魔法科高校の姫騎士~Alternative Order~ 作:無淵玄白
頼光ママンも良かったのだが、自力でNPチャージを出来る分、神ジュナと同格。
むしろ女の子な分、こっちがいいかも(爆)ごめんよ信長さん(マテ)
そんなわけで新話お送りします。
女子新人戦ミラージバットのメンテナンス席に就いていた達也は、今までにないくらいの注目の的になっていた。
正直言えば、一高新人戦で目立っていたのはアーシュラであったはずなのだが、玄人向けとでもいえばいいのか、達也のCADの調整技術に気付いたものたちもいたようだ。
「まぁそれも一つなんだけど、それ以上に……分からないかい?」
そんな無言だったはずの達也の推測に『分かっていない』と言わんばかりに反論するのは、苦笑しながらの里美スバルである。
否定されたことで少しだけ考えて、他の選手たちが顔を赤らめている理由を考える―――と、答えは出るのだった。
「―――アーシュラへのバックハグ、あすなろ抱きか……考えてみれば、アレが余計だったか」
あの夜の達也は、どこかおかしかった。……いや、前から分かっていたことだ。
自分はアーシュラと深く関わったことで、狂わされているのだと。そして、それがどうしようもなく―――『喜ばしい』ことなのだと……。
「一高女子総出で、アーシュラを吊し上げたのか?」
「人聞きが悪い。まぁ事実の一端は突いているか。吊し上げたわけではないんだけど、そうだとしても彼女、淡々とやり返していたよ……キミは、アーシュラさんが好きなのか?」
「―――はっきりと言われると分からないが、やっぱり何というか、アイツは俺が親しく関わる女子とは違うんだよな……だから、何か―――俺はアイツに認めてほしいんだよな。当然、口先だけの称賛なんかいらないんだ」
「ふぅむ」
牽制するように、そんな『心にもない言葉』を吐かせることで、ある種の満足をさせてきたらば……ちょっとどころかイヤな気分だ。
「色々と複雑な『感情』がある。そうとしか言えないかな……」
スバルを誤魔化す答えで、とりあえずお茶を濁す。
いま、『答え』を吐いてしまえば―――それは致命的になる。だが、ただ一つだけ分かることは……。
どんな形であれ、司波達也は、衛宮アーシュラに『好意』を抱いている。
あんなにしょっぱい態度ばかりなのに、それでも眼が離せないほどに、瞼の裏に焼き付いたアーシュラの全てが外れないのだ……。
「キミの世界は、てっきり妹さんだけだと思っていたんだが」
「昔は、それでも良かったんだがな」
けれど、もうダメだ。
自分の思い通りになることが無い人間が、人々が、世界があることを教えてくれたことが、どうしても新鮮なのだ。
「だから、やっぱりアイツに認められることを、一つは成し遂げる。そこからだな」
「そっか、ならば―――はりきってやらせてもらおうかな」
「里美のアシスタンツには、何も特殊なものはないぞ?」
「いいんだよ。要するに、キミの技術力の凄さとかを彼女が認識出来るようにがんばる。キューピット役というやつだね」
達也から受け取ったCADを持ち、予選へと向かう里美スバルを見送る。
第1試合を終えたあとには、第2試合のほのかの調整が必要になる。ボードでアレだった分……気合は入る。
当然、ほのか自身も気合はあるようだ。
それ以上に――――。
『衛宮さんだけじゃなくて! 私を見てください!!!』
今日の朝食時に言われたその言葉の意味は分からなくもないが……。
(……俺は―――――――)
そんな答えが出ない苦悩を持ちながらも、達也の調節は冴え渡り、二人は予選を突破するのだった。
そして、その間にも、達也の知らぬ所で恐るべき事態は起こっていたのだった――――――。
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「第1試合は、順調に勝ったわね」
「ただ森崎君と滝川さん―――ピリッとしなかったわね。反面、五十嵐くんと皆本くんは随分と活躍していたけど」
「そりゃ調律を受けていなかったから」
「何とも、こんな時に自分の誇りを大事にしますか?」
「まぁリッカが言い過ぎたからかもしれないから、ワタシは死体蹴りはしないでおく」
「はいはい。申し訳なかったわね。ただそうでも言わなければ―――」
観客席にて喧々囂々の言い争い(?)をする、女子2人の会話が収まる。
というより会話のキャッチボールで、藤丸立華の言葉が途切れたのだ。
それは――――――――。
端緒として齎されるは、偽典の『聖槍』
人理を否定する影法師による殺戮
解き放たれるは、神話の巨獣。率いるは―――大帝国に座していた赤き大■の■……
相対するは、竜と妖精とヒトの血が混ざる運命の―――――――。
見えたビジョン。正しく破滅への未来視。
次の瞬間には―――天空より巨大な渦巻く『赤雷』が猛烈な勢いで、市街地であるプリンセス・ガードのステージ……その中央付近に炸裂。
その威力は、こちら、十分に離れた観客席にも届くあらゆる圧力で気付ける。
それに準じて、あちこちで大きな悲鳴が上がる。もはや観客席すらもガタガタと揺れてしまって、崩れ落ちるのではないかと想像してしまうほどだ。
大地震が起きて揺れる大地からどうすることも出来ないのと同じく、パニックになりながらも誰もが逃げ惑うことはしていない中―――。
「アンバース! アニマ!! アニムスフィア!!!」
「ギャラハッド!!」
「承知!!!」
その最中でもやるべきことを理解した魔術師と英霊は、観客席の全てを守ることに専念する。
赤い稲妻が吹き荒れるフィールド。
渦巻く雷霆がその熱エネルギーを放出し終えると同時に、崩壊しそうだった観客席は無事であり、観客たちは恐怖したものの……されど、炸裂の中心点であるガードのステージは、全てが漂白されたような有様。
あらゆる建物が破壊されて、粉塵が舞い上がった結果だろう。
されど、その光景は地球漂白化現象を思わせて―――生者の気配がないステージを前にして―――。
「―――鷹輔ぇえええ!!!!!!!」
弟の無事を想う姉の悲痛な叫びが轟くのだった……。
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「―――何があったんですか!?」
「お、お兄様……!!!」
達也がテントに入って開口一番いきなりな発言だが、誰もがそれを咎めない。
それどころか縋るような眼を向けられてしまっているのは、奇妙な気分だったが、それでも深刻な顔をしている会長の近くにまで歩いていく。
「達也君………」
「ミラージの予選のあと仮眠を取っていたんですが、あれだけの『圧』が放たれたんです。気づかないわけがないですよ」
「そう。眠りの邪魔をして申し訳なかったわね………」
アンタが悪いわけじゃないだろ。と言いたい気分を抑えて話を聞く。
「―――簡潔に言えば、一高対四高のプリンセス・ガード。―――四高からの『魔法攻撃』で、ステージは『崩壊』。そして、両校の選手たちは意識不明の『重体』……」
「―――――――」
意味が分からない。そう返したいが、苦しそうに言葉を吐き出す会長には何も言えないでいた……。
そんな達也の気持ちを察したのか、真由美はボールを違う人間に投げた。
「言うよりも見たほうが早いわね。五十里君、お願い……」
「分かりました会長」
一高テント内に設置されている大型映像端末に、技術スタッフの五十里が映像データを再生してくる。
その映像は、おそらく大会運営委員が撮ったものなのだろう。ドローンを介して撮られたものは、ほとんどが俯瞰であり、選手たちがビルの内部でどんな様子であるかはまだ見えない。
一瞬だけ窓の方に寄ってきた森崎が映ったが、全体を通して人の姿は映らない。
「まだスタートの合図がかかる前の映像だからね。仕方ないよ」
変化の無さを察したのか、達也を気遣う五十里の言葉。
「問題の場面まで
「いえ、何か『変化』の『予兆』などが見えるものがあるかもしれません……長いようならば、お願いしますけど」
「下線バーの表示で2分後だ。お願いする……」
時間が無くなっていくのを誰もが固唾を飲んで待っていく。緊張感が高まる。というよりも……誰もが見たくはないんだろう―――残り10秒になった時に―――。
「……」
奇妙な『違和感』を覚えた。何であるかはハッキリとはしていない。
だが、転遷する映像の中に何かを見た。その後には―――映像がノイズ、砂嵐を走らせていく。
ドローンが空中で維持できないほどの強烈な圧―――風圧が本物の砂嵐を映し出し、しかし地面に叩きつけられたことで、映像は俯瞰ではなくなった。
しかし、それが幸いをして、一瞬だけではあるが『螺旋を巻く赤雷の巨大柱』というとんでもないものを映像に残してから、地面に炸裂して溢れた魔法の攻撃力がドローンの映像を途切れさせた……。
まるで、ドキュメンタリー仕立てのホラー映画のオチのような光景は、それで終わった……。
全員が沈黙する。このあと、たっぷり30秒間ほど蟠った降り立った巨大柱は、市街地ステージ全てを砕いていったそうだ。
「……この魔法を投射したのが―――四高だという証拠は出ているんですよね?」
「うん。サイオンセンサー及び様々な計測機器からも、間違いなく『四高のCAD』から、これが放たれたのは間違いないようだね……」
「しかし、言わずともですが……」
「うん……」
苦悩の顔を隠せない五十里。疑問だけが残ってしまう達也。
(何故、こんな術が登録されているのに検査委員は気付けなかったんだ……)
当然、達也が開発した『機雷』のように登録されている術ではない。既存の術式でないならば、分からないかもしれないが……。
それでも、こんな『自爆戦術』をやる理由が見当たらない。
現状、四高が最下位だからこその『やけっぱち』ないし、爪痕を残してやろうという気持ちかもしれないが……。
「―――前に立華さんが言っていたことを思い出すわ。『動機』が分からないのよ……『ホワイダニット』。ミステリの用語らしいのだけどね」
……会長もそこに思い至っていたようだ。そう、これがただの現代魔法によるフライング紛いの『特定の建物』を狙った過剰攻撃ならば、なにもない。
ただ単に運営の不手際とか、何で四高が森崎たちのいた建物を理解していたとか。『その程度』で終わらせていたはずだ。
だが、今回は全てが不可解だ……。
犯人は分かっている。四高の出場選手だ。
手段は若干不透明だが……それでも大規模戦術級魔法の炸裂だと理解できている。
そして動機に関しては……不明としか言えない。
なんせ
「……まさかまた―――ランサーのサーヴァント、クー・フーリンが……?」
「……それは無いんじゃないか? 俺も英霊の武器―――宝具に関して詳しいわけじゃないが、
「うぐっ……お兄様が優しくない!!」
深雪としては鋭い推理を披露したつもりだろうが、やはり事実を重ねていくつど……。
「――――――
改めて想うに、達也はいわゆる『閃き』からの、論理性を無視した自由な発想というものが出来るタイプではない。
そういうタイプの『天才』ではない。
理論が先んじてあり、そこからの緻密な数式の構築があるタイプなので……こういう自分の知識では対処できない事態では、どうしても常識的なところに落ち着けようとしてしまう。
あり得ないことを想定しきれない―――
―――『我々の業界』で―――そんな
……などと、少しだけ諦めていたところに、昨夜の立華の言葉が蘇る。
そうだ。そもそも常識的なことと自分たちは思っていることも、世間一般的には『あり得ざること』なのだ。
長くその業界のルールにだけ囚われて、それが当たり前となってしまえば、思わぬ事態に直面した時、右往左往してしまう。
旧態依然とした状況・組織では危急存亡の秋に何も出来ないことは、多くの歴史の先例が物語っている。
「……森崎たち及び、四高生たちの怪我のほどはどうだったんですか?」
「すぐさま救護班及び救助班―――おそらく一部はアーシュラさんのサーヴァント達が、白砂みたいな粉塵の中から八人を見つけ出していたわ……森崎君たちは防護服が全て砕け散って、下にあった分厚い肌着も切り裂かれていたわ……」
当然、衣服だけの被害なわけがないのだが、青い顔をした会長に対して、『そこ』を聞くことはせずに続きを促す―――。
「四高に関しても似たようなものだけど―――」
そして聞かされた『容態』で、少しだけ怪訝なものを覚えるのだった……。
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『発動されたのは、『ロンゴミニアド』を模した『魔術』で間違いがないようです』
モニターに出た立華の祖母。積極的に『体律』を使っているわけではないのだが、いまだに20代前半の若さを保っているアニムスフィア大師は、南極から観測できた結果を伝えてくる。
『……かつて空想樹マゼランをめぐる戦いにおいて、クリプターの1人、ベリル・ガットの手引でブリテン異聞帯の王より放たれた偽性の聖槍は、その威力をオリジナルと同じように発揮しました』
苦しげに言葉を吐く大師は、それでもあり得ざるものではないと告げてくる。
『魔法師たちの肉体でこれを放つには、かなりの消費があったはずです。それこそ、生命力全てを消費しても足りないほどの―――まぁ威力は10分の1、もしくは20分の1かもしれませんが、放った方の被害も普通ではないでしょう?』
「はい。生命力の枯渇及び強制的な『オド』の使用が見受けられます」
「同時に『同律』と『感知』も強制的に合わされた様子です」
カルデアのメンバー2人の発言に、少しの嘆息をした大師は、すぐさま対処のためにチカラを尽くすことにするのだった。
『サイオンではないチカラを無理矢理徴収されたのです……とりあえず医療班を30分以内、いえ20分でそちらに届けます。他にオーダーはありますか立華?』
「では、現場状況に対する捜査権の発行をお願いします。四高が強制的に術を発動された状況の近くに、下手人はいたと思われますから」
確実な『ロンゴミニアド』の発動を見るためには、『使い魔』としていた四高生たちの近くで、それを見届けている必要があったはずだ。
小型の使い魔の可能性もあるが、『現場の再現』を出来れば―――不可能ではないはず。
『許可します。国連及び多くの関係機関を通じて、あらゆる魔導災害に対する強制捜査権を、アナタたち2人に24時間特別許可で出しました。これを以て事態の解決に挑みなさい』
「「ありがとうございます。ロード・アニムスフィア」」
『……本当ならば、こんなことはさせたくないんだけどね』
「けれど―――動かなければいけないでしょう?」
『……分かってるわよ。では人理守護の旅人たちに幸運があることを』
その言葉を最後に、立華の祖母は画面上から見えなくなった。
同時に端末及び書面で『許可証』が届いてきた。相変わらず仕事が早い……。
「あとは調べるだけよ」
「茶々―――ああ、ノッブの姪っ子ではないわよ―――を入れてくる連中はいるわよ。どうする?」
「臨機応変に対処しましょう。千代田さんのようにキンキンやかましいのは、黙らせても結構ですけど」
「ん」
書類に不備がないかを確認していた立華の言葉に短く返しながら、支度を終えると即座に
多くの人間たちが忙しなく動いている中、責任者であろう軍関係者、確か風間とか言うのに挨拶をする。
「お勤めご苦労さまです」
「ゴクローさまです」
あまりにも気楽すぎる挨拶に風間は怪訝な顔を向けてきたが、言葉の方は何用かと真剣に問うてきた。
「簡単に言えば『現場検証』ですね。面倒ですから、これ『許可証』です。これを拒んだ場合、日本国の海外資産並びに、日本の魔法師に対して『観測球ルクスカルタ』による『封印措置』も実行します」
「――――――」
風間の胸に押し付けた書類と見せつけた電子的な許可証。書類の方はまだだとしても、言われた言葉は―――あの頃、『当事者』であった風間にとっても忌まわしい出来事だ。
次いで『奥歯』を噛みしめる音が響く。
「藤丸君、衛宮君……このようなやり口は、私は好まない……!!」
「ニホンのお役所仕事の
睨みつけるような風間玄信の顔と言葉を受け流しながら、問答しても無用であることはお互いに理解している。変化はすぐさま。『市ヶ谷』の方から緊急連絡が入ったことが、部下の言葉で風間の通信機に入る。
それによると、目の前の少女2人の好きにさせろということが、陸将及び防衛大臣から直接命じられたということだ。
確かに今の日本の関係省庁は、ある意味では魔法家との関係が深い。有り体に言ってしまえば『癒着』が酷いのだ。
ただ単に役人絡みの案件での『中抜き』とも違う生臭さは、226事件の陸軍将校たちを『英霊』として蘇らせたらば、即座に関係者全員が小銃で殺されるのではないかと思うほど。
むしろ風間は、それが可能ならばやりたかったほどだ。
(だが………これは、そういうレベルではない話だ)
風間が勘付いてはいけない『もっと上』の連中が動いた―――そうとしか思えなかった。
「……分かった。ただし現場監督として藤林を帯同することを願う」
「どうぞ、ご自由に―――そして、『後ろの人々』はどうするので?」
「なに……!?」
風間が気づかなかった、気付けなかった中……何事かと見ると、……『知り合い』も数名いる集団が。おそらく2人を尾けて、ここまでやってきたのだろう。
(達也、深雪君……!!)
知り合いに無言で「何故此処に居る?」と、『愚問』を投げかけたい気分を押し殺しながらも――――――。
「私が、現場立ち入りを許可を受けたのは、『国連職員 藤丸立華 衛宮アーシュラ』の2人のみです。後ろの人々には、現場付近からご退場願いましょうか」
「……! 待ってください!! 当校の生徒が、重傷を負って、その上でその調査を当校の生徒が担当する以上―――俺たちは、何が起こったかを! 誰に怒りを向けるべきなのかを知りたいんだ!!!」
前半においては、取り繕った言い方をしていた克人だが、後半ではもはやそんな言い方は出来ないぐらいに、年相応の言い方で風間に食って掛かる様子。
しかし、言葉は規制線の前でシャットアウトをしている風間に対するものというよりも、立華とアーシュラに向けたものに聞こえたのは間違いではなかった。
「―――――本官は、此度の事件の責任を負っているものです。ゆえに君たち『学生』が、無遠慮にこちらの領分に入ることは望ましくない」
「少佐殿!!」
名前は存じていないが、制服に縫い付けられた階級章から風間の官階を理解した十文字の、怒号のような声が響く。
「……だが、こちらのカルデア職員たちを入れることは、
「――――――」
さっきまでのやり取りは何だったんだと思うのだが、これもまた政治というやつだ。
結局、自衛隊にいる『探知型』の魔法師たちでも、これほどの大破壊の前では何一つ探るべきものはない。何より放たれた神秘の濃度の前ではどうしようもないのだ。
「入った後は、君たちの同輩で後輩たちの指示に従いたまえ。我々は門外漢でしかないのだからな」
軍隊という『お役所』にいるという悲哀を滲ませた風間に、失礼しますとだけ言ってから、既に廃墟すらも崩壊した現場に入り込むことに―――。