風邪をひいてしまった俺が数日振りに学校に投稿した。
別におかしなことなんて何一つないことだ。風邪をひいていた間も普通に寝ていただけで可笑しなことなんて何もなかった。
それだというのに、今俺の目の前にはよくわからない光景が繰り広げられている。
「あ、
……なぜだか、俺好みの美少女が俺に声をかけてきていた。
少なくとも見覚えはない。といかこんな美少女が学校に居たら絶対に噂になっているだろう。
転校生なのだろうか。いや、だとしたら俺の名前を知っていてこうして
「……蓮?」
目の前にいた俺好みの美少女は小首をかしげて俺の顔を覗き込んでくる。
いや、本当に誰なんだこの美少女は。なんかすごい近いしいい匂いするし顔可愛いし髪サラサラしてて綺麗だし……!
ってか本当になんで俺の名前知ってんだよ。俺の事下の名前で呼ぶ奴なんて一人くらいしか心当たり無いぞ!
「あ、ああ。大丈夫、ハハハ俺は元気だよ元気」
「……? なんか変な気はするけど……まぁ、そういうならいいよ」
その美少女に対して挙動不審になってしまったが、それでもその美少女はそれだけ言って俺の隣の席にさも当然のように腰を掛ける。
……いや待て。その席は俺の幼馴染の席なんだがなんでこの美少女が座るんだ?
「なに、ボクの顔に何かついてる?」
「……いや、何も」
……まぁ、可愛いからいっか。帰りにでもアイツの家に行きゃ理由もわかるだろ。
そう、最初は思っていた。
けれどそんな思いも一瞬で砕け散った。
担任が出席を確認していた時だ。今どき珍しく名前を呼んで反応していく方式なのだが……。この隣の美少女、なんと幼馴染の名前で反応したのだ。
おまけに周りの奴らも特に驚くような様子もない。
……いやどういうことだよ。なんでこいつが俺の幼馴染なんだよアイツ男だぞ? 女装でもしてんのか? 男のはずの幼馴染が女で……?
そんな感じで今日一日俺の頭の中は疑問符だらけだった。そこで休み時間にこそっとスマホの中にある写真を確認してみたのだが……。
見事に俺の幼馴染は女になっていた。いや写真フォルダまで女になるってなんだよ。ハッキングってやつか? だとしてもわざわざここまでして何がしたいって言うんだ。
とまぁ、見事に思考沼に一日嵌っていたのだが……。
寝る準備までばっちり済ませて布団に入ってから俺は思った。
――もうなんでもいいやと。
思考放棄だろうがなんでもいい。もうなんか考えることに疲れた。
だから考えないことにした。アイツは俺の幼馴染。要するにそれだけだ。男であろうと女であろうと、ヤツが俺の幼馴染であることに変わりはない。
そう、だから何の問題もないのだ!! なんたって可愛いしな!!!
_________________________________
_______________________
____________
ピピピピピと無機質なアラームが音を立てて俺を叩き起こす。
のそりと布団から出てベッドに腰かけ……そして昨日のことを思い出す。
「なにが可愛いからいいやだよ頭狂ってんのか……!?」
朝起きて開口一番にそう声を上げる程度には自分にキレた。
昨日の俺はどうかしていた。具体的には深夜テンションと親友がなんかTSしてたっていう驚きが隠せなかったのだろう。
だからあんなにもおかしい結論が出たんだ。
「ちょっと、急に大声上げでどうしたの?」
「……ああ、いや何でもない。ただちょっと疲れてただけなんだ……」
「大丈夫? 学校休む?」
「休むほどじゃ――」
……おい待て。俺は今
なんだかとても嫌な予感に突き動かされてバッと勢いよく声の主の顔を確認する。
そこにいたのは学校で俺を散々混乱に陥れ、そして今こうして悩んでいる原因。
つまるところ、美少女となった幼馴染だった。
…………いやどうしてこうなった?
あ、あれか。普段コイツの家は親が帰ってくるのが遅く、家を出るのが早い。だから俺の家に朝飯を食べに来るくらいは普通だったんだ。
いやだとしてもなんで俺の部屋に……?
「なんで俺の部屋にいるんだよ……。男の部屋なんざなんも面白くないだろうに」
「えー、ボクは連の部屋なんだから興味あるけどなぁ……」
ン"ン"ッ!!
……思わず変な声が出かけたけれど俺は堪えたぞ。
というかなんだよ美少女にそんなこと言われたら勘違いしちゃうだろうがやめやがらないでください。
いや待て本当に待て。俺の頭の中での言語中枢が可笑しなことになってる。いやもうほんとにマズいですよ。
「……はぁ」
「あー、そのため息はあれだね? "男の部屋に入る時点でアウトだ"とか思ってるため息だね?」
俺の幼馴染のその言葉に頭の中を揺さぶられる。
なんたって俺は"男であった幼馴染にそんな言葉をかけたことはない"んだから。
つまり、コイツの中……引いては記憶の代えられたこの世界では俺がそう言ったってことになってるんだろう。
俺だけが違う記憶を持っている。
――じゃあ、可笑しいのは俺なのか……?
「そんなこと言われなくてもボクは他の男の部屋に入りなんてしないよ。連だけが特別なんだよ?」
あ、はい。そうですか……。
……なんつーか、こういう俺がシリアスしてるとなんかまるで違うこと言うのはアイツのままだわ。
いや、大抵は俺が勝手にシリアスに入ってるだけなんだけどさ。だけどよぉ……。なんかこう、雰囲気を察して言葉を止めるくらいはさぁ……。
結局現実なんてこんなもんなんだよなぁ。
俺が変に深追いしようとしてるだけ。基本的にはそれだけだ。
第一俺みたいな一般人にそんな難しいことわかるわけないし。だったらまぁ、現状目の前あるものからちょっと予想なんてしながら面白おかしく過ごすのが"賢い生き方"ってやつなんだろうな。
「……? え、ボクなんか変なこと言った……?」
「そうだな。死ぬほどアホみてぇなこと言ってたぞ」
「え、ええ!? むー、ボクは正直なだけなんだけど……」
まぁ、一先ずはそうだな。
『アイツが変わったことを俺だけが知っている』……なんてな。
「ハハ、ぬかしおる」
「えー!? このくらい彼女として当然なのにー!!」
「アハハそうか、当然か」
……ん?
…………彼女ォ!?!?!?
一体何を見せたかったのだろうか(方向性迷子)