22/7 白きリンゴの甘い毒   作:ハマの珍人

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 本編とは関係ない……のかな? とりあえず短めです。
賛否両論、自己解釈ありありです。ご容赦いただければ幸いです。
本日2度目の投稿になります。


よき旅を

 夢を見た。ハッキリと『夢』と言い切れる分にはおかしな夢だからね。明晰夢って言うんだっけ。

 

 私たち9人が船に乗っていた。いや、正確には漕いでいたって言うべきなのか。

 

『壁』の指令かもしれないと思ったけど、それでもおかしなことはあった。

ほとんど陸地に上がらない。それでも船を漕ぐことを止めなかった。

 

 時には喧嘩にもなった。時には塞ぎ込んでしまう子もいた。

それでも宥め、励まし合い、手に手をとって漕ぎ続けた。

 

 もちろん順風満帆とはいかなかった。嵐が起こったり、波が荒れたり、風が全く吹かなくなったり、太陽がジリジリと肌を焼いたり……それでも船を漕ぎ続けた。

 

 急に船に不具合が起きた。でも、次の陸地まで『今のままでは』持つかどうかも分からない。

 

 何を思ったか分からないが、『私が』海に飛び込んだ。

刹那、大きな波が私を呑み込み、船を押しやった。

 

 

 気がつくと空を見上げていた。

固いものに寝転がっている感覚があった。そして私を覗き込むみんな……どうやら船に引き上げられたらしい。

 私が目を覚ましたことに気づいてしがみつき号泣する子、『なんてバカなことをしたんだ』と怒る子、無言で涙を流しつつも私の頬を張り飛ばし、抱き締める子。様々だった。

それでもみんなが私の身を案じてくれたことを思うと、夢だけど痛みを感じた。

 

 またしばらく船を漕ぎ続けた。不思議なことに、あれほど激しく揺られた波でも船はびくともしなかった。見た目はどこも変わらないのに……。

 

 とある港に寄った時、新たに3人が乗船してきた。

1人ははんなり系? ゆるふわ系京美人の女の子。

1人は活発でボーイッシュな女の子。

1人はいわゆるイケイケのギャル。

 

 普通だったら招かれざる客のはずの彼女達を、私を含めて誰1人拒むことがなかった。

まるで最初からそうであることが当たり前だったかのように。

3人増えたはずの船は不思議と狭いと思うことがなかった。

 

 3人を加えて、変わらず船を漕ぎ続けた。もちろん喧嘩はあったし、船酔いだったり、体調不良でダウンした子もいたりしたが、変わらず……むしろ一層絆が深まった気がした。

誰1人欠けることなく、励まし合い、フォローしあいながら色々なところを回った。

 

 全員で上陸したり、数名に別れて上陸したり……まちまちだったけれど、誰1人欠けることはなかった。

 

 

 

 

「つぼね……やりたいことが出来たの」

 

 ある島に滞在して、そろそろ出港しようとした時のこと。

合流した3人の内の1人、ギャル系の子が口を開いた。

 

 彼女はギャルという偏見を吹き飛ばす位凄まじい子だった。

『死ぬこと以外はかすり傷』と豪語した彼女。怪我を負っても、体力の限界を迎えても、それを口にすることなくひた隠していた。

 

 何も考えていないように見えて、周りの些細なことに気を巡らせていた彼女。私自身、彼女の言葉に救われたこともあった。

 

「それを一生懸命、やってみたいんだ。だから、みんなとはここでお別れ。あ、でも、絶対絶対絶対! あとで追いかけるから、先に行っててほしいな」

 

 誰も彼女の決意を止めることはなかった。『必ず追いつく』。彼女のその言葉を信じたから。

 

 軽やかなステップと満面の笑みを浮かべて、彼女は船を降りた。

手を振り見送る彼女に手を振り返し、水平線の向こうに見えなくなるまで振り続けた。

 

 彼女と別れてからも船を漕ぎ続けた。『別れ』を迎えたものの、船上に悲しい空気は流れていなかった。

 

 

 しばらくして立ち寄った島でのこと。

食糧や物資の調達も終え、荷物も積み終わった。

 

「積みかた終わったよ~、いつでも出発できるよ」

 

 リーダーに報告する。

 

「そう……」

 

 どこかいつもの彼女と違う雰囲気を感じた。

すると、彼女は船を降りてこちらを向き直る。

 

「私はここから先に行けない」

 

「……は?」

 

 冗談かと思ったが、彼女の目を見て本気だと悟る。

 

「今まで私に着いてきてくれてありがとう」

 

「……やめてよ」

 

 いつでもみんなを励まし、喧嘩を仲裁してくれたリーダー。

困ったことがあったら相談にのってくれたリーダー。

自分も不安なのに、そんなことをおくびにも出さず、みんなを導いてくれたリーダー。

わりとポンコツで、みんなにいじられることも多かったリーダー。

それでもみんな大好きで、みんなのことも大好きなリーダー。

 

「もう、私がいなくても大丈夫」

 

「……」

 

「元気でね」

 

 そう告げると、彼女はこちらに頭を下げて、いつものように颯爽と歩き出す。

 

 その背中は彼女らしく凛としていて、頼りがいのあるーー

 

「待って……」

 

 私以外は誰も彼女を止めることがなかった。

彼女も私の声が聞こえないのか、それともあえて聞こえないふりをしているのか、その歩みを止めない。

 

「待って……待ってよ!」

 

 届かないと分かっていても手を伸ばす

 

 

「麗華!!」

 

 

 

 

 

 そこは船の上なんかでも港でもなく、見慣れた私の寝室だった。

 

「あ……」

 

 そういえば夢を見ていたんだった。妙にリアルだったからまだ混乱しているようだ。

 

「凛子? 大丈夫?」

 

「はぇ?」

 

 この部屋にいないはずの人間の声が聞こえた。

 

「麗華? なんで……」

 

「いつもの時間になっても起きてこないし、何かあったのかと思って。魘されてたみたいだけど大丈夫?」

 

 時計を見ると、なるほど。いつもより時計の針が1時間も進んでいた。

 

「あぁ……うん。ちょっとまだ混乱してるかも」

 

「汗びっしょりよ? シャワー浴びてきなね?」

 

「麗華……麗華はナナニジ辞めたりしないよね?」

 

「何よ急に。まだ初ライブしかしてないのよ? まだ脱退する気はないわよ」

 

「ずっと……ずっと一緒だよね?」

 

「いいからシャワー浴びてきな。風邪引くわよ」

 

「あぁ、うん。行ってきます」

 

 彼女の夢が夢のままなのか、正夢になるのか……分かるのはしばらくあとのこと。

 

 

 

 




 頭がごちゃごちゃして、仕事も手につかなくなってしまったので、とりあえず短いながらも整理の意味をかねて投稿。
 1日2回投稿は何気に初かも。

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