魔法科高校の姫騎士~Alternative Order~ 作:無淵玄白
まだ5章クリアすらままならない私はオニランドと同じくなってしまう(爆)
「―――――――――」
「―――――――――」
「―――――――――」
一高天幕の中で観戦をしていた人間たちは、アーシュラの戦いぶりを見て何も言えなかった。
ただ単に降り立つ沈黙。だが時を動かすかのように、鈴音が手に持っていた筆記タイプの端末を机に落とした音で動き出す。
「失礼………」
呆然としていたのは鈴音も同様で、滑り落ちた端末を拾いながらも、全員がようやくのことで呼吸を開始したかのようになるのだった。
「アイルランドの英雄『クーフーリン』と、互角以上に打ち合っていたことから分かっていたことだが、あいつの近接能力―――いや戦闘力は、もはや群を抜いているな……」
同じ剣を扱う人間……千葉流の剣士として、どうしても嫉妬をしてしまうのだろう渡辺摩利の言葉に、克人は苦笑してしまう。
「ここまで、彼らがやったことの解説は出来る?」
「舐めるなよ七草。単純に言えば、撹乱と消耗をやったということだ。アーシュラの狙いは少し違うだろうが……アーシュラからすれば、一条の魔法が直撃しても何もダメージは無いだろうが、それでも『一直線』に本陣に入り込まなかった理由は―――――――」
「一条君を消耗させるために?」
「ああ、アーシュラに単騎で本陣までの突破を仕掛けるだけの力があることは、ここまでの戦いで他校も理解している。その理由が霊衣によるものだと『勘違い』しているところが、浅いがな」
一高が他校と戦う際のモノリスの距離は、通常よりも長めに設定されているようだ。
これは対外的には、多人数と戦う一高への温情と見られていたが、戦略的及び悪意的に考えれば、モノリスを攻めに来る一高のアタッカーを
というか普通に考えれば、それを実行するはずなのだが……。
森林ステージで戦った八高が、戦力の逐次投入などという『愚策』を行い、更に言えば大会委員も関知していなかった、こちらの伏兵たる1-E男子という『奇兵隊』の思わぬ活躍。
そして、衛宮アーシュラを抑えるには、本人の申告通り、全く兵隊の数が足りなかったことが、ここに至るまでの各校の敗因だ。
「一条としてもアーシュラか司波が、本陣に向かってくるのは理解していたのだろう。しかし、まさか魔法の照準が全て合わせられない速度で突貫してくるとは、思っていなかったのだろうな……」
そして恐慌した三高が魔法の乱舞を放ち、
三高の『心』すらも読み切った上で、絶妙のタイミングでの超轟風斬撃。
恐らく一色が『盾』を展開することも『目論んでいた』はず。
危機を脱した三高。土煙の向こうにいるアーシュラに、反撃のチャンスと見せかけて、風を利用した舞空術で舞い上がった達也達が頭上から攻撃を開始。
更に言えば、そのタイミングでの『プリズマストライク』という遠距離攻撃の展開。三高の心を縛り付ける銃口による威嚇も同然。
三高に一切の主導権も選択権もよこさなかった、アーシュラか達也の奇計戦略が、見事に決まった形だ。
それらを説明し終えたところで、真由美は大粒の汗をかきながらも、疑問を呈する
「魔力放出と魔風を利用した『音速機動』……そして、それを利用したパワーファイト、ハイディフェンス………本当に―――あの子は何なの? おかしすぎるわよ……サーヴァントとガチンコのファイトが出来る時点ですら、有り得ないってのに……」
全ての魔術師たちがアレだけのことを出来るならば、自分たちなど既にいないはずだ。
アレに魔法師で対抗出来るものなどいない。
今更ながら、彼女を止められる存在など、魔法師においてはいないのだと。
そうであるならば、規格外の存在たる達也などは、衛宮アーシュラと対立・牽制していれば良かったのだが、ことはそう上手く行かない。
その一番の根本たる司波達也が、何だか妙な感情をアーシュラに抱いているのだから、俗称『達也組』というものは分裂状態になりつつある。
もっとも、仮に達也が衛宮アーシュラに敵対しても、『衛宮家』に立ち向かうことは無理だろう。
彼、そして妹の『本当の所属』というのが、どこの『魔法家』か『国家機関』なのかにもよるが、それでも……。
―――お嬢様、どうか衛宮一族及び、国際機関フィニス・カルデアへの手出し及び奸策はお止めください。弘一様は心情から言っておりますが、私はお嬢様の身の安全のために言っておきます―――
―――そして、これこそ肝に銘じておいてほしいことです。アナタは自分が世故長けた人間だと思っていましょうが、私の目から見ればまだまだです―――
―――自分の土俵でしか戦えない人間ですよ―――
中々にキツイことを言ってくる、七草家の家宰とも執事とも言える名倉―――汗をかいて焦った様子に、いじけた返答をしてしまったことを思い出す。
「……お前の疑問はもっともだ。だが、知りたければ自分で調べろということだろうな。アーシュラの言わんとするところは。そして俺はアリサ君の件で、そういう不義理はできん」
「………衛宮アーシュラに好意を抱いているからじゃないの?」
「妬くなよ。夢見を、幻想を脱却した時代に―――在りし日の世界にあっただろう姫騎士の姿を見せる女の子に、好意を抱くのは仕方ないだろ」
「……どちらかといえば十文字君は、そんな姫騎士を捕えて『くっ……殺せ!』とか言わせるオークとか屈強な傭兵よね……」
「―――七草、お前とは絶交だ」
「なんでよっ!?」
後者はともかく前者は、人を評する時にダウトすぎただろうと周りにいる面子は思う。もっともそれとて、テンプレなバージョン以外にも色々とあったりする。
まぁつまり―――日本の創作は無限大ということだ。
画面の中で縦横無尽に動き回って、三高の魔法姫たちを相手に快刀乱麻の活躍をする姫騎士は……。
そんなオークキング十文字とも上手くやれるのではないかと、テント内にいる服部と中条は考えた時点で……状況に変化が出る。
・
・
・
(まさか敵中に無理やり踏み込んでくるなんて……)
この距離では、味方が密集しすぎている上に、モノリスが近すぎる。
普通の接近戦が出来るならば、どうとでもなるのだが、男子に接近戦は許されない。
衛宮アーシュラが遠間から打ち出してくる剣弾―――色彩豊かな『鋳造された魔力弾』が、三高選手に『正確』に叩きつけられてくる。それを防御するためにも、対応していく内に―――。
「おらっ!!!」
「ごあっ!! あばばばば!!!!」
西城レオンハルトの振り回す飛剣が、間壁という男子の腕を叩き、それによってCAD操作を中断させた瞬間、剣弾が多段ヒット。
手加減されているとはいえ、なんとも無残な様子になってしまう間壁を見た一条将輝が。
「通り魔か!!」
怒りと共に偏倚開放をうち放とうとする。西城をターゲットとしたのは4つ。
それら全てが角度と方向を変えたところから穿つものだ。
西城からしたら四方から打たれるところだったが。
「―――」
四方の内の三方に展開した魔法陣が、術式解体によって崩された。電光石火の早業。
やったのは司波達也。恐るべきディスペルスキルが、十師族の術を消し去る。
だが、達也が四方を打たなかったのは―――気がかりだ。
正面からの圧が、西城を襲おうと向かうが。
「Aufwachen!」
目覚め、あるいはかっこつけて言えば『覚醒』を意味するドイツ語で、西城が纏っていたマントが、巨大なひし形の盾として大地に突き立つ。
「そういう用途―――なのかな……?」
使用法の意外性以上に、盾の真正面に縫われた『西城獅子春兎』『宇佐美雪兎命』という達筆な文字に、眼を奪われた三高陣営だが―――。
その効果は絶大。光り輝く文字が、将輝の放った空気砲を四散させた。
あまりにも不可解な現象に、ぎょっ! としたのも束の間。
一条将輝の頭上に、分離した飛剣が落ちようとしていた。
盾の向こう側から小通連なる武装を振り回した結果だ。
「――――」
やられるかと思った瞬間に―――。
「ジョージ!!」
「礼はあと!」
言葉通りに、飛剣を移動魔法で弾いた吉祥寺だが、危機はまだ去っていない。
自動砲台よろしく、衛宮アーシュラのプリズマストライクが殺到する。
急いで自己加速魔法と移動魔法の融合で、それらを躱していく。
まるで誘導兵器のように、時にとんでもない軌道で飛んで追ってくるそれに、2人して肝を冷やす。
威力とその情報量は、防御障壁で耐えきれるものではないことは実践済み。
となれば、それらを確実に当てるべく、一高からの妨害は当然あるはずなのだが―――。
特に古式魔法師の吉田幹比古が何か奇策をやってくると思ったのに、何かの瞑想をしつつ呪符を手に持っているだけだ。
(そうか!!)
その様子に―――吉祥寺真紅郎は気付いた。ひらめきと同時に、
「ごはっ!!!」
偏倚開放がヒット。吉田が一度は倒れたが、すぐさま立ち上がる。
吹っ飛ぶようにバウンドした吉田だが、ヘルメットを取られまいと即立ち上がったことは賞賛に値する。
抜け目なく吉田の後ろに回り込もうとしていた中野に対して司波が共振波動を打ち込む。
「おらっ!!!」
剛毅な、もしくは乱暴な言葉で飛剣が中野を直撃。
三高ガードは戦闘不能が、これで2人。
数的優位は、無くなりつつある。
しかし―――――。
剣弾の全てが、三高メンバーに誘導されずに『あらぬ方向』に飛んでいったことで、援護射撃は無効化したことになる。
(こちらのペテンの一つが知れてしまったか)
達也は、内心でそんな感想を出しながら、ここまで精霊の加護を受けていた『ラブリーマイエンジェル美月たんローブ』を羽織った幹比古による、プリズマストライクの誘導の成果を労っておく。
「形勢逆転だな司波達也?」
「それは、どうかな。確かにお前の魔法力は大したもんだ。如何に俺たちが上達したとしても―――お前の地力を超えることは不可能だろうな」
「そこまで分析できているか」
むだ話の探りをしながら互いにチームメイトの回復を行う。同時に状況に変化が出ることを確信した。
「お前が如何なる魔法を使おうとも、俺には分かるぞ。俺には見える―――アーシュラがお前を打倒する『未来』が」
「女に頼っ――――」
嘲りの言葉と同時に向けられる特化型のCAD。その銃口の照準装置で魔法が動き出しながらも―――
少し遠くの方から聞こえる爆音が、一条たちを戦かせた。
モノリスを守護する側である三高生たちが、達也たちの後ろの様子に驚愕していた。
「なにっ!?」
「派手にやっているなぁ」
お互いに絶好の攻撃機会ではあるが、それを中断せざるをえない剣戟が、
「その首! 快く出せぇええ!!」
「お断りですわ―――!!!」
片方は本来ならばあるべきはずの上着をなくして、かなり際どい格好を晒しているのだが、防御力・スピードなどは上昇している。
そして戦いの中で発動をした『疑似宝具』『疑性召喚』というものが、光槍と光盾を一色愛梨の手に持たせていた。
これが、もう一方の姫騎士との互角の戦いを許す原因となっていた。
片やアーシュラには大した変化はない。
少しだけ煤で汚れた風なのは、激戦であったからだろう。
「―――!!!」
最上段からの振り下ろし、空を踏みしめて耐える―――なんて器用な真似は出来ない一色愛梨は、その勢いを借りて三高の方に落ちていった。
空から落ちてくる美少女―――ロマンチックの欠片もない急降下と難着陸で土埃が舞う。
片や空から落ちてくる美少女、立てば姫騎士・座れば大食漢・駆ける姿はプリンセスブレイブ―――まるで羽でも広げるような優美な降下と軟着陸で、一高側に降り立つ。
「騎兵隊の到着よ! 待たせたわね!!」
テンプレすぎるセリフだが、その言葉だけで万軍の援護を受けた気分になるのは、その実力だけではあるまい。
「敗残兵の到着です!! 色々と申し訳有りませんね!!」
涙目でアーシュラのセリフに対応することを言う一色愛梨。粋な女子ではあるが……。
「横柄なんだか、殊勝なんだか分からないセリフはやめろ……」
先程まで着ていたサー・コートは既に無く、体操選手のようなレオタード服がところどころ破れていて、眼のやり場に男子一同困ってしまう。
「十七夜さんと四十九院さんがいない……」
そんな中、冷静な判断をしようと務めていた吉祥寺の声が場に響く。
「そちらに一色さんがいて、ワタシが健在な以上―――答えは一つ。死んだのは―――2人のプリンセスよ」
言いながら、どこからか出した蒼と紫の華を握りつぶすアーシュラ。
不敵かつ不穏極まる表情と言動を見せるアーシュラに対して……。
『いや、死んどらんからな! お主の
『愛梨! 私達の仇を取って! けど負けたからと『マッパ』にならないで!!』
後ろの方から大声でのクレームと応援が聞こえる。察するに係員たちが2人を保護したというところだろう。
「―――ということよ」
あっさりとした返しだが、吉祥寺は戦慄を隠さないでいる。
「恐ろしい限りだよ……こちらは万全以上の準備を整えたってのに、『力』が『智』を上回るなんてさ」
万全以上の準備とは言うが、大半がハベトロットの霊衣頼みなんじゃなかろうかと思った達也。
もっとも三人がかりで掛かられたことで、アーシュラの服に出来た煤汚れが目立つほどにはやれたのだろうが。
「さて―――モノリスは目と鼻の先。とはいえ、英霊霊衣を貸し与えたというのに、そういうつまらないオチは着けたくない―――ここで果ててもらうわよ。白羽の騎士!」
霊剣とも魔力剣ともいえる刃から柄まで光体でかたどられた剣を作ったアーシュラが、黄金剣との二刀流―――片方の切っ先を突きつけながら言う。
「その傲岸不遜極まる言動!! 絶対に閉じてあげますわよ!!」
言われた方も黙っちゃいない。光盾を風を受ける風車のように回しながら、同じく光体と実体の混ぜ合わせのサーベルを手に持つ一色愛梨が返してから―――2人の激突は始まる。
高速の世界での激突を皮切りにして、セミファイナルのラストラウンドが始まる……。
そんな様子を見せられていた『赤毛の少女』は、『お仕事』忘れて乱入したい気分になったのだが―――――――――。
『ダッメよ〜〜♪ アナタの役目は『ソレ』だけじゃないからー!! イマはジチョーしてチョーダイ!! まぁ、あの『竜』はとんでもないから、正直実験してやりたいんだけど―――次の試合では遠慮なくやっちゃって♪』
「―――分かった。そちらの用事が終わったのならば、それでいいんだ」
いきなりな念話とその調子に嘆息しながらも、『上級死徒』との会話を終わらせた少女は――――――。
「―――すみません。次は、この『世紀末覇者焼き』ください」
九校戦に出ている屋台出店―――『鍾馗』のデカ盛りメニューに挑むのだった。
別に大食いチャレンジというわけではないのだが、全てのメニューを制覇せんとする変な美少女の姿は、多くの人の耳目を集めるのであった……。