魔法科高校の姫騎士~Alternative Order~   作:無淵玄白

63 / 160
第62話『大夕食会Ⅱ』

 

「―――で、ご夫妻はいま何処に?」

 

画面の向こうにいるアーシュラの両親、一高の教師の所在を確認すると、予想していなかった場所が提示される。

 

『南極だ。人理継続保障機関フィニス・カルデア―――少し前までは、ハワイとラスベガスでアレコレやっていたんだがな。一気にとんぼ返りだよ……まぁ俺たちのことは、いいだろう。アーシュラ、立華はいないんだな?』

 

「現在、『教会の和尚(・・)さん』との『会合中』。エリセ立ち会いの下で『般若湯』を地に振る舞っているようです」

 

その言葉の不可解さを近くにいる達也は詳細に聞いて、噛み砕くに何かの符丁かと思いつつも、ふむ、と考えた士郎先生とアルトリア先生の顔。

 

『ではアナタに、言っておきましょう。カルデアの総意を告げます―――『秘密の一つくらいくれてやれ』。以上です』

 

「具体的には?」

 

『そこはアナタのマスターと共に、考えながら口にしなさい。ワタシは関知しませんから』

 

その言葉を受けたあとに、立華と六高の一年トリオが、駆けるように会場入りをするのだった。

 

「おつかれ~。ギャラハッド」

 

「承知。4人とも、私の『杯』で駆けつけ一杯どうぞ」

 

「ありがとうございます。サー・ギャラハッド―――ってアーシュラ! 人類史に刻まれた英霊を、執事みたいに扱って!!」

 

下知を受けたギャラハッドの行動というか、アーシュラの言動を諌めるは、宇津見エリセだったりするが、ギャラハッドは『お構いなく』という。

 

「ミス・エリセはやはり硬いですね。何やかんや言っても、我らも現世らしいことをしたい『人間』が多いんですよ。かの征服王も、冬木の地で我らが王と戦った際に、様々な遊興に興じたそうですからね」

 

「そ、そりゃそうかもしれませんけど……」

 

要は英霊にも人格があり、昔のままではいられない。現世のことを知れば、それに興味を持ってしまう。

 

「あの日の(じぶん)がいる。夢見る英雄(ブレイブ)じゃいられない―――そんなところか?」

 

「ザッツライトです。ミス・カリン」

 

ロックでダンサブルな少女の一言で、聖杯の騎士は我が意を得たりと言わんばかりに賛意を示す。

 

「とはいえ、我が王の水着姿を前にして、ペンライトを持ってヲタ芸をする騎士もいるほどなので、現世(俗世)慣れするというのも考えものですね」

 

その言葉で3人ほどの『騎士』が、ギクリ! としたような顔をする。

 

「ちょっと待ちなさいギャラハッド! アレは我らアロハ三騎士なりの、王への敬意と忠節を表現しているのだ! 断じてそのような低俗なものではありませんよ!!」

 

「然り、すなわち王は我らがアイドル。ポロロン♪ ポロロン♫」

 

「年若いお前には分からないだろうが、我らほどの騎士ともなれば、実物の王でなくとも忠節を捧げられるのだ!! 息子よ!理想の主君と共に王道を歩むとは、そういうこと(?)なのだ!!」

 

熱烈に語る金髪の偉丈夫に追随する薄目の楽師(?)風の男が、言葉少なにしながらもハープ(?)を弾いて見事な音を鳴らす。

 

そして最後の置鮎ボイスは――――どういうことだってばよ。としか思えず。

 

『『『気持ち悪いですね』』』

 

画面越しのアルトリア(笑顔)、ギャラハッド(汚物を見るような顔)、アーシュラ(平淡な顔)で返すのだった。

 

ショックを受けたのか、アロハ三騎士『再起不能』(リタイア)とでも付きかねない様子で打ち拉がれるのだった。

 

『それでは、仔細はお任せしますので、あなた達でやってみせなさい。いつまでもお守りが必要な歳でもないでしょう。一高を恐怖独裁支配するのも一つでしょうしね』

 

話の終わりのつもりなのか、アルトリア先生がそんな言葉を画面から掛けてきた。

だが最後の文言に関しては、色々と想うところはある。

 

というか、そんな計画を進行させていたとか、止めてくれよ。という想いを抱く。本気でこの2人が、それを画策した場合、どんなことになるか分からない。

 

カウンターとして有効なユニットは、教師2人だけなのだから。

 

『それじゃおやすみ。明日も頑張れよ』

 

「明日はお休み―――というよりも、もう『出場競技は無い』んだけどね。おやすみ〜お仕事がんばってね」

 

『ああ、そして司波―――タイムオーバーだ。離れろ』

 

「―――はい」

 

娘とのやり取りを終えた士郎先生に、次に声を掛けられた達也。名残惜しさを覚えつつも、『出場競技が無い』というアーシュラの文言に引っ掛かりを覚えて、何気なく、後ろにいる旧・モノリスコード出場組―――現・プリンセスガード出場組を見ると、眼を伏せて悔しさを耐えているような顔をしていた。

 

一番に顰めっ面をしていた森崎を気遣う滝川を見つつも、教師2人にしてアーシュラの両親との会話は終わった。

 

「―――発令された『オーダー』は?」

 

そしてこれも予定調和だったかのように、油淋鶏を頬張る姫騎士に問いかけるカルデアのマスター。

 

答える言葉は。

 

「open the secret thinking layer」

 

それを聞いた瞬間、ふむと考えた藤丸立華だったが、すぐさま破顔する。

 

「オーケー。分かったわ」

 

そして、魔術師の中でも異端の中の異端たちを知るための『会話』が始まる―――のだが……。

 

「司波くんは、『あっち』に居たほうがいいでしょ? バックトゥザセオリーサイド!」

 

「意味不明な英語を使うな」

 

だが、流石に深雪があんな悲しい顔をしているのは『兄』として申し訳ない気持ちになる。ほのかに対しても若干の申し訳無さを覚えつつ、魔法師側などとも言える群衆の中に戻るのだった。

 

(結局、アーシュラと話すことは出来なかったな)

 

まぁ聞きたいこと……彼女たちの秘密を聞く役目は自分じゃない方がいいだろうと思えた。

 

「藤丸さんも来たことだし、ちょうどいいんでしょうね―――端的に一番の謎に対して聞こうと想うわ」

 

トップバッターとして出てきたのは七草真由美。彼女としても連日に渡って各校からアレコレと問い合わせを受けてきただけに、いい加減聞きたかったのだろう。

 

「あなた達の使う魔術と私達の使う現代魔法―――どうしてここまで圧倒的な差が着くの?」

 

「年季が違うとしか言いようがないですね。BC世紀の終わり、AD世紀の始まりに現在の魔術の歴史は始まったので、凡そ2000年以上の積み重ねがある。それだけですよ」

 

聞き方が悪かった。そうとしか言えない真由美への回答。しかし改めて聞くに魔術の歴史は自分たち現代魔法師に比べて長過ぎる。

 

現代魔法は、その歴史を古き時代の遺物としてきた―――と自称しているが、実際、本気を出した魔術師たちの術式や使い魔などは、自分たちを滅殺するに相応しいものばかりなのだ。

 

古式魔法とも違う『魔術』―――それは何なのだと想うのは当然だ。

 

「……だが、それだけならば、何故―――古式を現代的に解釈して、登録したはずの現代魔法が追随出来ないんだ? 俺たちは―――何か『致命的』なものを見逃しているのか?」

 

「まぁ『ある意味』では」

 

十文字克人の言葉に、アーシュラが短い返事で答える。そしてのちの言葉は正鵠を射抜くものであった。

 

「少々長い話になりますし、あなた方が信じられるかどうかにもよりますが、まぁ話してあげましょう。どうせ遅かれ早かれそれに気づくことになるんだから」

 

藤丸の嘆息気味の言葉。

 

「まず前置きとして知っておいてもらいたいのは、地球という惑星(ほし)に張られた織物(テクスチャ)―――『人理版図』と呼ばれるものに関して」

 

 

 

「―――かつて私の教育係であった魔術師は語りました。世界の在り方とは薄皮一枚隔てているだけで、さほどの違いはない。と、人間の世界も妖精郷も、惑星(ほし)に張られた『外観』の一部でしかないのだと」

 

「その薄皮一枚隔てた先に行くのに俺は、結構苦労したんだけどな」

 

「苦労の甲斐はありましたか?」

 

「そりゃもちろん。キミにもう一度会えたんだからね」

 

「シロウ……」

 

管制室でいちゃつかないでほしいと想う面々が多いというのに、この2人は変わらない。ともあれ観測を続ける面々は、正しくプロフェッショナルであった。

 

そして導き出されていくものを見ていく……。それこそが人類の未来に貢献出来るのだと信じて―――。

 

 

「―――惑星(ほし)というのは、その地表で活動する生命(いのち)によって物理法則を変えていく。かつて神秘と魔力が満ちていた神代という時代が終わりを告げたのは、人間が霊長の座に着き、最大多数になったからこそです。

人格を持っていた自然()は、ただの自然現象に変わっていき、大気中の真エーテルは霧散した」

 

言葉と同時に、『礼装』で『天体観測図』―――プラネタリウムを会場全体に映しながら、立体映像とも言える『地球儀』―――バレーボールサイズの地球儀には何かの線、赤と緑のが真っ直ぐではなく、重なるところがありながらも、地球に落書きのように引かれている。

 

一拍区切り、全員の反応を見る立華。戸惑い、困惑、不審―――色々だがそれでも話を続ける。

 

「最後の神代魔術の実践者『ソロモン王』の死去により、この惑星(ほし)は神代と決別をした。同時にそれは―――この惑星(ほし)は、あらゆる自然のサイクルから独立して生きていける『人間』の手に渡った。

そして、人間の知性とも精神性とも言えるものは、『不確かな法則』という『闇』を照らすことを選んだ。

いわゆる自然科学の分野の発展こそが、それに当たりますね」

 

それは人間の歴史とも言えるものだ。それが……どうしてそこまで魔術の優位性に繋がるのか。誰もが固唾を飲んで言葉を待つ。

 

「結果として惑星のルールが、『人間が生きるために最適化した法則』に変化をした―――ということです。同時にそれは、妖精や巨人、竜などという存在にとって生き辛い世界になった―――この後、魔術師側で言う所の『第一の魔法使い』の死去を契機に、擬似エーテルの発見が為され、魔術の実践が可能となり―――ブリテン島―――ブリタニアを主とした、魔術師の組織であり学舎、『時計塔』などが刻まれていくわけです」

 

「……そう納得しておくとして、それがどうして俺たちの弱体に繋がるんだ?」

 

克人の焦れたような言葉に、嘆息しながら立華は説明を続ける。

 

「前置きというやつを理解していただきたいもんですね。要は―――現代魔法で言う所のエイドス改変というのは、この『人理版図』(テクスチャ)とは別のところに打ち込まれている。先程の例で言えば―――『現代魔法』という別の法則(異性法則)が惑星上に敷かれているようなものですよ。要は『魔法師』という作られた生命(デザインビーイング)にとって『都合のいい法則』というのがね」

 

「な、なんだと? 現代魔法及び古式魔法の『発見』というのは―――人理とは別口だというのか?」

 

あからさまな動揺をする十文字克人。

 

前置きの話を考えるに、まるで『魔法の存在が惑星(ほし)にとって異物』という表現は、何とも言い難いものはあっただろう。

 

その前の立華の『デザインビーイング』……作られた生命という表現に、少しだけ眉根を寄せた面子が多いのもあっただろう。

 

まぁ世の人のイメージ通りではあるのだが、決して表現として間違いではないが、もう少し手心を加えてほしいココロはある。

 

「先程言ったように『ヒトの知性の方向』が、見えないものを明らかにする。

医学分野においては、近代の当初においても細菌という病原を発見することを是としてきた顕微鏡()が、ウイルスというミクロの世界の『病原』を見えることに進化していったように、ヒトの知性は疫も、干魃も、冷害も『己の力』で乗り越えていく方向にシフトしていった―――しかし、こと私の眼というよりも、魔術師全体の認識では、『魔法師』というのは、少々違うと思えた」

 

「……続けろ藤丸」

 

これ以上は、正直いえば聞きたくない想いが生まれつつあったが、それでも十文字が聞くことにしたのだ。それを聞くまでは、耐えなければいけない。

 

「魔法師のサイオンというエネルギーは、地球―――『ガイア』に由来するものではない。我々は、極論してしまえば、この時代においても地球と対話し『仲良し』になることでしか、大規模な魔術を発動できない。地球の血脈、龍脈、レイライン、霊脈―――何でもいいですが、まぁそこは置いておくとしても、みなさんが扱っている想子(サイオン)の正体すら『不明』じゃないですか。ほら、この時点で『人理版図』の在り方とは真逆になっている」

 

「エーテルは違うのか?」

 

「先に言ったように、霊脈上に点在する『霊地』。まぁパワースポットとも言える場所から吹き出す『地球のエネルギー』を、己の中に取り込むなり、己の体内疑似神経『魔術回路』で生命力を『魔力』に変換する―――まぁそういうものなんですよね」

 

その辺りは達也などの2科生は、士郎先生から聞かされていたので理解は及んでいる。だが、まだ魔法師が魔術師に及ばない理由の説明がまだである。

 

「先程言ったように、惑星表面上には幾重もの『テクスチャ』が張られている。

神代にはルールとされた層よりも古い『古代』の層もあったりする……」

 

言葉で藤丸立華は、水平に立てた腕―――掌の五指すら揃えて前に出した両腕を―――、左右で揃える前に『段違い』にして、肘を曲げて胸の前で再び腕と手に段差を作る。

 

「そして克人さんの疑問に関してですが、単純な話。人理版図側に打ち込まれた魔術式は、人理版図よりも『上』に食い込んでいる現代魔法の層。そこに打ち込まれる魔法式は、魔術式という魔法式よりも下に、奥深くに存在しているものに「下から突き上げられる」形で霧散する。特に同じような座標に打ち込まれた瞬間、本人の技量や術式の精度などありますが―――概ね、これこそが、回答になりましょう」

 

下にあった手で上にある手を押し上げた立華の手振り身振り付きの説明で、今まで多くの魔法師たちが、懊悩していたことに解が得られた。

 

だが、一つの疑問も生まれる。

 

「ちょっと待ってくれ。それでも惑星のルールが上書きされていくというのならば、僕たちの魔法式は決して君たちに負けていないはずではないのか?」

 

「いいえ、それはありません五十里さん。何故ならば、魔法師は決して惑星における『多数』ではない。『霊長の地位』にはいないからです。そして何より、人理版図の在り方、不明なもの、閉ざされている、隠されているものを明らかにするとは『真逆』の知性の方向性と、その恩恵もまた『多く』に与えられていない時点で、魔法師が定めたルール(法則)は、惑星(ほし)にしっかり根付いたものとはいえない―――」

 

五十里 啓の言葉に応えるのは、エリセであったりする。意外な想いを懐きつつ、喉を詰まらせたかのようになりながらも、言葉は続く。

 

「サイオン活動の根源も、いずれ魔法師は解明出来るかもしれない。はたまた『霊体』に対する『科学的な見地』も、いずれは出てくるかもしれないし、実践する存在も出てくるかもしれない―――けれど、『それだけ』です。

地球上に見えなくなった竜、巨人、妖精、人狼……幻想種は『見えなくなった』だけで、『いなくなった』わけではない。世界の裏側にシフトしていっただけですから、神話時代に人間を脅かしていた強大な力を有していることに変わりはない。ただ単に『生きづらくなった』から、惑星の表層(ちひょう)から消えただけなんですよ」

 

これはアーシュラの言葉。それを受けて、五十里も黙らざるを得ない―――インド神話におけるアスラの王、ヴリトラの力を解き放ったアーシュラが言えば、それは真実味を帯びる。

 

咆哮と共に解き放たれる黒竜の全て、黒焔の大津波……ミニスカドレスという卦体な格好、ビッグな胸元を露出強調して、外気に晒される太もも……耳元に吹きかけられる竜の息吹(ドラゴンブレス)ならぬ艶めかしい吐息―――。

 

「ちょっと啓! アンタなにか胡乱なことを考えてるわね!? そんなにまでも巨乳が好きか―――!? メイちゃんにも劣る貧しい胸で悪かったわねー!!」

 

ガン泣き寸前の様子を見せながら、真っ赤な顔で鼻を抑えた五十里啓に掴みかかる千代田花音の姿に、『何があった』かを他校の殆どが疑問に想う。

 

 

「前に克人さんには言いましたよね。魔法師は『浅い』んですよ。色々と―――」

 

「むぅ……反論しようにも証拠が無い。というよりも……」

 

 

―――その説明こそが、正しいのだと本能で理解してしまっている―――

 

そんなことを多くの魔法師が無言で想いながらも、夕食会の混乱は続く……。

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。