魔法科高校の姫騎士~Alternative Order~   作:無淵玄白

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第89話『アドベントチルドレン』

マルミアドワーズを振るいつつも、その重さに、その長さに苦慮することもなく、思いっきり振り抜いて相手の力に対抗する。

 

魔獣由来の筋力から放たれる膂力は、アーシュラの体を震えさせるが、それでも―――こちらも『炉心』を動かして、高密度・高圧縮された魔力(パワー)を次から次へと増産して、身体の強化に回して、魔力放出(ブースター)に回す。

 

「ふはははは!!! 正しくブリテンの聖剣!!! その力と競いたかった!!」

 

「そのために、人蛭なんかの走狗に成り下がったのか!? お前の持つ剣は、神祖ロムルスにも通じるものだろうが!」

 

「然り! しかしながら、私の存在はアナタと比べれば歪だ!! ゆえに戦いたかった! 競いたかった!! 死合たかった!!! 身の確かさを、アナタを倒すことで獲得する!!! 存分に戦いましょう!!! アーシュラ・ペンドラゴン!!

ブリテンの赤龍!! 騎士王アルトゥールスの娘よ!!!」

 

口を紡ぎながらも、それと同じかそれ以上の速度で剣を打ち付け合う姫騎士2人。

 

その剣戟の激しさと技巧の限りを尽くしたものは、一種の芸術であった。かつて一高で起きた騒乱を経験したものは、それと同じモノを見たことがあった。

 

相手は光の御子『クー・フーリン』という槍兵であったとはいえ……。

 

 

(それに比するほどの存在……赤銀の鎧を纏った朱の大剣を持った少女―――アーシュラとは鏡合わせだな)

 

恐るべき技量を、信じられない膂力で、解き放つ。選ばれた戦士のみが到れる領域(レベル)での戦いを繰り広げる。

 

 

あの二人の周囲には、立っているだけで生命力が失われるバトルフィールドができあがっている。

 

彼女の正体を推測する時に、どうしてもネックなことがあった。それは、自分たち現代魔法師ならば『ありえない』と一笑に付して、そんなことが『出来るはずない』として、想像の外側に追いやることだった。

 

だが……それでも―――。

 

「神話伝説に疎い俺達では、うまい表現ではないかもしれないが……宇津見くん。ゴーストライナーたるサーヴァントという霊体と―――人間が『生殖』することは可能なのか?」

 

「魔力補給という点で言えば、まぁ意味はあるでしょうね。どういったところで、男性器からの精気こそが、一番濃い魔力なのですから」

 

「う、うむ……」

 

 

自分の方から話題を振ったとはいえ、昔から知っている女子からセクシャルな話題を出されると、若干ながら克人としても呻く調子になってしまう。

 

そんな克人の心を理解したのか、エリセは苦笑しながらも詳細なことを宣う。

 

「アーシュラは、そういう存在じゃないですよ。アーシュラのお父さんも、お母さんも―――ちゃんと『生きている人間』ですから」

 

「カツトが想像とも妄想とも言えることを考えているけど―――それは『神代』の時代ならば出来たこと。そう。神霊(しぜん)が『人格』と『肉』たる身体を持っていた頃ならば出来たことで、人理版図が広がった時代では、中々に難儀なことだね。そっちの子やエリセみたいに、『受け入れる』素質があればいいんだけどね」

 

一高並びに魔法科高校の生徒たちの護衛役を担っている宇津見エリセとボイジャーが応えて、『そっちの子』というので指さされたのは――――。

 

―――四十九院 沓子―――。

 

ガンタイ(・・・・)。きみ、移植されているでしょ?」

 

ガンタイ……恐らく一般に想像するようなものではなく、違った漢字が当てられるのだろうそれをボイジャーから言われて、沓子はドキリとした。

 

「ボイジャー、お主がゴーストライナーであることは理解していたが……まぁその通りじゃ。しかし、今となっては『あれら』は、本当に欠片ほどの力しかないのじゃ。夜却や浅神―――両儀などのように強烈な一族ならば、ともかく……わしらは『継承』に失敗したようなもの」

 

沓子は、指摘されるとは想っていなかった自分の秘密をバラされて少しだけ呻くも、補足しつつ……アーシュラは、自分よりも純度の高い『器』なのかと、羨望を覚えるも……。

 

仮にそうだとして、『あそこ』まで出来るものなのかと? 多少の疑問符を浮かべる。

 

 

「けれど、このまま、ここで見ていていいの? 私達で援護出来ることがあるならば―――」

 

そんな沓子とは違い、戦場の趨勢を見続けてきた―――時に強烈な魔力で弾かれるも、それでもアーシュラを見続けてきた真由美は、ここで守護してくれているとはいえ、少々……『力持ち』たちが無情な感じがして、言ったのだが。

 

「彼女の戦場に、余分はいらないよ」

 

「そろそろ決まるしね。しかし―――あれが司波達也の持つ原理血戒か……」

 

「死徒どもはタツヤを食いたいんだね」

 

「でなければ、こんな島国にまで来ないでしょう」

 

さらりと真由美の懸念を一蹴して、超然とした会話を続けながらも、ボイジャーとエリセは寄り来る死者や、それらの傀儡を消滅させ続ける。

 

そして勝負は決まる―――。

 

 

―――これ以上の技術を用いても、このシーザーの娘を自称する女から勝利をもぎ取ることは出来まい。

 

剣の技術勝負で勝利をもぎ取れないならば―――。

 

(必殺剣で決着するしかない)

 

騎士として、母から授かった直感が、それを良しとした。

 

幸いながら、ルーシャナはこちらとの剣戟を楽しんでいる様子だ。擬似的なロンゴミニアドを使うこともあるまい。

 

そこに勝機を見出した。あくまで自然体を装いながらも、剣戟をしずやかに変化させていく。決して悟られずに激しい剣戟を寝せていく(・・・・・)

 

そして、薙ぎ払いの一撃を受け止めようとした寸前で、アーシュラは身体を『沈めた』。

 

薙ぎ払いを賺される豪剣。途中で止めて振り下ろそうとしても、微妙なものだ。

 

その間隙に後ろに引いていたマルミアドワーズを―――刃ではなく、柄の方を前に出した。

 

胸郭をぶっ叩くクレッセントアックスのような柄尻だ。

 

こんな手段()を使われるとは想っていなかっただろう。

 

そこを支点に、胸郭にいまだ押し付けられる柄尻から剣を起こすという動作を見せたところで―――。

 

それを偽攻(Fake)として、身体を離す、退こうとした瞬間、今度は上に克ち上げるハイキックを見舞う。

 

低い姿勢から放たれるそれは、魔力によるブーストも相まって、ちょっとしたドロップキックとしてルーシャナを上空へと飛ばした。

 

吐瀉物を地に撒きながらも、無防備な上空に舞い上がったルーシャナを追って、マルミアドワーズを振り回しながら翔ぶ。

 

回転させるたびに魔力が溜め込まれる。

 

だが、ルーシャナも迎撃の姿勢を見せる。アッドのように擬似人格を宿した神話礼装を握りしめて、見据えるべきものを見据えた。

 

その顔に―――剣を突き上げた。松明(トーチ)でも掲げるかのように、回転していた剣を向けて―――。

 

 

「―――マルミアドワーズ・ミュトス!!」

 

巨大剣であるマルミアドワーズを中心にして、いくつもの剣で構成された円環(ラウンズ)が出来上がった。

 

それらは、どことなくマルミアドワーズの意匠を受けるも、何処か(・・・)が違う―――宝具の円環であった。

 

素人目には分からない。

 

だが、それでもその円環の得物全てが、強大な魔力を秘めているのだけは分かった。そして自動で投射された得物は、ルーシャナの周囲に滞空した。

 

綺羅びやかな光の川を虚空に刻みながら、優美に飛翔する様。強烈な魔力を発する武器の林立に瞠目した時に―――。

 

『ルーシャナ! 眼前の敵から目をそらすでない!!!』

「―――」

 

豪剣の疑似人格―――『ドラコ』から言われた時には、既に遅かった。

 

騎士の奥義。剣製の秘技。赤龍の神秘。

 

アーシュラの中に在りしチカラ全てが合一された、『宝具』が決まる。

 

蒼金のオーラを纏ったアーシュラの光速の大斬撃が一閃。

太陽の熱を蓄えたらしき大剣から超高熱の大斬撃が一閃。

湖水の照り輝くような光輝の剣で正確無比な斬撃が一閃。

撓り分裂を果たしてなお、剣の機能を持った鞭剣が一閃。

 

もはや解説するのももどかしいほどに、様々な武器を用いて達人級の技を見せる―――否、魅せる(・・・)アーシュラの攻撃は、ルーシャナ・ネロ・クラウディウス・ヒベリウスの総身を痛めつけて、鎧を病葉も同然に砕き意識を混濁させた。

 

(これが―――アーシュラ・エミヤ・ペンドラゴン!!)

 

全身を切り裂かれ、オーバーキルも同然の状態の中、最後の一撃が頭上からやってきた。

 

黒金の巨大剣。アーシュラの身長など簡単に越えている、ちょっとした家屋の柱の長さほどはあるそれの柄を持ちながら、勢いよくやってくる。

 

(その一撃が―――私を終わらせるのか?)

 

重力落下の法則に逆らわず、むしろそれを『増速』させるという物理法則を捻じ曲げた行いの果てに、虚空のフィールド……かつてカルデアが、『空想樹』という銀河系との戦いなど巨大なエネミーとの戦闘の際に展開されていた、空間固定の場を上下に貫く形で、ルーシャナに―――――。

 

「がはっ――――――――!!!」

 

「おとなしく寝てなさいよ!!!」

 

―――突き刺さる前に、二叉に刀身が分かたれて、胴を上下に分断する―――腰の部分をがっちり固定してきたのだ。

 

しかも先程まで使っていた円環宝具も落ちてきて、ルーシャナを拘束する釘のように全身に突き刺さる。

 

しかし、致命傷ではないところを見て―――。

 

「ルーシャス母上……私ではまだまだ敵いそうにないです」

 

格の違いを見せつけられた気分で、少女は嘆息するしかなかった。

 

『気を落とすなルーシャナ、あやつが、多くのチカラを再現できるのと同じく、歴代のシーザーたちのチカラを自在に使えるようになるまで修練すれば、あの青セイバーもどきにも勝てるぞ!! 生きることをあきらめぬ者にこそ大樹は出来上がるのだから!!』

 

神話礼装の疑似人格たるドラコからそう言われながらも、悔しさが出てしまうのだった。

 

そして、死徒に破滅の時が来るのだった。

 

 

この虚空のフィールドにおいて盛大な音が響く。アーシュラの勝負が着くまで吸血鬼の足止めをしていた達也は、フィールドが揺れるほどの大轟音で、遂に決着がついたのだと気付く。

 

「おとなしく寝てなさいよ!!」

 

その快活な言葉で、勝者がどちらであるかを理解する。

 

そして――――。

 

「待ってたぜェ!! この”瞬間”(騎兵隊の到着)をよォ!!」

 

「うわっ。マガ○ンマークが似合わない男!」

 

定番のセリフを奪われたからなのか、ツッコミに容赦がないのと同じく容赦のないアーシュラの攻撃。

 

マルミアドワーズを振るっての黄金の斬撃が、巨大な蜘蛛の身体を横から真っ向両断する。身体の大半を失ったからなのか、半裸の女が血を吐き、憎悪の眼でこちらを見てくる。

 

「―――!!! キサマァ!!!!」

 

「蜘蛛の身体は肥大化させた鎧も同然。しかしまぁ、いまさら本身(ほんみ)で戦って勝てると思っているの?」

 

半裸の女は、アーシュラの言う通り巨大な蜘蛛の身体を捨てて―――怪しげなヌードモデルも同然の姿でこちらにやってきた。

 

「人間にしか見えないんだがな……」

 

「アナタの眼を使えば正体ぐらい分かるわよ」

 

「もう見ている……外見は人間にしか見えないのに……明らかに『人間』じゃないっ」

 

達也の精霊の眼(魔眼)で見た時に、どうやら死徒が内包している『世界』を見たようだ。血の巡りが、そのままに世界を脅かす異界侵食作用……。

 

それをもろに見たのだろう。同じようなことも、今の司波達也ならば、出来るはず。

 

(後継者クラスはあるんだろうけど……)

 

ここまででどうやら達也に削られすぎて、もはやボロボロのようだ。

 

こんな『小物』の手で、あれだけの死体が出来上がったことを考えると、虚しさを憶える。元々、チャイニーズマフィアの手の者だったから、死んでもいいなどとは考えないが……。

 

この蜘蛛女の手であれだけの犠牲が出たのだ。魂すらも焼灼して親祖にまで届くほどの攻撃でも食らわせなければ割に合わない。

 

(まぁ司波くんのがんばりもあったと考えておきますか)

 

だからこそ、これ以上は自分の手で決着をつけることにするのであった。

 

「吼えろ。『私』の中にある竜よ」

 

マルミアドワーズを掲げて、魔力炉心からの魔力を込める。

 

アーシュラが内包する竜の魔力。

 

世界が開闢した時にもあった始源の魔力―――大地母神にして大源竜ティアマトにも繋がるその魔力が、マルミアドワーズを輝かせる。

 

目も眩むほどの黄金の輝きの中に白光も見えた。

 

「―――――――ッ!!!!!!」

 

その輝きは吸血鬼を逃走へと向かわせようとしたが――――。

 

「させるか」

 

息も絶え絶え、生傷も絶えないというのに吸血鬼の脚を穿った達也。

 

「ぎぅっ!!!」

 

悲鳴とともに鮮血が飛び散る。その瞬間、アーシュラは瞬発した。

 

魔力放出による超速。銃弾を見てから避けるというインクレディブルな連中でも、超音速で動く存在―――砲弾か、はたまた分厚い壁がその速度で襲いかかってくれば―――。

 

「ぎあああああああ!!!」

 

―――接触は避けられない。

 

超高速の連続斬撃。自動裁断機に掛けられた紙のように、何の抵抗も出来ずに、もしくは竜巻に巻き上げられた草葉のように、踊るように放たれる連斬で相手のガードを崩した上で、空中に放られたディープ・マンジュリカ。

 

そして――――――。

 

光を溜め込んでいた剣が、その真価を解き放つ。

 

 

上段に構えた所から振り降ろされる剣。この九校戦で見せてきた『剣からビームを放つ』という絶技の、最終型の一つが披露される。

 

それは―――――――。

 

「―――約束された勝利の剣・変奏(エクスカリバー・トランス)!!!!」

 

 

両手での全力の振り抜きでしか放てない、奇跡の象徴であった。

 

放たれた黄金の爆光は、身動きが取れない死徒を真正面から直撃。

 

「ぎっ………!」

 

 

下から競り上がった爆光は、断末魔の絶叫すら許さず天を貫く勢いで上がっていき、死徒の身体を全て焼灼せしめた。

 

圧倒的なまでの光の圧が、永遠を定義した存在を消滅させた瞬間……。

 

「!! アーシュラ!!!!!」

 

ぐらっ、と大剣を振り降ろした姿勢のままに、崩れそうな姿を見て急いで駆け寄る。

 

「う―――ああ、大丈夫。少々……魔力を使いすぎただけだから……」

 

意識を一瞬だけ無くしていたと思しき、アーシュラを支える。まさか、ここまで彼女が消耗するとは……。

 

「アナタが、頑張ってくれたから然程の消耗でも無いと想っていたんだけどね。まぁ茉莉花が、ちょうどよく分体にトドメを刺そうとしていたところだったから、間に合わせなきゃ―――」

 

まとまりのない状況説明を聞いて、少し混乱していることを理解した達也はアーシュラを支えることにした。

 

 

「喋るな。俺に体重を預けろ……俺を頼ってくれ……」

 

アーシュラの説明を受けて、遠くからでも『眼』を通して、よく見ると観客席側でも壮絶な戦いが繰り広げられて、アーシュラの言葉通りに、あの北海道のJSが、なにか大金星を上げたようだった。

 

ともあれ―――大元たる死徒が倒れた……あとは―――。

 

「あの子を、シーザーの娘に、森川くんや五十嵐くんを怪我させたことに対する代価を支払わせなければならない……」

 

「―――」

 

達也ですら意識から外していたことに気付いたアーシュラがそこに眼を向けると、そこには誰もいなかった。

 

代わりにあったのは――――。

 

「―――アムリタ(・・・・)。謝罪のつもり?」

 

剣の群れの中央に置かれている薬瓶。何かの液体で満たされたそれの名前をつぶやいたアーシュラは、それっきり意識を失い、一瞬ではあるが達也を焦らせたが―――。

 

「……ZZZZZ~~~~~」

 

―――寝ているだけであったことに安堵して、脱力して、そして……その寝顔に動悸が上がってしまう。

 

いつぞや見た眼を閉じた時のアーシュラの顔。その魅力を思い出してしまい、そして……。

 

「どうやって帰ろう……」

 

大地から50mは上空に離れた所で戦っていた事実を認識して、妹からは全知全能などと勘違いされている達也は、少しだけ途方に暮れるのであった……。

 

 

 

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