魔法科高校の姫騎士~Alternative Order~   作:無淵玄白

74 / 160
レベルファイブが送る新作ゲーム。

ああいう機体カスタムなゲーム作品は多くあれど、アニメはとりあえずチェックしておきたい。

やはり敵側にも、色々事情はあるのか。そもそも味方であるシェルター側の存在とて完全には信用ならない。

そんな作品の放送が開始されたということで、それに合わせた今話どうぞ。


第73話『メガトン級ムサシ』

仮装行列の応用で姿見を隠して、『存在感』を薄くしたアーシュラは付近を探索しながら歩く。

 

次の試合、自分は『前』に出ないほうがいいだろう。

 

事前に伝えておいたとはいえ、ディフェンスを担当することになったアーシュラだが、適当な得物はどうしたものかと想う。

 

竹刀でもいいのだが、なんというかそれだと気合が上がらない。投影することで作り上げてもいいのだが。

 

「―――そこな美少女や、悩みごとがあるならば、このババにちょっと言ってはみんかね……」

 

「………」

 

などと物思いに耽っていた時に、妙な辻占い師が横に店を構えていたのだ。

 

目深にフードを被っていて、姿は詳細には分からない―――なんてことはなかった。

 

「ムサシちゃん!?」

 

「やっほー♪ アーちゃん会いに来たよー!!」

 

「わぷっ!!」

 

先程まで食事をしていた場所の話題の中心人物が、ローブを脱ぎ捨てて占い用の机を押しのけて、アーシュラに抱きついてきたのだ。

 

「なんでここに!?」

 

ムサシちゃんを押しのけて、距離を取った上で問い返す。

 

「さて、なんででしょう? なんて言う気は無いんだけど、士郎くんから『これをアーシュラに』って言われてね……それと手助け。多分、手数が足りないでしょう?」

 

美麗の剣士。天眼渦巻く最高の剣客が、そんなことを言ってくる。

 

そいつは大助かりではあるが……なんでこのタイミングなのかなと、言いたいことは多い。

 

「それはともかくとして……ありがたく受け取ります」

 

「なんで、そんな腰を引かせて『剣』を受け取ろうとするのかな? 別に食べないよー♪」

 

「私も流石に、かの剣豪宮本武蔵を相手には、腰が引けますよ」

 

代金はベッドの上でとか言われかねないので、という言外の言葉を想いながら受け取ろうとしたのだが……意地悪くも剣をアーシュラから遠ざける。

 

「いやータダで渡すわけにはいかないなー。ちょっと一手仕合って♪」

 

ムサシちゃんらしい笑顔で、無茶なことを言ってくるが、流石にアーシュラも弁えたことを言わざるをえない。

 

「……ここでやるわけにはいかないでしょう」

 

「ええ、けれど練武場みたいな場所はあるんでしょ? 案内してよ―――立華ちゃんが言っていたけど……『生ぬるい相手』とばかり打ち合っていて、腕が落ちていない?」

 

「―――バイアス調整のための訓練はやっていますよ」

 

「うんうん♪ だったらば、見せてよ―――私もあーちゃんの師匠の一人なんだからさ」

 

そのいつもながらの剣鬼スマイルな言葉で、アーシュラも理解する。

これはある種のテストなのだ。

 

 

「そんじゃ、村正おじいちゃんもとい士郎くんの剣と『私の剣』を受け取る前に、一手仕合おうか! あーちゃん!!」

 

「さっき同級生の兄貴の誘いを蹴ったばかりなんですけど、まぁいいでしょう……かかってこい!!メガトン級ムサシ!!」

 

「応よ! 騎士王の娘! メガトンパンチ(最大級の斬撃)打て打て打ちまくって、ドーナツ型地球なんて世界は終わらせてもらうわよ!!」

 

その言葉を言い合ったことで無用な注目を集めながらも、2人の剣客は練武場へと赴くことになったのだ。

 

 

「何処に行ったんだアイツは……」

 

「野良猫のように、ちょっと目を離すといなくなっちゃいますもんね……」

 

武器の選定―――それぐらいは自前で用意出来るかもしれないが、それでも何を使うかを教えてほしかった達也たち一高の面子は、会場中を走り回ったりしていたのだが……その過程で、妙な連中を立華と宇津見たちと捕縛したのだが……。

 

端末連絡でもいいのだが、どうやら電源を切っている―――と想った瞬間……。

 

「達也さん! あっち練武場の方!!」

 

眼鏡を外して裸眼で捜索を行っていた美月の言葉で、いつぞやエクレールとプレ戦を行った場所を見ると、そこから天空にまで伸びるほどの力の柱……2本を見る。

 

 

(一本はアーシュラなんだろうが、もう一本は誰だ?)

 

アルトリア先生やクー・フーリンを思わせるそれは、強烈な力の発露だ。

 

考えるのはあとにして、練武場へと向かう。こうなれば実地で見るだけだ。

 

自分たちが来る前のギャラリーの数はそれなりにいたが、まだまだ集合前という感じ。

 

しかし――――――――――。

 

「―――――!!!!!」

 

「!!!!!―――――」

 

これだけ伯仲した剣戟を叩きつけあっていれば、ギャラリーはイヤでも集まってくる。

 

一撃一撃ごとに空気が撹拌するような豪打爆打が響く。

 

技巧(わざ)膂力(ちから)を組み合わせた攻撃は、先日の一色愛梨との闘いでも見せなかったものだ。

 

一人は確かにアーシュラであった。そしてもうひとりは、知り合いではないが、先程まで写真で見ていた人物だ。

 

「大剣豪 宮本武蔵……!!」

 

先程の写真とは違って大剣豪としての空気を発して、見物人すら切り裂きかねない剣気を発していく様子は、隣にいた深雪に後ずさりを『3歩』ほどさせていた。

 

二刀流を器用に操り、赤と青の魔力光が斬撃の軌跡として見えるだけの神速の剣技。

 

(剣戟に、無駄がないな……むしろ、最短でどこからでも鋭く切り裂けるようなルートを、いつでも選択しているのか?)

 

アーシュラの胴を狙おうと思えば、その斬撃はそれに最適な『力を吐き出す』。それが防がれれば、すぐさま次の最適解としての斬撃を紡ぎ出す。

 

よく見ていれば、『ぞっ』とするような攻撃ばかりが、宮本武蔵から放たれている。

 

目的達成のための手段を『一つに絞る』。結果として、その結末に収斂するように、この剣士の斬撃はあるのだ。

 

(恐らくアーシュラだからこそ『防げている』んだ……この剣士は、現行の魔法剣士たちとは違う術理で剣を放っている)

 

あまりにも『無駄のない、時間(とき)空間(そんざい)を捻じ伏せる一刀』は、それだけで一つの魔法だ。

 

 

―――『空位』に達することでしょ。全てを絞って磨いて、究極にまで存在を削り落として、それでもなお残る『 』(から)に、座に達すること―――

 

いつぞや剣道部の演武を見た際に、アーシュラがエリカに言ってのけた剣の極意を思い出す……あの言葉は、この人物の剣を指していたのだ。

 

対するアーシュラも負けてはいない。素人目には剛剣、爆剣……力任せの剣技を放っているように見えるアーシュラの剣だが、彼女なりのロジックで剣を振るっていたりする。

 

そんな彼女は、いつもならば西洋剣術のフォーマルである一刀の両手持ち……なのだが。

 

「アーシュラが二刀流ですか、珍しいですね」

 

「討論会で、源頼光を憑依させた壬生先輩の一撃を受け止めたのも、二刀の叉ねだった。アイツの本来の攻撃スタイルが分からなくなるな……」

 

そして、その二刀流での戦いを見ている面子の中に、不機嫌を見せている面子がいる。渡辺摩利と千葉エリカだ。

 

ムスッとした様子で剣戟を見ている2人の心境は、分からなくもない。

 

自分たちが修めた、国内外でも高評価を受ける至上のはずの千葉流の魔法剣術を、簡単にぶっ千切ったものを見せられているのだ。

 

自分たちの中身が解体されている気分にもなる。自分たちの努力を嘲笑われている気分だろう。

 

言ってしまえば、Z戦士の戦いを見せられたミスター・サタンの気持ちに近いか。あるいは、魔人ブウ以後に消えた天津飯ともいえる。

 

(そう考えると、そんなサーヴァントと真正面から打ち合えているアーシュラとは、何者なんだ?)

 

当然、魔法師的な限界(マックス)などぶち破れるのが、先に人間能力の領域を超えていた魔術師の特権なのかもしれないが……。

 

どうにも引っ掛かるものがある。

 

(全銀河支配を目論むビルトラム星人であるオムニマンが、地球人との間に子を設けて、それをヒーローに。

自覚は無いが、銀河最強の戦闘種族サイヤ人である孫悟空が牛魔王の娘との間に子を設けて、それがグレートサイヤマンに。……)

 

いや二番目の例ははっちゃけすぎた。……ともかくとして、魔法師的な価値観で言えば、やはり血にその秘密があると想ってしまうのだ。

 

(となると……やはり士郎先生の血に秘密があるのではないだろうか……)

 

だが、達也など2科の担当教師と、その妻であり魔法科高校の美人教師との力関係は、あきらかに後者にある。

 

いや、己のことを考えると、『剛力』な方が確実に子息・子女の力に繋がるというわけではないが―――などと達也が考えている内に、バハムート級アーシュラとメガトン級ムサシとの闘いは、演武でも刻むような走り抜けの斬撃を以て終わりを告げた。

 

「――――まぁ及第点としておきましょう」

 

「厳しいなー。武蔵ちゃんは……」

 

「簡単な修練だと、意味ないでしょ? とはいえ、ハイこれ。次の試合も頑張ってね。アーちゃん」

 

布に包まれた……恐らく次の試合の得物を武蔵殿から受け取ったアーシュラは、そのまま武蔵殿と握手をする。

 

そうするとギャラリーから万雷の拍手が湧き上がる。それぐらい、とんでもない試合だったからだ。同時に、コレほどの玄人達人どうしの試合など、そうそう見れるものではないからだ。

 

まぁ一高の面子は、あまり思い出したくないが……英霊ないし英霊武具者とぶつかり合う衛宮家の方々のチカラは、何度か見ているのだ。

 

などと考えていると―――。

 

「チョット! 待ちなさいよ!! 大剣豪 『宮本武蔵』!!!」

 

「エリカ?」「エリカ!」

 

練武場に乱入するは、千葉道場の女剣士―――2人。

 

疑問の声を上げたのはアーシュラ。驚いた声は千葉修次だ。

 

何用なのかは、多くの人間が理解できた。

 

「おやナオツグくんじゃない。越南(ベトナム)では世話になったわ♪」

 

「シュウ!! この美人の何を世話したんだ!!!!????」

 

笑顔で手をふる銀髪の言葉に渡辺摩利は噛み付くが、どこか疲れたような顔をする修次氏が少しだけ印象的だ。

 

「ベトナムの麺料理『フォー』を奢っただけなんだけどね。代わりに色々と『相手』してもらった」

 

「夜伽のか!?」

 

「ゲスな勘ぐり!! ちょっと落ち着き待ってくれよ2人とも……」

 

恋人にそこまで言われても、平素な表情で直情径行な猪武者2人を宥めようとするナオツグ氏は人格者すぎたが……。

 

「いいや待たない!」

 

「私達は、この大剣豪に勝ち次兄を取り戻すんだ!!」

 

こんな時だけ何故か連帯感を持つ千葉流の剣客2人を見て―――武蔵ちゃんが『ニヤリ』と一瞬だが笑みを浮かべたのを、アーシュラは見てしまった。

 

それを見て―――。

 

「ちょい待ってくださいよ委員長、エリカも―――武蔵ちゃん私と一本やり合った後なんだから、相手が疲労困憊したところを叩くなんて士道に背きませんかね。千葉流では、そういった心構えとか無いんですか? 柴錬先生の眠狂四郎か」

 

「―――どう見ても、汗一つかいていないように見えるんだけど?」

 

「武蔵ちゃんのスペックが段違いだとしても、それを理由に剣を向けるなんてどうなのよ」

 

エリカの反論に対して、更に反論をするアーシュラ。絶対に逸らさない緑眼が、エリカを見据える。

 

「それと―――武蔵ちゃん『両刀使い』だから、どうなっても知らないよ」

 

「―――二刀流の使い手に、私は勝てないって言いたいの!?」

 

「いや、そうじゃなくて」

 

完全にキレたエリカは、正しく『小次郎破れたり!』な状態で、剣を持って宮本武蔵に挑むようだ。

 

それに対して、アーシュラは『説得』が失敗したと想いながらも、もはや何も言わないことにした。

 

道場の壁に寄りかかりながら、受け取った得物を見えぬように検分する様子を見て、そちらに向かう。

 

「お兄様?」

 

「あのな。いま最優先なのは、あいつと話すことだ。よって服を離せ深雪」

 

「むぅううううう!!!」

 

いやでござる。いやでござる。と首を振りながらジャージの裾が伸びんばかりに持ってくる深雪。

 

それを見かねたのか、アーシュラが達也の近くにやってきた。

 

「一高の醜聞になるのはどうなのよ。生徒会書記」

 

「アーシュラだって『一高のグルメ超人』『グルメ細胞の悪魔を宿した女』って言われてるんですよ!」

 

「美味しいものをいっぱい食べることに、ワタシは妥協しない」

 

「じゃあ私だって、お兄様を束縛することに妥協しません!」

 

そこは妥協しろ。ワケわかめな言い争いを止めさせるべく、達也はアーシュラに話しかける。

 

「また一つ、お前の新たな姿を知ったよ。西洋剣の両手持ちが、お前のスタイルだと思っていたんだがな」

 

「弘法筆を選ばずってヤツだよ。そもそも、お父さんが二刀流で戦っている姿は見たはずだけど」

 

それもそうだなと想うが、そんなに変幻自在なスタイルで戦うとは……アーシュラのポテンシャルに少しだけ憧れる。

 

シンプル・イズ・ベスト。

 

その言葉を体現しているのだが……。

 

「まぁワタシとしては、二刀流の方が性に合っているんだけどね……」

 

頭をかきながらぼやくように言うアーシュラ。

 

「そうなのか? ならなんで?」

 

「……アホらしい話よ。子供の頃、お母さんに対抗するべく、『二天一流』及び『無銘双剣』で応戦したらば……」

 

 

―――シロウだけでなく、アナタまで『アーチャー』の戦い方を真似るのですか?―――

 

「なんて『超不機嫌顔』で言ってきて、まぁその後に、お父さんとの訓練では使ってもいいが、自分との戦いでは一刀一剣で応じるようにと厳命されたわけよ」

 

そういじけるように言うアーシュラの顔も、『超不機嫌顔』である。

 

「アルトリア先生にそういう顔があったとは……」

 

だが、アルトリア先生も、宮本武蔵も『超一流の剣士』だ。それと、それぞれの戦い方で打ち合えるアーシュラも、『超一流の剣士』である……。

 

などと考えた時に、練武場にて動きが出る。

 

どうやら千葉道場としての装備を整えた2人に対して、『普段着』の武蔵ちゃんが相対し合う。

 

 

「私達が勝った―――あなたから一本を取ったならば、次兄上との金輪際の接触を絶ってもらう」

 

「よろしいか? 宮本殿」

 

エリカと摩利の言葉に対して、軽い感じでオッケーサインを出す宮本武蔵―――本当にこの人が大剣豪と呼ばれる過去の英雄なのか、達也は疑問を持ちながらも、話は進み。

 

「ただし、私が勝った場合の報酬を言わせてもらうわよ……私が勝った場合はね……」

 

何を要求されても、構わない。兄上(恋人)の心を守るためならば、どんと来い! という気持ちでいた。

 

そんな2人に対して―――メガトン級ムサシは……。

 

「私が勝ったら―――2人とも一晩付き合ってね。寝台の上で♪」

 

顔に朱を差しながらも、挑戦的な笑みを浮かべて言う武蔵ちゃん。

 

距離を挟んでも聞いた言葉に―――。

 

「「―――え゛」」

 

漫画で言えば、白目で血の気が引いた表現をする2人の乙女。

 

その言葉の意味を違えない。

その言葉の意図を間違えない。

その言葉の本気を違えない。

 

つまり。

 

((―――両刀遣い(・・・・)ってそういう意味か―――!!!???))

内心でのみ、アーシュラの言葉を途中で遮ったことの後悔をしていた剣士2人だったが。

 

「―――臆したわね? ひとつイイことを教えてあげる―――闘いというものは、臆した者に必ず”負け”が訪れるものなのよ!!!!」

 

((確かに臆したけど、その理由はあなたが考えているものとは絶対にちがーう!!!!))

 

……3分後。無残な様子で練武場に突っ伏す2人の剣士を見て……。

 

 

「やめておけばよかったのだ」

 

いろいろな気持ちを込めて、アーシュラはその言葉で締めとするのであった……。

 

 

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。