魔法科高校の姫騎士~Alternative Order~   作:無淵玄白

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『なんでモルガン、モルガンと来て―――次がメガトン級ムサシ(爆)なんですか!? アーシュラ、今度は私のおさがりを着なさい!!』

などと往年の『エッチなのはいけないと思います』なメイドよろしくアルトリアを動かしたかったのだが。

その後泣きながら『お母さんのおさがり『胸』と『尻』がきついんだもん!!とか言わせてセイバー界のカリスマ、英霊の座のえいれいさまたるアルトリアを滑り台行きにするという案もあったのだが、ボツに。

そんなこんなで新話お送りします!!(汗)


第77話『プリンセスラバー!』

三高のプリンセスたちが『お色直し』している間に、 こちらの戦略を立てようと思うのだが……。

 

「一条寺コンビなど、プリンセスたち以外のメンツはテントの外に出てってくれない。今から一高の作戦会議だから」

 

「鴨川ジムの青木村みたいにまとめないでくれよ………まぁ分かった。十文字さん、七草さん―――一高の皆さん、申し訳ありませんでした……それじゃ、一色たちのことお願いします」

 

アーシュラの無情な言葉に対して文句を言いつつも、同権の相手や他への一礼を忘れないでいる一条将輝だが……ところどころで深雪に対して視線を送っている辺りに―――。

 

何というか、この男は……と思う人間は多かった。

 

三高の人間たちが続々と一高のテントから出ていき、そして遮音を掛けた上で、ちょっとした作戦会議となる。

 

「結局、一条と吉祥寺及び―――実戦的な魔法を使う三高の面子は、闘いに出てくるわけか」

 

「プリンセスを三人にしたことで、男子メンバーの数は削減されたんですか?」

 

レオの嘆くような言葉を受けてか、達也はその辺りの疑問を上役に問う。

 

「ああ、流石に九島老師もこれ以上のホームディシジョンをやることは不可能だと想ったのか、何なのかは知らないが……プリンセス3人の場合、男子ガードは6人―――計九人の刺客が、お前たちの相手だ」

 

「一色さんはどう考えてもサーベル担いで、ワタシに対して、えっちらおっちらやってくるでしょうしね。十七夜さんも似たようなもんか。なんとかしましょう」

 

達也の言葉に応えた克人に対して、アーシュラの気楽な言いよう。プリンセスは受け持つということは、残り六人のガードは男子でなんとかするようだということだ。

 

「あの一条寺コンビに対しての対策とやらを出したら?」

 

「ああ、俺の師匠、九重八雲に融通してもらったものなんだが、レオと幹比古には―――これを身に着けて戦ってほしいんだ」

 

「マントとローブかい達也―――ん?」

 

達也の手でキャリーケースから出された分厚い黒い布2枚を見た幹比古が、怪訝な声を上げた。

 

「おい達也、それをどう使うかは分からないが、その状態ではマズくないか?」

 

「……」

 

チームメイト2人から指摘されて、何気なく達也がマントとローブを開いて持つと、それは―――。

 

「裂けてるし、解れてる。マントの用途は分からないけど、ローブは『機能』を微妙に減じているわよ」

 

「マジか?」

 

「大マジよ」

 

崩れた言葉で返し合う2人の男女に、どういうことなのかはイマイチ分からなくとも、その用意された装備が役立たずになりつつあることは、理解できたらしい。

 

「お兄様。何かの手紙がケース内部に張り付いています」

 

深雪が気付いて、その手紙を達也に渡すと、代表して読むこととなった。

 

「―――『キミに頼まれたものだが、長いこと放ったらかしにしていたからか、こんな状態のものしか無かったよ。いやーすまない限り―――ブリシサンの修繕士を呼びつけられるわけもないから―――まぁ『専門家』(プロフェッショナル)に任せると良いよ。衛宮アーシュラ、藤丸立華はその専門家だからね by 年齢不詳の忍者より(元は七夜)』……ハベトロットがいなくても、どうにか出来るのか?」

 

「貸してみそ♪」

 

古風な…レトロなカルイ物言いで、達也にローブとマントを寄越すように言ったアーシュラの手に、ローブとマント……九重寺の寺宝というわけではないだろうが、それなりの礼装が渡った。

 

「ははぁ……経年劣化で破れたわけじゃなくて、恐らく『魔』との戦いで破れたのか……しゃーないわね。立華」

 

「アナタの御髪も寄り合わせれば、糸玉一つ分は出来るわね。分かったわ」

 

交わされる言葉の意味は詳細には分からない。しかし変化は劇的であった。お互いの御髪に手を当てると、そこから先程のように髪が寄り集まり、糸の束が出来上がるのだった。

 

(魔術なのだろうが、それにしても何というか……外連味のあるものだな……)

 

と、達也が内心でのみ感想を出していたのだが。

 

「女の髪の毛―――特に年月を経て魔力を溜め込んだものは、一級の触媒だからね。魔女の定番だ」

 

「おまけにリっちゃんってばアニムスフィア(天文魔術)だし、宙と星の理を混ぜた糸って最高位のものなんじゃない?」

 

魔術師側に理解が深い幹比古とエイミィの証言で、そういうことかと少しだけ納得する。

 

糸玉を作り上げたあとには、すぐさまどこからか『針』が取り出されて、ミシンどころかテーラーマシンが普及した現代において、古式ゆかしく手で裁縫を行っていくのだった。

 

ただその速度は尋常のものではない。もう、手が幾重にも見えるかのように消えては出現するようだ。

 

千手観音の手を思わせる作業の集中域。仏ゾーン(爆)に入ったアーシュラの手によって、2着の縫製は済むのだった。

 

机に広げられたそれは、まさしく元通りの―――形かどうかは分からないが……。とりあえず……。

 

「オイ、アーシュラ!! この古臭いヤンキーが着る特攻服(トップク)みたいな刺繍は何だ―――!?」

 

嘆き叫ぶレオ(涙目)の訴えは当然であった。

 

自分が羽織るマントの背中……『西城獅子春兎』『宇佐美雪兎命』などと、見事に縫われた文字を前にしては……。

 

「えー、いやなのー?」

 

「いや、直してもらっといて何だけどよ……こ、これは流石にさ……しかも別にオレ、『ユキ』と付き合っているわけじゃないぜ?」

 

会心の出来を披露したはずなのに、言われて嫌そうなアーシュラに感謝しつつも、反論すべき所を反論するレオの気勢は弱い。

 

「けど私達、宇佐美さんから『レオって、魔法科高校でどんな感じなの? やっぱり女の子にキャーキャー言われてる!?モテモテ!?』とか、鬼気迫る文面のメールとかで問われてますしね」

 

「マジかよ」

 

「「大マジだ」」

 

同じくラ・フォンティーヌ女学院に通っている『宇佐美夕姫』と知り合いである面子は、何故自分たちにはそれが来ていないのだとちょっと嘆く。というか悲しむのである。

 

「まぁ私もアーシュラもB組だから、その辺りは分かりませんが、とは言うんですが……とりあえず、宇佐美さんの気持ちは完全に『それ』でしょ」

 

「ユキちゃんには、レオン君が九校戦に出るよ。とメールしてから色々とやり取りはしていたからね」

 

その言葉を聞いて達也は、アーシュラが五高との戦いで『前に出ろ』と言ったのは、それもあるのかもしれないと感づく。

 

愛しの『獅子人』(ナラシンハ)が、あまりテレビに映らないことに不満を漏らしたかもしれない宇佐美の気持ちを考えて――――。

 

(ったく、闘いの場(フィールド)に恋愛を持ち込むなよ……)

 

とは嘆息気味に思いつつも、自分の名前が名前だけに、『達也』もそこまで言えないのだ。

そう考えると―――新田明夫か西村勇の立場にいるのが、先程までこのテントにいた一条とも言えるが。

 

(……別に妹の恋愛をアレコレする義務はないからな)

 

一条が深雪と達也を四葉の縁者だと知っているわけではない。特に護衛するべき心配はない。

 

(……変な感じだ)

 

昔ならば、深雪を危険に晒す存在を徹底的に排除しよう、とりあえず警戒しようという気持ちになっていたというのに―――。

 

今はその気持ちが程遠いものになっている。もちろん、家族として妹を守りたい気持ちはあるのだが。

 

それでも……。

 

「衛宮さん。ま、まさか僕のローブの方にも」

 

「ああ、大丈夫。背中にそんなものはないでしょ?」

 

「だ、だよねー。よかったぁ……」

 

「―――裏地の方に『ラブリーマイエンジェル美月命』って縫っておいたから♪」

 

幹比古の懸念を切って捨てるアーシュラの笑顔。そちらの方が何故か―――いまの達也の心の中にはあるのだ。

 

幹比古の慌てふためいた顔を見つつも、自分も何か羽織るものを、解れているものを用意しておけば良かったと思っていると……。

 

「お兄様の方のマントか外套は、深雪が縫ってさしあげます♪ 宇宙最強愛妹命! とかでよろしいですか?」

 

「……あのな深雪。まさかアーシュラが、ただ単に面白がってるだけで、あんな刺繍を凝らしたと想っているのか?」

 

溜息突きつつ、妹を詰るように言うと、心底驚いた風な『顔』をする深雪に、少し罪悪感を持ちつつも説明をすることに。

 

「な、なにか特殊なことをしているの達也君? というか、現代の堀越学園といえるラ・フォンの女子生徒とウチの生徒が知り合いという事実の方が結構驚きなのに、それ以上のことがあるなんて」

 

「アーシュラの刺繍は、微細な文字の集合体で描かれています。曰く『精霊文字』と『妖精文字』の集合体だそうです。レオの小通連の分離した刃片も、そこから出ていたんです」

 

アレはそういうことだったのかと納得する面子は多い。そしてよく考えると、あの辺りの時点でレオンハルトは、ちょっとした覚醒状態であったとも気付く。

 

「アナタの意図はレオン君に『盾持ち』(シールダー)をさせて、ミッキーに『支援術』(バッファー)をさせるってところでしょ。それに相応しい改良は施せたつもりよ――――ユキちゃんもこれには大満足♪」

 

「レオは宇佐美と付き合っているのか?」

 

「それは誤解だぜ……まぁ一番、親しい男子であるんだろうけどな……まぁ奮起する一助にはしておくか」

 

単純な男などと揶揄するものはいない。先程まで、テントの中にはレオ以上に単純な男がいたのだから。

 

そんな風に三高に対する話題を出したからなのか。

 

噂をすれば影がさすの通りに……。

 

「終わったんだわ!! いやー、アイリもシオリもトウコもいい花嫁になれそうで、いい仕事した気分なんだわ!」

 

裁縫部屋(アトリエ)のシャッターを開けて出てきた小人は、特徴的な帽子を脱いで、手の甲で汗を拭っていたのだが。

 

「わぷぷぷ!! フォウ!! 舌で舐められるとくすぐったいぜ!! けどありがとう!!! カヴァスもありがとう!!」

 

『フォーウ♪』

『イヌヌワン!』

 

衛宮さんちの飼い猫と飼い犬とが、ハベトロットを労うかのように汗を舌で拭ってあげるのだった。

 

そのハベトロットの後ろにいる3人の女子の姿は―――。

 

「ふ、普通だ……」

 

何を想像していたのやら。そもそも誰のつぶやきなのかすら分からない(男子であることは間違いない)が、その言葉に反するように、最初に入ってきた時には彼女たちが身につけてなかった『アクセサリー』こそが、衣装の『収納場所』(クローゼット)なのだろう。

 

 

「衛宮さん、ハベトロットさん。ありがとうございます……ですが、試合では手心は加えません」

 

「そう。ならば、ワタシも遠慮なく、ハベにゃんが作った衣装とは言え戦維喪失させてもらうわ」

 

代表して言った一色愛梨に、にべもない返答をするアーシュラ。その言葉に下着姿とはいえ、ストリップさせられることに呻いてから咳払いされてしまう。

 

「も、もうちょっと穏やかな負けさせ方とか無いんでしょうか―――いえ、これ以上は何も言いません。ですが、私達は相応しい戦闘衣装(ドレスコード)を手に入れました。アナタもブリテンの騎士として相応しいドレスコードで、私の前に立ちはだかって欲しいです」

 

首から下がっていたペンダントを握りしめた一色愛梨の姿に、一瞥するアーシュラ。その後には会話らしい会話もなく、一高陣営に礼をした一色たちはテントから出ていった。

 

そうしてから1分後くらいに……。

 

「―――武蔵ちゃん衣装は五高戦だけかぁ」

 

「六高、エリセとの闘いの時に着ればいいんじゃない?」

 

「そうね。でないとエリカか委員長の褥が散らされちゃうもんね」

 

アーシュラと立華の何気ない会話で、まだメガトン級ムサシの脅威は去っていないのだと、背筋を正す渡辺摩利の姿。

 

「し、しかしブリテンの騎士らしい衣装って……何なんだ?」

 

「鎧は着けられませんから、まぁ一条君との氷柱でやりあった衣装でやろうやということなのか、それとも……」

 

摩利の取り繕った言葉に考え込むアーシュラ。

 

悩むアーシュラに対してアドバイスが入る。

 

「フツーにアルトリアの戦衣装でいいと思うよ〜〜♪」

 

小さい体を存分に生かして、カヴァスの背で寝転がりながらフォウを構う様子。幸せそうな顔をするハベトロットに、今度は『ぐぬぬ』顔をする摩利。

 

百面相すぎる委員長とは違い、それもそうか。という顔をするアーシュラを見て達也は疑問をぶつけることにした。

 

「他にドレスコードのプランとかはあったのか?」

 

「まぁ一応、流石に『爆裂』とかは使わないけれども、彼の炎熱系統の術を無効化するために『氷河』を纏っていたかしらね」

 

氷河を纏う……またもや謎な単語が出てきたことで、一同が混乱を来す。もはや、違うプランが選択されたというのならば、どんなものであったのかを知りたい。

 

このルートを選んだからこそ手に入れた隠し機体があるならば、他のルートや熟練度次第でどうなったかを知りたい気持ちがあるのも事実。

 

よって―――――――。

 

「そのドレス、どんなものか見せてくれないか?」

 

なるたけ平静を装いながら、達也は出来るだけ自然体で聞き出したのだが、『にやにや』という表現が似合う立華とハベトロットを見る。

 

「別にいいけど」

 

気楽な返答の後に椅子から立ち上がったアーシュラは、いつぞやのヴリトラフォームのように、一瞬で衣装を変更していた。

 

光が弾けたり、何かの布がまとわり付いたり、などという往年の変身ヒロインたちのよう極端な変身シーンがあるわけではないのだが。

 

―――変化は劇的だった。

 

「ほい。いつぞや会った吸血姫のおねーさんに教えてもらったものなの。何でも地球の上にある巨大自然物をミニチュアにして纏うって話なんだけどね」

 

「――――――あ、ああ……そうなんだ……うん。すごいな。ゴイゴイスーだな」

 

白い鳥を思わせるドレス。布地は薄くて肌色が見えそうな気すら思わせるが、ところどころに黒い縁取りのアクセント。

 

むき出しの肩とか、顕な上の胸元とか。それとは別に長手袋……肘付近まで覆うもの―――頭に差してある蒼く輝く名も知らぬ花とか……。

 

動きやすさ重視でミニスカートタイプのドレス。足は黒いタイツで覆われながらも、ヒールをやはり履いている。

 

一部を除いて『アメイジング!!!』という感じで呆然としているなか、達也ですら呆けそうな感じがしていても、その姿を目に焼き付ける。

 

脳が焼き付くようなテンションで頭が茹だりそうになっていく。

 

「……お兄様……」

 

ふと。妹の悲しい『思念』を達也の脳が感知する。だが――――――。

 

「これの、どこが、一条―――対策なんだ?」

 

興味が止められない。どうしても、この『魔法』(ふたつとない奇跡)を知りたいのだ。

 

達也の言葉が跡切れながらも出した質問に。

 

「巨大な冷媒が終始活動しているの。よく見れば分かるけど、ほら。氷粒とか冷気が漂っているのが分かるでしょ?」

 

「ああ、ツア――――……そうだな……」

 

モデルのようなポーズというわけではないのだが、少しだけ見せつけるようなポージングをしたことで、夏に降る氷雪という―――魔法でならば、いくらでも再現可能。

 

特に今―――終始、達也の脳をかき乱している妹ならば、難なく出来るだろうが。

 

それでも……違うものを感じた。その雪の美しさは触れたものを凍てつかせながらも、その中に『暖かさ』を見てしまうのだ。

 

「―――『これ』を用いて、『偏倚開放』だっけか? ああいう魔法を弾きながら接近しようかと想ったのよ。どうする?」

 

どうする?とは、要するに一色愛梨の言を無視してでも、これで勝率を上げるかどうかということなのだろうが。

 

「……『これ』で一条に接近……」

 

背中が半分も開いているこのドレスで一条に接近戦を挑むアーシュラを想像した。

 

深雪にあからさまな懸想をしているあの男ならば。

 

(あの男ならば……なんだってんだ)

 

自分の思考のズタボロさに顔が赤くなる。羞恥心が達也を襲う。

 

けれど。

 

「絶対ダメだ。ただでさえお前は……十師族に睨まれているんだ。これで接近戦(クロスファイト)ですら一条を倒してしまえば、『長男の嫁に来ていただきたい』とかいう要請が、お前の両親に行きかねない。それは―――色々とマズイだろ?」

 

多弁に、ここで一条を『姫騎士アーシュラ』が倒してしまう『公的なデメリット』を語る。

 

「それもそうね。前に和樹おじさん、克人さんのお父さんからも、そんな風な話が来ちゃったしね。用心はしておくべきだ」

 

「―――それも絶対ダメだ」

 

なんでお前がそれを判断するという、睨むような克人の視線が達也に飛ぶも、ともあれリーダーの判断がそうならば、何も挟むものはアーシュラもないようだ。

 

「…………」

 

無言で達也を見る深雪の視線の意味は理解している。けれど―――どうしても、それに拘ってアーシュラを貶めるような。ましてや……あてこするように深雪を褒めちぎるような真似は出来なかったのだ。

 

そんなこんなで、衣装チェンジという名のファッションショーは、終わってしまった……。

 

戦う準備は完了して―――青いドレス……いまは達也たちですら知らぬ『選定の剣』を抜きし騎士王の衣装。

 

伝説を身にまとう姫騎士を先頭に―――準決勝は始まる……。

 

 

 

 

 

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