魔法科高校の姫騎士~Alternative Order~   作:無淵玄白

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久々のこちらの更新。

どうぞ。


第85話『降魔の導火線』

 

 

 

『さぁ三位決定戦を終えて、遂に本日のメインイベント!! プリンセス・ガード決勝戦を始めたいと想います!! 驚異のダークホース、6高の快進撃を止めるべく、王者の貫禄! 横綱相撲とまではいかないが、立ちふさがるは、1高!! 事前に出ていた下馬評を、良くも悪くも覆してきた両校の対決まで間もなくです!!!』

 

興奮気味のアナウンサーの実況を聞きながらも、色んな意味で緊張した観客席の一角。

 

伝えられた情報が本当ならば、ここで打って出るかもしれないのだから―――……。

 

「さぁて……今回のアーシュラの霊衣(ドレス)は何なのかしら?」

 

「決勝戦だからとにかく気合を込めたものとか言っていたけどね……エリセに対抗する意味でも、とにかく女の魅力を高めろとは言っておいたけど」

 

「公序良俗としてどうなんですか……?」

 

「ここにアーシュラがいれば、術技能だけでなく美貌もナイスバディも、知恵も勇気も全てをマックスパワーで使ってこそ勝利の意味があるとか言っていますね」

 

恨めしげな深雪の言葉に対して立華はそう説明しておく。

 

女の魅力(チャーム)は古来から魔力の一つ。それを高めてアピールすることに、アーシュラは何も頓着しませんよ」

 

どこのゴーストスイーパーだと言わんばかりだが、そんなことで達也が誘惑されたならば、完全に精神系統の術式を極めてきた『四葉の魔法師』として、深雪は敗北を突きつけられた気分だ。

 

「そう考えると、アーシュラは日常と戦闘とかの際の切り換えが上手いってことなのかしら?」

 

「でなければ、アレだけのことが出来るわけがないでしょ……もっとも、その戦闘時の美しさと強さにやられる男の多いこと多いこと……」

 

剣術部の相津を筆頭に、魔法科高校でもそういう男たちは多い。普段は色気もクソもない大食らいしまくる女だとしても、色んな意味でデンジャラスガール。それが衛宮アーシュラなのだった。

 

 

そんなアーシュラの決勝戦での衣装は――――。

 

 

「まさかスカサハの衣装―――魔境のサージェントを纏うとは」

 

「きっと司波達也さんが、『決勝戦なんだ。 気合い入れるためにも、あの衣装になってくれ!』とか言ったんじゃないですか?」

 

「お兄様はそんな低俗な欲求に惑わされない!!」

 

立華の言葉に補足した茉莉花に反論する深雪。

 

そうは言うが、そんな今のアーシュラの衣装を求めていたところは全員が目撃しているのだから。

 

 

手に持つ得物は、当然ながらゲイ・ボルグなんて持てないわけだから、樫作りの薙刀を手にしている。

 

「アーシュラは槍術も出来るの?」

 

「武芸全般―――おおよそ主要なものは、全て免許皆伝レベル以上の水準で修めていますね」

 

エリカの質問に簡単に答える立華。衛宮アーシュラと言えば『剣』というぐらいに、武は剣技が主だと思っていただけに、コレに関しては意外なのだ。

 

そういう風に試合のことだけに集中していたかったのだが、少しだけ違う人間が苦言を呈す。

 

「りっちゃん……こんな風に『呑気』に試合観戦していていいの? 確かに昼間に『棺桶』を探すだなんて無理だけど……『祖』かもしれない死徒が、動き出そうとしているのに……」

 

「そうはいいますけど、エイミィだって分かってるはず。彼ら相手に『能動的』に動けば、逆を取られることぐらいは」

 

「うーん……なんて難儀な……」

 

物騒な話を進める2人。この九校戦の裏側で行われていたこと……説明されたことは、一高陣営を卒倒させようとしていたが――――。

 

『専門家に任せる。俺たちは何をすればいい?』

 

『何もしなくていいです。敵に襲われたならば、自衛及び逃走を優先に―――余裕があるならば観客を避難誘導してください』

 

そんな無情な言葉が十文字に向けられて、その後には反論が無くなった。死徒というモノの脅威をホワイトボードで説明したのだが、果たしてどれだけ理解が出来ているかは賭けだが。

 

『かつて新ソ連首都で起きた『モスクワ事変』で、主犯となっていたのは、奴らの内の『六鬼』―――六鬼だけで、当時モスクワにいた市民から政府上層、魔法師であろうとなかろうと、老若男女問わず『手ずから』殺し尽くしたのです』

 

その際の『記録映像』を見せたわけだが、まぁスプラッターかつ合成映像なのではないかとも疑われたが―――『表の歴史』でも、現在の新ソ連の領土、かつての首都モスクワは無人の地域なのだ。

 

 

そんな一高だけが持っている危機意識とは真逆に、戦いは今にも始まりそうだった。

 

 

「さってと、遂に決勝戦―――まさか三高戦で『完全燃焼』してたりするかしら」

 

軽快に薙刀を振り回しながら聞くアーシュラに対して。

 

「さぁてな。ただ、この試合だけはお前が全て仕切るんだろ? 勝利の女神になってくれるならば、それに従うだけさ」

 

「その勝利の女神に気安く抱きつくとか、不信心の限りじゃないかしら?」

 

「験担ぎだよ。ほら「うさぎの足」は幸運の印というやじゃないか」

 

今のアーシュラは、長かった髪をラプンツェルよろしく衣類に提供したことで、短くなっているのだが、達也にとってはそういうことではないようだ。

 

「レオン君、ミッキーもやるか?」

 

「僕はともかく、レオは宇佐美さんとやらに怒られるんじゃないかな?」

 

「いや、お前だって美月から『妙な眼』を向けられるんじゃないか?」

 

「ということは俺だけがこうしていられるということか」

 

「何を浸ってんだHENTAI」

 

そんな会話をしながらも、相手の六高は強敵であることは間違いない。最後の作戦確認が行われる。

 

「先に言っていた通り、ワタシがエリセとボイジャーを抑えるから、皆はモノリス陥落に専念して。出来うることならば、ワタシがオープンさせたいところだけど、出来るかどうかは分からないから」

 

「ああ、分かってる……お前こそ一人で大丈夫なのか?」

 

無問題(モーマンタイ)。そもそもここに来るまで全力で戦えなかったもの―――ようやく手加減無しでぶつかれる相手が来たのよ」

 

邪魔するなと言外に含むアーシュラだが……それではプリンセス・ガードの意味がないなと想いつつ、ここまでの戦い―――そんなんばかりだったと気付かされる。

 

ならば、最後くらいはアーシュラのワガママを聞いてやってもよかろうという、男気が働くのだった。

 

 

そうして激突は始まる。

 

開始の合図が打ち鳴らされる。

 

 

 

今回のステージは、三高との試合と同様に草原である。

 

広くて見晴らしのいいステージ……と言えば聞こえはいいが、結局の所―――決勝でまともに使えるフィールドがここしかなかったのと、協賛企業及び放映権を獲得している放送局に都合する形で、衛宮アーシュラというアイドルを映え(バエ)させるために、こうなったという裏事情がある。

 

更に言えば、相手校にも『アイドル』はいた。

 

アーシュラと同じく『木製の槍』を手にした美少女。青みがかった黒髪―――蒼黒とでも言うべき髪をセミロングにしている『海』を思わせる青色の眼を持つ少女。

 

その少女が……古代の弥生人を思わせる衣装で戦場に降り立つ―――冷静に見ればアーシュラよりも『露出強』で、色々と眼のやり場に困ってしまう。

 

幻想がそのままヒトの形を成したと言われても納得しかねないものが、そこにはいたのだ。

 

六高の布陣はオーソドックスなものだ。下手な小細工などせずに、向かってくる敵を相手に守備を固める。

 

あまりモノリス近くだと押し込まれる可能性を危惧して、前進はしているのだが。圧を感じつつも一高も前進―――否、突進をしてくるのだった。

 

「ラッシュラッシュラッシュ!! ドイツ語でロースとか言ってやってもいいが、とりあえず今はゴーゴーゴー!!!」

 

(そんな女よね。あんたは!!)

 

軍を率いる将器を備え、あまつさえ天地を揺るがす魔剣の数々を『身中』(てもと)に有しながら―――。

 

(そんなあんたが、なんで『人理』の根無し草なのよ!!)

 

「―――Wasserfall!!」

 

距離にして500mだろうかという距離でエリセは術を発動。六高の眼前で大津波が発生。

 

黒水の大津波が飛沫をあげながら一高勢を呑み込まんと迫る。しかし、ソレに対して―――。

 

「アスラ・シュレーシュタ・リトル!!!」

 

アーシュラも同じく大瀑布の如き『黒竜の突撃』で対応する。

 

とはいえ、あのアイスピラーズでの戦いとは違い、どちらかといえば『小竜』たちの突撃、更に言えばそれが細い矢のように細かく分けられていき、小竜たちの頭が矢のようにも見えるドラゴンアローが、大津波を相殺していく。

 

そして―――達也ですら気づかなかったのだが、その大津波の中には六高の選手たちが隠れていたわけで、ドラゴンアローは獲物を見つけた勢いで、六高選手をしこたま打ち付ける。

 

細かな散弾を全身に食らったことで、昏倒する。

 

「そうはいかないわよ!!」

 

「こちらの奇襲を読んだ……いえ、ただの当てカンね」

 

「最後の試合だもの! 派手にやらせてもらうわ!!」

 

そんなプリンセス2人が自分たちだけの世界にイッちゃってる間に、本陣への奇襲を目論んだ達也達だが―――。

 

その時、世界が崩れるほどの衝撃が―――何の前触れもなく訪れた。

 

この時を以て、九校戦最大の混乱は終息の道を辿るのである……。

 

 

 

 

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