魔法科高校の姫騎士~Alternative Order~   作:無淵玄白

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3月のライオンならぬ6月のきのこ、か……信長さんめ。うまいこといいよるわ(え)

※  第57話『敗者たちの栄光』の前書きより


こんなことを言っていたせいか、それともマフィアが前からいっていたのか―――。

ウミノクマが来ちゃったよ―――!!(爆)

まぁ納期とか考えるに前から接触していたんだろうな……。

そんなアヴァロンPU第一弾においてモル姉さんとガウェインを手に入れた私は確信した。

『あー、つまりまずこっちを書けと言うんだな。オーケーオーケー』(間違い)

そんなこんなで新話どうぞ。長々と失礼しました


第63話『大夕食会Ⅲ』

 

 

「俺達……魔法師が認識しているエイドス・イデアというのは、世界の見え方の正しいものではないのか?」

 

何気なく口を衝いた達也の質問に、立華は口を開く。

 

「以前にも言ったような気がするけれど、目に見えるモノ、形あるモノ、不朽不滅なモノだけが、この世にあるものじゃない。地球の裏側での蝶の羽ばたきが、世界の気象状況に影響を与えるように、世界は常に揺蕩(たゆた)っている―――その『揺らぎ』を考慮していないってところでしょ」

 

結論としては―――魔法師は常識的な尋常の世人を畏怖せしめる力はあれど、世界の、地球(ほし)の深層を知り、真理にして神理に通じたものたちを脅かすことは出来ない。

 

重苦しい沈黙が、少しだけ降り立つ。

 

藤丸立華からすれば、この程度で意気消沈するようでは、早晩にでも教会の代行者たちに抹殺されてしまうだろう。

 

「―――で、そんな所で『釈明』のための説明はよろしいでしょうか?」

 

「……ああ。一条もそれでいいか? アーシュラの放った防御術にして聖都は、我々とは『深さ』が違う術だ。そう一条殿に伝えておけ」

 

「―――はい……衛宮さん、藤丸さん―――もうしわけない……」

 

((番付を落とすわけにいかない『横綱』というのも、面倒そうね))

 

秘密を明かしてくれたことに対してなのか、頭を深く下げる一条に、内心でのみそう想っておく。

 

結局、どんな場所での取組であろうと、大関・横綱としての相撲を取らなければいけないという十師族制度にいる以上、そんなものだ。

 

もっとも、魔法師の横綱として全ての番付力士……魔法師の上座に君臨するならば、『品位や行儀』というのも必要なのだが……。

 

(オンナにかまけて三段目に降格しそうな男だ)

 

どうでもいいことだが、魔法師にはそれがない。

己としての立脚点(れきし)が力にしかない。力を求めることでしか己を現せない―――。

 

だから歴史を知るべきなのだ。自分を、己を、見つめるために。

 

「で、聞きたいことはこれで『ハイハイハイ!!! 私、ちょー聞きたいことがある!!』―――エイミィ……」

 

これ以上は、アーシュラの秘密の暴露に繋がりかねないとして、お開きにしようとした際に、勢いよく手を上げて飛び跳ねる迷探偵が集団の中から出てきた。

 

赤毛のマロ眉の同級生は、眼をキラキラ輝かせていて―――。

 

 

「ズバリ言えば!! あれこそが、伝説のアーサー王が居城とした、城塞都市ロンディニウムにありし、キャメロット城なの!?」

 

「「―――ご想像にお任せします」」

 

「否定も肯定もない官僚的答弁!? 教えてよー!! アレって『ノウブル・ファンタズム』の一つでしょ? ヒトの身で、そんなものをフルで使えるなんて、スゴすぎだよ!!」

 

「まぁそうなんですけどね。けど、そういう『家系』なのよアーシュラは」

 

「ブラックモア村の再現霊媒みたいなものか……それでもアレが、白亜の城こそがキャメロット城であってほしい!!」

 

この中ではキャメロット城のことを知らない面子は多い。何となく程度ではあるが、アーサー王の城というのは、一条との戦いのあとにデータ検索して理解したのだが、興奮しきりの明智英美とは違い、詳細を知らず、その価値すら知らない魔法師では、なんというか置き去り状態だ。

 

茶器に『名物』としての価値を着けた織田信長のように、あの城にそういった価値があることを理解できないことがもどかしい。

 

当然、『術』としての効果は、十分に理解しているのだが……。

 

「明智さん。ノーブル・ファンタズムってどういうものなの?」

 

ノー!ノー!(NO! NO!)! 七草先輩! ニュアンスが違います! ノ()ブル・ファンタズム。伸ばすんじゃなくて、言い切るように発音してください!!」

 

「え、ええ……?」

 

まさか、そこに言及されるとは思わなかった困惑する会長。手を大きく振る大仰な仕草で、英語の発音に関して言われるとは想っていなかったのだろう。

 

「話が進まないからいいよ。エイミィ教えてあげて」

 

焼きサンマを頭からいって、5匹食い終わったアーシュラがそんなことを言ったことで、咳払いしてからエイミィは説明をする。

 

「ノウブル・ファンタズム―――和名で訳すれば『宝具』と呼ばれる、最特級の概念礼装にして概念武装―――それは、多くは英雄の武器や説話・逸話・伝説を具現化したものです。その形状や効果……はたまた器物であるか否かすら、論じることが無粋(ぶすい)な、現代の魔術及び現代魔法・古式魔法が及ばないステージにあるものです」

 

「……確かに、一条君の魔法が何一つ届かなかったことから、あの城の防御力は凄まじいものだと言えるわ―――けれど……」

 

何故、ここまで差が着く? 少なくとも十師族は、日本の研究機関が最高位の『戦闘兵器』として、様々な実験を行って作られたものだというのに……。

 

(確かに立派で綺麗で、荘厳な城だった……正直、無駄な造形だなんて言えないぐらいに、魂が震えて―――)

 

そして『効率』だけを優先した自分たちが、邪道だと言わんばかりのアレは、簡単に認めるわけにはいかない―――。

 

そんな真由美の内心を見抜くように、立華は言葉を連ねてくる。

 

「アナタ達が納得いかないのも無理はありませんね。けれど、『そうであるのだからそうなんですよ』。尋常の世の理を超える。それが『魔』というものです」

 

先んじた藤丸立華の言葉に、真由美の反論はどうしてもなくなる。否定しようとすれば、自分たちのことすらも否定せざるを得なくなるからだ。

 

まさか、物理法則を司るはずの『地球』の側の理屈を出されては―――。

 

「現代魔法的な理屈に照らせば、ロード・キャメロットは、恐らくあの時点で『同じ時間軸』には無かった。しかしながら、その防御力は確実に『現在時制』からの攻撃をシャットアウトした。そういう風に解釈しておけばよろしいかと」

 

同じ時間軸には無い。されど現出した城は一条の攻撃を通さなかった。

 

それが、どれだけの物理法則の常識を越えているのか、理解に及べないものたちは多い。

 

「で、でも……そんな風なこと―――」

 

「―――『あり得ない』などと言わないでくださいよ、光井さん。

今日に至るまでにわかっているはず。特に一高生は、骨身を砕かれ引き裂かれる痛みと、吐いた血反吐で存分に味わったはずだ!

『我々の業界』で―――そんな幼い言葉(・・・・)は何一つ! 通用しない!! 」

 

そんな中でも勇気を持って、否定とも拒否とも言えないが、言葉を濁そうとした瞬間、立華は言葉を先んじて否定し、そして全員の心臓を言葉一つ、目線一つで掴んだ。

 

「ヒトが、広すぎて深すぎるこの惑星(ホシ)(ソラ)の理屈をどれだけ知っているというのか……!! 実に烏滸がましい限り!! それならば、あの反魔法師団体との戦いでも、アーシュラの手を借りずとも、魔法力の弱い2科生、英雄クー・フーリンを熨せたでしょうに。けど結果は無残・無常・無情の限り。ああ哀れ…」

 

「「「「―――」」」」

 

口を噤んでたじろいだ光井ほのかを筆頭に、誰もが、その言葉にどうしても絶句してしまう。

 

何故ならば、原理が定かでないものを解き明かしてきたと自称しているのが、魔法師だからだ。

 

でなければ、昨今ようやく開発できた飛行魔法も、いままでは不可能とされてきたものでしかない。

 

だが……それは所詮、『人理版図』上での物理法則を改変しただけの、浅いチカラでしかないのだ。

 

そう、魔術師たちはかく語り、自分たちとの違いを教えていくのだ。

 

「だからこそ、『あのような戦い』が起こるなんて、想像だに出来ていなかった。準備万端で迎え撃った所で、結果は変わらなかったわけですしね」

 

「それは……」

 

そして、そんな魔法師たちの常識を覆すチカラがあるのも事実。ここにいる一高生たちの、あまりにも幼い認識こそが、あの惨劇を生み出したのだ。

 

「魔法師は、目の前の現実を正しく認識するのが、第一条件だとか言うらしいですけど―――正直言えば、浅い限り―――我々の見えている世界なんてのは、星の側からすれば、表面(サーフェス)の一側面でしかないんですから。

我々は、我々の見ている世界の見え方ですら、疑ってかかるべきなんですよ」

 

藤丸立華の言葉は、とことん魔法師の眼を抉っていく。

 

 

「よって―――これ以上の詮索は止してもらいましょうか。アーシュラのチカラは人理守護のための貴重な源泉。ひけらかすのは趣味じゃないので」

 

「……俺たちはお前たちと同じステージに立てないんだな」

 

寂寥感を宿した十文字克人の言葉に、藤丸立華は何も答えない。

そんな風に言うならば―――。

 

(一条将輝が敗れたことで、右往左往して狼狽しなければいいんですよ。何もかもを持ちながら前に進もうとすれば、自ずと重みで足は鈍る……何かを捨てる覚悟を持つものだけが、本当の意味で前に進める―――)

 

十師族の一員が、たった一度の敗北で、制度全てが終わるというのならば。

反対にカルデアは『負けっぱなし』の組織だ。まともに『勝ったためし』など、全く無いとも言える。

 

万全の態勢で挑めたことなど、一回もない。

いや、準備万端で挑んだところで、相手方のカウンターで『おじゃん』になり、楽観視していた状況は、全然そんなことはない世界終局の破滅的状況。

 

そもそも、最初の人理修復の旅の初っ端(ファースト・オーダー)から躓いてばかりだった。

 

 

けれど――――――。

 

「―――手に入れるのが『勝利』なら、手放すのは『敗北』でしょうか?

この意味が分かった時に、アナタたちの価値―――私の祖の一人『マシュ・キリエライト』が戦ってきた意味が分かるんですよ」

 

その言葉を最後に、魔術師サイドへの質問は無くなった。というよりも、藤丸立華の言葉の強さ、揺るぎなき信念、そして世界に対する見識の深さに、これ以上の質問は『魔法師』(じぶんたち)を不安定にすると理解してしまったからだ。

 

それこそが―――議会戦術の一つ、「理詰め」という反論を許さないものだとしても、全てのエビデンス(証拠)がある以上、誰も口を開けないのだ。

 

 

「―――難しい話は、よしておきましょう。何だか上手く誤魔化された気もしますから。よって私からの質問は九校戦に関してです、アーシュラさん。何故―――ガードに出ないんですか?」

 

「出なくていいと烈のジジイから言われたから。ワタシは、健おじいちゃんをこの国に帰すために、アナタのところの爆れつプリンスを倒しただけだもの。要するに―――ワタシの『信念』が、ジジイの『背骨』を叩き折ったのよ。後は言わずとも『わかる』でしょ?」

 

淋しげに問う一色愛梨に対して、皮が爆発した油淋鶏、やみつきネギ油(香味)付きを食べるアーシュラは言う。

 

つーか、こいつはさっきから食ってばかりである……。by達也

 

ちなみに、『爆れつプリンス』などと面白おかしく言われた一条は、自分の異名が「あかほりテイスト」に改変されたことに唸るのだった。

 

「………私はアナタと再び剣を交えることを楽しみにしていたのに……」

 

「残念ながら、縁がなかったということで納得して。というか本戦ミラージに出るとか聞いたのに、そんな身体を酷使する実戦競技に出ていいの?」

 

くさくさした思いを持つ一色愛梨に対して、アーシュラの視点は少しだけ違う。

 

プリンセス・ガードに出る『プリンセス』に関しては、出場する競技の限度に関係ない。

 

これは、ガードがモノリスの変則で、かつ実戦的な、いうなれば泥臭い戦いになると分かっているからこそ、『万が一』に備えて、何かしらのアクシデント、重大事故を未然に防ぐためにも、女子エース、ぶっちゃけ魔法力の強いものを入れることを是認することで、それらを回避しようという方向に向かっているのだ。

 

「私か栞が一番、実戦向きの能力を持っているからです」

 

「ふーん。けど、もうワタシには関係ない話よ。新人戦の競技2種目で優勝を決めて、『仕事』はキッチリこなした。あとは適当に観戦しておくわ」

 

まるで会社の通常業務をこなしました的な物言いは、色んな反感を覚える面子は多い。

 

だが、それだけが真理だ。

 

この九校戦において彼女にとって、敵と言えるものはいなかった。

魔法科高校のエリートたちを、ぶっちぎって最強は自分だと示すやり方……。

 

自分が勝つのは当たり前なんだと示す―――100か0か。生か死か。

 

生ぬるい中間はいらない。そういうクセが着いている……。

 

「アーシュラは、そういうタイプなんだよな。自ら己を追い込むことで、そこからの新たな自分を見つけていく……見せていく―――」

 

達也とは真逆だ。相手を圧倒出来るからと、多くを見せないで暗中殺傷。しかし、それでは―――新たな自分を見つけられない。

 

「………」

 

安全圏での戦いに拘泥しすぎていたのかもしれない。自分がこの世に、望まれてか望まれてないかはともかく、生誕してから15年。たかが15年。

 

その中で、四葉の訓練など、あまりにも世間一般の価値観では常軌を逸したものをこなして、自分を脅かす敵などいないと高をくくっていたツケとも言える。

慢心とも言える。

魔法師としても、戦士としても、命を懸けたギリギリのところで甘すぎた。

 

(今度、アルトリア先生は―――少し苦手だから、士郎先生辺りに稽古を着けてもらうかな)

 

そんな風に考えて、両腕にしっかりと巻きつき、離れようとしない妹と友人のことを忘却したい。

 

再びアーシュラに対して「あすなろ抱き」をさせまいとする、決死の行動なのだろうということに、『煩わしさ』を覚えてしまうのだ。

 

「深雪、ほのか。悪いが離れてくれよ。居たたまれない」

 

「お兄様がアーシュラに対して、あすなろ抱きなんて破廉恥な真似を公衆でやらなければ、何もやりません!!」

 

「た、達也さん……そんなことはさせません!! これはアナタの名誉を守るための行為なんです!!」

 

むしろ君たちの所為で、余計に名誉毀損が行われているような。そんな感想を抱く一方で十文字会頭と一条がこちらを見ながら会話して。

 

兄妹!? という単語を一条が驚きながら放つのを聞き届ける。

恐らくあの男、達也と深雪の関係に『愉快な想像』をしていたに違いない―――。

 

まぁ、あり得ざる話だ……。

 

すると、テーブル席に着いていた六高のミニスカギャル(死語)、ピンク色の髪をしたカリンという女子が、遂に誰もが疑問を覚えていたことに切り出した。

 

「ところでさー。アーシュラ〜。お前が着けていた、というより『今』も着けている『エンゲージリング』って、誰からの贈り物なんだ?」

 

輪切りされたレモンと氷が沈んだミックスジュースを飲みながらの質問に、微妙に緊張をした(ように見える)アーシュラは答える。

 

「父さんが、ワタシを使って魔導実験したい相手の為に作ったある種の測定器よ。そんな色っぽい話じゃないわ」

 

「へー、けど何で左手の薬指?」

 

「そこが一番、魔力の通りがいいからよ。まぁ利き手の動きが阻害されない分いいんだけどね」

 

……上手い躱しだ。そう。真実を織り交ぜつつ、決して相手が聞きたいであろう『核心部』をごまかした言い方だ。

 

ああ言っておけば、詳細はアレコレ問われないだろう……そう。何も言わないままだ。

 

隠して生きてきた達也にとって、それは喜ばしいことのはずだった。

 

本当だったらば、自分を知られないためにも、この九校戦とてエンジニアとして出ることすら忌避しておくべきだった。

 

だからといって、やるべきことに手を抜くことはしなかった……。

 

(それはお前だって同じだったはず)

 

そう、達也は苛立ちを覚えている。

 

自分のことを話さないで、お座なりに話を切り上げようとしているアーシュラの態度に。

 

それが正解のはずだ。それが正しい在り方のはずなのに……。

 

どうしても不満を覚えてしまう……だから、どうしようもなくって達也は言うのだった。

 

 

「俺だ―――その指輪型CAD「レアルタヌア」を士郎先生と作り上げて、アーシュラの左手の薬指に嵌めたのは俺だよ。六高のルーキーガールズ&ボーイ」

 

「「「「――――――」」」」

「ワタシの上手い誤魔化しを、砕かないでほしいんだけど……」

 

まずはアーシュラに近かった連中が、驚いた顔をして、アーシュラ自身は『コシャリ』という炭水化物の塊とも言えるエジプト料理を食いながら、嘆くように言う。

 

パスタとライスが運命的な出会いを果たした料理……2020年代に錦糸町辺りからブームを発したこの料理は、何故か……達也には、暗示に思えたのだから。

 

気のせいとか考えすぎとも言えるかもしれないが、それでも―――それを自分とアーシュラに置き換えるなどという、『キモイ』と言われたら嫌だなと、思考の渦に陥っていたところに……。

 

 

「「「「えええええ―――――――――!!!!!」」」」

 

恐らく今大会でも最大の声量ではないかという、一高一年女子を筆頭にした大声が懇親会に溢れ、給仕役であるエリカですら、あんぐりと大口を開けてしまう始末。

 

十文字会頭は、喉を詰まらせたのかお茶でおにぎりを流し込む。

 

最大級の混乱を起こして、夕食会はそれぞれで色んな想いを持ちながら―――一高女子たちは、『全員』で急遽の集会となることは避けられないのだった。

 

当然、その中には……衛宮アーシュラと藤丸立華は含まれているのだった……。

 

 

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