星4つぼが当たりません……泣
ナナオン効果か分かりませんが、お気に入り登録してくださった方、ありがとうございます!
なめくじにも劣る執筆速度ではありますが少しずつ更新していきたいと思います。
今回のお話は、みうちゃんが帰った後~みうちゃんがキーボードを売った後辺りのお話になります。
予定では1話終わらせるつもりだったんですが、2話に分けさせてもらいました。
壁の間(仮)でお互いに自己紹介を終えた頃に合田さんが戻ってきて、その日は解散になった。みうちゃんが戻ってこなかったところを見ると、本当に帰ってしまったようだ。ティンカーベルーー桜が寂しそうにしていた。待ち合わせの時点で打ち解けたのか一緒にいたのだから仕方ないことだと思う。
「それにしても、ほんまに秘密結社みたいやな。宇宙刑事でも出てくるんちゃう?」
合田さんの誘導のもと、来た道とはまた別の通路で地上に出た。
まぁ、動物園も閉園時間になっているだろうから人目を避けるという目的もあるのだろう。とはいえ、地上に出る通路が複数存在するそれは、都のいう通り秘密結社のそれだろう。
「うん! 秘密基地みたいでワクワクするね!」
「こどもはお気楽でいいなぁ」
テンションが上がっているジュンに絢香が呟く。
当然、『こどもじゃないもん!』とジュンは噛みつく。
「やめなさいよ」
直ぐ様2人を嗜める麗華。
「あ、みゃーこ」
「ん? どないしたん?」
ふと疑問に思ったことがあり、都……みゃーこに声をかける。
「みゃーこ、大阪から新幹線で来たって言ったじゃん?」
「まぁ、歩いてくるわけにもいかんしなぁ」
「うん、そうじゃなくてね……泊まる場所あるのかなぁって」
東京についたのが11時頃だとして、『駅で迷った』って言ってたしホテルにチェックインする時間があったかどうか……
仮にチェックインしてたとしてもこれから契約結ぶまでホテル暮らしってわけにもいかないだろうし……
「あ」
(あ、やっぱり?)
いかにもアホ面といった表情でみゃーこが固まる。それを見て自分の予想が当たっていたことを察する。
やはり遅刻しそうーーというかしてたけどーーだったからそこまで頭が回らなかったのだろう。
「うっかり忘れとった!! どないしよ!?」
頭を抱えて、あわてふためくみゃーこ。きっとマンガなら土煙とドタバタという擬音で表現されていることだろう。
「あははっ! みゃーこおもしろーい!」
「こら、人を指差さない!」
そんなみゃーこの姿を見て指を差して笑うジュンとそれを注意する麗華。
でも、みゃーこからしたらそれどころじゃない。
(ビジネスホテルくらいなら泊まれると思うんだけど?)
とはいえ、ホテルに泊まるのには当たり前のことながら金がかかる。
「だったらーー」
「心配にはおよびません」
と、合田さんの低い声が私を遮った。
「我が社の社員寮があります。そちらの方を今からご案内します」
なるほど……まぁ、手紙1つで呼び出しといて、
『じゃ、説明はしたから。あとは自分達で住む場所なんとかしてね』
なんてあるわけないしね。失念してたわ。
「ホテルをとっているのですが……」
スッと手を挙げて麗華が言った。こういうとこ真面目だよね。麗華の美点だとは思うけど。
「他にとっている方はいらっしゃいますか?」
合田さんの発言に桜、ジュンも手を挙げる。絢香とあかねは都内に住んでいるようだった。
「では、社員寮の説明の後に宿泊費の方を支給させていただきます。ご同行いただけますか?」
もちろん断る人は誰一人いなかった。
「そちらのお三方はどうされますか?」
あかね、絢香、私の方を見て言った。
「私はここで失礼します」
「私はいーや」
「私も今回は遠慮します」
あかね、絢香に続き私も遠慮する。まだ契約が残ってるし、更新日が近づいたら考えよう。
「では本日はここで解散になりますお疲れさまでした」
『お疲れさまでした』
合田さんの案内で社員寮の方へ歩き出す遠方組。ーーと
「桜?」
「え?」
浮かない顔をして考え事をしていたのか、桜はその場から動かなかった。
私が声をかけると、きょとんとした顔をした。
「合田さん、行っちゃうけど?」
「あ、うん……」
それでも桜は俯いたまま動こうとしない。心当たりがあるとすればーー
「みうちゃんのこと?」
「うん……」
初対面のはずなのに待ち合わせの時から桜はみうちゃんのことを気に入ったのか、波長があったのかずっと一緒にいた。
そんな彼女が勝手に帰ってしまったことが気がかりなのだろう。
「きっと急な用事が入っちゃって帰っただけだと思うよ? 緊急だったから合田さんにだけ伝えたんじゃないかな?」
「そうかなぁ……もしかして私が話しかけたことが迷惑だったんじゃ……」
ポフッ
「へっ!?」
桜の頭に手を置くことで続きを遮る。
「そんなわけないでしょ? 誰も知り合いがいない状況で声をかけてあげた桜の気持ちは、みうちゃんに届いてるよ」
少なくとも私は絢香に声をかけてもらえて嬉しかった。
きっとみうちゃんも同じ気持ちだろう。
「次に会ったときにちゃんとお話して、受け入れてあげて。ね?」
「うん!」
「じゃ、合田さんが待ってるから。また今度ね?」
桜の頭から手を離した途端、柔らかい何かがぶつかった。
「Thank You」
流暢な感謝と共に後ろに手を回された感覚といい匂いがした。
「へ!?」
「凛子ちゃん、Bye!」
呆けている私を置き去りに、桜は合田さんたちを追いかけて行ってしまった。
桜が見えなくなって、ようやくハグされたことに気づいた。
(柔らかかった、いい匂いした、帰国子女恐るべし)
オーバーだと思うけど、日本と海外の距離の違いを痛感した……気がした。
「ん?」
視線を感じてそちらを向くと無表情のあかねとニヤニヤしている絢香。
「えっと……何かした?」
「いえ。白雪さんは人たらしだなと」
「ぷふっ」
「た、たらし!?」
真顔でとんでもないことを言い出すあかね。絢香は堪えきれずに吹き出す。
「先ほどの藤間さんへの対応が妙に手慣れているように思えたのですが……」
違いましたか? と眼鏡をクイッと直しながら的外れな推理を展開する無表情眼鏡っ子。そして無言で肩震わせてるけど笑い堪えてるの分かってるからね? そこのダウナー。
「手慣れてないからね!? ただ、桜のしょげてる姿が「あ、この辺で失礼しますね」聞いてよ!?」
弁解……もとい反論しようとしたらあっさりと帰るあかね。私の叫びが虚しく響く。
「っ!……っ!」
残されたのは『人たらし』のレッテルを貼られた私と、腹抱えて笑ってるダウナー。クールだったイメージがもはや微塵も無いぞ?
「アンタはいつまで笑ってんのさ」
「そっかぁ……リリィは人たらしだったのかぁ」
目尻の涙を拭いながらようやく笑いの発作から抜け出した絢香。
というか、涙出るまで笑ってんじゃない!
「人聞きの悪いこと言わないで。ってリリィって何?」
「あだ名。よくない?」
勝手にあだ名をつけられた。まぁ、いいんだけどね。
「なぜリリィなのかな?」
あだ名をつけられることは初めてじゃない。古くは小学生の頃に凛ちゃん、こりんなんてのがあったし、りんりんだったり、今ではヒメだし。侮蔑的なのもあったりはしたが……それは置いておく。
「うん? 面白そうだから」
にこやかにいい笑顔で言いおった。ネットとかに上げたら『守りたい、この笑顔』ってコメントで溢れるんだろうなぁ。
「面白いって、絢香が面白いだけだよね? 絶対」
別にいいけどさ、と呟く。何を言っても彼女には勝てない気がする。今日会ったばかりではあるけどそんな気がする。
「じゃあ、私も帰るわ~」
手をヒラヒラとさせて立ち去ろうとする。
「絢香!」
「何?」
声をかけると、足を止めて振り返る。
「ありがとね」
「……何が?」
お礼を言うと何でお礼言ってるの? という顔をされた。
「あ~……なんでもない」
「……変なの」
声をかけてくれてありがとう、というのが恥ずかしくてごまかした。絢香は何故お礼を言われたのか分からないだろうけど。
そんな私を気にも留めず、絢香は帰っていった。
「ところで、『リリィ』って……」
絢香の姿が見えなくなってから、気になったので検索してみた。
・人名
・百合のこと
「……」
『百合』のこと
「おのれ立川ぁ!!」
私の叫びが空に木霊した。
*
夕飯はハンバーグにした。特に食べたかったわけではないけれど、みじん切りにしたり、たたきつけたり、何かと都合がよかったから。別に怒ってはいない。うん、怒ってない。
「そういえば智恵理ねぇに報告してないや」
片付けも終わり一段落ついたところでふと思った。
今の時間なら家に着いているはずだ。
『もしもし?』
2コール目で相手が電話に出た。ただーー
「あれ? 杏奈ねぇ?」
出たのはスマホの持ち主の智恵理ねぇではなくて杏奈ねぇ。間違えてかけたかとスマホを耳から離して確認するも、智恵理ねぇの番号に間違いはない。
『姉ちゃんなら風呂入ってるよ』
「あ、そうなんだ!」
どうやら智恵理ねぇは入浴中らしく、代わりに杏奈ねぇが出たらしい。
『で?』
「うん?」
『姉ちゃんに聞いたんだけど、アイドルになるんだって?』
電話越しで分からないけど、おそらく杏奈ねぇがニヤニヤしていることがなんとなく分かる。
「なるって断定したつもりはないんだけど……
『え? オーディションに行ったんでしょ?』
どうやら智恵理ねぇから聞いていたらしい。
「う~ん……オーディションというわけでもなかったような……」
というか色々ありすぎて自分の中でも整理できてないんだけど。
ゴリラとか壁とか地下の秘密結社とかメスゴリラとか壁とか充実した設備とかゴリラとか壁とか……
『とりあえず見てきたものを聞かせてくれる?』
「うん……まずねーー」
杏奈ねぇに促されて今日見聞きしてきたことをーー壁のこと以外ーー話した。
『え? それ本当の話?』
第一声は案の定驚かれた。うん。逆の立場だったら私も同じこと聞いてるよ。信じられないことに全てーー隠していることはあるけどーー事実だ。
「うん。私の妄想とか大がかりなドッキリとかじゃなくて、事実だよ」
『え? 金持ちの道楽?』
「んふっ」
『な、なに?』
「ううん、なんでもない」
絢香と同じこと言ってて思わず笑ってしまった。
杏奈ねぇの怪訝そうな顔が目にうかぶが、笑った理由は言わない。
『その子達って養成所出身だったり、ダンス経験者ってわけじゃないんでしょ?』
「たぶん……」
実際に実力を見たわけじゃないから分からないけど、少なくとも経験者ではないと思う。
一応名前を検索してみたけど、ヒットしたのは『麗華』、『みゃーこ』、『あかね』の3人。もっとも3人ともアイドルと関係するものではなかったけど。それでも3人もヒットしたことには驚いた。
それに合田さんの言葉が事実だとすればあの中にアイドル経験者はいないのだろう。
『ほら、ずぶの素人にそこまでの設備を投資するなんて普通のプロダクションじゃ考えられないよ』
「たしかに……」
もっとも驚くべきは決定権を持っているのが『壁』なんだけどね。言ったところで危ない宗教か何かだと思われるから言わないけど。
『とはいえ、リンがアイドルとはね~』
ククッと笑う杏奈ねぇ。
「やっぱりおかしい?」
思わずムッとした声色になってしまった。
『いや。素材自体は悪くないんだし、おかしくはないよ。むしろ今までが無頓着すぎるくらい』
「ん~……たしかに」
智恵理ねぇに教えてもらわなければヘアアレンジやメイクに興味はなかっただろうし、杏奈ねぇに言われなければファッションも気にすることはなかっただろう。
『よし、お祝いにカラオケでも行くか!』
「……それってただ単に杏奈ねぇが行きたいだけだよね?」
『あ、バレた?』
おそらく電話の向こうでは舌をペロッと出しているだろう従姉妹の下の方。
「この
『お、最高の誉め言葉!』
貶しているつもりの呟きも彼女からすれば最高の称号らしい。
実際に
今の時期だと街で流れている『ジングル・ベル』を聞くと、『ジングル・ベル』→『赤鼻のトナカイ』→『あわてんぼうのサンタクロース』→『きよしこの夜』をアレンジして即興メドレーしだす(路上ライブと勘違いされた)など1歩間違えれば変人扱い待ったなしの危ない人。
『んじゃ、今度の土曜日ね!』
「あ、もう行くことは確定なのね……」
『リンのお祝いなんだから当たり前でしょ?』
果たして本当にお祝いなのか怪しいところだけれど。
「私のお祝いなら私の意見も聞いてほしいかなぁ~」
『じゃ、詳しくはまた連絡するね!』
言うが早いか電話を切った杏奈ねぇ。
「え~……」
文句を言おうにも、手の中のスマホは話し相手の不在を告げる不通音がなるだけだった。
*
「いや~、歌った歌った」
カラオケ店から出て、満面の笑みを浮かべながらグーっと伸びをする杏奈ねぇ。
「いや、歌いすぎだからね」
対照的に私は疲れきり、声も掠れて自分でも聞き苦しいほどだ。
「いやいや、発声練習はこれくらいだろ?」
「どこの世界に発声練習でカラオケで3時間歌う人間がいるの!?」
厳密には2人で3時間なので、3時間まるっと杏奈ねぇが歌ったわけではない。とはいえ、2人で1時間ずつ。最後の1時間は杏奈ねぇが1人で歌った。こういうと語弊があるかもしれないが、私は1時間で満足した。というか、杏奈ねぇからのレッスンを兼ねていたので1時間でダウンした。
「リンは腹から声出さずにのどに頼るからそうなるんだぞ?」
「そもそも……アイドルが1時間ぶっ通しでソロで歌うって、そうそう無いと思うんだけど……」
私の偏見かもしれないけど、アイドルユニットって1つの曲でもパート分けされてるはずだし……何かのバラエティー番組で自分達の曲を歌詞を見ずにフルで歌う、ってなった時に『自分のパート以外うろ覚え』って言ってたような……
「……」プイッ
そんな私の反論から知らんぷりして視線を反らす杏奈ねぇ。
ねぇ……何でこっち見ないの? 人の話を聞くときは相手を見なきゃ行けないんだよ?
♪~
「もしもし! うん。準備オッケー! そんじゃ今から行くわ~」
タイミング悪く(杏奈ねぇにとっては良く)杏奈ねぇのスマホが着信を告げた。2、3会話をすると、あっさり切った。
「んじゃ、私は今からリハだから今日はここで解散ね」
「発散練習ってガチだったんかい……」
案の定
「ちゃんと支払いは私持ちだったじゃん」
「たしかに……」
部屋代、ドリンク、軽食……全部支払いは杏奈ねぇ持ちだった。
でも……ねぇ?
「果たして私のお祝いーー」
「んじゃ、頑張んなよ~」
旗色が悪いと判断したか、杏奈ねぇは手を振りつつ走って行ってしまった。
「はぁ……」
どっと疲れが押し寄せた気がした。
「何か食べて帰ろ……」
軽食を食べたとはいえ、満たされてはおらず、かといって空腹というほど空いてはいない。
家に帰って食べてもいいんだけど、今から作るとなると少し億劫。さて、どうしたものか……
「ん?」
通りの楽器店から見覚えのある、とはいえ意外な人物が出てきた。
「みうちゃん?」
咄嗟に漏れた呟き。それを目の前の人物は聞き漏らさずこちらに振り向いてーー
「ぇ……」
明らかに動揺していた。例えるなら小動物のように縮こまりながらもこちらをチラチラと確認していた。
「あ、ごめんごめん」
あの日と違い、今日は髪を纏めて左肩から垂らすようにながしていた。なので、知らない人から話しかけられたと思ってしまったのだろう。
ささっとシュシュを取って2、3首を振る。これでーー
「ぁ……」
私の姿を見た彼女は困惑してーー困惑!? え!? なんで!?
初対面でもないし、この間自己紹介したーー
「あ」
ここで改めて自分の失態に気づく。
私が自己紹介をしたのは、みうちゃんが『帰ったあと』。当然みうちゃんが私の名前を知るよしもない。
つまり私はみうちゃんにとって、『あの日、あの場にいたけど名前を知らない人』という認識で、しかもその相手が知らないはずの自分の名前を親しげに呼んでくる……って私最悪じゃん!?
「ごめん! 自己紹介してなかったね! 私、白雪凛子! よろしくね!」
「は、はぃ……」
「それで、えっと、あの……」
失態による失態にテンパってしまう。これがもしマンガなら目がグルグルの渦巻き状態だろう。
「お茶しない?」
混乱状態の最中、なんとかその一言を絞り出した。
社員寮のこと
細かい描写がなかったので、独自解釈でやらせていただきました。みゃーこと麗華様はさすがにあの後家に帰る、ということはないでしょうし、かといって本契約までホテル住まいというのも……桜はありえそうですが。
凛子が検索した結果
あかねぇは例のニュース、麗華様は水泳(県大会出場)、みゃーこはソーイング(手芸?)の入賞経験があるらしいので。
次回をお楽しみに