22/7 白きリンゴの甘い毒   作:ハマの珍人

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 サリーちゃんに友達認定されました( ≧∀≦)ノ
リップサービスだとしても嬉しい


冠番組始動!?

 沖縄での撮影も無事(?)終了し、その日は一泊することになった。

奈良の撮影の時の反省を踏まえて、各々がいわゆる『お泊まりセット』をロッカーに置いておくようになったので、特段問題はなかった。

 宿の方はスタッフさんが駆けずり回り確保してくれたらしく、人数分泊まれるところが『運良く』あったらしい。

これも『壁』の思い描いた通りなのか、スタッフさんの頑張りなのかーーぜひとも後者であってほしいーー分からないけれど……

 その旅館でもまぁ色々あったけれど、それはまた別のお話ってことで。

 

 そんなこんなで翌日に東京に戻ってきた私たちを待っていたのはーー

 

「「「冠番組!?」」」

 

 まさかの冠番組である。いや、ホントに急すぎない?

 

「皆さんにはこの番組を通して芸能界やバラエティのことを学んでいただきます」

 

(要するに体当たり系の番組ってことか……)

 

 食リポや絶叫マシーンリポート、あとはトーク力や無茶振りへの対応力、そういったものを培うための番組のようだ。

 

「スゴい! 沖縄旅行行ってる間にも仕事してたんだね! さすが『壁ちゃん』!!」

 

 抱えてた『壁ちゃん』の両手を握り、クルクルと嬉しそうに回るジュン。

 

(いや、そいつは普通にデッキチェアにふんぞり返ってただけだぞ!)

 

 喜びを爆発させるジュンは非常に、ひっじょ~にかわいいんだけど、『壁』=『壁ちゃん』では無いんだよねぇ。

あと、沖縄旅行じゃないし……

 

「でも私たちで番組を進行しても大丈夫なのでしょうか?」

 

 あかねがメガネをクイッと上げながら尋ねる。

よくメガネ&頭脳派キャラがやる仕草だけど、全く違和感がない、自然な動きだ。

 

 ま、それはさておいて、私たちで進行……キラーパスレベルの無茶振り、すぐさま出てこないエピソード、凍りつく空気……うっ、頭が……

 

「MCの方は別にいらっしゃいますのでご心配なく」

 

「誰!? ◯のさん!? ◯モさん!?」ガバッ

 

「そんな大御所がキャスティングされるわけないだろ」

 

 興奮気味なジュンに絢香が『現実を見ろ!』と言わんばかりに突っ込む。

 

(確かに大御所なんて呼ぼうものなら、ギャラだけで大変なことになるね)

 

 片や言わずと知れた大御所MC、片や知名度は上がってきたもののまだまだひよっこの新人アイドルグループ……色々と釣り合わないでしょ。

 

「いやいや、こういう番組のMCってのはお笑い芸人ってのが鉄板や」フフン

 

「え? そうなの?」

 

 したり顔で言ったみゃーこの真偽を問うべく、桜はニコるんの方を振り返る。

どうやら彼女の中で『都ちゃんは騙すことがある』という認識が根付いたようだ。

我が子の成長を感じられて、嬉しい……いや、同い年だけどね。

 

「……確かにそうね。例を挙げるとするとーー」

 

 さすがニコるん。アイドルのことを語らせたら右に出るものはいない。

ソファーで脚を組みつつ説明する姿が妙に様になっている。

あと、本人は気づいてるか知らないけど、妙にいきいきしてるんだよねぇ……頭のリボンも含めて。

 

「ーーというわけでその可能性は大いにあるわね」スンッ

 

(あ、治まった)

 

 ニコるんの解説が終わると同時にリボンの動きが止まった。

 実はあのリボン、オーバーテクノロジーで作られている『意思のある』リボンだったりするのだろうか?

それとも持ち主の脳波やらなんやらを関知して動くとか?

 

(いや、それはないか)

 

 そもそも感情を伝える理由がないしね。

じゃあ、あのリボンって一体……

 

「それで、MCの方は?」

 

 私がニコるんのリボンに恐れ戦いていると、麗華がMCについて訊ねる。

 

「三四郎さんです」

 

(ほむ……)

 

 

 三四郎……小宮浩信さんと相田周二さんのお二人から成るお笑いコンビ。マセキ芸能社所属。

 

 お笑いの方に精通してないので調べてみると、同期の方は私でも知ってる方ばかりだ。

 

(あ、他のアイドルさんのMCもやったことあるんだ……)

 

 過去の出演番組を見ると、私たちとは比べ物にならない、国民的アイドルの方の冠番組のMC経験もあるようだ。

 

「では、そういうことですので今から向かいます」

 

(ん?)

 

「えっと……どこに?」

 

 合田さんに訊ねると、彼は少し困った様な顔をしている。

 

(あれ? 変なこと言った?)

 

 周りを見渡すと、『コイツ何言ってんの?』という顔をしている。あれ?分かってないの私だけ??

 

「先ほど申し上げた通り、今から番組の打ち合わせのため、テレビ局に向かいます」

 

「へ!? いきなりですね!」

 

「とはいえ、今日のは顔合わせの意味合いが大きいですね。ですが、当然のことですが失礼の無いようにお願いします」

 

「はい!」

 

 周りを見るに、これもさっき説明はしたんだろう。みんなの顔が強張っているのは変わらないけど。

 

(まぁ、無理もないよね)

 

これまでの仕事は、大体が身内(G.I.Pのスタッフさん)だったしね。

例外としては『T.I.F』かな。とはいえアレだって私たちがメインってわけでもなかったけれど……

 

「ほいほい、ボーッとしてないで行くよ~」

 

 努めて明るく声をかける。お前が言うなって? ごもっともで。

 

「凛子ちゃんは、怖くないの?」

 

 みうちゃんがおっかなびっくりに訊ねる。

 

(怖くないの……か)

 

 他のメンバーがエレベーターに向かう背中を追いかけながら考える。

 

「初めてのことだから、怖いっちゃ怖いかな」

 

「だよね……」

 

「でも、それ以上にワクワクしてる!」

 

 なんてったって初めてのテレビ、初めての冠番組だ。楽しまなきゃ損だ。

 

「そもそも無茶振りなんて現在進行形でされてるんだし、それ以上のことなんてまずないでしょ?」

 

「そうだよね!」

 

 

 ドッキリ企画はあれど、1週間以内にライブをねじ込む、いきなり沖縄での写真集撮影敢行なんてまず無いだろう。

むしろ『何言ってんだ?』レベルだと思う……少々自信がないのは、私も現在の環境に毒されて感覚が麻痺してるからなんだろうなぁ。

 

 

 

 

「すごいすごーい! テレビ局だよ! テレビ局!!」

 

「子どもは元気だなぁ~」

 

(あぁ、ジュンを見てると冷静になれるわ)スン

 

 個人で言えば2度目になる企画会議だけれど、慣れないものは慣れない。

1人だった時は気が気じゃなかったけど、目を輝かせているジュンを見ていると、『しっかりしなきゃ』という気持ちで冷静になれる。

 

「お上りさんじゃないんだから静かにして!」

 

「ある意味では戸田さんもお上りさんなので間違いではないですけどね」

 

「いや、確かにそうだけど……」

 

 麗華が小声で叱り、あかねが麗華の発言を指摘する。

 

(まぁ、初めてのテレビ局だから気持ちが落ち着かないのも分かるけどさ)

 

「みうちゃん! パネルがあるよ! 写真撮ろう!」

 

「えぇ……」

 

 あ、ここにも目を爛々と輝かせている子が……。

 

「せめて打ち合わせが終わってからにしようね?」

 

「はーい」

 

「えっ?」

 

『助けてくれないの?』という目でこちらを見てくるみうちゃん。ゴメン、たぶん無理。

打ち合わせ終わってから桜が忘れていることを祈ろう!

 

「みんな忙しないなぁ! 堂々としとったらええんや」

 

 フンッ! と腕を組み仁王立ちするみゃーこ。

 

「……みゃーこ? 震えてるよ?」ジー

 

「武者震いや!」

 

 脚がめっちゃガクガクしてますけどね。

 

「……声も上擦ってるよ?」ジー

 

「気分が高揚してるんや!」

 

 声も震えてますがな。

 

「……ホントのところは?」ジー

 

「緊張するに決まってるやん! 初めてのバラエティやで!?」クワッ

 

「素直でよろしい」

 

 元々がバラエティ志望だしね。本人的には嬉しさと緊張で感情が大渋滞起こしてるんだろうな。

 

「あなたたち、浮かれすぎなんじゃないかしら」シャキッ!

 

 ほら、ニコるんからも指摘が入る。

 

「遊びで来てるんじゃないのよ? ビジネスで来てるの! 常に見られてることを自覚してちょうだい」ピコピコ

 

 全くその通りで。

 

「恥ずかしいマネはしないでちょうだい!」ピシッ!

 

 ただ……

 

「ちょっと! 白雪さん! 聞いてるの!?」ピシッ!

 

「……ニコるん、頭のリボンなんとかならない?」

 

「? 変かしら?」

 

 言ってることは至極真っ当なんだけど、それに合わせてリボンが主張してくるからプラマイゼロ……むしろマイナスなんだって!

 

(指摘したい! 別にリボンの角度が悪いんじゃないんだって!)

 

 私の指摘を勘違いしてリボンの角度などを調整しているけど、そうじゃない! 意思を持っているかのごとく動くことが問題なんだって!!

 

(他の子には見えてないの!?)

 もし見えてないのに『リボンが動いてる』なんて言おうものなら『何言ってんだ?』と言われかねない。

正直に言えば私自身、目の錯覚である可能性を捨てきれてはいないんだけど……

 

(あれ?)

 

 よくよく考えると、今から打ち合わせ(顔合わせ)な訳なんだから、私以外に見えない方が良いのか!

私が余計なこと言わなければ、他の人には普通のリボンにしか見えないわけでーー

 

(なぁ~んだ、じゃあ『アレ』はなんでもないんだよ。ただの目の錯覚、疲れてるだけ。今日は早めに寝よう)

 

 と自己暗示をかけていると……

 

「」プルプル

 

「」

 

 必死に笑いを堪えている絢香が目に入りました。

あっ(察し)

 

(いや、待て、待てよ私。きっと絢香は昨日徹夜していたんだ。だから幻覚を見ているに違いない)

 

 絢香は度々徹夜する事があって眠そうにしてるときもあるし、白昼夢を見てるんだよ、きっと。

 

(笑いを堪えているのも徹夜でテンションがハイになっているからなんだ! そうにちがいない!!)

 

「」ガンミ

 

「」アカン

 

 そう自分に言い聞かせていたのに、みうちゃんも『信じられないようなモノを見た!』というような目をニコるんーー正確にはその頭上ーーに向けている。

 

ポンッ

 

「り、凛子ちゃん」ビクッ

 

 みうちゃんの肩に手を置くと、驚いたのか、少しはね上がる。小動物みたいでかわいい。

 

「さ、斎藤さんのリボn」

 

「……何もなかった」

 

「えっ、でも……」

 

「何もなかった。いいね?」

 

「あっはい」

 

 なんかみうちゃんも疲れているのかもしれない。自主練のしすぎかな? 少し休むように注意すべきかなぁ……

 

 結果としては何事もなく打ち合わせは終わり、ニコるんも緊張していたせいか、打ち合わせ中にリボンが動き出すことはなかった。

 

あと、みうちゃんに『自主練のしすぎ』と指摘すると、周りから『お前が言うな!!』と総ツッコミを受けたことを記しておく。

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