魔法科高校の姫騎士~Alternative Order~   作:無淵玄白

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妖精騎士ランスロットーーーCHOCOさんといえばイグナクロスと思う俺は……。

まぁあれだよ。あの頃の電撃大王は色々とカオスだった。

近藤巨匠のガンダムが連載されている片方で萌え漫画(先鋭的)が幅を利かせて、その片方で古賀先生のシノブがやっていたり、そして再版ないのか何かに収録されているのか分からない当時流行っていたエロゲー、ギャルゲーの単発コミカライズ。

ゲーマーズとアニメイトがしのぎを削っていた時代を―――

まぁともかく新話お送りします。

そして引けたのは松風さんパーシヴァル2枚ということです。


第67話『思惑が絡む人々』

第一高校の廃ビルを再生・再現して、四高のときと同じく立華とアーシュラによって現場は再現された。

 

そしてプリンセス・ガードの一高メンバーたちが再生されたが……。

 

その様子は喧々囂々のものだった。

 

意訳すれば、森崎はCADの調整を2科生に頼れるかという態度だが、五十嵐と皆本は、これ以上負けたくないという態度で、森崎に同調しない。CADの調整を司波達也に頼むと譲らないでいた。

 

『衛宮さんみたいに何でもかんでも出来るってんならばいいが、そうじゃねえだろ!? 心体の調節を衛宮さんがやってくれるなら、武器の調節は司波君に頼むのが常道だろ!?』

 

『森崎、お前がそういう態度ならば、俺も五十嵐も、もううんざりだ。お前の意固地な態度で、首の一つも上げられない武者にはなりたくないんだよ。お前にはついていけない』

 

『お、お前ら……! それでも1科生かよ!? ふざけるな―――』

 

『も、森崎落ち着いて! 2人もあんまりいざスタートという時に、こんな言い争いやめなよ!!』

 

その様子に誰もがさまざまな表情を見せている。しかし、そんな言い争いは突如終わりを告げる。

 

窓の近くから外を見た森崎。映像の通りだ。次の瞬間―――。

 

ぞぶんっ!!!

 

音にすればそういうものが響き、滝川の胸から鎖付きの杭―――としか言えないものが飛び出てきた。

 

『がっ!!!! あっ――――――』

 

『滝川―――』

 

呼びかけた森崎の眼には、赤色の影だけが見える。影は次から次へと狭い廃ビルのフロアを縦横無尽に動き回って、森崎以外のガードメンバーを叩き伏せていく。

 

瞬間の判断が要求される中でも、何とか己の愛用CADを持ち照準を合わせようとした時、伸ばした腕に鎖が蛇のごとく巻き付き、万力のように締め上げられたことでCADを持つことができなくなる。

 

その後には首を締め上げられる。当然、鎖でだ。呼吸が出来ず全身を締め付けられたことで、まともな術など使えずに全身が硬直する。

 

廃ビルの床に乾いた音で落ちて―――傾斜が存在していたのか、カラカラと滑る音に不吉さを覚えた。

 

それを見届けてから、後ろから締め上げながら声を上げるのは、赤い―――いや紅い外套に身を包んだ……男か女かすら定かではない。

 

『アルトリウスの娘の代わりに出てきたのが、貴様らのような愚物だとはな。……嘆かわしい限りだ。どうせならば、彼女と戦いたかった』

 

全身を打ちつけられて、血も盛大に流している一高生たちに『お前らなど眼中にない』という、無情な言葉が吐かれる。

 

歯を噛み合わせて、後ろを睨みつけたくても出来ないでいる、森崎の苦しさ・悔しさが全員に理解できる。

 

『しかし仕事は仕事らしくて―――ね。さぁ―――人理漂白の為に作られた偽性の槍(Fake)が飛ぶよ―――』

 

―――キミたちはその生け贄(victim)なんだよ。

 

そして、外で起こった盛大な爆発が廃ビルを叩き壊していき、その爆発は回転を伴いながら一高生たちを切り刻んでいくのだった。

 

「―――もういいか?」

 

克人の苦しげな声。こんな場面を見たくなかったのか、俯いて言葉を吐き出していた。

 

克人の態度は、殆ど全員が共通している。しかし―――例外である人間は少しばかりいて、問いかけられた立華は、嘆息してから答える。

 

「ええ、知りたいことは概ね理解できました。アーシュラ、敵は大シーザーの『娘』よ。必ずや―――倒して」

 

「―――Yes,Master」

 

その宣言が、牙を剥くべき相手を見つけ出した魔竜の咆哮のように聞こえた達也だった――――。

 

 

あんなことが起こったあとでも競技は恙無く執り行われていき、結局の所、ミラージ新人戦のエンジニアとして復帰した達也。

 

仕事はちゃんと行い、よほどの相手もいなかったからか、優勝・準優勝を一高で抑えることが出来たのは僥倖であった。

 

笑顔でこちらにやってきたほのかを歓待しながらも、考え事はどうしても増えてしまう。

 

 

そして現在―――ホテルのケーキバイキングにて、対面にて牛飲馬食でケーキを食う女に問いかける。

 

 

「―――結局の所、何が動機なんだろうな」

 

「んなこと知らないわよ。ただやったことは理解できる。CAD検査員及び大会役員になりすましているのか、はたまたそのものが下手人なのかは理解できないけど、彼らがCADを受け取りに来た『選手』に『呪詛』を叩き込むことで、触媒にしてきた―――結果的に、狙われたのが3の数字落ちの家だったことが災いして、同調及び合成した演算領域のもと、あんな巨大な術が炸裂した―――報告書はあげたでしょうが」

 

長い言葉だ。一足で言われてしまったが、確かにそういう結論だった。

 

なぜ、四高の選手が遠隔的な術起動の触媒として使われたのかは、場当たり的であったとしても、放たれた術はそのままに結果を出してきた。

 

「……当初、俺は、この九校戦で起こるトラブルの数々は、チャイニーズマフィアの主催する賭け事の勝率操作の為だと思っていた―――五十嵐先輩のクラッシュ然り、七高のオーバースピード然り―――今回のことも然りな」

 

白状することで反応を確かめる達也。ソレに対する返事は―――。

 

「要するに―――敵の正体が見えなくて面倒なわけね?」

 

「ああ」

 

ケーキをぱくつきながら、平然と達也を理解したことを言ってくる女―――アーシュラに返す。

 

達也にとって、ここまでもどかしい気持ちはなんともやるせない。

 

倒すべき敵が、どうしても見えてこないのだ。

 

「そんなことが分かるならば、どうとでもなっているわよ。ただ一つ言っておく。競技大会関係者の殆どは『クロ』よ。各校で違ったようだけど、選手にCADを提出させたり、取りにいかせないほうがいいわ。眼の届く距離、呼吸音すら聞こえる場所から呪われて、ありったけの精気を使い尽くされる。そんな触媒にされたくなければね」

 

エンジニアであれば犠牲になってもいいというわけではないが、まぁ競技中に何かをすることは無い人間だからこその話だろう。

 

ソレに対して素直に頷きながら、切り出したいことがある。

 

あの紅外套は―――『サーヴァント』なのか?

 

アルトリウスの娘とは―――アーシュラのことなのか?

 

人理漂白の槍とは―――どういうことなのか?

 

疑問は多いし、応えてほしいことも多い。

 

のだが……それを問うことが出来ない。

 

「ケーキごちそうさま。あとは『あそこ』で、こそこそしている人たちと楽しんで。皿はさげておくから」

 

アーシュラの示す『あそこ』。目線とテーブルのシグナルARだけで示してきたことで、そこにA組の女子3人がいることに気づいた。

 

当然、妹も含まれている。

 

「ワタシがいるから同席したくないんでしょうね。んじゃお疲れさーん」

 

「………」

 

「いや、なんで着いてくるのよ?」

 

「別に俺だってもう腹いっぱいなんだ。会計を頼んで出たいぐらいの気持ちなんだよ」

 

「残って女の子の相手をするのも、男娼の勤めだと思うけど?」

 

誰が男娼、お小姓だと言いたくなるアーシュラの言動だが―――。結局の所、ソレ以上は何も言われることはなく、九校戦観戦に付き合うことになった。

 

途中、伊庭アリサ 遠上茉莉花というJSと合流したのだが、その2人から―――

 

「「―――男気無さすぎるクソ野郎」」

 

などと、指差しで『納得顔』で言われることになったのは、色々な気分であった―――。

 

そして夕食に入る前に、達也及びアーシュラはミーティングルームに呼び出されることになった。

 

勢揃いしている上級生と数名の同級生を前にして、何の用やらと思うのは達也だけで、すぐさまアーシュラは同級生―――藤丸立華の隣に立つのであった。

 

「達也君、今日は期待以上の成果をあげてくれて感謝しています」

 

「ありがとうございます―――ですが、がんばったのは選手である里美と光井両名ですので」

 

称賛を受ける立場ではないとしながらも、本題に進むように真由美に促す。

 

「達也君も知っての通り、現在のところ一高はガード棄権の状態になっていますが、十文字君の尽力で、別選手を選定した上でならば、明日の参加を許可することになりました」

 

「……アーシュラから聞かされてましたが、『あんなこと』が起こったのに……競技続行をする気でいる委員会は、正気じゃないですね」

 

「ええ、けれど……そのお陰で、総合優勝及び新人戦優勝も、まだまだ可能な立ち位置に、私達一高はいることになっています」

 

「―――――――」

 

本戦での『失点』が少しずつ響き、そして新人戦での『結果』が段々とデッドヒートを繰り返して、現在―――このままガードで『優勝』が出来なければ、総合優勝も新人戦優勝も無い―――つまり、ここでガード不参加、ポイント無しということになってしまえば、もはやその目は無くなるのだ。

 

最有力は六高、有力は三高……そして次点に一高がいる状況。

 

(それで、俺に選抜したセカンドのガードチームのCAD調整をお願いする。言うことは何が何でも聞かせるから頼む―――そんなところか……)

 

別に武器の調整ぐらいはやってやる。問題は聞く耳を持ち、襟度を選手側が開くか……それだけである。

 

などと達也が、頑迷な1科一年男子に対する困難を予想していたところに―――会長は、思わぬ提案をしてくるのだった。

 

「―――それで達也くんには、森崎くん達に代わってガードに出てほしいのよ」

 

 

その『要請』に対して達也の返答は―――

 

 

「―――断固辞退します」

『『『『グラ○ムみたいなことを言うな!!!!』』』』

 

―――上級生総出でのツッコミであった。そして、いつぞやの立華とアーシュラの如く、まさか取り付く島もなく断られることになるとは思わなかった会長が、頬をぴくぴくさせながらも咳払いをしてから言葉を吐く。

 

「り、理由を聞かせてもらっても?」

 

「単純に自分では力不足でしょう。立ち塞がる強敵は、全て自分のような2科生では倒せないことは確実です」

 

「………私は、実戦でならばキミはかなりのものだと思うんだがな」

 

「ガード、派生元であるモノリスは実戦的な競技ですが、肉体的な接触が認められない魔法競技です。

硬式野球と軟式野球、アメフトとタッチフット、太陽炉搭載機とプラズマエンジン機ぐらい違いますよ」

 

最後の例えは、分かるやつと分からないやつとが多いが、ともあれ摩利の説得もあまり功を奏していない。

 

「更に言えば自分は選手ではありません。練習時点から見ていましたが、アーシュラの代わりに滝川が選ばれたことも含めて―――、他に白羽の矢を立たせるべきだと想います」

 

「それは―――――」

 

「新人戦は新入生の育成という側面もあることから、自分が会長や委員長の思惑通りにガード優勝を決めれば、色々と面倒も多いのでは? 自分は技術スタッフなので」

 

自分にとって経験値にならないことだとしておく。それを受けても未だに無言なのは―――十文字会頭であった。

 

「……立華、アーシュラ。お前たちの意見を聞かせてもらえるか?」

 

そんな巌のような会頭が、ようやく口を開いた上で言葉を向けたのは、思わぬ人物であったが―――問われた方は答える。

 

「意見も何も。そもそも『どっち』も取ることは不可能でしょう。『どっちか』です。そのことを理解しておかないと、これは通せない案件です」

 

「………お前の言い方は、何というか抽象的でむず痒い。もう少し分かりやすく言え」

 

「克人さん及び上級生としては、総合優勝のためにも新人戦優勝を求めたい。しかし、その為に現在の一年男子―――『味噌っかす』みたいな結果しか残せていない連中が、劣等感を来年まで抱かれるのは、少々面倒なことだ。

けど、これはどっちかしか取れない話ですよ。だから―――折れるべきなのは、『どっちか』です」

 

その言葉で得心したのか、一度だけ息を深く吐いた十文字克人は、再び口を開く。

 

「……成程な。理解できた―――。司波、俺はお前を卑怯者だと想っている。

お前は本来は、あらゆる相手を打倒するだけの実力を持ちながら、2科生という隠れ蓑を被って好き勝手やる。

弱者であるという立場を盾にして、上に噛み付く―――実に高度な知能犯だ。魔法師のハンニバル・レクター、ユナボマーといってもいいぐらいだ」

 

「………」

 

鉄面皮と評される表情筋が、若干『ひくつく』のを見てから、克人は腕組みをしながら言葉を重ねる。

 

「だが、お前が勝つこと、優勝することで、一年男子の薄っぺらなプライドがどうなろうと、俺はもう知らん。所詮、『それ』しか見せてこれなかった結果が『現在』だ―――もしかしたらば、お前をエンジニアとして採用していなければ、更に悲惨なものになっていたかもしれない。そう思える今年度の九校戦だ―――だからこそ言ってやる。

森崎たちに『引導』を渡してやれ、司波―――」

 

その言葉を受けた司波達也は、浅く息を吐いてから克人に問いかける。

 

「……本気でやっていいんですね?」

 

「構わん。メンバー選出もお前に一任する」

 

「アーシュラをプリンセスにしても?」

 

その言葉に対しては明朗とは言い難いが、少しだけ唸ってから―――。

 

「―――許可する……いや、そうするしかないんだな」

 

許可を受けたのだが、ソレに対して黙っていないのは隣りにいる真由美である。

 

「ちょっ! 十文字君!! アナタ本気なの!?」

 

「ああ、お前も司波に勝負のゲタを預けたならば、もうとやかく言うな。俺たちは、こいつに全ての裁量をやった。振るう采配は全て俺たちの責任だ。腹を決めろ七草―――男だろ?」

 

「私は女よ!!」

 

「あばっきお!!」

 

鍛え上げられたはずのボディにいい一発を食らって、悶絶する十文字会頭。

最後の一言で台無しになった十文字克人の言葉だが、ここまでの言葉でどういう意味なのかを理解できない人間は多い。

 

かくいう克人もまた、己の中での納得が多すぎて、抽象的なことになりがちな男なのだった……。

 

「だ、だめです。正直―――会頭と真由美さんの懸念事項とか色々と分かりません。誰でもいいから教えてクレメンスです」

 

決して頭が悪いわけではないが、それでも何というか分かりにくい表現を好まない中条あずさの声を、隣りにいた市原鈴音と藤丸立華、そして衛宮アーシュラは苦笑しながら聞き届けるのだった。

 

「とりあえず司波君が出場して、上役の思惑通りに結果を残すことが、あまりいいことではないとしているのは理解できていますよね?」

 

「そ、そこはなんとか。問題は次の『それ』しか見せてこれなかったという言葉ですよ」

 

頭の回転が悪いわけではないな。要するに抽象的すぎた克人の言葉が悪いのだ。

 

「十文字君の言いたいことは、端的に言えば、勝つことしか見せてこなかったからこその、今回の結果であるとしていたわけです」

 

「? えーと、つまり……負けた経験が無いから、いまこんな有り様であると?」

 

「人・会社企業・行政機関……何であれ、成功・失敗、勝利・敗北。そういう風に定義できることの積み重ねが当然あります。その中で、成功体験だけを元にして行動することは、あらゆる意味で危険なことですね」

 

だからといって積極的に負けろという話ではないのだが、つまり一高は『成功体験』だけを元にして動いたからこそ、こんなことになっている。

 

「全戦全勝というわけではないんでしょうが、3年が1,2年の時の上級生たちも、弱くはなかったんでしょう」

 

立華の問いに、市原鈴音は短く首肯しながら説明を入れてくれる。

 

「その通りです。如何に現在の三巨頭が強力であっても、当然1年時は殆どが新人戦に出場していました。本戦で当時の2.3年生が頑張ってくれたからこそ―――今大会での3連覇という目標が出来ていたのです―――」

 

 

「私やアーシュラなんかは違いますが、結局の所、そこですよね。十師族の七草、十文字がいるからこそ、自分たちは負けない―――誇りもすぎれば驕りとなりましょう」

 

当然、誰しもがそこで慢心していたわけではない。

 

1年でも、2年でも―――3年の背に追いつこうと、我こそはと、前に向かっていったところは見えていたのだが……。

 

「―――責任感を強く持つことと、仲間を信頼しないことは違う。独りよがりな戦いじゃ、何も得られはしませんね」

 

どちらもある意味持っていないアーシュラが言うと、何とも言えない表情にはなるが、それでも勝負の世界は時に無情にも……。

 

「覚悟と情熱がそのまま結果につながると信じているなら、それは甘い夢想(ゆめ)というもの。

負けは播け。播くことで成るものは明日の(勝て)

地に落ちもせず芽を出す苗なんてありゃしない。物事は何でも一度は身を捨て播く(負け)時期がある。

―――大きな(勝て)に化けさせるためにね」

 

「「「「…………」」」」

 

喧々囂々の様を見せていた達也と上役たちも、アーシュラの言葉に聞き入ってしまうほどだ。

 

それぐらい強く、何というか……芯に響く言葉だ。

 

「一高の不幸は、物事に『限り』(LIMIT)を作ってしまった現在の制度でしょうね。

1科だ2科だと、そんなランク付けで人の可能性を損ない。そこにあるべきものを直視しなかった。世の中には『できる』と思うヤツと『できない』と思うヤツがいるが、勝つためには『できない』なんて初めからいらない。限りを作らない精神―――『Unlimited』を持つヤツだけが、時代の先を行くんですよ」

 

それは過去の人々が示している。

 

特にスポーツ業界では顕著だ。

 

巧打者・強打者・守備職人として日本で鳴らした男が、海を渡り、世界最高の野球リーグを舞台にその栄誉を穢さないままに45歳まで最高のプレーをしていた。

 

打者・投手―――どちらでもいける。これこそが俺の野球だとして、二刀流というスタイルを日米で貫き通した男がいた。

 

先例にそんな奴はいなかった。自分こそが、時代の先駆けたらんとする心こそが、不可能を可能にするのだ。

 

「ヒトからなんと言われようと、貫き通すものがあるものが強い。そして、限りなど作ってここで『限界』だなんて思っているヤツに、先なんてない―――以上でよろしいですかね?」

 

「う、うむ……とんだ御高説だが、まぁ身につまされるものは多すぎたな……」

 

「そういう意味じゃ……私は、あまりにもヒトの可能性を信じきれなかった筆頭ね……」

 

「会長がその最右翼だから、こうなっているとも言えますけど」

 

「この後輩、本当にやさしくない!!」

 

慰めなど何の意味があろうか。ともあれ、もはや問答は無用なのは……誰もが理解していた。

 

それでも七草真由美は言い募る。

 

「けれど、衛宮アーシュラを出せば、大会側はアナタを雁字搦めにしてくるのよ?

まず第一にアナタが出場する場合、特例として、相手校のマジックガード(男子選手)の数がおよそ5倍に膨れ上がる」

 

「15人の魔法戦士ですか。全然足りませんね。ワタシを倒したければ、その3倍は必要ですよ」

 

大言壮語を吐いているわけではない。当たり前だが、衛宮アーシュラの実力はこの場にいる全員が理解している。

 

だとしても懸念事項は多いとして、更に真由美は言う。

 

「第二に、アナタにアーマーの装備は許されない。身体保護は自前で何とかするしかない」

 

「アマゾネスみたいにマッパで戦わなくていいならば、それで結構です」

 

「……第三に―――『プリンセス』には許されている近接武器の持ち込みは許されない。本来ならば、遠距離武器ぐらいは許されてもいいのに―――それすらアーシュラさん……アナタには許されない……」

 

『マジか。アーシュラ、大丈夫かよ? 伯父さんガチで心配だぜー』

 

心配とか言葉で言いながらも、アーシュラの制服ポケットから出てきた喋る匣は、笑っているのだった。

 

「べつにー。なんとでも出来るわよ」

 

『そりゃそうだな。ただよ、あの小僧どもを熨した大シーザーの娘はやべぇぜ。出てきたらば1も2もなくオレを呼べよ。赤雷を操るってことは、ロムルス・クィリヌスの遠祖である証明だからな』

 

「了解したいところだけど、試合に乱入するかしらね?」

 

「可能性は排除しない方がいいわ。というわけでーーー司波達也、アナタに私の剣を貸すわ。存分に扱いなさいな」

 

匣とアーシュラの会話に割り込んだ藤丸立華は、話のボールを達也に投げ返すのだった。

 

「―――感謝する筋合いなのかな? まぁいい―――会頭、他メンバーは選抜選手以外から選んでもいいので?」

 

「西城と吉田だな。構わん―――ホテル側にはオレが話しておく。時間は有限だ。いますぐ調整・作戦を詰めていけ。我が校のプリンセスブレイブを、ここまで辱めようという意図を持つ委員会に、徹底的な意趣返しをしてやれ」

 

その言いように、このヒトもむかっ腹を立てていたのかと思う。

そもそも、最初からこのような制限や九島烈の余計なちょっかいさえなければ、プリンセス・ガードにおいて一高の、あるいは四高の不幸も無かったかもしれないのだから。

 

「―――ありがとうございます」

 

その一礼を以て、達也は、諸々のことを中条や市原に頼んでから、ミーティングルームから出ていこう―――としたその時。

 

「アーシュラ、左手を―――」

 

「はいはい。あとでワタシもそっちに行くから、CADの調整は頼んだわよ」

 

「―――無論だ」

 

外すのと塡めるのとでは違うだろうが、その様子―――反るように伸ばしたアーシュラの手を取りながら、アーシュラの眼をみながらそっと指輪を抜き取る様子に……色々と変なキモチになる面子は多かったりした……。

 

そして、困惑だらけの夜を越えて迎えた新人戦5日目は―――大いなる『熱狂』と共に幕を開ける―――。

 

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