魔法科高校の姫騎士~Alternative Order~   作:無淵玄白

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電撃大王のubwを見て、『ああ、さすがに凛でもコードレス電話ぐらいは使えたんだよな』などとかなり失礼なことを考えてしまった。

でなければコトミーからの留守電も聞けんわなどと思いつつ、新話お送りします。


第83話『摩訶不思議アドベンチャー』

魔法大学付属第一高校(以下 一高)に起こったことは、所管の官庁である文部科学省としても痛切・痛恨の出来事であった。

 

本件の端緒たる『公立』『国立』高等学校にあるまじき、同一学科における入学時点での能力判定による、教育機会の有無の絶対化は明らかに違法状態であり、これを放置していた一高の責任は明らか。

かつ、制服の校章の有無による『見える差別』を放置していた、現・一高備品部の責任もまた明確。

 

更に言えば、本省庁に提出されていた学習指導綱領や、本来いるべき教員すら欠いた状態での魔法実技教育状態であることを『改竄』『隠蔽』して提出していたことは言語道断であり、全教員の責任も明らかである。

 

しかしながら、国防に関わる教育機関であるからこそ、国防省との兼ね合いで積極的関与を避けていた本省庁(文部科学省)にも一定の責任はある。

 

そこで本省庁は、教員の増員として、英国『時計塔』こと魔術師協会から分裂した、国際機関フィニス・カルデアへと協力を要請。

教員の派遣の確約を取り付けることにこぎつけた。

 

しかし、これで何とかなるのは1−2学年の2科生徒たちだけであり、既にカリキュラムの大半を終えた3年生の2科生徒たちを救済するものではないと断じる。

 

 

そこで、かつて人理修復を成し遂げ、後の濾過異聞史現象において、格段の活躍を見せた日本人『藤丸立香』の伝説に倣い―――――――。

 

 

「多くの英霊召喚を成し遂げたフィニス・カルデアへの、夏季休暇を利用した派遣からの補講・実践授業を実施。なおこれは、一高だけでなく……二高、三高の2科生徒たちも対象……なおこれは強制ではないが、現在……魔法師への道を志す人間たちに対して、無慈悲な制度を押し付けていた魔法大学及び関係機関を信用できない現在を鑑みた救済措置である――――………」

 

文科省から三高校長に送られてきた公文書――――――、一高校長にも送られた文書を一行、一文、一字を読み上げる度に顔を青くする七草会長に『ざまぁ』という気持ちをもたげるが、同じく殆どの1科生たちも似たような顔をしていくのを見て、『ざまぁ見晒せ』という気分だ。

 

「こ、こんなことを私やその他大勢に秘密で行っていたっていうの? 酷すぎるわよ!! 別に何か一言教えてくれたって良かったじゃない!! こんなことが前もって決まっていたならば……」

 

「ならば?」

 

促された会長は完全に落ち込んでいる。もはやグロッキー状態である。

 

「……私は、せめて先生方を信用してほしいと思っていたのに。先生たちだって、決して2科生たちを指導できない現状をいいとは思っていなかったのよ!!」

 

「けれど文部科学省は、既に魔法科高校の教員、特に実技指導を行う面子を信用していないわけですよ。国策で1000人は大学に送り出せとしている一方で、軍事セクションに進む学生もいるわけで、まぁそのために必要な教育を施していたものだと思いきや、こんな風な2000年代初頭に起きた高等学校の『必須科目未履修問題』も同然な状態だったとは、思っていなかったそうですね―――いや、噂だけは役人たちも聞いてはいたはず。

ただ、魔法科高校の閉鎖性。大学自治権も同然のやりようを前にしては、引っ込まざるをえなかったわけですね。十年以上もこんな状態ならば、どっかしらで無茶は生じましょうよ」

 

あまりにも正論過ぎる答えに、真由美は絶句してパイプ椅子に体重を預けながらうめくように返す。

 

「………なんで、なんで、そんな風に……敵対意識を煽るのよ………別に……私は2科生たちを差別していたわけじゃないのに……」

 

「いいや、アナタは2科生を差別していた。その最たるものがあの演説ですからね」

 

思わず絶句する。あの演説内容に対して、感じ入るものがあった人間もいたというのに―――達也の認識を尽く覆す立華とアーシュラの見識は、深すぎる。

 

そして何より『正解』すぎた……。

 

「巷では、昔の政治家『進()郎構文』ならぬ『真由美構文』などと言われているアレの問題点は――――――2科生たちを、十把一絡げおんなじにしたものだからですよ」

 

「どういう意味だ?」

 

グロッキーな真由美に代わり、受け答えするのは克人となる。

 

「少なくとも私が見てきた限り、2科生の方々はみんな、魔法師に成ること、練達の術者になろうと『前向き』ではありますよ。決して後ろ向きな気持ちでいる人間ばかりじゃありませんでしたよ。流石に3年生になれば、もうここまでという諦観も生まれるんでしょうが、それでも……教員がいない中でも、実技指導を受けられない中でも、合格ラインに達してきたという彼らの誇りを捨てさせて、『後ろ向きな』青春しようぜみたいなクソなこと、よく言えましたね。吐き気がする」

 

「つまり七草の演説は……前向きに魔法師になろうとしていた生徒全てに、『弁えろ』としか聞こえなかったということか……確かに不見識ではあろうな」

 

その唸るように納得をした克人の言葉に、達也は己を恥じた。かつてブランシュによる差別撤廃スローガンにおいて―――

 

『モノにならない魔法技能ならば、別の道に進めば良いんだ』という事を妹に話した際のことを思い出して、今思えば、それは『小賢しく』『小利口』な生き方であって―――胸に熱いもの―――情熱を持って事に臨む人間には、何一つ身にならないものであったことを、今更ながら想う。

 

「魔法技能に差があるから、青春で心の無聊を慰めろ、飢えを凌げだなんて小賢しい物言い。よく出来たな」

 

前田校長の言葉が、更に真由美を苦渋に歪ませる。

 

「話を戻しますが―――結局の所、日本の政府筋としても、本来ならば練達の術者として、いざとなれば国防の最前線に送り込むことが出来る魔法技能者が育たずに、そのように無駄遣いされるのは非常に腹立たしいことだということです。あるいは、そもそも国立の学校として多額の税金を投入しているというのに、人員は集まらないわ、実技指導を受ける人間は制限するわ、集めた教員共は宮沢賢治の詩歌の心も理解できん味噌っかすだわ。こんな状況で、政府筋が大鉈を振るわないわけがないんですよ」

 

全員が静まり返る。百山校長は上手く収めたと思っていただけに、少しだけ裏切られた気分だ。

そりゃ今まで通りなわけがないとは思っていた。

 

「……だが一つの疑問がある。俺たちが無情にも切り捨てた、……今まで顧みることもしなかった2科生たちを、練達の術者に孵す方法を……カルデアは持っているのか?」

 

「――――易い方法ではないだろうが、あるだろう」

 

その言葉は、テントの外から聞こえてきた。今日は千客万来だなと思いつつ……やってきたのは。

 

「「九島烈(クソジジィ)」」

 

「いきなりとんでもないルビ振りで、私を称してもらいたくないものだな」

 

「「クソジジィ(クソジジィ)」」

 

「誰がルビ元と一致させろといったのだ……少しばかり話したいことがあって来たのだが、随分と白熱した議論があったな」

 

咳払いしてから、そういう風に若人たちを称する九島烈だが……。

 

「議論じゃないですがね。ギロチンみたいなものです」

 

「うむ。怖い」

 

返される言葉は無情に過ぎた。

 

2人の言いように対しても普通にする九島烈だったが、それでもまずは疑問の解消を優先したい克人は、烈の言葉に疑問を問うた。

 

「九島老師……易い方法ではないだろうがというのは、どういう意味なのでしょうか?」

 

「言葉通りの意味だがね、十文字君。つまりフィニス・カルデアとは、人理保障―――即ち『特異点』の解決を目的とした機関であると同時に、現在では―――ちょっとした『修行場』となっているということだ」

 

一同沈黙。変わんないのは湯呑を持っている立華とアーシュラだけである。

 

「しゅ、修行場ですか……」

 

なんとも外連味の有る単語だが、老人にとってはそうではないようで、茶を飲みながら例が伝えられる。

 

「うむ。亀○人のカメ○ウス、霊光○動の使い手 幻○ばーさんの修行場、小竜○さまのおわす妙○山みたいなものだ」

 

果たしてこの中の何人が、九島烈の言うところの修行場を連想できるのか疑問では有るが―――――――。

 

数少ない人間の一人である達也は、少しばかり疑問を挟む。

 

「アーシュラもカルデア所属の魔術師なんだよな?」

 

「そだけど」

 

「で、アルトリア先生も同じく」

 

「そだね」

 

「つまり……アーシュラがデニムミニの美女(小竜姫さま)で、アルトリア先生が『大竜姫さま』ということか……」

 

「ひとの母親に対して、何を真面目に想像してんのよ。ド変態」

 

そんなやり取りがありつつも、説明しろという視線が、あちこちからアーシュラに届く。

どういうことなのかを―――――。

 

「そこの闇将軍が言う通り、カルデアは『修行場』なんですよ。多くの『師匠』が居ることで有名な場所でしてね。知る人ぞ知ると言えばいいんですかね」

 

「師匠……?」

 

「頭のいい司波くんならば、もう察しは着いているんじゃない?」

 

「まぁな……召喚したサーヴァントを教導役としているのか」

 

「ちなみに、私もその一人なのだ―――♪♪」

 

「ぶっ!」

 

どっから現れたのか、武蔵ちゃんが現れてアーシュラに抱きつく。今日は本当に千客万来だなと、達也が感じていると。

 

「「そして! 私達2人は、そのサーヴァント道場の門下生だったりするのだ!!」」

 

「アリサくんと茉莉花くんも、英霊たちに教導を受けているのか!?」

 

腕組みをしながら『どん!!』という効果音をバックにするように、JS2人が言い切る。

 

ざわつく一同。そんな禁じ手を隠し持っていたとは―――。

 

「……ちなみに、在籍している英霊はどれぐらいいるんだ?」

 

「それに関してはノーコメントです。というよりも数え切れませんね。それに、武蔵ちゃんみたいに『あっちこっち』に出歩くのもいますからね」

 

「そして気まぐれに帰ってきたりするんですよね」

 

そんな飼い猫が外に出ていって、『ひょっこり』帰ってきたみたいな言い方……うちのタマ知りませんか? みたいなノリはどうかと想う。

 

「ただ、常時いるサーヴァントは70騎は下りませんよ」

 

だが最後には、脅すように戦力が少しだけ発表されるのだった。

 

「その中の全騎が教官役としてふさわしいかは、議論の余地がありますが……まぁ一番の教導役であるキャスタークラスは、面倒見がいいですからね」

 

その言葉の真偽を問いただすには――――。

 

「九島閣下が来て中断していたが、とりあえず皆の様子を見せてくれ」

 

前田校長の要望に答えることが肝要なのだった。それに対して端末を器用に操り、大型スクリーンを投影出来るようにする。

 

一昔前の映写機よろしく、セットされたあとは―――。

 

「―――Hello」

 

ハンズフリーの受話器のようなものをセットして、流暢な英語を喋りだした藤丸立華。ネイティブスピークなエイミィですら驚くほどのクイーンズイングリッシュを前にして、数分の会話のあとには――――――。

 

「出ます。ちょうど良く、リアルタイムでの授業の様子を見せられそうです」

 

そう言って端末を操ったアーシュラの手によって、映し出された最初の様子は―――。

 

 

『―――それでは授業を始める―――』

 

仏頂面の講師。誰よりも講師らしいと誰もが納得してしまう長髪(ロン毛)の黒髪―――黒いスーツで身を締めた男が、講義を行っている場面であった。

 

リアルタイムカメラにちらっと意識を払った後には、昔懐かしの『黒板』と『チョーク』を用いて、『現代魔法』を解説する様子。

 

その様子及び、ここまで『解体』されたものを教えれば―――。

 

(魔術師の眼とは、ここまで……現代魔法を解体出来るのか……とんでもないな。児戯も同然と言われたほどだ)

 

それを受けている、それぞれの学校の制服を受けている人間たちは―――――。

 

『では―――ここまでで理解できたものたちは、挙手してブラヴァツキー夫人の案内で、実技教室に移動したまえ。時間は有限だ。出来ると思えたものは即座に実践する』

 

その言葉に、授業を受けている60名程度から、20名程度が挙手をして動き出す。

 

『ではブラヴァツキー夫人、お願いする』

 

『了解よ、ロード・エルメロイⅡ世。では着いてきなさい。マハトマの導きに従いて―――♪』

 

仏頂面の講師から引き継ぐ形で、まだ中学生程度の少女が20名程度を引き連れて教室から出ていく。

 

そして画面が変わり、そこには―――。

 

 

『まだまだ!! 生と死の狭間にこそ、人間の限界能力はあるのだ!! カリキュラム上でのリミットなんぞ、クソの役にもたたん!! このスカサハが、貴様ら未熟者共を一週間で、一人前のケルトの戦士としてやろう!!』

 

『『『『イエッサー!! サージェント・スカサハ!!』』』』

 

 

中々に凝った軍人衣装をした美女―――マゼンタカラーの髪をしたものに、ボロボロながらも霊衣を纏った人間たちが威勢よく言う。

 

その相手を見た前田千鶴の眉根が動いた辺り、大半は三高の普通科の人間なのかもしれない。いわゆる嫉妬というやつである。

 

『うむ! いい返事だ!! では、次は―――ディルムッドの命を奪った魔猪の玄孫だ!!!』

 

「「「「加減しろこの戦闘バカ(バトルジャンキー)ーーー!!」」」」

 

『ふははは! 何も聞こえんな!!!』

 

アーシュラ、立華、アリサ、茉莉花の四人の声はどうやらあちらに届いているようだが、軍曹殿こと……影の国の女王スカサハは動じない。

 

そして、魔法戦闘の様子と魔法実演全てが――――――。

 

「1科生でも、そうそう出来ない達者な使用方法だな……そして、構築の仕方があまりにも器用かつ大胆すぎる……」

 

素直にブラヴァツキー夫人とやらと、女王スカサハの実践授業をそう称する十文字克人。反論の言葉は、誰からも出てこない。

 

これが、2科生―――才能が無いなどと馬鹿にして、哀れんできた人間たちの成果なのか。適切な講師をつけていれば、こうも違うのかと言いたくなる。

 

「ちなみに言えば、テオスは使用しちゃいませんよ」

 

「……俺たちの研鑽とは何だったんだろうな……」

 

「骨折り損のくたびれ儲けとでも言っていいんですか?」

 

「やめてくれ。本当に悲しくなる……」

 

だが、原因は克人とて理解している。要は―――全てにおいて『拙速』でしかなかったのだ。

 

そして自分や七草は―――己がどれだけ恵まれているのかを、認識出来ていなかったのだ……。

 

――――――話は核心へと続く。

 

 

 

 

 

 

 

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