魔法科高校の姫騎士~Alternative Order~   作:無淵玄白

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遂に来るぐだぐだイベント。

色んな予想がされているが、果たして待望の信玄ちゃんは出るのか!  邪馬台国なのに新選組
なんてイベントを考えればありえなくもないですが。

ノッブヘッド―――本能寺に消えた信長の遺体とか考えれば、首を取ったことを明らかな意味で証明したかった光秀とか思い浮かぶが、fate時空のミッチーは、ちょっと違うからな。

予想しても仕方ないと思いながら、新話お届けします。


第78話『プリンセスブレイブ!』挿絵あり

「模造刀ならばオッケーね……随分と大盤振る舞いですね」

 

「多分ですけど、三高の一色さんとかは『サーベル』を使ってくるからこその措置なんでしょうね……」

 

中条あずさは、段々とレベルアップしてくるアーシュラの装備や衣装に、少しだけ苦笑しながらも考える。

 

この子は、何故こうなのだろうか?

 

多分、魔法師とか魔術師の枠組みの中でも、アーシュラは『特別』な類なのだろう。特別であるならば、特別な人間と『つるむ』のが普通だ。

 

けれど、この子はそうはしない。特別だと想っている人間に容赦なくケリを入れて、ムチを叩いて……。

 

―――YOU ARE FOOL―――と明らかに罵ってくるのだから、とんでもない女の子だ。

 

特に真由美への当たりが強いように思えるのは気の所為ではあるまい。確かに真由美の考えでは『誰も救われないし、救えない』。

 

更に言えば、現在の1科2科制度こそあれど、制服の紋無しと紋有りによる違いなど、ただの制服の刺繍ミスなのだと分かった時には……。

 

校章の有無で、そういう風な『見える違い』を見せつける悪辣さを直そうとも考えない真由美に、あずさとて少しだけ辛辣にならざるを得なかった。

 

だが、それでも真由美はあずさにとって尊敬すべき先輩だった。学生自治の為に教師側に要求するだけではダメで、妥協するべきところは妥協する。

 

是々非々で行ってきた努力は分かる。それは歴代の生徒会が行ってきたことだから、それを踏襲して、それでも求めた改革案は……ただの心の持ちようだけでなんとかしようでは、やはりダメだとも感じた。

 

(けれど、それ以外に無かったんでしょうね。真由美さんの策―――優秀生による下位クラスに対するティーチングも、職員室で蹴られたみたいですし……)

 

教師側としては、いまの差別的な状況を作った自分たちの責任や、あっちこっちからせっつかれたことに対する疲労などあれども。

 

……それでも、いまの状況下で『優越的権利を持つもの』が『持たざるもの』の『上』に、明確に立つことが、さらなる軋轢や悲劇を生む可能性を危惧した。

 

多くの事例・判例である通り、優越的権利を持つものが、持たざるものに高圧的に出て倫理を著しく害する行為を働く可能性もあるとされては真由美も何も言えなかった。

 

『能力が高い人間=高潔な人間、なんて図式が成立するわけじゃないんだぞ、七草。それを分かっていない君じゃないだろ? 君の気持ちやその人物の見立てがどうあれ、『そこ』に立てば、悪い方の意味で『君子豹変す』になる可能性もあるんだ……いい案であったが、『遅すぎた』。こうなる前に君が……いや、僕らも同罪だ……』

 

指を3本食いちぎられて、顔面にすら裂傷を負った教師の一人。痛ましい顔を苦衷に歪ませたことに、申し訳ない思いだ。

 

再生治療を受けることすら拒んで、そのようにしていた彼の心中を慮れないほど、真由美も無垢ではなかった……。

 

結果的に……一高には不穏なものが残る結末となった。

 

その解消として、時計塔の派閥は、ここぞとばかりに『講師派遣』を行ってくるとのこと。

 

元々、百山校長の腹案はそれであり、それと絡めて九島健という魔法師を帰国させる手筈ということだ。

 

誰かに利用された結末。それを……受け入れるしかないのだと気付かされる。

 

 

「……アーシュラさんは、どうすれば良かったと思いますか? 一高が……変わるためには」

 

「知りませんよ。そんなの、自分で考えてください」

 

やはりこの子は……。模造刀―――随分と立派な『剣』をバッグから取り出した彼女は、それを検査員に提出するようだ。

 

それを見ながらも少し恨めしげに見るあずさは、何も無いのかと本気で思う。

 

「じゃあ『あずさ先輩』は、2科に『押し込められた生徒』が何を求めているのか、理解しています?」

 

こちらの気持ちを見抜くように問われたことで、一瞬ドキリとしたが、それでも今まで考えていたことを、後輩にちゃんと言うことにしたのだ。

 

「それは分かりますよ。適切な魔法実技の指導です……指導する講師の数が少ないからと、それを是正することも出来ずに、しようともせずに『成果』だけを求めて、それでも……結局2科に押し込められた人間は、『伸びる』『上がる』機会すら与えられず……鬱屈したまま、どうしようもない―――」

 

そういった状況に置かれた場合を想定した時に……さすがのあずさも、その無情さはとてつもない『暗闇』に思えた。

 

何処に行けるかも分からない。届けるべき『積み荷』は多すぎる。航路すら不確かなのに、行くべき海は暗く重く……一筋の光すら届かない。

 

そもそも―――自分がいる場所が『海』であるかどうかも不確かならば……歩みは遅くなる。風を受けるべき帆は破れ放題……ならば、そこには惰性しか生まれないのだ。

 

「何だ。分かっているじゃないですか。イメージも出来ている。けれど、それは学校制度だからと無理やりな納得をさせていた、自分の矮小さを曝け出しただけですよ」

 

「うっ……」

 

ヒドイ後輩だ。優しさなんて全然ない。

 

けれど、この子を見ていると分かることがある。

 

これこそが、2科生たちに1科生たちがやってきた仕打ちなのだと。

 

「―――正直言えば、会長さんみたいな世事を知らぬお嬢さんに、どうにか出来る問題じゃないでしょ。父親に反抗的無気力振りかざしているだけの女に、何が出来るってんだか。熱を持たないヤツが、熱意を以て語りかけている風に装う―――詐欺の常套手段でしかないですよ」

 

会長の公的な性格とか家庭内のことを、ごっちゃにして語るアーシュラに理解が及ばない。

 

この子と藤丸立華は誰よりも先んじている。先んじていながら、それを理解させずに進んでいき、そして『落とし穴』に自分たちが嵌る様を眺めている……そんな邪推まで出てしまう。

 

そんな考えをめぐらした時には、アーシュラの準備は終わっていた。

 

ショートヘアスタイルになったとはいえ、それでも髪を結うことは忘れていないのか、慣れた手つきで後ろで纏め上げていく姿。

 

俗に『アルトリア先生スタイル』と呼ばれて、一高の女子も何とか真似したいと想っても、中々出来ないものを達者にやっていく様子は、『チョココロネヘア』などと、陰で言われる中条あずさでも憧れるものだ。

 

化粧台の鏡の機能だけを使ってそれを行ったアーシュラは、時間だと気付いて立ち上がった。

 

青色のロングスカートタイプのドレス。金色の縁取りが眼にも鮮やかなれど、胸元を少し露出させながらも決して下品にさせない、白のコルセットを思わせる部分が存在している。

 

盛り上がる肩パッド部分が、どことなくショルダーガードを思わせる……正しく姫騎士としての衣装がそこにあった。

 

機能性と華美を『バランス良く』兼ね合わせたそれが、『本物の騎士』が着るとここまで違うのかと思わせるのだった。

 

「それでは行ってきます」

 

「はい――――――」

 

検査員がチェックを終えた模造刀を手にしてから、更衣室から出ていく姫騎士の姿を見送る。

 

その背中は多くの人間たちを守護するもので、それでも……その中に恐らく一高の1科の人間は含まれていないのだと気付かされるのだった。

 

 

 

『さぁ! やってまいりましたプリンセス・ガード準決勝!! 今回戦う両校には、多くの紆余曲折がありました。時には大規模なアクシデントが起こりメンバー総交代! 時には一時的な治療で戦線離脱! されど、この時の為にこの闘いはありました!! 果たして決勝に進出するのは!ONEorTHREE!? 間もなく開戦です!!』

 

煽り過ぎな実況に、観戦者たちは誰もが苦笑してしまう。とはいえ、選ばれた『草原ステージ』において、両校は対峙し合う。

 

距離は離れているが、絶対に眼を逸らさないという想いで見据える。

 

 

「―――こうして正面に立つと分かりますわね。アナタが呑まれた原因も」

 

「……古典的な表現だが、あれは『王』なんだろうな。君主・城主……なんとでも言えるが、とにかく―――」

 

呑まれそうな自分を押しのける。

 

模造刀―――鞘込めのそれを地面に突き刺しながら、柄尻に両手を重ねて待つ、立ち塞がる―――。

 

そのポーズだけでも一種の魔法だ。

 

(ですが、負けはしない。恥を忍んで、頭を垂れてでも願って得たチカラ! それを用いて―――アナタを倒す!!)

 

護拳付きのサーベルを持ち上げながら、祈るように眼を閉じる一色愛梨。集中しなければ負ける。

 

その様子を見た十七夜栞は、決意する。

 

例え汚れ役に徹してでも、愛梨(親友)に勝利を与えるのだと……。

 

2人ほどではないが友情を感じつつも、ボードでのリベンジを果たすべく、四十九院沓子もまた戦意を燃やすのだった。

 

「作戦は理解しているよね? けれど……その通りになるかどうかは分からない。どんな打ち手で来るかわからないから―――」

 

「吉祥寺、お前が指示を出してくれ。俺たちゃ『駒』だ。捨て駒にしたけりゃそうしろよ。衛宮アーシュラに勝つ。それだけだぜ」

 

真紅郎と将輝以外の男子が、その言葉で頷き合う。六名のガードのうちの四人。その心を利用させてもらうことでしか、勝つ見込みはないのだ。

 

見据える強敵はどんな壁よりも厚く、どんな荒野よりも果てがないほどに隔絶した相手だ。

 

だからこそ眼は逸らさないでいるしかない。

 

 

そんな風に一高選手を観察している三高は、同じく一高の『観客席』から観察されていた。

 

「一色さんのあの衣装って……」

 

「も、モノスゴイよね……」

 

この試合に限って男の観客の注目は、どちらかと言えばアーシュラよりも愛梨に向けられていた。

 

その理由は単純明快であり、今回に限り、愛梨の露出度がアーシュラを上回っていたのだ。

 

肩章……エポーレットが着いた軍服の上のようなものを羽織っているとはいえ、完全に閉じられずに胸元は露出しているし、スカートが無いからか時折見えている股間部分は、パンツじゃないから恥ずかしくないもんとかいうレベルではない。

 

いわゆるハイレグレオタードなのだろうそれを、着ていることが理解できる衣装である。

 

だが全体を見れば、ところどころに金色の防御具が着けられている。華麗と剛力を併せ持つ衣装で鎧だ。

 

白を基調としながらも青と赤を取り入れた、いわゆるトリコロールカラーに、自身の金髪と同じ金色を入れた―――ある種、伝統的な『ガンダムカラー』の衣装は――――美と同時に戦場を鼓舞するものを表現していた。

 

「スゴイ……あの衣装の防御力とか、加護とでも言えばいいものが凄く込められている。何処かの英雄の衣装とかなんですか、ハベにゃんさん?」

 

美月が意外なことを言ってきたことに嬉しくなったのか、嬉々としてハベトロットは詳細を語ることにした。

 

「キミ、いい目しているねー。まぁボクも、カルデアに召喚されてから色々な英雄(ヒト)たちと出会ったからね。アイリくんがフランク王国系列の()だと気づけたのさ。ネタバラシしてしまえば、あれは『シャルルマーニュ十二勇士』の一人、世界に数多い英雄譚では珍しい女騎士『ブラダマンテ』の霊衣さ」

 

ブラダマンテと言われて即座にどういう人物であるかを諳んじれるものは、この場には数多くない。

そもそもシャルルマーニュ伝説は、アーサー王伝説よりもこの国では馴染みが薄い。

 

だがライトノベルというジャンル……特に美少女が多く出ることを売りとしているレーベルでは、モチーフとして多用されていた経緯がある。

 

そんなわけで……。

 

「イタリアの名家『エステ家』の繁栄の基礎となった、不屈と愛勇を誇る女騎士ブラダマンテが、あんな痴女みたいな格好だなんて……」

 

「クレルモン家では、どういう騎士教育があったんでしょうか……」

 

明智英美と柴田美月だけがそれを理解するのだった。

 

ヒストリエ・マイソロジーに詳しい2人の説明だが、一番に知りたいことは……。

 

「ハベにゃんさん。そのブラダマンテさんの衣装の効果とかチカラは―――」

 

「それを言うのはフェアじゃないなー。まぁ見ていれば分かるさー。姫が刺繍した男子2人のマントとローブだって、あっちには知られていないんだから」

 

深雪の質問に対して、立華の膝の上でごろごろと動いていたハベにゃんは答える。

 

確かに闘いが始まるまでは秘密でいた方がいいのかもしれないが―――少しだけふくれっ面をする深雪。

 

時々、自作―――テーラーマシンで服を作ることもある深雪だけに、あれほどの衣装服、しかも魔力が込められた防具としての機能もあるなど……興味が抑えられないのだ。

 

「じゃあアーシュラの着る衣装は―――」

 

もっとも、だからといってもうひとりの服飾デザイナーたるアーシュラに直接聞かない所が、彼女の『みみっちさ』を強調していたのだ。

 

「ただのアルトリアのおさがりだよ。けれど若い頃のアルトリアと違って、アーシュラは胸も尻も膨らんでいるから、『クレーン』と一緒に少しだけ縫い直したかな」

 

そんな深雪の『みみっちさ』と『マイナスの花嫁力』を見たハベトロットは、平淡に告げるのだった。

 

驚愕の事実。アルトリア先生の若い頃は『ボインちゃん』じゃなかった。

 

思い出すように呟くハベトロットの後に―――。

 

闘いの開始は、高らかなブザーの音と共に告げられるのだった。

 

 

小手調べなど出来ない。最初っから全力で行くことを決めていた一条将輝は、砲門全てをアーシュラに向けることにした。

 

偏倚開放と呼ばれる圧縮空気弾の連射。その展開される魔法陣の数は―――40。

 

その数を前にして、それでも怯むこともない姫騎士は―――。

 

「ハァアアアア!!!!」

 

裂帛の気合いを吐き出すと共に瞬発(しんぐん)した。

 

常人、ましてや移動魔法や自己加速魔法を多用する魔法師の動体視力では追いきれぬ速度域に至ったアーシュラは、一条将輝の展開した偏倚開放の着弾よりも先に、前に、前に、前に! 足を進めていた。

 

まるで交錯するスポットライトの中を駆けるダンサーだ。当然、偏倚開放という空気圧の威力は、草原に穿たれるクレーターの直径からお察しである。

 

だが、それは当たれば、通用すればの話である。

 

言うなれば―――

 

「当たらなければどうということはない」

 

ということである。

 

機体が赤ければ、3倍の性能を発揮する大佐のようなオカルト現象で、アーシュラは一条の艦砲射撃を嘲笑っていく。

 

蒼の残像が草原に刻まれる度に、十師族の攻撃が空を斬る。その事実に一条は歯噛みする。

 

「衛宮を止めろ!! 将輝の砲撃でルートを限定した所に撃ち放て!!」

 

一条が打ち出す方向と同調しての十字砲火を食らわせろなどと、無茶苦茶な指示を出す吉祥寺だが、それをこなすだけの訓練をこなしてきた自負が、三高の面子にあある。

 

このままむざむざ突破させてなるものかと、上から打ち出される砲撃も、前から打ち出される圧も、ありったけ衛宮アーシュラに吐き出されるが―――

 

亜音速、もしくは音速に準じる速度で動き回る、衛宮アーシュラを捉えきれるものはいない。

 

それどころか、時にこちらが打ち出した空気弾(エア・ブリット)火炎弾(ファイア・ボール)を、剣……なのか、透明にした得物で打ち返してくる程なのだ。

 

 

【挿絵表示】

 

 

しかも、的確にアタッカーの頬すれすれを擦過する空気弾や火球の前に、三高の面子は恐慌するように、魔法の連射連弾が戦場を覆う。

 

あちこちで着弾した魔法と衛宮の『出足』で舞い上がった土砂の影響で、土煙がもうもうと立ち上る。

 

「吉祥寺君ストップ!! 視界が―――」

 

栞が気付いた時には、既に三高正面は完全に視界不良になっていた。

 

そして、その土煙の向こう側に、いつの間にか衛宮アーシュラの姿は消えた。

 

「―――姑息な……!!」

 

誰かが言いながらもその土煙を晴らしてしまえば、姿を白日の下に晒すことも出来たのだが。

 

(いざ、それをしようとすると怖いな……)

 

この沈黙が、正しく怖い。イデアに対して神経を尖らせれば、居場所を探ることも出来るかも知れないが。

 

(無理じゃな。衛宮の強烈な魔力の発露が、ある種のジャマー(妨害電波)のように、ワシらに位置を知らせないでいる……)

 

 

五感及び六感に優れた沓子が忌々しく思う。

 

攻撃・防御・補助を一手でやって退けるその性能の前に、『動く』ことで痛烈なカウンターを受ける可能性があり、どうしても待ちにならざるを得なくなる。

 

そんな中―――。

 

「守っているだけでは、負けます!!」

「攻めるぞ!!!」

 

一色愛梨と一条将輝の言葉で、風を晴らして衛宮及び一高を攻めようと意気を上げて、今こそ──勝負の時と定めたとき。

 

「風王鉄槌ッ!」(ストライク・エア)

 

それを挫くように、まるで軍神であり戦女神のように、高らかでよく通る声が響いた。

 

煙が吹き散らされて、その向こうから『神風』が吹いた。

 

その声の通りに超高圧縮の気圧の束が、──さながら猛る龍神の咆吼の如く、轟然と三高陣営へと迸る。 凝縮された超高圧の疾風は、土に根を下ろす草を土ごと吹き飛ばしていく。

 

当然ながら草原に足を着けていただけの三高選手たちは、即座に位置固定化の魔法で不動の姿勢を取ろうとしたが―――。

 

あっけなくその魔法式が崩される様子に誰もが驚愕する中、この結果を予想していた一人である藤丸立華は思う。

 

(無駄よ。アーシュラの巨大すぎる『原理』『術理』の前では、その程度の原理しか持てない術ではたやすく吹き飛ばされる。ただの気圧の束じゃないのよ)

 

さながら、三匹の子豚の長男が作った藁の家を吹き飛ばす、狼の息吹のようなものだ。

 

などと観客席で見ていた立華が思いながらも―――。

 

光盾(・・)を展開しなければ、ここで終わりよ。一色さん?)

 

ここからの再起があるかどうかを思った時に―――。

 

声は聞こえないが、四十九院沓子と十七夜栞に何かを指示する一色愛梨。

 

全員が愛梨を再正面にして、その後ろに列を作る体制。

 

気圧の束でプロテクションスーツもボロボロとなった選手を、水で移動させた沓子の手柄だ。

 

そして誰もを守護する光の盾を『形成』して、アーシュラの破城槌から踏ん張りながら同級生たちを守り尽くした。

 

万軍を粉砕する破城槌のような轟風から、三高生全員を守ったあとには、正面―――少し遠くに黄金に眩く輝く剣を持った少女の姿……。

 

青空の下、ようやく望みの接近戦へと移行しようとした時に、空から魔法が飛んでくる。

 

「まさか風に乗って上空に舞っていたのか!?」

 

一高の男子三名が、落下傘部隊のように三高の真上(ずじょう)を取ってきたことで驚くも、対空砲で迎撃してやろうと、全員が頭上を撃とうとした時。

 

走り穿て(ストライク)五色の光剣(プリズマ)!!」

 

正面にいる衛宮アーシュラが、背後に幾重もの魔力で編まれた光剣を作り出して、今にも打ち出さんと砲列を組んでいた。

 

正面の竜姫、頭上の魔法師。

 

進退窮まるというわけではないが、それでも――――。

 

「行けっプリンセス達!! 霊衣を着ているお前たちだけが、衛宮アーシュラと戦えるんだ!!」

 

決断は早く、一条の怒声のような言葉に蹴られる形で、一色愛梨を先頭に、三高の姫たちが動き出す。

 

先程の一条とアーシュラの戦いの焼き直しにも見える戦闘の様子。

 

打ち出される色彩豊かな光剣が擦過していく。アーシュラのように軽快な足さばきは見せられない。痛みは走る。

 

それでも――――――――――。

 

噛み合う刃金と刃金の音。

 

にぶすぎる金属音。

 

模造刀であっても、魔法や魔術で強化された得物は、真剣と変わらない威力と切れ味を持っている。

 

「ようやく!!辿りつきましたわ!!」

 

「ここがアナタの終着点でないことを願うわ」

 

金色の姫騎士2人が、2振りの得物を打ち合わせて、大地が互いの踏み込みに耐え切れず陥没する。

 

その音を合図に戦いは転調する……。

 

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