華に食って掛かったことで、アーシュラの眼が細くなる。
―――睨んだのだ。
「結果として失敗したらばそりゃ大損でしょうけど、立ち止まりたいけど、それでも立ち止まらずに、身を斬られるような思いをしてでも駆け抜けることも必要でしょうよ。
確かに、己よりも優秀な人間はいた、自分でなければダメな事態というよりも、自分しかいない事態だからこそ動いたことを後に『責められる』としても、駆け抜けたことを決して後悔してはならないんですよ」
その言葉は何かの重要なことを語るように朗々とした響きを持つ。
藤丸立華にとっては寝物語代わり、子守唄のように聞かされてきた言葉だ。
「……一度や二度の敗北でヒトの価値は下がらない。
どうせ人間なんて、いつでも『正解』を選べないんだよ。
いつだって大切なのは、「この後、何をするか」それだけ―――」
『フォウ!!』
立華とアーシュラとフォウの言葉で、達也の中に何かの力が入るのが分かる。男気とでも言うべきものを見せろということでもある。
よって―――。
「妹の言葉もそうですが、最近知り合った女子やネコ(?)から、こうも言われては仕方ないな……。
服部副会長、俺と模擬戦をしませんか? どうせこのまま言い合っていたところで面倒でしょう。
ようは俺の対人戦闘のスキルが、フォウほどあると証明すればいいんでしょう? ならば、妹の眼が曇っていると言うのならば、その眼を使い真贋を見極めればいい」
「―――いいだろう。其処まで言うならば、お前の実力を見せてもらおう。司波達也」
挑発的な言葉だが、最後には戦うものとしての礼儀を持ったのか、厳かに言う副会長。
とはいえ、印象としては生意気過ぎる後輩め、ぐらいの感覚は持っているだろう。
「で、衛宮と藤丸―――十文字から聞いているとは思うが、お前たちにも役職に就いてほしいんだけどな」
「拒否したいんですけどね。私は『ハイキュー』に入りたい」
「ワタシは弓道部に―――」
「安心しろ。部活と風紀委員、生徒会役員は兼任出来る……ただ流石に生徒会と部活はキツイかもな」
最後の方には正直になる渡辺委員長であった。
寧ろ、思惑としては『どちら』も風紀委員にしたいということなのかもしれないが。どちらにせよアーシュラ及び立華にとっては割と迷惑な話であった。
そして司波達也と服部副会長の模擬戦が―――準備と開始で30分もせずに終了となったのだ。
副会長の噛ませ犬以下の呆気ない敗北に―――。
『風のように現れ、林の中でひきこもり、火がつくと、山のように動かなくなっていた。名も知らぬオマエ風林火山〜〜』
読経をするかのような言い方だが、数珠を持ちながら聖書を開き三角頭巾。硬い言い方では天冠というものを着けたアーシュラと立華のそれは―――。
「ヤンキーのポエムにしか聞こえないんだが!!!!」
「おおっ! 復活した!!」
「あのナマモノの復活の呪文とやらもバカにできないわね」
何の話かは分からないが、アーシュラと立華のあんまりな言いようの前に、司波達也の説明も少しばかり彼方に消えてしまった。
ともあれ、起き上がった服部副会長は己の浅慮を恥じて、司波達也への謝罪はなくとも……。
「やってみろ。それと―――力を誇示しろ。とまでは言わんが、あんまり『出来るもの』を『出来ない』とか嘯くな。人間が腐るぞ」
「肝に銘じておきましょう」
そんな激励とも注意とも言い切れぬものを捨て台詞に、模擬戦部屋から出ていくのだった。
「さて―――次は、お前たちの番だが……」
(適当に負けない?)
(それが穏便な解決策でしょうね。ですが、ここに関わることがオーダーをこなす条件ですから……『霊基変更』を推奨します。『イグジストライナー』アーシュラ・ペンドラゴン)
(オーライ! 何がいい? マスター?)
(―――
了承の意としてメディテーションをすることで、アーシュラはその身体の全てを最適化させた。
念話の時間は一秒未満。メディテーションの時間も一秒未満。
渡辺摩利が振り向いた時には、アーシュラの『力』は変わっていた。その変化に気付いたのは達也だけだったが―――構わずに……。
「私は直接戦闘は苦手ですので、私の竹馬の友にして、『カルデア』でも随一の戦闘者にお任せしましょう。行ってください! アーシュラ・ペンドラゴン」
「オーライ!! 行ってくるわ!!」
威勢のいい言葉で、先程まで服部が立っていた開始線に勢いよく着地するアーシュラの姿。
(身のこなしが軽いな……)
その着地のジャンプですら、高く天井近くまで跳んでの何回も宙転しながらのものなのだから、運動神経のバネが凄まじいと達也は見抜いた。
「で―――アーシュラちゃんは、ホウキは何を使うの?」
「え? いらないですよ。ワタシにメカニックコードは必要ないんですよ。会長さん、何度もワタシとリッカにピーピングしているんですから、知らないわけではないでしょ?」
七草会長の問いかけに対して、アーシュラのあっけらかんとした答え。入試の際のことを覚えていた達也、深雪などはともかく、会計と書記である市原と中条は、何度もアーシュラとリッカを交互に見ていた。
「ワタシは別に司波くんと違って風紀委員になりたいわけじゃないんですけど」
俺だってなりたくなかったよという呟きを、無言で達也は思いつつも―――。
「けれどリッカが、ワタシのマスターが『勝て』と望むならば、悪いですけど委員長には勝たせてもらいます」
「傲慢な後輩ばかりで、今年は本当に昂ぶるものだ……だが勝たせてもらう!!」
同じくスタートラインに陣取る渡辺摩利。準備運動のつもりか首を回して、更に言えば肩を中心にして腕全体を回す―――マエケン体操をやるアーシュラは、存外身体の使い方を分かっているようだ。
そうしてから一度だけ伸びをして張ったアーシュラは、全てを完了させたようだ。
審判役が、先程の渡辺委員長から七草会長に代わって宣言が出る。
「ルールは先程と同じく、ただしある程度の武器の使用は認めます。それとて重傷を負わせないように気をつけて貰えれば許可します」
その言葉で委員長は何かしらの『長物』を持っていることが暴露されていたのだが、それでも構わないようだ。
寧ろ好戦的な笑みを浮かべる渡辺摩利の顔に―――アーシュラは眼を閉じたままだ。
「両者―――準備はよろしい? では―――始め!!」
瞬間、アーシュラは眼を開けていた。
そして渡辺摩利は先程の服部副会長よろしく―――それよりも数段捷い構築でアーシュラをふっ飛ばそうと試みるも―――。
「目覚めろ!! 吠え猛れ!!『私』の
強烈な『力』の発露。間欠泉かダムの放流のような勢いで吹き出るサイオンとは違うチカラが、言葉と同時にアーシュラを覆う。
「お兄様!!」
「………!」
そして打ち込まれた魔法式は、アーシュラに届く前に霧散した。
「………!?」
『ROAR』
呪文。今では半ば廃れてしまった魔法を唱えるためのコードがアーシュラの口から出てきて、その一言のみで、渡辺委員長や服部副会長などよりも強烈な圧が、模擬戦の部屋全てを揺らす勢いで叩き込まれる。
指向性を持たせた魔力圧は風圧となりて摩利を襲うも、身体加速を掛けての移動で躱す。
『FANG』
だが、そこを狙ってアーシュラは五指を少し開きながらも揃えてから、両腕を前に一杯に伸ばして攻撃。
言葉に従い指の先端から青色の光弾が機関銃の勢いで跳んでいき、指の間にも光が灯り、そこからは赤色の光線が飛んでいく。
赤と青のハレーションが齎す破壊は壁に床にと刻まれていく。
(なんてヤツだ!! 身体一つで、こちらのデバイスと同じことを行ったぞ!!)
そしてその威力と声は、デバイスという余計な中継地点を介するよりも直接的に世界を改変する。
各国で開発が進められている完全思考操作型CADの次世代型―――それと同じかとも思うが……。
(これが魔術師―――!)
魔法師を『人理の澱み』として、場合によっては『敵』として襲いかかってきた超常能力者たちだ。
そして、衛宮アーシュラの攻撃は間断なく続き対抗しきれない渡辺摩利だが、この『展開』だけは予想外であった。
事前に十文字克人から聞いた限りでは、衛宮アーシュラの戦闘スタイルは、『長物』……『剣』を使ったプレデトリーなゴリ押しの戦いであると……。
尚且つ、こちらの魔法は殺傷ランクがA以上でなければまともに通らないという話であったのに……。
(魔法に対するレジストは特級! しかし戦型は少しばかり違う!! ならば―――)
まだ勝ちの目はあるはずだ。
逃げてばかりでは、いずれ弾幕に囚われる。勇気を持って前に出る。典型的な放出系魔法の一つ『空気弾』に、いっそうの『チカラ』を込めて解き放つことで弾幕に対抗する。
干渉力・速度・堅さ。ともにA級魔法師のライセンス相当に匹敵するものが、アーシュラの『指鉄砲』と穿ち合う。
(そう。そうするしかないですよね風紀委員長)
ある種の『受肉した精霊』も同然。ある程度、体系立てた魔術系統も今の時代にはありえないものだ。
元々のスペックにおいてアーシュラに勝てる存在はそうはいない。だから手数で以て相手の手札を無駄にしていくという方法しかない。
それが―――魔法師が魔術師相手に出した一つの結論であった。
だが……。
「―――ッ!!」
100発近い空気弾の群れを操作し尽くして放たれるも、アーシュラの前面を覆う群れを前に―――。
アーシュラは一切構わず。指鉄砲の射角を変えてそれらを真正面から貫いた。
「渡辺先輩のエアブリット100発よりも―――」
「アーシュラの放つ指鉄砲10発の方が重いか……」
雲間を貫く光条。そうとしか言えないもので空気弾は消し飛ばされていくのだった。
だが、渡辺摩利も、それに負けじと様々な魔法を放つ。
渡辺摩利の得意手は気圧などを操作する『空気』に関わる魔法であり、それを利用したものが放たれる。
一見すれば派手な魔法を放つアーシュラが有利に見えるだろうが、その間にも摩利は必殺の攻撃を放つべく『チカラ』を溜め込んでいる。
そう見た七草真由美は、横で泡吹いているあずさに構わず仕合を流している。
それを放つ好機は―――。
『DRAGONBALL』
指鉄砲による攻撃を変化させた時、つまり間隙を縫う。
大技を放った時に―――。
必殺の『窒息乱流』が発動。荒れ狂う窒素の渦の中に取り込まれるアーシュラを前に、渡辺摩利は勝利を確信するも―――。
『FAIRY TALE』
人間にとって有害なはずの窒素の乱流が、柔らかな風へと変化を果たす。
否、こちらの魔法式を『書き換えた』のだ。
その原因は―――……。
(なんだアレは? アーシュラの周囲に『蝶』のような光り輝くものが見える。アレが……渡辺先輩の魔法を……変えたというのか?)
「詳細に見ないほうがいいわよ。というか見るな。アナタが改造人間でも、『妖精』に拐かされたらどうなるか分かったもんじゃない」
斬り刻まれたものを更に斬り刻んでも意味がない。そう言ってくる立華の言葉で正体を察した。
『妖精』なるものがどういうものか知りたいが、そう簡単には教えてくれないだろう。
そして、窒息乱流に介入されて必殺を無力化された渡辺委員長は呆然としている。
「―――カツトさんから何を聞いたか知りませんが、ワタシに現代魔法で利かせようと思えば、もう少し効果的に戦ってください。ナイトロゲンストームが発動しようとしているのは分かっていましたよ」
「なにっ?」
「『ニオイ』とでも言えばいいんですかね。大気中にサイオンによる改変を起こそうとする先走り、先行放電とでも言えばいいものが鼻を突くんですよ」
「ならば、何故ワザワザ大技らしきものを発動させようとしたんだ?」
「―――それは自分で考えてください」
その言葉で、摩利は既に自分が三巨頭とか言う一高の最優秀の魔法師の一つではなく、ただ一人の魔術師に追い込まれて後がない現代魔法師の一人でしかないのだと悟った。
遠巻きな挑発を受けながらも、摩利は―――覚悟を決めた。
「いいだろう……抜かせたな。私の秘剣を―――」
スカートのスリット部分から出してきた細く薄い板状の刀剣を手にする渡辺摩利。既に制服はボロボロで、見ように寄ってはあられもないものだ。
それを見たアーシュラは、一昨日の朝に弓兵から教えられた『技』をやるチャンスだと―――木剣を持ち構える。
込められる『チカラ』の密度に―――それでは砕けるのではないかという達也の不安をよそに、ギリギリのラインどころか木の棒をチカラの塊にするアーシュラ。
接近戦の構えを取ったアーシュラの姿に渡辺摩利は緊張の汗を流す。
(五手……いや、七手で『詰み』か―――進退窮まるとは、このことか……!)
剣客としての筋が無ければ、摩利はそのことに気づけなかっただろう。
だが気付いてしまったからには、『確かめなければ』―――『負けてみなければ気が済まない』。
闘気が満ちる。殺気が突き刺す。
良く練られた魔力を通した木剣は、玩具のようなものから稀代の魔剣も同然になっていた。
「いざ参らん―――!!!」
身体加速を使って駆ける摩利が振るう剣が伸長した瞬間、それを切っ先を使って絡め取ろうとしたアーシュラの間に『金色の影』が割り込み―――。
「ゲェッ!!!」
『正体』に気付いたアーシュラがレディにあるまじき声を上げて―――。
お互いの切っ先を掴まれて左右の壁―――凡そ10mは先にあるところに投げ飛ばされるのだった。
バランスを崩したとは言え、壁に垂直に突き立つ摩利の剣。
同じく突き立つアーシュラの木剣。突き立った瞬間―――大きな模擬戦部屋の壁が爆裂四散して奥の建材すらもむき出しにする威力。
頑丈で柔軟に衝撃を吸収するものを砕く得物。
それだけの魔力が込められていたことに気づき、誰もが『ぞっ』とした。背筋が粟立つ……。
何より―――。
「さて……何がどうなって、こうなったのか……しっかりじっくり聞かせてもらいましょうか?」
……こちらに介入してきた金髪の女教師―――衛宮アルトリアの怒りの笑顔に、誰もが死を覚悟するのだった。(立華は魂が抜けかけている)