ではどうぞ
きっと無意味なプロローグ
もし、貴方様!
突然ですがそこのあなた。
ええ、今そこで立ち止まってくれた、そう、あなた様です。
宜しければ少しばかり身の上話に付き合っていただいてもよろしいでしょうか。いきなりなんだ、と戸惑われているかとは思いますが、今の私にとっては必要なことなのです。とにかく、自分の身の上というものを誰かに話したくてたまらない、そんな時期なのでございますよ。
誰だって自分がとてつもない酷い経験をした時、もしくはなんだかんだで喜ばしい経験をした時は誰かに話して共有してもらいたがるもので、私もその例に漏れない、と言うだけです。
もちろん、今ここで断ってそのまま立ち去る、という選択肢もあなたの中にはございますよ。
いっそ、その方があなたにとって気軽でいられるやもしれません。
でも、こう言われると逆に気になってしまうでしょう? こんな重大そうに言われた日には聞きたくなってしまうでしょう?
人間たるもの仕方ない事なのですけれどね。 本当に忠告としてお伝えしているのですがね。
ですが、聞いてくださるのならば退屈させないよう最善の努力を尽くすと誓いましょう。お話を語る側というのはいつでもこれを欠かしてはいけないのであるからして。
どうでしょうか、少しでも私の話を聞く気になってくださいましたか?
ふむふむ、それは重畳。
そして重ねて、重畳の上に重ねて感謝をいたします。
なんたって、こうして実際に聞いてくださったのはあなたが初めてですから。
願わくば、最後まであなたがこのお話にお付き合い頂けますように。
ではでは、長くはなりますが私のお話を聞いていただくとしましょう。
この個性社会じゃありふれた、けれども鮮烈に生きる少年と何の変哲もない私の、そこそこ奇抜な、けれども楽しさに満ちた物語を。
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私はただの人形だった。
私はとある施設にいた。
命令されたとおりにしか動かない、まるでロボットのような。
1人ボロきれだけ身にまとい、気づけばそこにいた。
少なくとも人間、と評するにはあまりに足りなさすぎた。
意思も、意味も。
人間としての身体機能は少しばかりあったと思う。
それでも、それは機能が整っているだけであって、なにか意味あることに向けて使われた試しは1度としてなかった。
人を殺すことに躊躇はなかった。
特になんの感慨もなくただ殺した。
ちょうどいい個性が、施設にいる間に目覚めて、そしてそこから私はそういう役割になった。
なんの理由もなく生きて。
なんの疑問も抱かず与えられた仕事を片付け。
なんの意思も見せずただ流れに身を任せるままに。
慈悲なく容赦なく呵責なく。
油断なく余裕なく隙もなく。
ただ、ただ、人形のように。
施設内であっても、そんな子供ばかり集められた中であっても自分が歪であることは否定できなかった。
それでも、そんな自分がきっとダメなモノだと心の奥で分かっていた。
だが、それもある日突然変わった。
人形のような私が唯一反抗した日。
その日に、全てが変わった。
施設に入り込んだ見知らぬ大人たちに対して、施設の大人は殺せと叫んだ。
そこで従っていればきっと私は今も人形のようだったろう。
そこで抗っていなければ、今こんなに自分が歪な人形のように感じることもなかったろう。
だけども、あの日正義の味方に憧れた私は、きっとこの選択を後悔はしない。