先日、水着イベント開催や『風は吹いているか』のMV発表など様々ありましたね。ナナニジ熱が加速していくことを願うばかりです。
ナナオンの方もイベント後半戦が昨日からスタート。
果たしてみかみんは人力車に乗って来てくれるのか!?
あ、ちなみにつぼみん、みかみん、悠希は話のどこかで出す予定ですのでお楽しみに。
「『ようこそ22/7へ』これは壁からの皆様へのごあいさつだと思われます」
吐き出された(と言っていいの?)プレートを拾い上げ、合田さんが読み上げる。
壁があいさつというのもシュールな話だけど、実際にこうして吐き出すところを見てしまうと納得せざるをえない。
そして合田さんから改めて説明を受ける。
・活動の全ては壁が吐き出す指令によって行われること。
・寮として一人一人にマンションの一室が用意され、希望者はそこから通うことが出来ること。
・事務所では用意された制服で過ごすこと。
・そして、グループ名が22/7であること。
うん。とりあえず、1人1部屋ってスゴいよね? スゴくない?
しかも女子高生がだよ? 私も似たような生活してるけど、家賃は叔父さん持ちだし……私は安くて雨風しのげればいいって言ったんだけどね。『物騒だからセキュリティしっかりしてるところで』って……。そこでもお高い家賃なのにそれ以上のところを寮にするって……考えたくない。
それに、グループ名が22/7ってどういうことなのだろう? 人数は私を入れて9人だし、そもそも22ってなに? 計算してみると、3.142857……
「そしてもう1枚。2時間後、『22/7審査会』を行う」
……は!?
合田さんの一言……というかもう1枚の壁からの指令によって、数字が頭から吹き飛んだ。
(審査会? つまりオーディションってこと? でも、『選ばれた』はずなのに何故……)
「審査会って! 何やねんそれ!」
私の気持ち……というかみんなの気持ちを代弁するかのようにみゃーこが吼える。
「審査員の前で一人ずつ、課題や特技を披露する、いわば実力テストのようなものです。主に楽曲での歌割りやダンスでのポジションを決める時に行われます」
合田さんが淡々と説明する。
「ポジション決め……」
「センターなどそういうものでしょうか?」
(ふむ……)
スッ
「白雪さん、どうかされましたか?」
「この結果で『やっぱり落選』なんてことはあるんですか?」
気になった点はそこ。実力を見ずにある程度の人数を選抜しておいて、ある程度の技術やらなんやらーーもっともダンス経験はないだろうから歌唱力とだいたいの運動神経だろうか?ーーでまたふるいにかける。もしそうならやる気を出してくれたみうちゃんに申し訳ないんだけど……
「それはあり得ません。今説明した通り皆様の実力を見て、歌割り、ポジションを決めるためのものですので」
改めて確認してホッとした。
「では審査会の準備に入ります。参考資料は後程こちらのモニターに……」
「ちょっと待ってください! 本当にやるんですか? 壁の指示通りに」
ここで麗華が待ったをかける。まぁ、普通に考えたら得体の知れない壁からの指示に従うなんて馬鹿げてるよね。
「壁は絶対です」
まぁ、答えは分かってたけどね。
それだけ言い残して合田さんはスタッフの方と一緒にエレベーターに乗っていっちゃったし。
「し……審査会ってなにするんだろうね~……」
重苦しい沈黙を破るべく桜が声をあげる。
「そりゃあアイドルなんだから普通に考えたらダンスとか歌とかトークとか? 私実力テストとかって苦手~」
「え~、楽しそうじゃん」
実力テストを苦手と称する絢香に対して、楽しそうと乗り気なジュン。少なくともプロダクションの上層部の前で披露しなきゃいけないんだけどね……少なくとも楽しくはない。
「いや、ダンスとか無理やって。練習しとったんならまだしもうちら1週間前に集められたんやで?」
みゃーこの意見はもっともだ。まぁ、歌と違ってダンスは触れる機会がそう多くはないしね。趣味か、習い事か、学校での創作ダンスか……盆踊り、は違うか。
「それって……あなたもセンターになりたいってこと?」
準備体操をしながら斎藤さんが……って柔らかいね。こりゃバレエはやってたんじゃないかな? バレエやってる人は身体柔らかいと思うし。偏見だけど。
「いや……そういうわけやない……けど」
みゃーこも意気消沈しちゃったようだ。
さすがのみゃーこでも真っ向から斎藤さんに宣戦布告は出来ないか。
まぁ、斎藤さんはあの自信からダンスの経験はあるだろうし(無かったらただの自信家だよね)経験の無いみゃーこでははるかに分が悪い。
とはいえ、課題の歌もダンスもまだ分からないわけで、いくら経験者の斎藤さんと言えど、覚える手間は私たちと一緒だ。つまるところーー
「実力にそんなに差がない今ならセンターも狙えるんだよね」
「「「「!!!」」」」
と、一斉に皆が私の方を見る。その表情は驚愕、といった表情もあれば、『コイツ、言っちゃったよ……』という呆れの表情もーーあれ!?
「もしかして……口に出てた?」
心の声が漏れていたのかと思い、尋ねるとーー
(うわぁ……かなり怒ってますやん……)
斎藤さんの表情を見て全てを察した。もう、視線だけで人を殺せそうだった。あの……あなたアイドルですよね? アイドルがしちゃいけないような顔してますけど……。
恐怖のあまり思わず関西弁が出てしまった。もちろん関西出身ではないけど。
そんな私から視線を外さず、ストレッチを止めた斎藤さんがおもむろに立ち上がりーー
プッ
「!!!」
その瞬間にモニターに映像が映し出される。
(た……助かった)
心のなかで(今度は本当に!)ため息をつきながら、モニターを注視する。
おそらくこれが課題となる楽曲の
(ん~……)
モニターの下の方には歌詞が出ているようなのだが、正直見えにくい。
(制限時間は2時間……その中でダンスと楽曲を覚えるとしても、歌詞も間違えずに覚えなければいけないとなると……)
部屋を見渡すと……やはりスタッフの方がいた。合田さんの姿は見えないが、立場上審査員の1人と見て間違いはないだろう。
私はそのスタッフの方に近づき、
「すみません。歌詞カードってありますか?」
両手の人差し指で四角を描きつつ尋ねる。
「至急手配します」
「よろしくお願いします」
良かった。『モニターに表示されてるので、それを見て覚えてください』と言われるかと思ったが、それは資料として配布してくれるようだ。
思わず口に出ていたとはいえ、宣戦布告した形になってしまった以上中途半端では許されない。
少なくとも自信のある歌だけは納得のいくものに仕上げなければいけない。そのためには出来る限り余分な行程は省きたい。
歌詞カードがあるのなら、歌詞を書き出す行程は省ける。その分をダンスに充てることも出来る。
*
「リン。歌の上手い人ってどんな人だと思う?」
いつかのカラオケの帰り。杏奈ねぇが年に何回あるか分からないくらいの真面目なトーンで聞いてきた。
「いきなり何? メロディライン(主旋律)を外さないとか?」
「まぁ、それも1つの考え方だよねぇ~」
コンビニで買ったペットボトル飲料をもらったストローをさして飲みながら杏奈ねぇは頷く。
「じゃあ、杏奈ねぇは違うの?」
『正解』ではなく『考えの1つ』と言った杏奈ねぇに逆に尋ねる。
「ん~……思いや景色を歌にのせてぶつけてくる人かな」
「???」
「そのマヌケ面は分かってないってことだな」
ふふん、と不敵に笑う杏奈ねぇ。でも、ストロー咥えてちゅーちゅー音をたててるから色々と台無し。
「いや、思いをのせるってのは分かるよ?」
小学校の音楽の時間とか、中学校の合唱コンクリートとかでも言われることだし。『気持ちを込めて』って。
「でも、景色って言われるとちょっと……」
「ふむ……じゃあさ~『第九』ってあるじゃん?」
「大晦日とかに聖歌隊が歌うやつ?」
正式名称、交響曲第9番。かのベートーベンが作曲した楽曲でクラシックに詳しくない私でも知ってる。『相○』や『踊る大捜○線』のスペシャルなんかでは使われることもある曲だ。
「あれはどう思う?」
「どうって……?」
「上手いと思うか?」
「そりゃあ上手いとは思うよ」
杏奈ねぇの言いたいことがよく分からない。でも、聖歌隊が歌うのだから下手なことはないと思う。
「じゃあ、歌詞の意味は分かるか?」
「え……」
そんなのは考えたことがない。そもそもあれは英語でも無いからおそらく歌詞を見てもちんぷんかんぷんだろう。
「ま、所謂平等を謳った曲だわな」
「え!?」
何故杏奈ねぇが知ってるのかと思い見ると、右手に飲み物は変わらず、左手にスマホを持ってニヤリとこちらを見て笑った。
つまり、今調べたのだろう。
「な? メロディラインが正確だから耳には残るけど、歌詞が分からないから心には残らない」
「それはズルいと思う」
そもそも洋楽だし、歌詞が分からないのは当たり前だと思う。
例えが極端だ。
「んじゃあ、演歌は?」
「演歌……力強いイメージかな?」
あまり聞く機会は多くはないけど、それでも毎年『紅白』には大御所と呼ばれる人たちが出場している。また、各地でコンサートを行っている。
「あれは? 時々節外してる歌い方する人いるよな?」
「あれはそういうもんじゃないの?」
「それでも心には響く。荒波のことを歌えば荒波を思い浮かべ、祭りのことを歌えば祭りを思い浮かべられる」
うーん……分かるような分からないような……
「ライブとかでも何十回と歌ってる人がCD何かと比べてテンポが早くなったり高低が違ったりする。まぁ、機械じゃないから常に一定ってことはないけど、緊張だったり感情の昂りで変わる。
それでもその曲に込めた思いは変わらずに聞く側に届くから、いつまでも名曲として愛される」
そこまで語ると杏奈ねぇはまた飲み物を啜るも、飲み干したのかズズッと音が鳴るだけにとどまる。
「ま、私らの曲はそこまでメジャーじゃない。だからこそ聞く人に対して曲への思い、歌詞の情景なんかを込めてぶつけるんだ」
その時は杏奈ねぇの言ってることがよく分からなかった。
それでも好きな曲を見つけたら歌詞カードを読んで、情景だったり、登場人物の気持ちだったりを考えるようになった。
*
「……ちゃん? 凛子ちゃん?」
「ん……桜?」
「大丈夫? 具合悪いの?」
目を閉じて少し前の出来事を思い出してたんだけど、どうやら心配させてしまったようだ。桜の隣にいるみうちゃんも口には出さないけど心配そうにこちらを見ている。
「いや……大変なことになったなぁって」
ただでさえ急な審査会なのに、まさかセンター争いまでしなきゃいけないなんて……考えたらお腹が痛くなりそうだ。
「うん……でも、みうちゃんが来てくれて嬉しかった」
「あ、あぁ……」
満面の笑みを浮かべる桜に照れながら反応するみうちゃん。
ここに塔を建てよう!(唐突)
「でも、まさかみうちゃんがあそこまでアイドルが嫌いだったとは……」ヨヨヨ
「あ、それは……」
私の嘘泣きに慌てだすみうちゃん。うん、かわいい。
「ま、冗談はさておき……クビになることはないんだし、お互いほどほどに頑張ろうか」
「うん!」
「うん……」
周りも慌ただしく準備しだす。
(さて……そろそろ歌詞カードが届くかな?)
ツンツン
「ん?」
腕をつつかれた感触があり、振り向くとーー
「はい! チョコのど飴!」
「は?」
謎のーーどこに対して需要があるのか分からないーー物体を差し出すジュン。しかも笑顔で。
(え? のど飴……なんだよね? ということはのどの炎症を和らげたりするためのものだよね? あれ? でも、のどの炎症が酷い時って乳製品を控えるべきって……)
「おいしいよ?」
「あ、ありがとう」
まぁ、ミルク味ののど飴もあるし、なんだったら龍○散の服薬用ゼリーにチョコ味もあるし問題ないだろうと思う。
そもそも、笑顔のジュンに勧められて断れるわけもないので、ありがたくいただいた。普通においしかった。
その後歌詞カードが配られ、それを読むのに没頭した。
「これより審査会を開始します」
2時間後、支給された制服に着替えた私達は審査会の会場となる部屋に集められた。
私達の人数分の椅子と、審査員のお歴々が長テーブルで待ち構え、その前にはダンスやらを披露するためのフロアがある。
集団面接の体ではあるものの、1人ずつがそこでアピールしなければならないようだ。
(1人ずつ部屋に呼ばれるよりはマシだけどね……)
そんなことされたらメンタルが潰されたアルミ缶以上にボコボコになる自信がある。
「審査は課題曲の歌、ダンス、特技などのフリートークの3パートで行います」
ちなみに準備時間は歌とダンスで半々にした。フリートーク? ノリでなんとかするしかないかなぁ……。
「では左端の人から」
「はい! 愛知県出身……佐藤麗華です。よろしくお願いします!」
1番手は麗華。あ、愛知県出身なんだ、と聞いているーー
(ん? 左端の麗華からだとすると当然最後は右端なわけで~)
チラッ
左側を見ると真剣な顔をした斎藤さん。
チラッ
右側を見ると、何もない。ここから導き出される答えはーー
ポクポクポクチーン
(最後私ぃ~!?)
出来るだけ早く終わらせたいと思っていたが、悲しいかな。現実は非情なものでまさかの最後。
(う~ん……一思いにやってほしいところなんだけど、まぁ、それまでにみんなのフリートークを見て勉強出来るからいっか)
経験したことがない審査会。面接自体はバイトする時に経験はしたものの、あちらは志望動機、こちらは自己アピールを含めたフリートーク。経験したことがなく、手探りな状態なので『他の人のを見られる』というメリットはありがたくいただこうと考えた。
その後、みんな悪戦苦闘しながらも2時間という決められた時間の中での成果を示し、審査員の方々は各パート毎に細かく決められたであろう項目に沿って評価を記入すべくペンをはしらせる。
その繰り返しで、気づけばあと3人ーー
「滝川みうです……」
「え~と、滝川みうさん? もう少し声大きくしてくれる?」
みうちゃんの番だ。
「は……はい……」
(頑張れ……)
思わず手に力が入る。
ただ、緊張してるのか、人前で何かをするのが苦手なのか散々だった。
「特技はありません……」
「ない? それだけ?」
「君ねぇ。話すのが苦手なのかもしれないけどステージ立ったらそうも言ってられないよ?」
「ごめんなさい……」
しまいには審査員にそう言われる始末。
確かに審査員の言うこともごもっともだけど……『料理が得意です♪』と言いながら『得意料理はカップ麺です♪』と平然と言ってのける人もいるので無いなら無いで逆に潔いと私は思う。
そもそも、みうちゃんにはピアノがあるはずなんだけれど……彼女はそれをアピールする気はないのかな?
……あと、関係ないけど、あなたたち2人。顔、覚えましたからね? 月の無い夜は気をつけてくださいね? 深い意味はありませんが。
いよいよ残すところ斎藤さんと私だけになった。
しかし、終わった人たちの中には動揺と『こんなことしてなんになるの?』という空気が流れ始める。
確かに2時間という限られた時間で素人の私達に出来ることなんてたかが知れてる。自力が違うくらいでほとんど変わりなんてないだろう。
フリートークも当り障りのないことで、変なことを言えば待っているのは審査員からの集中砲火だ。こんなことしてもーー
「斎藤ニコルです! よろしくお願いします」
そんな時、彼女は降臨した。
(誰!?)
外見は私の知っている斎藤さん……斎藤ニコルそのものだけど、それ以外がまるで違う。
素知らぬ顔で本を読んでいた彼女も、不機嫌そうにしていた彼女も、勝ち気な彼女もそこにはいない。
テレビで見る他のアイドルと遜色ない、神秘的なオーラを纏ったような彼女がそこにいた。
(お辞儀だけで目を離せないなんて……)
彼女は審査員に対して自己紹介とお辞儀をしただけ。
それだけなのに、目が離せない。離してはいけない気になる。
それは私だけでなく、他のみんなもそうみたいで、明らかに部屋の空気がしまるかのように変わった。
そこからは、彼女が『センターをとる』と強気になっていた理由をまざまざと見せつけられた。
フリートークでは、彼女の実体験を交えた自己アピールに惹き付けられ、ダンスでは同じ2時間とは思えないキレのあるダンスに夢中になり、唯一勝っているかもしれないと思っていた歌すらも完璧だった。
(あ~……もうこれ勝てるとこなくないかな?)
審査員が準備したサクラと言われても信じられるーーむしろそう言われた方が納得するーーハイレベルな演技に、もしかしたら……と思っていた私も、自分の浅はかさに笑いが出そうになる。
先程まで気負っていたはずなのに、ここまで差を見せられると比べるのも烏滸がましくなり、緊張はどこかに飛んでいってしまった。
(センターは斎藤さん……やってもやらなくても一緒だけど……)
「ありがとうございました」
(ここで辞退して、『しっぽ巻いて逃げた』と思われてもねぇ……)
演技を終えて斎藤さんがこちらに歩いてくる。
(まぁ、わずかでも傷痕残せたら
座る間際斎藤さんと目があった。まるで『お手並み拝見』と言わんばかりの目をしていた。
「さすけーねー、なんとかなっべ」(大丈夫、なんとかなるでしょ)
自分に言い聞かせるように小声で呟いた。
「山形県出身、白雪凛子です。よろしくお願いします」
「え~と、白雪凛子さんね。じゃあ、特技はありますか?」
お、この人は先程みうちゃんに厳しく当たってた方ですね。
「はい、一人暮らしをしてまして、家事には自信があります。それと手芸とヘアアレンジですかね」
まあ、家事はアイドルとして必要かは分からないし、手芸も手慰み程度のものでみゃーこのように受賞されるほどのものもない。
「ヘアアレンジですか……」
「はい。上京してきた時はファッションに興味は無かったのですが、美容師の従姉妹にお洒落のひとつとして教えてもらったのがきっかけです」
智恵理ねぇには感謝してもしきれない。
「では……例えばですが事務所の方針で髪を切ってほしいと言われたら、どうしますか?」
あー……確かにそれはあるかなぁ。メンバーのバランスとかね。髪長い子が多いしね。
それにアイドルと言えど、アイドル活動だけとは限らず舞台だったり映画、ドラマの仕事も入るかもしれないしね。
役によっては髪を短くしなきゃいけないかもしれない。
髪だけならともかく痩せたり太ったりもしなきゃいけないだろうし……
「切りますね。お仕事なので。事務所やクライアントの意向であれば坊主だろうと、痩せることも太ることも厭いません!」
そもそも選べる側にはないだろうし
「「「「!!!!」」」」
えっ、あれ? 審査員の皆さんーー合田さんも含めてーーざわつき始めましたが、変なこと言いました?
「失礼しました。ではーー」
その後も審査会は進み、あとは歌だけとなった。
まず一曲目。この曲は人に言えない秘めた恋。
黙っていれば、ずっとこのままでいれば幸せだった。
でも、相手の先輩が部活を辞めてしまうって聞いて……
「西側の 校舎抜け プレハブの 部室まで」
相当慕ってたんじゃないかな。それでいつも一緒にいて。
「先輩が 辞めるって 今さっき 聞かされて」
今までの当たり前が当たり前じゃなくなってしまう。気持ちを抑えながらも部室には急ぐ。
「気持ち 変わらなくても 話聞かせてほしい」
部室に近づくに連れて抑えていた思いもどんどんあふれでてくる。
「人に 言えないくらい 好きだった」
思い出すのは部室でのあなたとの会話。あなたの表情。あなたの匂い。……あなたの優しさ。
「始めての この恋は シャンプーの匂いがした」
審査員が目を見開いていた。何人かはイスから腰が浮いていた。
(何かやらかしたかな?)
そう思ったけど、こちらに落ち度があるなら止めるだろうと思い、無視して息を調える。
2曲目。これはさっきの曲より感情移入が簡単だ。
だってーー
「僕は自分を 信じていない 自分の存在 知られたくなかった」
山形からこっちに戻ってきてすぐのこと。
「夢見るってことは 何かを期待すること」
期待してた。だから山形からからこっちに
「傷つくくらいなら 夢なんて見たくない」
夢を見た結果、傷つき、傷つけられ、望んだものは何一つ得られずーー
「好きと言ってはダメなんだ」
「ありがとうございました……」
全てを出し切り正直倦怠感が半端ない。
(というか……本当に私、何かやらかした?)
審査員もそうだけど、メンバーのみんなも私を見る目が怖いんだけど。むしろーー
(私が怖がられてる?)
不思議に思いながらもなんとか席につく。
「では、これより審査に入ります。皆さんは部屋で待機していてください」
暗に退室を促され、部屋を出る。
「1人経験者混ざってるわ~」
部屋に戻るなりソファーに寝転んだみゃーこがぼやく。
「行儀が悪いですね」
「ちょっと心が荒んでもーて」
あかねが注意するも、そう返し、起き上がろうとはしない。
「当の本人は?」
「トイレだって」
絢香の問いにジュンが答える。
「てかごっつすごない? あの子あんなに出来る子やったんや」
「確かに圧倒的でした」
「ええ。トークも堂々としていたし。デビューしてないのが不思議なくらい」
「数々のオーディションをくぐり抜けてきました~って感じ?」
「本当のアイドルみたいで可愛かった!」
みんなが口々に斎藤さんを誉める。それだけ非の打ち所がなかったんだろう。圧倒的すぎる。
「てか、そんな子に歌だけならタメはれるりんりんってなんなん?」
「あれ? 凛子ちゃんは?」
「ぁ……あそこ」
みゃーこがさらに騒ぎ立て、桜は私を探し、みうちゃんが私の場所を教える。
「は~い、凛子ちゃんはここですよ~」
「ちょっ! そんなとこに座らないの」
「スカート、シワになりますよ」
入り口近くの地べたに座り、控えめに手を振りながら答える。
麗華とあかねに注意を受けるも、口調ほど身体が軽くないので勘弁してほしい。
「何でそんなとこに座ってるの?」
「ちょっと疲れちゃって~」
「運動足らんのとちゃう?」
みゃーこに指摘されるも、そこまで体力無いはずないんだけど。
「というか、あんたの歌も大概ヤバイんだけど」
「私、トリハダたっちゃったよ!」
絢香とジュンに言われるも……それ、誉め言葉と受け取って良いの?
「ボイストレーニングをやってらしたんですか?」
あかねから疑問があがる。
「いや。アマチュアトップレベルの人から鬼のような特訓を受けたからね」
本当に杏奈ねぇのは扱きかと思うくらいキツかった。
「でもまぁ、決まりやろ。あれほどの実力見せつけられたら。センターはニコル。それがチームのためや」
*
「いやぁ、スゴかったですね。斎藤ニコル」
「歌にダンスはもちろん。トークの構成も見事だった」
所変わって審査会場では審査が行われていた。もっとも結果はほとんど決まりかけていたがーー
「それにしても……白雪凛子。彼女も歌唱力なら斎藤ニコルと同等以上だったと思いますよ」
「思わず審査を忘れて見入ってしまったよ。特に2曲目」
1曲目もかなり良かったものの2曲目でさらに化けた。歌唱力のみなら彼女も候補にあがるがーー
「ただ、トークもダンスも現段階では及第点。総合で見ればやはり斎藤ニコルですね」
他はまだ斎藤ニコルに及ばず。しかし、そこも伸びてくればーー分からなくなる。
「壁はなんと?」
「いえ、審査をしろとだけ」
それでも最終決定権は壁にある。
ゴゴゴゴゴゴ
「この音は……」
*
部屋がーーと言うより壁が輝き、部屋に光が溢れる。
「ちょ!? 何!?」
「うるさーい!! この音きらーい!!」
突然の轟音にみゃーこは驚き、ジュンは拒絶する。
「まさか指令!? 今終わったところじゃない!」
そこにトイレから戻った斎藤さんが走りながら入ってきて、壁に近づく。
「さぁ、壁さんからのお答え、見せてもらいましょ」
このタイミングで来るとすれば、それはセンターの指示。
斎藤さんが目にしたものは果たしてーー
・白雪凛子山形県出身設定
キャラで東北出身っていないなぁと言うのと、当方が山形県民なのでそうしました。感情が昂ったり不意に方言が出る設定です。
・歌詞の考察
『シャンプーの匂いがした』についてはあくまで個人の考察ですので悪しからず
・審査会
アニメ準拠ではありますが、3つの内容の順番は分からないので、
トーク→ダンス→歌
にしました。
楽曲の歌詞書いたの、何気に本作品が初めてです。
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