目を開けると、そこは色々な人で溢れかえっていた。
そう、正しく『色々な人』である。
ピアスを開けているとか、人種が違うとか、普段目に届くことの無い上流階級の方々、だとかそういうものではなく。
例を挙げるなら『肌がピンク色で蟻のような触覚を生やした少女』だったり、『鴉のような頭をした少年(声は男だから少年のはずだ)』。
また、例えば『まるで透明人間のように服だけ浮いてる少女(女装が趣味でなければ)』。
そう、種族が違うかのような人達がその場には溢れかえっていた。そして、更に言うなら外見は普通の人間であり、かつそうした人達に驚かない人間たちも……あ、透明少女だけ驚かれてますね。
とにもかくにも私は突如そんな空間に放り出されて目を白黒……
「突如でもなんでもないし、なんならそこにいてずっとブツブツ言ってる君の方がヘンだけどな?」
はまあしないんですが、なんですかこの失礼なお方は。
せっかく私が、昨日徹夜で読んだ異世界転生系のオープニングっぽく物語の最初を飾ろうと思っていたところなのに。
「だから、それをいまここでやる必要ないだろ!?」
「どこで何をしていようと私の勝手ではありませんか?
それを遮るなんてあなた失礼ですよ」
「あ……すまない、確かに僕もいいすg」
「全く、最近の若者は失礼なことを失礼とも思わなくなってしまったのでしょうか、嘆かわしいですね。
個人の自由を歌いながら!
こんな個性社会であるにもかかわらず!
私の個性を潰しにかかるんですもの。
もしかして現代社会に向けた警報か何かのつもりですか?
やるのはいいですが私の迷惑のかからないところで存分にやってください、後ろで笑って見てるので」
「だいぶ君の方が失礼という突っ込みを、あえて抑えて他のを入れさせてもらおう。
君、立場弱いやつにとことん強気な上に結構なクズだな!?」
「え、さも友達みたいな空気感で話さないで頂けますか。
初対面ですよね、普通は敬語で話すべきでは。
ほら、けーいーご、けーいーご」
「感性と性格は狂ってるのに、言ってることだけ正しいから余計に腹立つ……!!!
くっ……僕は君の友達ではないですし、そもそもおかしなことを口走っていたのは君の方ですからね!
もうすぐ試験が始まるのですから集中しては如何ですか!
これでいいだろ!」
「これでいいだろは余計なので直してください」
「これでいいですか!!」
「はい、じゃあ試験前に予習しておきたいので絡まないでくださいね。
それでは」
全く、試験前だと言うのに人にふざけて絡むなんて、マナーがなってない方もいたものですね……。
と、歩き出した私は何故か1歩も動けず。
後ろを振り返ると先ほどのうざ陽キャさんが鬼の形相で私の肩を掴んでました。
「いや、行かせるかぁ!
君には言いたいことこの数分で山ほどできたわ!!」
「あの、会って数分で告白とかちょっと……」
「思いの丈をぶつけたいのは一緒だけど、そんなロマンチックが君とのやり取りで発生するとでも!?」
「あの、もしもし警察ですか?
目の前に欲情をぶつけたいと公言する変態がおりまして……ええ、ただいま雄英高校の敷地内なのですが」
「とわーーーぅ!!!」
いきなりの声に驚いた私の前には、ハァハァと息を荒らげ野獣の眼光と私のケータイを持ったへんた「違うからな!?」途中で割り込まないでくれませんかね。
しっかりと警察に自分の保身をしてからケータイを切り、私に返してくるその人。
一息ついた頃を見計らって、もう一度声をかける。
「あなたは変態で」
「違うと言ってるだろ!」
「あーゆーへんたい?」
「日本語が通じわけないわけじゃねーから!」
「そうですか、ではお疲れ様でした」
「あぁ、うん……え?」
謎に立ちつくした彼を置いて私は人の隙間に体を差し込み自分の試験会場へと向かう。
そろそろ時間なのである、彼に付き合っていなければもう少し早くついたのに。私じゃなければ激怒してますよ、やっぱり1発殴ってからにしたら良かったでしょうか。
そんな気持ちを抑えつつ、優雅に会場へ足を運ぶ私なのでした。
「おいふざけんな、どんだけマイペースなんだ!」
途中どっかから、変な叫び声が聞こえた気がしますのでああいうマイペースな人は落ちていいんじゃないかな、と思いました。
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ふい〜。
ようやく、座れます。
筆記試験の会場を見渡して、私は軽く嘆息しました。
無駄に広いんですもんここの学校。
背が低めの私にとっては、地獄のような移動距離でしたよ。
おかげでほんの少し息が切れてしまいました。
それに、受験生を奮わせるためなのでしょうが先程の入試説明会では正直小うるさいもとい愉快な大声の方が色々と言ってたのですが、どっちかと言うと鼓膜が震えましたね。
プラスして、やたらカクカクしてる人が1悶着起こしてたのでそれも疲れる原因ですね。
私も物見遊山なので何か言われた気がしますが、どっちかと言うと説明会前にスマホ取り上げてきた人の方が印象残ってますね、必死な人って面白いです。
あとは、その疲れた一端である隣の縮れモジャ頭のブツブツ言ってる人とか。
見た時から思ってましたけど引越しのCMで増殖するマリモみたいですねこの人。
「緊張するなこんな時は今までしてきた勉強を思い出そうあ各種ヒーローを活躍と一挙に思い出した方がいいかなでも確実にオールマイトだけで時間が潰れるしでも他の方々も思い出したいダメだ全然緊張ほぐれな…」
「あの」
「あっごめんなさい迷惑ですか!すみません!」
ちょっと話しかけただけで謝られたの初めてです。
というか、これ多分さっきカクカクさんに注意されたの残ってるからですよね
「学習能力はなさそう……」
「サラッと失礼なこと言われた!!?」
「大丈夫ですよ、なくてもここを落ちるだけです」
「しかもフォローになってないし、大丈夫って言うならちゃんとフォローしようよ」
いかにも心外だ!と言うふうに目を向いて私に迫る男の子。
微妙に汗の匂いします……青春的な感じで悪いものでは無いですが。爽やかというか。
そう言えば、意外とツッコミ気質?
さっきの様子見てたらボケ担当かと思いましたけど。
「ボケてないみたいですね」
「さっきの今だとどう考えてもいい意味には捉えられないよ」
「よく分かりませんけど、いい事ありますよファイト」
「原因が目の前にいるけど、なんか肩の力抜けたよありがとう……」
ガックシと机につっ伏すもじゃもじゃグリーン。
意外と肩の筋肉とかがっしりしてますね。
まぁ、雄英志望ならある程度は当たり前ですか特にヒーロー科受験なら。
妙に力を失った隣のもじゃもじゃを横目に、私は私で適当に内容の確認を始める。
特に会話もないまま筆記試験が始まりました。
それが今後、嵐を呼び込む悩みの種との初邂逅だったと、この時点ではまだ引き返す余地があったと気づくのはまた別の話。
強いて言えば、書くものの先端が折れて嫌だなーって思ったくらいですか、ね?