私の英雄道、断てるものなら。   作:hinanan

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STEP3

 

正直に申しますと、ですね?

私も覚悟を決めてたんですよ。

いきなり話されても何のことかわかりませんか?

いえいえ、もちろん今のこの状況に対する愚痴に決まってるじゃないですか。

 

だって、抱えた女の子は足を怪我していてろくに動けない。

もちろん、その女の子を助けに来たのだから見捨てる選択肢も無い。

されども目の前には巨大な鉄の塊が迫る超ド級の場面。

当人からは勘弁してくれ、と恨みつらみを吐き出させて頂かないとやってられません。

 

「負けるもんですか、とは言ったものの……」

 

あはは、計画総崩れかぁ…………。

自分の口から乾いた笑いが零れるのを自覚しながら、私はただその時を待つ。

だけれど、そんな私を笑い飛ばすかのように

 

DOGOM!!!!

 

轟音が弾けた。

 

思わず振り返った私の目に映ったのは、地上から天へと昇る雷のように勢いよく上空へと跳ぶ、あのモジャモジャで弱気そうな少年の姿。

 

目の前の鉄塊と比べると頼りないくらいちっぽけな姿、でも遠目からはっきりとその顔が見えた。

涙でぐしゃぐしゃな顔のくせして、強がるようにグッと噛み締めて『引けない』とでも言うように。

 

(あぁ、きっと)

 

ぐぐぅっと握られた拳が今か今かと解放のときを待つ。

 

(彼は多くを救うだろう)

 

太陽を背に色濃く浮かび上がるその姿は、受験生も鉄塊も全ての視線を集めた。

 

(だけど)

 

そして、目の前を見定めた英雄が吠える。

 

「SMAASH!!!」

 

空気を灼き切る雷鳴より大きな轟音。

そして、巨大な敵が花火のように弾け飛ぶ、バカみたいでだけどもある意味大声で笑えるくらい爽快なそんな絵。

 

壮大な景色がド肝を抜き、全ての悩みをくだらないと思わせるように。

彼の行動はそれを見ていた全ての人間の魂を震わせた。

 

 

(だけど彼は)

 

 

 

 

このままじゃ救われない。

 

□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□

 

とてつもないパワーによって生み出された大量の瓦礫の中、私は彼から目を合わせていました。

 

「あっ、えっと私を投げて!!」

「へっ??」

 

あまりの光景に惚けてしまった私を呼び戻したのは、助けた女の子でした。正確には助けようとした、ですけれど。

 

「投げるって、でもあなた足を怪我して

「あなたが受止めてくれるって信じてるから、あの子んとこに速く!」

 

急な言葉に目を白黒させる私に、先程少年誌みたいな活躍を遂げた少年を指さす。なにやらとてつもなく焦っているようで。

もしかしてあのパワー回数制限あるとかですかね?

というか、しれっと私に何言いました?

 

「いやいやどうしてそんなに信頼度高いのですか……」

 

この子後々メンヘラとかにならないですか。

とはいえ、猶予もなさそうです。

それに恐らく何かしら秘策があるのでしょう。

 

言われた通り私は女の子を抱え……ん?なんか軽すぎないです?

 

「それでは、後悔はなしですよ〜!」

「任します!」

 

ソフトボールよりも軽い女の子を勢いよく、落ちてくる少年に向かってほおり投げる……字面がちょっと意味わかんないですね。

それと同時に全力ダッシュで丸顔の女の子の到達点に向かいます。

視線で追った先では女の子が空中の少年を張り飛ばす楽しい光景も見れました。どうやら彼女の個性は人を浮かせる……というか、重力を無くす感じみたいですね。

もじゃもじゃの少年もそれによってふわふわと地面に優しく落ちます。

というかあの子、足も腕もぐしゃぐしゃなんですけど、怖……。

 

「きゃっちです」

「あはは〜、サンキュー……ぅお"え」

 

わわわ、こっちも大変です。

受け止めた丸顔の女の子がえずきはじめました。

デメリットがあるタイプってこんな感じなんですね。

 

試験の終了アナウンスを聴きながら、しばらく背中をとんとんしてあげます。

ほら、呼吸辛い時は普通の呼吸ダメですって。

ひっひっふーですよ、ひっひっふー。

 

「あの〜……こっちは大丈夫ですか?」

 

心做しか、呆れた顔をしてる女の子を介抱していると遠慮がちに声がかけられました。

気づいてませんでしたが、どうやら周りに人が集まってきてるみたいです。試験終わったから救護班的な感じですかね?

 

「声をかけてきたということはそうは見えなかったのでは?

ようやく来てくれて助かりました。

後は、プロに任せてあげます」

 

声をかけてくれた方に丁寧に言葉をお返しして女の子の処置を頼み、そこから立ち去ります。

 

なんだか釈然としないんだけど……?という声を後ろに私はもう1人の方へ。

もじゃもじゃくんの腕は青紫と血が混じった痛々しすぎる事故現場でもよく見ないタイプにフォルムチェンジしております。

うーん、やっぱり腕も足も壊れ方がひっどいですね……。

よっぽど個性の使い方が下手か、あるいは個性が暴発したかのような……。

まぁ、聞いてみれば良いですね。

 

「おーいもじゃもj____

「ハリボーおたべ」

「わわ、ありがとうございます。」

 

声をかけようとした私を押しのけ小さなおばあちゃんが通っていきます。

カクカクさんと比べて腰よりちょっと上くらいの背しかないので、気づけないのも無理はないです……よね。

そんなことを考えながら、おばあちゃんの白衣のポッケから出されたハリボーをもぐもぐ。

それに、あのおばあちゃんなら多分……

 

「お、あのマドモアゼル。

雄英の"屋台骨"だ」

 

気づいてる方もいますね。

彼女の個性、治癒力の超活性化は希少性と重要度がとても高いものです。

今だってあのモジャモジャくんの腕をあっという間に治してますし。

むしろ知らない方が少ないくらいの大御所ですし。

むしろ、周りの人の反応が薄いのが気になりますけど……。

 

「まぁ、終わりよければすべてヨシ!ですね」

 

 

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ちょっとばかりのどうでもいい疑問は置いておいて。

私もあの子も丸顔の子もカクカクさんも等しく試験が終わったのでした。ヤンキーさんと突っかかってきた人にはヒーロー科の試験だけは落ちる呪いをかけたのできっと来ないですけど、ここにいる方々は恐らく一緒に来るでしょう。

モジャモジャくんも含めて。

面倒事は増えそうですが、ま、その分面白くなりますね。

 

 

 

 

なお、1週間後。

 

『合格は合格だけどもうちょっt

「やったー」

 

筋骨隆々の方がいきなり投影されるの怖いですよね。

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