魔法科高校の姫騎士~Alternative Order~ 作:無淵玄白
ツングースカはやはりスープー谷だったのか(え)
入れないとはいえガチャは引こう。
というわけで新話お送りします。
Interlude――――
話は少し戻って、一高プリンセスと三高プリンセスたちの戦い―――。
最初に剣を合わせた愛梨とアーシュラ。その豪快極まる剣戟の応酬に気を取られることもなく、アーシュラは立ち位置を変えていく。
そのアーシュラを追撃する形で愛梨は剣合の位置を変えていかざるを得ない。
(こちらの狙いを悟られている……!)
常に愛梨の後ろに―――栞がいるという状況が作られていることに戦慄する。愛梨がサーベルを持ち、栞が
本来ならば、マジックフェンシングの競技選手として栞もサーベルを持つべきだったのだが、纏った衣装―――ハベにゃん曰く『アストルフォという騎士』の霊衣を用立てられたときから、これを使用したくなっていたのだ。
そこで考え出されたというよりも、アーシュラに対する対策を練っていた三高は、これを利用することにした。
(単純な話だけど、騎士道に反することだけど―――)
前後を挟んでの挟撃。それを戦術として選択したのだ。
無論、それとて通用するかどうかは分からない。むしろ、ありあまる膂力で一気にケリを着けられる可能性とてあるのだ。
その前に、何としても衛宮アーシュラを挟み込む。そう決意して挑んでいく。
だが衛宮アーシュラは、そうはさせまいと常に愛梨を遮蔽物にすることで、栞に自由な動きをさせないでいる。
自己加速魔法よりも素早く姿勢移動をされてしまうので、どうしてもスキが出来ない。
(更に言えばわしの援護も、そうそう入れられない距離での戦いじゃ。精霊魔法ならばともかく、『現代魔法』が弾かれたぞ!!)
栞が何とかしようとあがくように、沓子もまた何とか間隙を作ろうと必死だが、ここに来てさらなる事実。
衛宮アーシュラの『エイドススキンの厚み』あるいは『サイオンウォール』……なんとでも言えるが、情報量が桁違いすぎて、相手に対して掛ける情報改変の類が、全くもって効かないことが判明した。
足元からふっ飛ばそうと上方へと抜ける圧を仕掛けたのだが、アーシュラの足さばきに負けじと掛けたものですら、ガラス片のように崩された。
(推測はしていたが、こやつの対魔力は尋常ではない!! 現代魔法がそもそも『通用しない』相手―――)
驚愕するが、沓子は生粋の現代魔法師ではないので、そういった『存在』がいることにさして驚きはしない。
夕食会で藤丸立華が話した内容とて、そういう事実はとっくにご存知であったりしたぐらいだ。
だが、それがまさか自分たちの目の前にいるとは……。
このまま『回り込む』かのような移動では挟撃はムリである。悟った2人の剣士が、お互いを見ずとも意を伝え合い。そして―――。
「おおおおっ!!!!!」
戻りの隙など見えないような突きの連続。細剣が次から次へとアーシュラに叩き込まれるも、大きな躱しも、派手なディフレクトも無い淡々とした受け流し。
完全に遊ばれていることは、武に通じたものたちならば、何となく分かる。だが―――
身を低くして、下段方向から突き上げるように突きを繰り出す愛梨に、背丈の差から流石のアーシュラも少し『うざい』と想いながら、剣戟を受ける。
女としては長身であり、ましてや少し低身長の同年の男子よりも高いぐらいのアーシュラなのだ。
だが、そんな『小細工』などわかり易すぎた。母から遺伝したとも言える戦闘における『第六感』……サーヴァントの保有スキルで言えば直感に当たるものが、この後の展開を予想してそれでも―――それを良しとした。
(阿吽の呼吸が合わせられるならば、それはそれで面白い得物の応酬でしょうね)
あえて、その窮地に身を浸すことにするのだった。
一色 愛梨の後ろにいた十七夜 栞の出足が加速する。
そして、その体は―――一色愛梨の肩―――サーコートの肩章を足場にして、アーシュラの頭上の更に上に踊っていた。
「栞!!!」
水による補助を働かせて距離を稼がせると同時に、この辺りにある地下水を『喚起』したのか、地面から水が吹き上がり、アーシュラの足元を濡らしていく。
沓子による水精魔法であった……。
着地を果たした栞が騎兵槍を構える音が響く。
「愛梨!!」
「栞!!」
呼びかけ、そして騎兵槍と光槍とがアーシュラの前後を何度も往復する……。
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「十七夜さんと一色さんとの挟撃が遂に決まった!!!」
立ち上がって、まるで『望んだ展開だ』と言わんばかりに喜色を見せる光井ほのかに、藤丸立華、伊庭アリサ、遠上茉莉花、ハベにゃん、フォウくんがシラけた目を向ける。
自分の醜態というか、あまりにもあまりな発言に『ハッ!』と気付いた時には、少しだけ縮こまってから着席するのだった。
「アーシャ、どう想う?」
「仮に魔法科高校に通うことになったとしても、一高には通いたくないね。ミーナは?」
「アーシャと同感」
年下2人からそんな風に言われて、更に縮こまる光井ほのかは気落ちしてしまう。
そんな親友であるほのかを見て、少しばかりフォローという訳ではないが、話題の転換を試みるべく、雫は何となく聞くことにする。
「2人は、魔法師としての才能があるの?」
「才覚と呼べるほどのものかどうかは知りませんが、定期的な進学適正検査で、サイオンコントロールは出来ると言われています」
「アーシャと同じく。ただ魔法科高校に入りたいかどうかとなると、正直あんまり乗り気じゃない」
「マジックアーツは、魔法科高校の正式部活のはずですよ?」
立華の嗜めるような言葉に考え込むも、やっぱり乗り気じゃない気分でもあるようだ。
「そうなんだけどさー……あんな『実態』を知ったらば、そっちに進学しようなんて気が無くなる」
その言葉に現役生、そしてあの事件の当事者高校としては、詰まるしかなくなる。
唯一、何とも想っていないのは藤丸立華だけだ。
「けれど……魔法師になれるってスゴイことだと思わない?」
「魔法師として一人前になったからといって、人間としていっちょ前になれるわけじゃないですし。それに、魔法師になりたくないのに魔法師にさせられる人間だっていますから。先程の進学適性検査でサイオン操作の適正が見つかったばかりに、魔法師の公立塾に通わせられた上級生もいました―――――ようやく、札幌をホームとするJクラブのジュニアユースで、レギュラーを取れたっていうのに」
「そしてやる気があっても才能が無ければ、一高みたいに2科制度を採用しているガッコーでは、何の教育も受けられない状態で飼い殺しにされたうえで、成果は出せだなんて、アホくさい限りですよ。
「…………」
その強烈かつ痛烈な言葉に在校生一同は黙るばかり。特に一科生は、居たたまれない気分になってしまう。
「けれども……2科にいる人……当然望んでそうなったわけではないのは理解しているけど、そればかりを哀れむのは、2科にいても努力している人をバカにしているよ」
年上として何とか気概を以て雫は反論するも、キグナスたちは何も揺るがない。
「哀れんじゃダメなんですか? その2科生の中には、真っ当な教育を受ければ、もしかしたらば一角の人物になれたかもしれない。遅咲きの才能として世に認められる人間がいたかも知れないのに、その機会を何一つ与えることもなく、そのまんまの状態でいたことに腹立たしさを覚えますよ」
「もしかして北山さんって『2科生にそんなこと出来るわけ無いだろ!』とか想っているタイプなんでしょうか?」
アリサの何気ない挑発の言葉に、雫は激高せざるをえなかった。ただ小学生に対して怒り散らすまでに至らなかったのは、彼女なりの最後の理性だったろうか。
「違う! わたしは……ただ………魔法師になりたいのに、なれなかった『家族』がいるから、……『弟』のことを考えた時に、もっと……魔法師であることに、みんなが誇りを持ってほしかっただけなのに」
『『『それ、逆のほうが良かったと想いますよ』』』
「――――――」
三人そろっての反論に、うめきながら雫も少しばかり考える。片親だけが魔法師であったというのに、生まれが同じだと言うのに、雫ばかりに魔法の才能が偏り、弟はその才能が無いことを突きつけられる―――進学適性検査の度に、嫌な思いをしてきたのではないかと想う。
ひょっとしたらば、突然変異の第一世代のように、いつかどこかの時点でそういう適性が現れてくれるかもしれないと、切に願いながら受けていたのかも知れない。
そして……親は姉弟を平等に愛していると言えども、どこかで、姉が魔法師であることで優先されていたと感じて、『心のしこり』が生まれていたのかもしれない。
弟……航が目に見えて、そういう風に反抗的な態度が出ていないのは、大企業の次男として『物質的に満ち足りている』からだ。姉が贔屓されているとはいえ、愛情の不足は他のことで充足されてるからだと想っている。
これで北山家が普通の中流家庭―――父がサラリーマンで、母が専業主婦で―――元・魔法師であったりすれば、また違った家族の在り方があったのかもしれない。
「雫………」
落ち込む雫を慰めるほのかだが、アリサは言葉を告げる。
「まぁ私も九校戦に来たことで、自分の『出生の秘密』を知ってしまったので、今後は魔法師として生きること、魔法能力を研鑽することを強要されそうで、イヤなんですよね……私は獣医として、お世話になった養父母の営む遠上医院を継ぎたかったのに」
「―――」
その言葉に、みんなが苦しい表情をする。それは……魔法師を志すものたちではなく、魔法師にならざるをえない立場に追いやられたものたちを、考えてこなかったツケだからだ。
「弟さんが何歳か存じませんが、魔術刻印の如く私の魔法能力を移譲出来るならば、譲りたいぐらいですね。けれど、どれだけ医療技術が発展しても、そんなことは不可能。おとぎ話の三蔵法師のように、妖怪たちが信じる迷信よろしく、生き肝を喰らえば三蔵法師になれる、誰かになれるのなら躊躇わずやればいい……けれど、『現実』はそうではない」
「だから―――アーシュ姉も立華姉も怒ったんだ。強さだけが尊ばれる世界を、強いだけの世界を固定しようとする。人理に対して
小学生に口で負けてしまう高校生たち。
もう、何ていうかどうしようもないほどに、ぐさり、ぐさりと剣が突き刺さるのだった。
そんな中、耳はそちらに向けられていても、目だけは『ガッツリ』とガードの試合を見ていたエリカに、美月は話をふる。
「エリカちゃん……なんでさっきから不機嫌そうなの? アリサちゃんと茉莉花ちゃんの話は、その―――」
「いや、美月が考えているようなことじゃないわよ。話に夢中で、アーシュラの剣戟はみんなして見てなかったじゃない」
「そ、そうだね。反省―――つまり?」
「……ナメた剣を放っているなぁと思えたのよ」
「「「「「????」」」」」
エリカの仏頂面のままに放った言葉の意味を、殆どの人間が理解できない。
だが、それでもこうして話していた10分間ほど、その時間の間に――――。
「う、嘘でしょ! なんで2人の挟撃で、衛宮さんはまだ倒れていないのよ!?」
「それどころか、あの状態のまま剣戟を続行して、前後の攻撃に一刀で対応していたわよ……」
如何に突きが主体の前後の攻撃とはいえ、それを捌きながら10分間も立ち回っていたという言葉は―――リプレイされている映像を見ても、とてもではないが信じられない。
その映像とてとんでもないもので俄に信じがたいのだが。
「足元だって水で抵抗を―――うううんん!!!!????」
「アーシュラはウォーターウォークの術でも使ったの?」
「さぁて、あんまり親友の秘密を教えたくないので、回答拒否で。まぁ柴田さんならば、何か見えているのではないかと想いますけどね」
立華の素気ない言葉の後には、メガネを外して裸眼で闘いの様子を見ている柴田美月に視線が集まる。ついでに言えば、大磨伸も激おこぷんぷん丸であろう。
「ええ、バトルボードの時にも見たんですけど、精霊というべきものが、アーシュラちゃんに自動的に水面を歩行させているように見えるんですよ」
「……そう言えばえっみーは、精霊の加護を自動的に受けるタイプだったか。ある意味、ダイスロールの際に、超英雄ポイントが自動加算されちゃうタイプなんだよね」
なんでTRPG風の解説?と言いたくなるエイミィの言葉だが、要点は理解できている。要するに現代魔法的な認識で言えば、自動発動するBS魔法のようなものだ。
ただ理不尽なのは、現代魔法的な観点で言えば、アレコレと併用しなければならない高度な技法が『天然自然』で行われているということだろう。
それがセンスと言ってしまえば、仕方ない話でもあるのだが。
「バトルボードは彼女にとって独壇場だったということか……」
「水の上を自動で歩行する。どれほどの水量であっても沈むことはないアーシュラですからね。騎乗するものであれば更に安定を誇るわけです」
「……じゃあ逆に水泳は不得意なのかな?」
「幼い時分の頃だけですよ。すぐさま覚えますし」
「アーシュ姉は運動神経の塊だからなー。うらやましい……」
クラウドボールで微妙な劣等感を覚えていた里美スバルが聞いてきたが、その言葉で更に劣等感を覚える。
だが、ほのかや雫と違って、その戦いぶりを、誇りと掲げた剣を、一高の仲間、一年の同級生として誇りに想うのだった。
そして……プリンセスたちの戦いに変化が出る。
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約10分間の攻防の中、怒濤の攻撃を姫騎士アーシュラに浴びせたはずの愛梨と栞は、その攻撃全てがアーシュラに通じなかったことに驚愕する。
攻撃に変化も付けていた。
突きだけでなく、薙ぎ払い、突き上げ、斬り下ろし、斬り上げ、あらゆる形でアーシュラに対して攻撃を見舞ったのだが、それら全てに一刀だけで対応されたことに荒い息を吐いてしまう。
愛梨が突きを放ち、栞が騎兵槍を薙ぎ払うかのように動かした。騎士道に反する行いだが、それでも背後から狙う栞の攻撃を食らうはずだったのに……。
アーシュラがやったことは、愛梨の突きを下段に
膂力の差は歴然であり、受け止めた栞は後ずさりせざるをえなかった。
追撃の構えを見せるアーシュラを止めるべく、体が完全に下に泳いでいた愛梨が起き上がって剣を撃ち放つも、それを予想していたように、軽く払うように、剣が振り返りながら放たれる。
何とか鍔迫り合いで相手の剣を止めなければ、栞の攻撃が入らない。
「とんでもない馬鹿力ですわね!!!」
「馬力で私に適う人間はいないわよ」
「愛梨、合わせて!!!」
鍔迫り合いを切り上げるように再び、強烈な一撃で態勢を崩された。そして、追い打ちである栞の一撃に対応する。
演武か演舞のように、次から次へと前後から打ち掛かる凶悪な得物をいなしながら踊り、舞い、そして……撥でも扇子でもなく、利刀(模造刀)を手にしたアーシュラの動きに誰もが魅了される。
上から見ていれば、踊るように剣戟を放つアーシュラに対して、愛梨と栞の攻撃は、如何に霊衣の補助を受けているとはいえ、その攻撃は雑に過ぎた。
いや、雑という表現は正しくない。
凄腕の戦闘魔法師が舌を巻くほどの攻撃、正面から戦うことを躊躇わせるものなのだが、アーシュラの剣に比べた際に、どうしてもそういう表現が出てしまうのだ。
まぁつまり―――レベルが違いすぎた。
「一色や十七夜が気付いているかどうかは分からんが、アーシュラの豪剣、身の神速に合わせすぎたな。その所為で体力を消耗させられた」
「……つまり、アーシュラさんの剣と動きに振り回されたことで、ペースを崩されて、疲労したってこと?」
十文字の解説に武を嗜んでいるとは言えない真由美が疑問を差した上で、次なる解説は、その隣りにいた渡辺摩利からだ。
「おまけに衛宮は、背中に目があるかのように十七夜のランスを先んじて封じた上で、一色に焦らせるかのように攻めかかる姿勢なども見せている。フェイントを織り交ぜつつ、さりとてフェイントにみせかけて攻勢にも出る……完全に『踊らされた結果』だな」
剣道における勝機の心構え。
「ただ剣を振るっているわけじゃない。どういう勝機を突くかという仮定のもとで『剣技』を振るっているんだ」
その徹底した無駄撃ち、無駄玉を出さない。
全ての動きは勝機を取るためだけにあるという戦闘理論は、千葉流の兵法とは違うが、たしかに剣士が持つ到達点の一つではあろう。
「壬生もこれを見に来ていればよかったのに……『用事』があるからと、応援観戦にも来ないだなんて……」
何気ない摩利の言葉。それに対して真由美は疑問を呈する。
「気になっていたんだけど、今年は2科生の応援観戦が―――千葉さん達以外にいないわよね……?」
「ああ、応援席には殆ど、いや一高の2年、3年の2科生徒はいなかったな……」
真由美の疑問を解消する形で、十文字も今更ながらの事実を口にする。
あんなことがあっただけに、そういう風にしこりがあるのも分かるが、真由美が頭を下げてでも観戦に来てほしいと願った―――今まで関わることをしてこなかった、三年の2科生たちにも願ったのだが……。
(全員から『観戦応援は出来ない』『申し訳ない』『カエレ 』などの大合唱だったわね……)
曹操との一大決戦で敗残の途にあった中、民家に水を求めて、目の前で瓶をひっくり返された袁術の気分であった。
それでも何とか言葉を尽くそうとした真由美を遮ったのは……。
(士郎先生とアルトリア先生は―――何かを2科のみんなにやっているんじゃないかしら?)
これ以上のちゃぶ台返し、価値観の変遷は勘弁してもらいたい。なんで『勝てば官軍負ければ賊軍』のように、鳥羽・伏見の戦いで『朝敵』と蔑まれて、銃弾と砲弾を雨のように撃ち込まれた
そんな風に、秘密主義すぎる衛宮家及びその周辺に、恨み言を内心でのみ吐いていた時、映像の中に変化が生まれる。
10分間の持久戦の末に、腰砕けとなった三高プリンセスと、遂に決着と見たのか踊るような剣舞が終わり、今までは片手持ち―――右手は柄に添えるだけであった剣を両手持ちにした。
―――打ち込みの速度に変化が出る。
最初に狙われたのは、一色愛梨である。
踏み込みの力強さと共に振るわれる剣。速さと重さを兼ね備えた連続剣。堪らず
だが、それでも勢いそのものは相殺しきれずに、愛梨は薙ぎ払いの一撃で、男子の方まではいかずとも、遠くの方にふっとばされた。
連携挟撃の形が、崩された形だ。
「………」
「―――」
余力たっぷりに、向き直ってくる姫騎士に緊張を隠せない。だが、そんな栞の心とは別に、槍は向かってくる姫騎士に対して動き出した。
無意識の攻撃、身体が反応したがゆえのそれが、先程の愛梨を伸した攻撃と噛み合う。
模造刀と騎兵槍が何度もぶつかり合い、質量と重量で優るはずの騎兵槍が軋む音を栞は耳にする。
同じく強化した得物において、こちらだけが負けそうになるということは、明らかに力負けしているということだ。
理解しながらも、一度でも怯めば、アーシュラの剣はこちらを持っていくことは間違いない。
だからこそ――――――。
「スカッパーレ・サルターレ!!!」
音声認識型のCADから加速移動魔法を引き出して、大幅なバックステップ。
そこから制動、最大級の魔力を込めて、沓子の水が付与された騎兵槍を打ち出した。
アーシュラの真芯を貫くほどの勢いで撃ち出された槍を前にして、剣は槍を下に打ち付けた。
紙一重のタイミングだった。槍の先端を叩きつけることで、軌道を力づくで下に修正させたことでアーシュラへの直撃は無くなった。
だが、騎兵槍という巨大なもの、魔法の効果が持続したものを草原に叩きつけたことで、もうもうと立ち込める土煙。アーシュラの姿が見えなくなる。
(またもやこの展開……!!!)
だが、標的はやってくるのだと分かって身構える。予備のサーベルを抜き払って、気配を読むことに徹する。
どこだ。どこにいる!? エミヤ・アーシュラ!!!
獣が血の香を追って狩猟をするように、栞は探るも――――。
「―――栞!!! 後ろ―――
それよりも速く沓子から警告の声が飛んで、振り返り―――そして『上』を見上げると、天地を逆さまにした状態で『弓』を引き絞るエミヤ・アーシュラの姿を見る。
「──────────
その言葉の後に――――放たれる攻撃。
一矢が放たれる。
それが虚空で、飛んでいる途上で、打ち上げ花火のように規則性ある弾け方を見せて。
九つの軌道に意志もつかのように動いていく。
それぞれの軌道は、地上にて身を左右に振りながら進む蛇のように、『うねる』ような軌道を見せながら標的に向かう。
そして沓子は見た。
その矢が―――あのアイスピラーズで見せた、ヴリトラの『竜気』を加工したものなのだと。
そして気付いた時には既に、竜の矢は栞と沓子を貫き、戦維喪失させて倒れ伏すほどの衝撃を与えていたのだった。