22/7 白きリンゴの甘い毒   作:ハマの珍人

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 ちはるんが卒業されて、長い長いロスに入っております。
不定期かつ遅筆ではありますが、投稿はちゃんと続けますのでよろしくお願いいたします


そうだ京都に行こう! 迷子編

(さて……この場合、どうするべきなのだろうか)

 

 アイドルになる前、まだ苦学生だった時には様々な接客関係のアルバイトをしていた。コンビニだったり、夏は海の家だったり、冬はクリスマスケーキを売ったり……。

 接客ということは当然の事だけど、相手も人。でも様々な人がいる。

男性、女性、お使いに来た子だったり、お茶菓子を買いに来たご老人だったり、サーフィンしに来た大学生だったり、傷心旅行に来たOLさんだったり……

優しそうな見た目で気難しい人もいれば、怖そうなのに実際は優しいお兄さんみたいな人だったり……

 

 人が違えば、TPOが違えばそれだけで対応の仕方が変わる。

まず状況を考えてみよう。

 

時間……午後3時~4時の間。

 

場所……日本、京都府、どこかの公園

 

目的……不明?

 

その他の状況……私、迷子。所持品、スマホ、財布。装備品、伊達眼鏡。途方に暮れて『地上の星』を歌っていた。

 

目の前の女の子……ピンクの綺麗な髪、少し眠そうな目。制服着てるし、学生さん? おそらく現地の子。

 

その他……空には鳥。足下には鳩。

 

 ここから考えられる対応……該当なし

 

(当たり前じゃん! こんなカオスな状態がそうそうあってたまりますか!)

 

 そもそも自分が目の前の子の立場だとして、公園のベンチに座って歌っている人がいたら絶対に声をかけない。

だって関わってはいけない(おっかない)もの。

 

(あれ? そう考えると、私って危ない人なんじゃ?)

 

 そしてそんな私に話しかけてくれるこの子は……いい子に違いない!

 

「えっと……とりあえず、隣座る?」

 

 そんな危険人物ーーというか私だけどーーに話しかけてくれた貴重な子だし、少し話してみたいかなと思い、隣に座ることを勧める。世間話をすればモヤモヤも晴れるだろうし、いきなり道聞くのも何かもったいない。

 

「ええの?」

 

「……うん」

 

 誘っておいてなんだけど、警戒心無さすぎない? 正直不安になってくるんだけど。

初対面だし、素性も分からないーーしいて言うならさっきまで歌っていた怪しい人物にここまで無警戒って……え? 頭にブーメラン刺さってる? なんのことやら……

 

(ん?)

 

 隣に座る彼女を見て、ふと違和感……と言っていいのか分からないけど不思議に思ったことがある。背中はピンと真っ直ぐにしてベンチに浅く腰掛けている。

 

 だいたいの人は、ベンチとかソファーに座る時、背もたれに当たるくらい深く腰掛けるか、前屈みに座るかのどちらかだと思う。

何故なら体勢的に楽だから。

警戒心の表れかと思ったけど、それならはじめから座らなければいいだけ。

 

(ま、考えすぎか)

 

「?」

 

 不思議そうにこちらを見つめてくる彼女のことをよく知らないのだから、何を考えても仕方ないと思い考察を止めた。

 

「えっと……白雪凛子っていいます」ペコッ

 

 ともあれ、このままお互いに黙っているわけにもいかないので自己紹介する。

 

「神木みかみ言います~」ペコッ

 

 目の前の彼女は神木みかみさんと言うらしい。何か回文? みたいだね。本人には言わないけど。

 

「みかみさんは鳥が好きなの?」

 

「うん。大好きやで~」

 

 即答だった。

その気持ちが伝わったのか、鳩も彼女の周りに集まってくる。

 

「鳥さんはええやんな。自分の翼で自由に飛んでいけるんやから……」

 

 空をーー高く飛ぶ鳥の影を見ながら彼女は呟いた。その姿に昔の自分が重なって見えた。

 

 夏の暑い日、冬の寒い日、公園のベンチやベランダから四六時中空を見上げていた。時には優しく照らす月や煌めく星を眺めたり、空を自由に舞う鳥に思いを馳せたりーー

 

 

「何かあった?」

 

 思わず聞いてしまった。聞かずにはいられなかった。

もし彼女が昔の自分と同じだとしたら……

 

「えっ……言うてもええんかな……」

 

 さすがの彼女も憚られるのか言い淀む。

まぁ、名前はお互いに名乗ったとはいえ数分前までは赤の他人だ。

世間話ですら出来る仲とは言いがたい。

 

「ほら、事情を知っていると客観的な判断が出来ないことがあるだろうしさ」

 

 当事者が2人以上の場合だと知人の場合だとどちらかに肩入れしてしまうことがある。『○○ちゃんは友達だから』、『○○さんには日頃お世話になってるし……』といった具合だ。

 

「せやな……あんな~ーー」

 

 聞くところによると、みかみさんの家、神木家は日本舞踊の家元らしい。

日本舞踊って詳しくは知らないけど日本の伝統芸能で、かなり……かな~り端折って説明すると歌舞伎に女性らしさとして、踊を加えたものらしい。つまり……歌舞伎の女性版? 解釈違うかもしれないけど……

 

 ともかく、日本の伝統芸能ってことは……まぁよくある跡継ぎ問題があるわけで、それに参ってしまっているらしい。

 

(そういったドロドロしたのってドラマの中だけだと思ってた……)

 

 家元の子、分家の子、年功序列……そこに本人達の意思なんてものはなく、ただただ『伝統を後世に受け継ぐ』という建前で行われる

代理戦争ーーいや、本人達が望んでないのだとしたら単なる見栄の張り合いか。

 

 ともかく、長女で跡継ぎ候補筆頭というもっともらしい立ち位置のせいで彼女の生活は自由がない。

 

 遊びに行くなんてもっての他、学校が終われば毎日のようにお稽古、もちろん休日でも休みなんてない。お稽古だけではなく、言葉遣いや姿勢なんかも悉く正される。

 

 かごの鳥……といえば聞こえはいいけど、そのかごの中ですら自由に動き回ることが出来ない。止まり木に縛りつけられ自由であることすら赦されない。

 そこにみかみさんの意志があればいいのだけれど、それすらないとすればーー

 

「みかみさんはさ……日本舞踊は嫌い?」

 

 まずはそこを確認したい。嫌々でやるようだったら例え家元の長女であろうとも辞めるべきだろう。

イヤだイヤだと思いながらやっていては人に見せることはもちろん、人を魅せることなんてとてもじゃないけど出来たものじゃない。

 私のような素人だったら誤魔化せるだろうけど、日本舞踊や歌舞伎といったものを見る人達というのは目が肥えている。

演者(でいいのかな?)の心境まで読み取れるかは分からないけど、家元のソレと比べて質が幾分落ちることは感じとるだろう。

 そこから『あれが後継者候補筆頭?』、『○○さんの方が……』、『神木流も落ちたわね』なんて悪評にもなりかねない。

 

「ん~……」

 

 柔らかそうな唇に人差し指を押し当て、空を見つめ考えるみかみさん。人によってはあざとく見えるその仕草も不思議とわざとらしく見えない。

むしろ自然で可愛く思えた。

 

「どうなんやろ。うち、当たり前すぎて考えたことなかったわ~」

 

 眉をハの字にして困ったように笑いながらみかみさんは言った。

家元の娘のみかみさんにとって、日本舞踊はあって当たり前。物心ついた時には生活の一部として組み込まれていたのだろう。

それでも『嫌い』と断言しないということはそこまで嫌いではないと思う。

 

(あくまで推測だけどね)

 

「でもな~、叔母様とお弟子さんがな~ーー」

 

 どうやらその後継者争いの火種は叔母さんとお弟子さんたちにあるようだ。

 

(つくづく大人ってヤツは……)

 

 ギリっと歯を噛み締める。

勝手に人を祭り上げておいて、こちらの意思など一切関係なく自分の正統性を示すための駒として扱う。

 

「ーーゃん、ーーちゃん」

 

(子供はアンタらのおもちゃじゃない! 何でもいうこと聞く都合のいいロボットじゃない!!)

 

「りーちゃん、どないしたん?」

 

「へ?」

 

 気づくとみかみさんがこちらを心配そうに覗き込んでいた。

 

「眉間に皺寄せて、難しい顔しはってどないしたん?」コテン

 

「ううん、なんでもない」

 

 みかみさんの問いにそう返す。

どうやら顔に出ていたようだ。うーん、顔にでないように気をつけているんだけれどーー

 

(ん?)

 

 はて、今変わった呼ばれ方をした気がするのだけれど?

 

「……みかみさん、今なんて言ったの?」

 

「え? なんか言うた?」キョトン

 

「え?」ポカーン

 

 まさかの斜め上の答えに呆然とする。

 

「あ、『眉間に皺寄せて、難しい顔しはってどないしたん?』」コテン

 

「も少し前」

 

「叔母様とお弟子さんの話?」コテン

 

「もうちょい後」

 

「えっ? りーちゃん?」

 

「それ!」ズビシ

 

「人を指差したらあかんよ~?」

 

「あ、ごめんなさい」

 

 思わず指を差してしまい、みかみさんにやんわり注意される。

 

「それって私のこと?」

 

「せやで~。凛子ちゃんやからりーちゃん」ポンッ

 

 両手をあわせて優しく笑うみかみさん。

 

「りーちゃん……りーちゃんかぁ……」

 

「いややった?」

 

「ううん。そんな風に呼ばれたことなかったから、親しみあっていいかなって」

 

 いつも呼ばれている『りんりん』も悪くはないけど、『りーちゃん』も響きが優しい感じがしていい。

 

「良かったぁ~。ほんならりーちゃんも『みかみ』って呼んでくれてええよ~」ニコニコ

 

「みかみさん?」

 

「呼び捨てでええよ~」ニコニコ

 

「みかみんっ!?」ガリッ

 

(いっだ!?)

 

 まさかの最悪のタイミングで舌を噛んだ。

 

「あ、みかみんでもええなぁ~」

 

 偶然の産物とはいえ本人が喜んでくれたならいいか。

 

「そんで、りーちゃんはなんでここで歌ってたん?」

 

「ん~……」

 

 正直に言うべきか、少し濁して言うべきか悩んだ。

でも、普通の学生がこの時間に私服でいても怪しまれるだろうし、

そもそも地元の人間でもないしね。

 

「みかみん、ここだけの話なんだけどさ……私、アイドルなんだよね」

 

「え? りーちゃん、アイドルなん?」

 

「うん。で、京都には仕事で来たんだけど……」

 

 そこからはある程度のことを伏せて話した。

まだ新人の自分がイメージガールに起用されると聞いたこと、自分に務まるかという不安、相手方に不利益を出してしまったら……と萎縮したこと、そこでの不用意な発言による失敗……

 

「で、気分転換のために散歩に出たら迷子になりました」

 

 うん。改めて自分の愚かさに情けなくなる。

 

ギュッ

 

「へ?」

 

 唐突にみかみんに手を握られた。

 

「み、みかみん?」

 

「りーちゃんはえらいなぁ~」ギュッ

 

 私の左手を両手で包み込むようにさらに握った。

 

「うちと同い年くらいなんに、そこまで考えられるなんて~」

 

「いや……そんなことはないよ……」

 

 冷静に考えてみれば私が失敗したくらいで経営が傾く会社なら、そもそもイメージガールなんて雇わないし、そもそも知名度がそんなにない私がイメージガールをやろうとやるまいと売れる時は売れるし、売れない時は売れない。

要するに私は驕っていたのだ。

 

「ほんま、えらいで~」ナデナデ

 

「!!」

 

 今度は頭を撫でられる。びっくりしたけれど、イヤではなかった。むしろーー

 

(懐かしい……)

 

『凛子ちゃんはえらいなぁ~。お手伝いしてけっさげ、助かるわ~』ナデナデ

 

「!!」

 

 昔の記憶がフラッシュバックする。

 

『凛子のマッサージのおかげで楽になったよ。ありがとう!』

 

『凛子、おじいちゃんとおばあちゃんの言うことちゃんと聞くんだぞ?』

 

『凛子……』

 

 

「りーちゃん! どないしたん!?」

 

「え?」

 

 私の顔を見てみかみんが慌てている。むしろそっちがどうしたの? と聞きたい。

 

「どこか痛いん?」

 

「いや、痛くないけど?」

 

「せやったらどうしたん? なんで泣いてるん?」

 

「え?」

 

 みかみんに指摘されて、自分が泣いていることに気がついた。

 

「あれ? なんで私泣いてるの?」グスッ

 

 言われてみれば、自分の声が震えているし鼻声だし。

しかも厄介なことに認識してから止めようとして止まることなくむしろ悪化している。視界は水の中にいるかのように歪みだし、拭っても拭ってもいっこうに良くならない。

 

「あれ? なんで? なん……で? うぅ……」グズッ

 

 笑って誤魔化そうとしても、声の震えが酷くなり、しまいには嗚咽だけが口から漏れた。

 

「え! ど、どないしよ~」ワタワタ

 

 それを見て焦るみかみんと、焦るみかみんを見て必死に泣き止もうとする私という地獄絵図のような永久機関が古都、京都の公園で展開されていた。

 

 

「落ち着いた~?」

 

「う"ん……ごめんね?」グズッ

 

 しばらくしてようやく涙は止まった。鼻声だし、なんなら鼻水のせいですっごい酷い状態だけれど。

そのせいで、もう日も暮れかけていた。

 

「ええよ~。鼻かむ?」スッ

 

「あ"りがと」ズビッ

 

 みかみんからティッシュを受け取り、鼻をかむ。

鏡無いから分からないけど、こりゃ相当酷い顔してるんだろうなぁ。ほぼノーメイクだからいいとして、とりあえず眼鏡は外さないでおこう。

 

「急に泣き出したんはびっくりしたけど、どないしたん?」

 

「う"ん。頭撫でられて褒められたのって子供の時以来だから、昔を思い出しちゃって……」

 

「そうなんか~」

 

「なんかごめんね?」

 

 みかみんの悩みを聞いていたはずなのに、逆に悩みを聞いてもらって、あまつさえ泣き出すとか……情けなくて涙が出てきそうだ。

もう一度泣いたら迷惑かけるから泣かないようにするけどさ。

 

「気にしなくてええよ~」

 

 にこやかに笑うみかみん。天使かな? 女神? 

 

「うちな~、学校に友達おらんくて……友達と話すってこんな感じなんかなぁって」

 

 あ。また涙出そう。

いじめとかそういうことではなくて、やっぱり日舞をやってるからなんだと思うけど。

あれ? これみかみんにとって得なことないね……。

 

「みかみん……少し酷なこと言うかもしれないけど、いい?」

 

「うん……」

 

 みかみんの顔から笑みが消えた。

それと同時に何を言われるんだろう、という不安。

 

「もし……もしだけれど、後継者争いがイヤなら、家を出ることもありかもしれない」

 

「え!?」

 

 みかみんの目が驚きで見開かれる。

 

「話を聞いてるとさ、まるで叔母さんはみかみんのことを人として見てるように思えない。それに……みかみんの世界を狭めているようにしか思えないんだよね」

 

「うちの……世界……」

 

 みかみんの生活は学校が終われば日舞、休みならずっと日舞……それをみかみん自身が選んで、望んでいるならばそれでもいいかもしれない。でもーー

 

「周りに目を向ければいろんなものがある。それらに目を向けることで改めて見えてくるものもあると思う」

 

 ある歌舞伎の人は中学時代に舞台から離れていたものの、離れた分役者への思いが強くなったという。

 

 

 もっとも、家を出たところで行くあてがあるわけでもないだろうし、かなり極端な話になる。

私が売れっ子なら同居して匿うことも……と思ったけど、生憎とまだ新人だし未成年である上に事務所の管理下だからそうはいかない。

 

 一瞬、一緒にアイドルでも……と思ったけど、自由とはもっとも離れた存在とも言えるから結局のところ日舞やってるのと変わりはないかもしれない。

 

「と、偉そうなこと言ったけれど家を出ちゃったら生活どころじゃないよね……ごめん」

 

 代案を考えたもののこれといった案が浮かぶことはなかった。

 

「ううん。りーちゃんがうちの事考えてくれてるんは伝わったから」

 

「当たり前じゃん! みかみんと私は友達でしょ!」

 

「友……達?」

 

 きょとんとした顔をするみかみん。

 

「あれ? もしかして友達だと思ってたの、私だけだった!?」ガーン

 

 まさかの認識の相違にうちひしがれる。勝手に友達だと思っていたら、相手は友達だと思っていなかった。

恥ずかしさに顔が熱くなる一方で、頭は血の気が引いているのが分かるくらいサァーっと冷めていく。

 

「……ええの?」

 

「へ?」

 

「私が友達でもええの?」

 

 口元を押さえて呟くみかみん。

 

「いやいや、当たり前じゃん! むしろこちらこそお願いします!」

 

 どうやら驚いただけだったみたいでひとまずホッとする。

 

「ほんまに? ……うれしい」ウルッ

 

「ふぇっ!?」

 

 突如涙目になるみかみん。あ、そういえばさっき『友達がいない』って言ってたっけ。

 

「あ、みかみん。スマホある?」

 

「うん。あるよ~」

 

 みかみんからスマホを借りて、操作する。

 

「私の連絡先、登録したから何かあったら……というか話したくなったら連絡してね? すぐに返せるかは分からないけど」

 

「おおきに」ウルッ

 

「あっ! ちょっ! 泣かないでみかみん」

 

 涙を流すみかみんにティッシュを差し出す。

 

「これじゃあさっきと逆やんな~」

 

 目元にティッシュを当てるみかみん。

 

「あ、それと言いにくいんだけどさ……」

 

「ん~?」

 

 

 

 

「みかみお嬢様、そろそろ帰られないとお稽古に遅れてしまいます」

 

「せやなぁ」

 

 りーちゃんを宿泊先まで案内したところで声をかけられる。

 

「先ほどの方は?」

 

「うちの一番の友達やよ」

 

「なるほど。では、今日の事は内密に」

 

「助かるわ~」

 

 この人は護衛兼お世話係の1人。他の人たちとは違って幼い頃からのうちを知っているからある程度のことは『内密』にしてくれる。

 

「今日のお稽古は頑張れる気がするわぁ~」

 

「いつも頑張ってください、と立場上申し上げておきます」

 

 こういう軽口を叩けるのもこの人とだけ。

 

「友達ってええもんやなぁ~」

 

「友達は大事ですからね」

 

「……ちなみに友達おるん?」

 

 ちょっとしたいじわるのつもりで聞いてみる。

 

「……そもそも友達とはどこからが友達なんでしょう?」

 

 バックミラー越しにこちらを見て言った。

 

(あ、おらんのか~)

 

「うちが友達になろか~?」

 

「ご冗談を。友達どころか勤め先までなくします」

 

 笑ってないけど口調は軽い。

 

「いけずやわ~」

 

 うちの呟きに口角を少し上げたように見えた。

 

 

 

 

「白雪さん! どこ行かれてたんですか!?」

 

 みかみんに案内されてホテルのフロントに行くと、合田さんが血相変えて走ってきた。

 

(もしかしてずっと待っていたのかな?)

 

 ちょっとの散歩のつもりだったはずなのに、気づけば何時間も経っていた。ちなみに公園からホテルまで10分少々で着いた。

 

(迷っていた……と言って信じてもらえるかどうか……)

 

 事実には違いないんだけど、少々後ろめたい。

というか、徒歩10分のところで何時間もさまよっていた(さすがに泣いていて慰められたとは言えない)なんて信じてもらえるかどうか分からない。

 仮に信じてもらえたとしても今後合田さんか、メンバーの誰かが同行しないと自由行動すら出来ない可能性すらある。

 

「えっと……」

 

 どう答えるべきか悩みながら視線を足下に落とす。

途端、合田さんが息を飲む音が聞こえた。

 

「失礼しました」

 

「はい?」

 

 落としていた視線を戻す。なんで合田さんが謝っているの?

 

「白雪さんにも事情や言い分があるのに一切聞くかずに……申し訳ありません」

 

「いやいや、今回は全面的に私が悪いので! 気にしないで下さい」

 

 確かに私の考えだってあるけれど、少なくとも相手方の前で面と向かって言うことではなかったし、今回の件だって迷った時点で迷惑と思いながらも電話のひとつでも掛けるべきだった。

 

 それなのに目の前の小娘に気を遣うなんて……むしろこちらが申し訳ない。

 

 しかし、合田さんも引かない。お互いに『私が』、『いや私が』の応酬。ノーガードの(謝罪での)殴り合い。

それもフロントで行われているものだから、周りの人も気にしている。

 

 迷惑だと(おそらく合田さんも)分かっているものの止まらない。

 

グウゥゥ

 

 そんなノーガードの殴り合いの間に入ってきた存在が……

それは周りの人でもなく、フロントの人でも、警備の人でもない。

むしろ()()()()()

 

「……」

 

「……」サッ

 

 音だった。発生源と思わしき合田さんはサッと目線を反らした。

顔も少し赤い気がする。

 

(え、今のって合田さんのお腹のーー)

 

キュウゥ

 

「……」

 

「……」サッ

 

 先ほどと違う音が別な場所から聞こえた。

 

というか私のお腹だった。

今度は私が目を反らす番だった

 

キュウゥ~

 

「!!」

 

ドスッ!

 

「!?」

 

ゥゥ~……

 

 ん? 合田さんがこっちを『信じられない』という顔で見てるけどどうしたんだろ?(すっとぼけ)

 

「どうかされました?」ニッコリ

 

「いえ……とりあえずミーティングは夕食の後に致しましょう」

 

 満面の笑み(当社比3割増)で訪ねると、夕食を提案される。

 

「何かご希望はありますか?」

 

「う~ん……京都って何が美味しいんですかね?」

 

 合田さんと相談しながら京都の街にくり出した。

 

 

 




 みかみんの京言葉が難しい( >Д<;)
ちなみにアニメ#13話は未視聴なのでどこかしらおかしなところが出てくるかもしれません。

 循環バス、空のエメラルド、優等生じゃつまらない、僕が持っているものなら……未だに涙なしでは聞けません……
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