22/7 白きリンゴの甘い毒   作:ハマの珍人

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 言い訳maybeタイム
2/28までに麗華様のお当番回を! と思っていたのですが、アニメ準拠にすると、桜回からみゃーこ回で一気に季節が変わることが発覚。
 それはなんかもったいない気がするので、オリジナル回として何話かねじ込もうと思っているのですが、そうするとどう頑張ってもお当番回には間に合いません。

 なので、ジュン&麗華様のお誕生日話をぶっ混ませていただきました。


ジュンと麗華と 1

 5月。先日まで残っていた桜の花びらも名残惜しみながらも散っていき、桜一色だった木々も新緑に染まった。

『暦の上ではとは言わせない!』とばかりに穏やかだった気温がうって変わって真夏日に近い気温を叩き出すところもあるとかないとか。

 

(これで実際に夏になると『過去最高』とかふざけた気温になるんだろうなぁ……)

 

 もはや気象予報士のなかで枕詞として定着してるんじゃないのと言いたくなるくらい毎年聞くワードだ。

 

(むしろ季語か? 季語なのか?)

 

正直暑いのが苦手な私は早くもげんなりしつつある。

 

 

 さて、私の近況は置いておくとしてグループとしては……GWは世間一般的には休みだけれど、私たちはいつも通りの……いや、いつも以上にレッスンに励んでいた。

 

 

「リリィ、ちょっといいか?」

 

 休憩中に絢香が寄って来た。

 

「ん? 何か質問?」ワン、ツー、スリー、フォー

 

「……お前、休憩時間は休憩しろよ」ハァー

 

 休憩時間に振りを確認する私を見て、ため息をつきながら呆れる絢香。

 

「いやさ、何度もやってるからこそ気を抜けないかなぁって。それに少しでも完璧にしたいじゃん?」

 

「お前もエリザベスみたいになってきたな。前はあんなに可愛かったのに……」ヨヨヨ

 

 あからさまに嘆くふりをする絢香。

 

「いやいや、この間の絢香ほどじゃーー「忘れろ」……はい」

 

 ニヤニヤとしながら反論しようとすると即、黙殺される。弱いなー、私。

 

「それで、何か用かしら?」

 

「……エリザベスの真似? 何気に似てるのがムカつく」

 

 本当!? 特技として検討してみよう。

 

「今度のオフのこと」

 

「あぁ! ジュンと麗華の……「バカ、声が大きい!」あ、ゴメン……」

 

 そうだった。一応サプライズだから黙ってなきゃいけなかったんだ。

向こうであかねと話してた麗華がチラリとこちらに目を向けたけど、『なんでもないよ』とジェスチャーする。

 

「うん。いつものとこでサプライズパーティーするんだよね?」

 

 今回は私も調理担当として腕を振るうことにーー

 

「そのことなんだけど、リリィには2人を時間まで連れ回してほしいんだ」

 

(……What?)

 

「え? 調理担当じゃないの?」

 

「飾りつけとか見られるわけにもいかないだろ」

 

「まぁ、そうなんだけどさ……」

 

 その役目は私じゃなくてもいい気がするんだけど……

 

「タイミングとか大まかなプランはこっちで指示するから。な?」

 

「……うん。分かった」

 

 釈然としないけど、バレるよりはいいだろう。

 

「ほんじゃ、頼むわ~」ヒラヒラ

 

 こちらに背を向けて手をヒラヒラさせて絢香は戻っていった。

 

「……」ニヤリ

 

 

 そのせいで絢香が口許をうっすらと歪ませたのを、私は気づくことがなかった。

 

 

 

 渋谷 ハチ公前

言わずと知れた渋谷の名スポットであり、リアじゅ……陽ky……みんなのお馴染みの待ち合わせ場所だ。今日も土曜日ということもあって、人が多くいる。

 

(9時……か)

 

 スマホをチラリと見て時間を確認する。ちなみに待ち合わせは10時。当然のことながら2人とも来てない。

じゃあなんでもう来ているかというと、個人的な理由がある。

 

 1つ目は……私が方向音痴だということ。

行ったことのない場所は100%迷う。え? 普通? まぁ、そうだね。

地図を描いてもらっても、最初の目印すら見つけられないことはしょっちゅうある。

 何回か行ったはずの場所でも迷うことがしばしばあって、しばらくさまよって地図アプリを開くと目的地前でうろうろしていたなんてこともある。

 

 駅前だったら迷わない? そう思ったこともあった。確かに迷いはしない。けれど、問題は駅構内だ。乗り換えが多すぎる。

 

 山手線内回り、外回り、湘南新宿ライン、埼京線、京葉線、京浜東北線……ちらりと上げただけでもこれだけある。電車一本で行けるなら問題ないけど、『乗り換え』。それだけで私にとってハードルはかなり高くなる。

 なので迷っても支障をきたさないくらいには早く出ている。

 

 2つ目はもっと単純。相手を待たせたくない。それだけ。

別に待ち合わせが嫌いなわけじゃない。待っている分には自分の時間だし、何かすればいい。

それこそ今みたいにス○バのドリンク飲みながらとかね。

 

 逆に待たせるとなると、それを相手に強いることになる。

『時は金なり』。自分のために相手の時間を使わせると思うと申し訳なくなる。

 だからこそ待ち合わせ時間より早く来たのだけれど……

 

(今回は運良く……いや、運悪いのかな?)

 

 電車一本のパターンだったのをうっかり失念していた。人身事故などでのトラブルなんかもなくスムーズに着いた。本来ならば喜ばしいことなんだけれどね。

 

(私も浮かれているのかな?)

 

 待ち合わせ……というのに多少なりとも憧れがあった。

小・中学生の時には無縁だったし、高校に入ってからは休みはバイト三昧。平日に空くことはあったけど、どこかに行くとしても下校時なので当然ながら待ち合わせの必要はない。

 

 先々月に桜と出かけた時が私の初待ち合わせかもしれない。

そんなことを思いながらストローを口に咥えながら周りを見渡す。

 

 連絡をとっているのかスマホをいじっている人、手鏡で自分を確認しながら前髪をいじっている人、私のように相手がまだ来ないか、首を伸ばしながら周りをキョロキョロ見渡す人、早く来ないか期待したような顔をしている人、もしかして来ないんじゃないかと不安に駈られる人……『待っている』のは同じなのに、様々な面が見えてくる。

 

(これも待ち合わせの醍醐味なんだよねぇ……)

 

「ズッ……ズズッ」

 

 どうやら飲み終わってしまったようで、ストローからは空気と微妙に残ってしまったクリームの残滓しか送られてこない。もったいないと思いながらもこの場で深追いするのもなんかなぁと思い、ゴミ箱に放り込んだ。

 

(さて……どうしようか……)

 

 お店で待つべきか、このまま周りの人のウォッチングを楽しむべきか。

 

 お店で待つ場合、この時間だと開店しているところが限られている上、外が見えるように窓側という絶対的ポジションが必要だ。

 このままウォッチングを続けるにしても、相手に気づかれてしまうと後々問題になりかねない。

 

(ん?)

 

 ふと視界に見覚えのある顔が見えた。まだ約束の時間には早いのに、彼女はもう来たらしい。

幸いこちらには気づいていない……というか既に来ているなんて夢にも思わないだろう。

 

『もう着いたよ』と連絡をくれてもいいだろうに、気を遣ってか送ってこない。そんなところにいじらしさを感じた。

 

(じゃあ……合流しましょうかね)

 

 無意識に私の口角はつり上がった。

 

 

 

「お姉さん、お姉さん」

 

 待ち合わせ場所に着いてどうしようか考えていると、急に声をかけられた。

 目の前には私と同じくらいか、それより少し背の高い男性。

ジーンズにシャツ、それとポンチョだっけ? そんな感じのものを羽織っていて、長い髪を後ろで無造作に縛っている。声は男性にしては少し高い気がする。

 

「……私ですか?」

 

 平想を装っているつもりだけど私の中でのこの人の第一印象は最悪だ。

 

 キャッチか、そうでなければーー

 

「お姉さん、美人だね~。今、1人?」

 

 案の定、ナンパだった。私の警戒レベルが上がった。

 

「連れがいますので」

 

 何が面白いのか、ヘラヘラとした笑みを張りつけたままのナンパ男。目深に被っているため素顔がハッキリと確認出来ない。

 

 キッパリと1人じゃないことを告げる。

 

「え? 男? それとも女の子?」

 

 それでも遠慮することなく、むしろ食い付きをみせる。

 

「……彼氏です」

 

 咄嗟に嘘をついた。さすがにこう言えばーー

 

「そっかぁ……女の子か」

 

「!!!」バッ

 

 男の方を見ると、さらに意地悪く口許が歪んだ。

 

「お姉さん、嘘つけない人でしょ? 顔に出てるよ?」

 

「っ!」

 

 見ず知らずの人間にそこまで言い当てられて、思わず唇を噛んだ。

 

「じゃあさじゃあさ。俺のダチがそろそろ来ると思うから、一緒にどう?」

 

「!!!」

 

 この男だけじゃなくて、さらに友達まで増える? そんな人達と凛子とジュンを会わせるわけにはいかない!

 

「結構です! 失礼します!」

 

 そう断り、その場から立ち去ろうとする。

 

「あ、待って待って!」

 

「いい加減にしないと、人を呼びますよ!?」

 

 こうしている間にも男の友達が来るかもしれない。もうなりふり構っていられなかった。

 

「最後に1つだけ」

 

 

 先ほどまでの男の声が()()()()

 

「その女の子だけどさ……」

 

 結んでいた髪をほどき、目深に被っていた帽子も取った。

 

「こんな顔じゃなかった?」

 

「ーー!!」

 

 私の声にならない叫びが響いた。

 

 

 

 

「あっははははは!」ケラケラ

 

 ジュンがお腹を押さえて大爆笑する。

 

「いやいや、笑い事じゃなくてね。本当に命の危険を感じたよ……」ヤレヤレ

 

「自業自得でしょ!! 私の方こそ危険を感じたわよ!」

 

「仰るとおりです、はい……」シュン

 

 ジュンが合流したことで、場所を移して先ほどの経緯を説明した。

 

「いやぁ、ビックリしたよ。ハチ公前でケンカしてるカップルがいるなぁと思ったら凛子と麗華なんだもん」ヒーヒー

 

 笑いすぎて流れた涙を拭いながらジュンが言った。

 

「ケンカはケンカでも、一方的なリアルファイト待ったなしだったけどね……」

 

「そもそも凛子が悪ふざけしなければこうはならなかったでしょ!?」

 

「仰るとおりです、はい……」

 

 そもそもの発端は私のいたずらごころ。バレていないのをいいことにナンパ男のふりをして麗華に声をかけたのだった。

 

『麗華はいつ気づくかな?』そんなドッキリのつもりだったのだがなかなか気づくことはなく、人を呼ばれる一歩手前までいってしまい、慌ててネタばらし。

すぐさま飛んできたのは罵声でも怒声でもなく、右手だった。

咄嗟に避けたのだけど、もちろん麗華の怒りが収まるわけもなく、怒声とともに2擊、3擊と飛んできた。

ジュンが来なかったらどうなっていたやら……

 

「次こんなことしたらただじゃすまないからね!?」

 

「えっと……具体的には?」

 

「お尻を叩きます!」

 

「善処します」

 

(ガチやん……)

 

 もう麗華を必要以上にからかうのは止めようと思う。さもなくば社会的に死ぬ。

考えてみてほしい。女子高生がこれまた女子高生に押さえつけられてお尻を叩かれる姿をーー傍から見れば笑える光景だけれど、いざ当事者ーーあ、もちろん叩かれる側ねーーになったら屈辱以外のなにものでもない。

 

「せめて……せめて服着た状態でお願いします……」ヒラニヒラニ

 

「気にするところはそこじゃないでしょ!?」

 

「あっははははは!!」

 

 せっかく治まったジュンの笑いがまた爆発した。

 

「というか、なんでそんな格好なのよ?」

 

「そう言えば、この間お団子買いに行った時も男の人みたいな格好してたよね?」

 

 2人は私の服装に疑問をもっているようだ。まぁ、いつもは普通にスカート履いたりしてるもんね。

 

「ん~……トラブル防止のためかな」

 

「トラブル?」

 

「身バレ以外に何かあるの?」

 

 確かに身バレが一番の理由だけれど、まだそこまで知名度は高くない。もっとも警戒するに越したことはないけど。

 

「麗華もさっき経験したと思うけど……『アレ』かな」

 

「アレって……ナンパ?」

 

「そう。ナンパ」

 

 こっちが1人でいるや、どこからともなく現れて聞きもしないことをペラペラペラペラ語って『お茶しない?』、『どこか遊びに行こう?』とこちらの予定をガン無視してひっかきまわす。

 

(初めて遭遇したときはビックリしたなぁ……)

 

 あの時は杏奈ねぇのバンドの人がいたからなんとかなったっけ。

 

「一回一回相手するのも面倒だからさ、んじゃあ男装しようって」

 

「いやいや、そうはならないでしょ!?」

 

「わりと体型をハッキリさせないようにするだけでも視線集まらなくなるよ?」

 

 絢香は『持っている武器は使いたい』と言ったけど、私からしたら『揉め事、争い事を避けられるならいくらでも武器は隠したい』のだ。

 

「本当は髪も切りたいとこだけどね~」

 

 さすがに長い髪はごまかしが聞かないからね。結局チャラ男っぽくするしかなくなるし。

 

「あれ? でもりんりんって麗華より背低いよね? さっき見た時、同じように見えたけど?」

 

 お、いいとこに気づいたねぇ。

 

「ジュン、賢い! 10ポイントあげよう!」テッテレー

 

「やったぁ!」ワーイ

 

「何のポイントよ……」

 

 謎のポイントをもらい、喜ぶジュンと呆れる麗華。

 

「まぁ、それはさておいて……シークレットシューズって知ってる?」

 

「シークレットシューズ?」ポカーン

 

「あの底上げの?」

 

「そそ。それそれ。背の低い男の子の正義の味方」

 

 外見こそ普通の靴と何ら代わりはないものの、インソール(中敷き)が底上げされているため、履くだけで身長が高くなるというもの。

 

「それを履いているからいつもより高く見えたのか!」

 

「そういうこと」

 

「じゃあさ、それを履けば私も麗華みたいに大きくなれるの?」キラキラ

 

 目を輝かせながら期待の眼差しでこちらを見るジュン。

 

「見た目だけならね。実際は身長はそのままだしね。まぁ、ジュンならまだ成長期だろうし、よく食べて、よく動いて、よく寝れば伸びると思うよ~」

 

 まだ諦めるには早すぎる。……私個人的には今のジュンも好きだけどなぁ。

 

「よ~し! いっぱい食べて、麗華みたいに大きくなるぞ~!! お菓子を!」

 

「「お菓子なんだ……」」

 

 やる気になったのは良いことなんだけど、ちょっとばかりずれているジュン。そんな私たちのつっこみを気にすることなくドーナツをパクつく。

 

「私ももう少し身長高かったらなぁ~……髪切るだけでバレることなく男装出来るのに……」

 

「いやいや、そこまでしてバレたくない相手って誰よ」

 

 

 

 

 髪を切ればバレることなく男装出来ると言った凛子。

ヘアアレンジを得意と語っていた彼女がその機会を捨ててでも、いや、そもそも女の命とも言うべき髪の毛を切ってでも自分を偽るなんて……

 

「いやいや、そこまでしてバレたくない相手って誰よ」

 

 話の流れで軽く聞いたつもりだった。

凛子は咥えていたストローを口から離すと指で弄ぶ。それにあわせてコップの中の氷がカランカランと音をたてる。

 

「ん~……母親」

 

「「え?」」

 

 ドーナツを食べていたジュンも手を止めて驚きの声をあげる。

『何の冗談?』そう言おうとした私の口は、凛子の顔ーー正確には凛子の目ーーを見た途端に動かなくなってしまった。

 

 口許こそ口角が上がっているから微笑んでいるように見えなくもない。

しかし、目は笑っていない。いや、何も映っていないのだろう。

感情豊かなで、いつもはキラキラ輝いている彼女の眼。それが今はガラス玉のようであり、そこだけ穴が空いているようでもある。

 

 纏っている雰囲気もまるでドライアイスのように、うっかり触ってしまえばこちらを傷つけるかのように冷たく、それでいて少しでも力を込めれば砕けてしまう薄氷のような儚さがあった。

 

(こんな凛子は……)

 

 見たことがない、そう思ったがーー

 

(いや、1度だけある)

 

 奇しくもそれは髪の話をした『審査会』でのことだった。

 

「な~んてね。私に両親はいないから」

 

 さっきまでの表情が嘘のように困ったような笑顔を浮かべる凛子。それはそれで爆弾発言なんだけどね。

 

「さてと……カラオケでも行かない? 歌いたくなっちゃった」

 

 飲み物を飲み干し、伸びをする凛子。

 

「いいねぇ! 行こ行こ」

 

「麗華はどう?」

 

「あ、うん」

 

 言い出しっぺの凛子と乗り気なジュン。私も反対する理由もない。

 

「じゃっ、出ようか」

 

「カラオケ~カラオケ~」

 

(凛子……あなたは何を抱えているの?)

 

 いつもはおちゃらけている彼女。それが本質なのかどうなのか分からなくなってしまった。

 




 オンライントーク回行ったのですが、回線の心配をしあったら終わってしまった。ちはるん……すまぬぅ
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