魔法科高校の姫騎士~Alternative Order~ 作:無淵玄白
原作にはないオリジナルのセリフや展開・設定というのは、私が明確な意図。魔法科高校に対するアンチテーゼとして呈したものであり、その後の展開も含めて、こういった風なことを述べさせたという点がある。
それ故に、マキャベリストの体の良い道具やそういった風な結果だとしても、そこにはオリ主など作者である私の意図を以って接触したり近くに寄こすということがある。後々の救いや、その後の展開のためにも、見せ場を作ったり色々と必要なわけですよ。
長々とわけの分からないことを書きましたが、要するに―――。
この『かっぽれ』野郎め。恥知らずすぎる。
今日の夕食会は色々と特別であった。急遽の予定を変更しての全校合同での夕食会。
まだまだ闘いは続くのに、色々と知られてはいけない情報のやり取りもあったり、腹蔵無く会話をしながら明日の英気を養うためのそれが無くなったのは、クラウド・ボールで驚異的な百錬自得の極み(間違い)を用いてストレート勝ちを決め―――。
アイスピラーズのボーナスステージで、
(考えるだけで頭が茹だりそうな結果の羅列だが……)
最後の力を振り絞り達也は、今日にいたるまでのアーシュラの功績をあげていく……。
バトル・ボードにて、数多のライバルを寄せ付けないダッシュ四駆郎、星馬烈、星馬豪なみの
そんなアーシュラは―――。
『イヌヌワッ! イヌヌワン♪』
『フォウフォウ! フォウーーウ♪』
「はいはい。ありがとうね。けれどここでは大人しくしているように。ご飯は食べさせてあげるから」
などと、イヌとネコに構われているのだった。抱きしめられた状態のまま、何度も舌でアーシュラの顔を舐めるカヴァスとフォウの愛情表現の過剰さに、渡辺委員長が少しばかり『ぐぬぬ』な表情だ。
「……そりゃ命令じゃなくて『出来れば』って話だったけど……」
そんな様子を見て一家言あるのは、七草会長であったりする。
夕食会に来ただけでも僥倖なのだから、これ以上を望むのは罰当たりだろう。
「仮にもしも強制していれば、アーシュラはこの大会に出ている一高生全員に、仮装を要求していたでしょうね」
事実、女子ピラーズの上位入賞者も通常の制服なのだから、その場合……。
「嫌がらせと感じたでしょうね」
「そんなつもりは無かったんだけど……」
会長の思惑としては、深雪以上に目立っているアーシュラを一高の『広告塔』としてお披露目したいというものなのだろうが、そもそもそういうのに反発しているのが彼女なのだ。
「アーシュラが一高という場所に溶け込んで、その価値観を共有出来ていれば違ったかもしれませんが、それはあり得ない」
「……達也くんってアーシュラさんに対する理解が深いわよね……」
いじけるように、ふてくされるように言う年上に、表情を変えずに答える。
「俺は、アーシュラとは逆ベクトルですが、1年の劣等生の分際で、2年の先輩に『小物が』と罵倒したはぐれものです。そういう意味では『異なるも同じもの』というところでしょうか」
似て非なるものへの対義語―――造語ではあるが、それを言った真由美の表情は、あまり優れない。
結局の所、あの4月のブランシュ騒動以来、彼女のココロは曇り空のままだ。
達也が罵倒した生徒の放つ怒りの一撃が、大講堂を病葉に砕いた。
その後は、壊乱して混乱した多くの生徒が亡霊たちの嘆きの叫びに斬り刻まれて、獣性の魔術を発動した2科生が爪牙を振るって、遠吠えを上げて1科生たちを斬り刻み、噛み砕く光景が絶望感を増した。
あのとき、真由美は本気でこの世の終わりを自覚した。
自分が信じた全ては打ち砕かれた。
獣の姿に成り果てたとしても1科生たちを斬り刻みたい。殺したいという怨讐の刃の鈍い輝きに――――――。
ヒトの憎悪の果てを見た。
ヒトの中にはこれほどの憎悪が眠っているのだろうか。
その後、外に出た後に見たのは、学校施設全てに攻撃を開始する『コンストラクト』と呼ばれる
そして、それ以上に恐ろしかったのは、アイルランドの英雄。かつてはIRAという連合王国からアイルランド独立を目指す反政府ゲリラの象徴となったクー・フーリンという存在だ。
「………」
目を覆いたくなるような惨劇の連続を思い出して、身震いを今でもしてしまう。そんな中でも闊達に動けた人々を頼ってはダメなのか。
司と問答をしてそれでも刃を向けた士郎先生。
悲しみの中に囚われた壬生の憑き物を落とした上で、その在り方に理解を示せたアルトリア先生。
……そして、その2人に頼らずとも率先して動いた、事態の終結と、その後のことまで読んでいたカルデアのマスターと、そのサーヴァント。
それを頼ってはいけないのか?
「……あの後、壬生さんを諭せた、安堵させたアルトリア先生に聞きにいったのよ。どうしたらば、良かったんだろうって?」
「望んだ答えではなかったんですかね」
「―――ええ」
優秀生で、とりあえず『模範生』として今まで生きてきた真由美の人生において、あそこまで痛烈に『教師』から言われたことなど無かった。
だから衝撃的だった。
職員室にて対面で向かい合った美人教師。しかし、その印象は―――まるでどこかの『王様』への謁見のごとく思えた対面での話し合いだった。
『―――はっきり言えば私は、アナタが失敗すると理解していましたよ』
『なんでか? なんてのを説明するのも煩わしいですが、教えましょう』
『多くの人を啓蒙させたいとして言葉を重ねたとしても、その当人が蒙昧であれば、その言葉は薄っぺらく感じられる』
『―――マユミ、多くの人間にとって最初に与えられる
『私も実父ではなく養父と養父の息子―――私の義兄にあたる人間と育てられました』
『養父は、私に自分を『父』と呼ばないように厳命してくる厳しい人物でした。ですがその在り方は理想の騎士。私の剣の先生でした……』
『敬うのは当然です。だが、今考えれば、アレはエクターなりのケジメだったのでしょう。師であることで通す。もしも父と呼ばれたならば、彼は私の『運命』を変えてしまうことを理解していたから、最後の父娘としての情を持たせなかった』
『―――マユミ、アナタは少なくとも、どんな感情を持っているかはともかく実父を持ち、そしてその父親の庇護のもと育てられてきた』
『家を、家族を―――一番側にいた人間である父親を理解することもしない人間が、大勢の人間のために動こうとするなど烏滸がましいのですよ。何故ならば、少なくとも私の眼にはコウイチは、父親として決して娘から悪罵を言われるような存在ではないと理解しているからです』
『―――、一番近くにいる父親という家族を理解することも、知ろうとも、向き合おうともしないアナタが―――『他人』ばかりのこの学舎で、誰に対して向かい合っていたのか分からない限りですよ。アナタの眼には―――『何も映っていない』』
『……ここまで偉そうに語っていましたが、私も昔は、少々『意固地』で通していた気はします』
『―――ですが、本当の意味で守るべきものは、父親の姿を見ていれば分かったはずです』
『―――場所ではなく、『人』を、そこに生きる人々を守る。そこに生きる人々の『真なる思い』を知る。アナタに足りなかったものは、それですよ』
……全てを思い出して真由美は、少しだけ思う。
もしも、父に仁義と筋を通せば、多くの魔法家からは手勢が多いとされる
国防軍でも名うての殺し屋、壊し屋として名を馳せた名倉が、父の執事や真由美のガード程度で収まらせているなど、人材を腐らせているようなものだ。
(七草はある種、人材をプールしているんだから、そこから開放することもできたはずなのに)
何故、それを『実行』出来なかったのか。名倉を見て、鈴音を見てきた真由美ならば、『御家断絶』をされた人々に栄達を与えるチャンスを。そんな文言で父に通すことも出来たはずだ。
懸命に、必死にプレゼンすることで、はたまた脅し透かしすることで……。
けども。
「―――――羨ましいわ。本当の意味で尊敬できて、そばにいてくれる両親がいることが」
やはり父に対する感情は複雑だ。未だに離婚が成立していない別居中の母との関係の整理など、諸々考えて……そうなってしまった。
「………家にいるだけいいじゃないですか。俺のオヤジなんて、お袋が死んでから外に拵えていた愛人の家を住まいとしているんですから」
「そう」
達也のフォローにならないフォロー、本人はフォローのつもりを聞いても、淡白な返事でしかない真由美は―――。
「会長。そろそろ入っても構わないそうです」
―――五十里の言葉で大トリとして入場することになるのだった。
主役の一人というか、多くの高校の目的であるアーシュラに声を掛けることはしない。なんかそういう『注意』をすれば、頑なになりそうな気がしたからだ。
懇親会以来の大ホールにて、無知の知を思い知らされることになるのだった。
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「まぁ、アーシュラにそういった対応を強要するわけではありませんでしたけど……」
「まさかマジでメシを食うことだけに専念するとはな……」
だが趣旨は違ってはいない。結局、アーシュラは『千葉エリカ』というホテルの『従業員』の平謝りの元、悪くなりそうな食材を消費するためにやってきたのだから。
懇親会の時には、『変なヤツ』『女子力ゼロ』
今日に至るまでに、それらを覆してきたのがアーシュラなのだ。
誰もがアーシュラと話したいし、何かを知りたいと思うのだが……。
「おかわり」
「は、はい!! 美月ちゃん! ここは私が何とかしますから、厨房の方をお願いします!!」
「わ、分かりましたガレスチャンさん!」
「なんか呼び名が違いますね!」
唯一のテーブル席。そこには大海原に広がる島々のように美味礼賛な料理の皿がいっぱいあった。
そんな風に色彩豊かかつ容量一杯に広げられた料理が無くなっていく光景は、何かのコントにも思えたのだが、それは現実にあるのだから仕方ない。
グルメ細胞を持った超人よろしく、15億の賞金首の海賊船長の食事シーンのように、カラの皿が積まれていっては、洗い物に回される。
レオや幹比古が持っていくカートに積まれる皿の量は、いつでも積載量ギリギリだ。
「アーシュラ姫、こちらのミネラルウォーターでお口直しを。私が水ソムリエとして姫の食事をサポートさせていただきますよ」
「大儀であるギャラハッド」
言いながらグラスに開けられた透明な水―――事実、口中をリフレッシュさせるものを飲むアーシュラは、所作とかグラスをくゆらせる様子に何かの貴族・王族を思わせる。
「ギャラハッド。お前一人にそれをやらせるわけにはいかない。ここは『湖の騎士』として、私も手伝おう」
「富士五湖の水質を改善して、釘パンチでも打って湧き水を出してからやってもらおうか」
「ギャ、ギャラハッド―――!! お父さんにグルメ細胞の悪魔(?)は、いないんだぞ―――!!」
ガン泣きしそうな龍太郎ボイス(?)は、日頃から『寺』で達也は聞き慣れているのだが……。
まぁ色々と思うところはある。
「というか、この分だと俺たちが食べる分も無くなってしまうんじゃないか?」
「だ、大丈夫ですよ。みんな少食ですし」
そうは言うが、何も腹に入れないで終わるというのは、流石に妹も止しておきたいようだ。
そもそも『みんな』とは言うが、全ての高校生がそれでいい訳がないと思うのだが……。
食事を楽しむ彼女は、この上なく生き生きしている。
「アーシュラと会話したいというのに、会話出来ない状況だな……」
テーブル席に近づかせまいと、ボーイ姿のサーヴァント達……4月の闘いでも見た騎士たちが、アーシュラのテーブルの周辺に展開をして、護衛をしているようにも思える。
明らかな『特別』扱いだが、それに文句を言うことも出来ないほどに、誰も近づけない。
百戦錬磨、常在戦場を旨としてきた強者のオーラを感じて、あの一条将輝や十文字克人でも後ずさり、物怖じをしてしまうのだ。
(サーヴァントは英雄だ。アーシュラが使役している者たちも、かつては古き時代の戦場で名を馳せた存在なのだろう)
もはや、その『正体』は、流石にそういった伝説や神話に疎い、専門外である現代人真っ盛り(?)な達也でも理解しているが……。
(何故、アーシュラを
そう呼ばせている―――わけはない。彼女はそういう格式張ったものを嫌っている。ただの召喚者であり使役者であるならば、『マスター』でいいはずだが……。
少しの嫉妬心を疑問と共に持っていた時。
「……お兄様」
目線と声で訴えかける妹。
要求されていることは理解できる。
「――――――やはりオレなのか、オレだけなんだな」
「……なんか嬉しそうに聞こえますけど」
「妹に頼られたことに嬉しいんだよ」
「お兄様のウソって分かりやすいから、深雪はキライです」
中々に痛烈なことを言われたが、期待には答えねばなるまい。というか、そもそも他人の技法や技術を聞き出すということはマナー違反のはずなのだが。
全てが不明の圧倒的技術の一端だけでも知りたい。問われて答えるとは限らないというのに……。
「――――――」
それでも達也も、それを知りたい一人であり、この中では十文字会頭などを除けば、現代魔法師として関わりを深くしていた一人なのだから。
歩みを進めていく達也の姿に、誰もがざわつきを覚える。
給仕服とホテルのボーイの中間の服を着込んだ一人。眼を伏せて岩のように固まっていた一人が眼を開いて問いかけてきた。
「ご用件は?」
「―――アーシュラと話がしたいんです」
「分かりました。どうぞ」
てっきり『メリエンダ』の真っ最中だから邪魔するな、などと言われると思えただけに、道を開けてもらった時には少しだけ意外な思いだった。
「隻腕のベディヴィエールに話しかけるとは、イノベイター同士で繋がりでもあるのか?」
「何の話だよ。俺はメタル化もしていなければ、北米空軍のトップガンでも無いんだが」
声は昔から似ているなどと、2010年代のレトロアニメ好きな小・中の友人などから言われていたが、感情を消された達也に、あのように強い感情の発露と執着心を剥き出しにした行いは出来そうにない。
ただ一機であっても世界を変える。変えていく……天の御遣いを自称して、地上に死を撒き散らす
超絶な力と意思を以て、全世界から戦争を根絶するために絶望的な戦いに挑む存在。焦がれていき、しかし最後には憎悪に変わってしまう……。
(考えてみれば、アーシュラは
しかし―――。あの作品のエースパイロットのように、最後に憎悪に変わることは出来そうにない。
何故ならば……。
彼女の色んな面を知っているからだ。戦いだけが彼女の中にあるものではない。
アーシュラの快活さ。
アーシュラの眼差し。
アーシュラの
―――アーシュラの可憐さ。可愛さ。綺麗さ……。
どれもこれもが、達也に焼き付いた深雪以外に向けられる感情の全てだ。
スプーンを口に咥えながら、顔だけをこちらに向けてきたアーシュラ。
平素な顔をこちらに向けてきて、疑問符を浮かべているアーシュラに対して……。
「――――なにやってんの?」
「すまん。後ろから抱きつきたくなった。俺は案外、我慢弱く落ち着きのない男のようだ」
「生憎だけど、ワタシはあなたみたいな姑息な真似をする輩が大のキライときている女よ」
そんな分かっているやり取りをしている事実も含めて、最大級のどよめきどころか大騒ぎが起こる。
「おおおおおおお兄様!!!! ななななな何をやっていられるんですかぁあああ!!!!!????」
「達也さん………ウソ―――ですよね……ウソウソウソウソウソうそうそそそおそそそそそそ―――こんなのおかしいですよ!!!」
達也を兄として男として慕う2人の女の慟哭と、同じくらいの色んな思いが、会場中を包んでいる。
バックハグ……レトロな言い方で『あすなろ抱き』をしている男女という、ちょっと時間としては、2090年代の日本の高校生には早すぎる展開に、九校全てがどよめいていたのだが……。
「一応言っておくけど、用意周到なアナタにしては随分と迂闊ね」
「その意味は?」
「だって――――こわ〜〜いオジサンが、こっちを睨んでいるんだもの」
こちらを細い目で見ながらも、言葉でテーブルの先に人差し指を向けるアーシュラ。
そこにあったのは簡易的な通信端末。
いわゆる映像を送受信できるリアルタイム通信端末。キャビネットのそれの簡易版が立ち上がっており、そこに2人の男女の姿を映していたのだった。
「し、士郎先生……!アルトリア先生……!!」
今、何処に居るのかは定かではない。だがそこにいた一高の教師の内の一人は、『我―――怒れ人なり』と言わんばかりに怒髪天を衝いていた。
だが次の瞬間には、少しだけ怒りを納めていた。
『まぁ、お前が色々と『大活躍』なのは、アーシュラや『関係各所』から聞いているから……それぐらいは、ご褒美として許してやる』
不承不承の唸りながらの言葉を掛ける衛宮士郎の言葉に、『両方』の意味で礼をするのだった。
「ありがとうございます」
「娘の身代をそんな簡単に他人にゆずらないでよ」
娘はあまりいい表情ではないが、そう言われては、まぁいいかと思うも……『後ろ』の方がウザいだろうなーと、考えを別の方向に向けるのだった。
でなければ、同級生の男子に後ろから抱きしめられているという事実に、アレな思いを抱いてしまうのだから……。