不思議の国の■■■   作:Feles

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とある村で暮らす子供、名前をアリスと言いました。

アリスは、ある日手招きをするウサギと出会います。

ウサギに誘われるままに、好奇心のままに、アリスは不思議の国へと招かれたのでした。


兎小屋

「アリス起きて、アリス」

 

体を揺する感触、女の子の声が聞こえる。

 

「んぅ…」

 

「おはよう、アリス」

 

体を起こし目を開くと、見慣れたうさ耳が見えた。

 

「アリスは寝坊助さんだね」

 

うさ耳を生やした白髪の少女だ。

 

「…だれ?」

 

「まだ寝惚けてるの?」

 

「いや、本当に誰…?というか、何処だ?ここ…」

 

見回してみるに、木造の家のシングルベッドに自分は寝かされていたらしい。

 

「ここはボクのお家、そしてボクの名前は白ウサギさ、アリス」

 

そう言って、微笑みながら頭を撫でてくる。

 

「白ウサギ…?」

 

「そうだよ」

 

「…いや、ちょっと待てアリスって、アリスのことか?…あれ」

 

自分のことをアリスと呼んでしまった。

 

「その通りさ」

 

「え、いやだって、アリス、は…」

 

金髪が視界に入った。

自分の髪は、こんなに長かっただろうか。

自分の声は、こんなに高かっただろうか。

自分は…

 

「アリスは、誰なんだ…?」

 

「わぁお、記憶喪失のテンプレだね」

 

「鏡…」

 

「大丈夫さアリス、落ち着いて、姿見はすぐそこにある」

 

「さぁ、手を取って」

 

紳士の様に差し出された手を取ると、優しく立ち上がらせてくれた。

そのまま、鏡の前まで手を握ったままエスコートしてくれる。

鏡に映っていたのは…

 

「これが、アリス…」

 

「そう、この非の打ちどころのない金髪美少女がアリスだよ」

 

「そんな…アリスは男…」

 

「…あれ?可笑しいな…いつもなら、喜ぶなりもっと褒め称えろなり言ってくるんだけど…」

 

「そうだ」

 

胸を鷲掴みにした。

…嘘だ、無乳だったから、掴むところはない。

ならば…

 

「わー!ちょっとアリス何してるの!?」

 

「何って、調べてるんだよ!」

 

「何を!?」

 

「性別をだよ!」

 

胸が駄目なら、聞く場所は一つだろう!?

 

「アリスは女の子だよ!?というか人の家で何しようとしてるのさ!?」

 

「はっ!」

 

そうだ、こんな美少女の前で急に脱ぎ始めるとか男だったらアウトだ!

いや、女の子でもアウトだ!

 

「ご、ごめん」

 

「あ、はは…本当にも~」

 

今更、正気に戻って顔が真っ赤になる。

今までのやり取り全部、恥ずかしすぎではないだろうか。

 

「混乱しているね、アリス」

 

「でも大丈夫、きみが今すべきことを、ボクは教えてあげられる」

 

「すべきこと…?」

 

「そう!まずは着替えよう、とびっきりおめかししようね」

 

「…え?」

 

「さ、まずはその男の子みたいな服を脱ごうか」

 

「え、ちょ」

 

「さぁさぁ」

 

「待っ!?」

 

手慣れた様子で脱がされた。

さっき脱ごうとしてたのを止めていたのは何だったのか。

そのまま縞々のストッキングを履かされ、エプロンドレスを着せられ、リボンカチューシャを付けられた。

 

「これで完璧だね」

 

「まるで、不思議の国のアリスだな…」

 

「これが、きみの正装だよ」

 

「正装?」

 

「そう、この世界での正しい服装」

 

この世界…?

 

「さ、じゃあ行こうか」

 

「何処に」

 

「もちろん、お茶会にさ」

 

「ちょっと最初から説明してくれない?」

 

「じゃあ、そうだね」

 

「きみはお茶会に招待され、この世界に訪れた」

 

「この世界って?」

 

「ワンダーランドだよ」

 

「より一層、不思議の国のアリスだな…」

 

「だから、きみは友達のボクの家で一旦合流してから、お茶会に向かう予定だった」

 

「うんうん…」

 

「ところで、今の時刻は15時」

 

「うん?」

 

白ウサギが懐中時計を取り出し、盤面を見せながら言った。

 

「お茶会は15時からだよ」

 

「なんで起こしてくれなかったのさ!?」

 

「あっはっは」

 

「もう!」

 

「大丈夫、みんな優しいから…」

 

「そういう問題じゃないだろ!?」

 

出口と思しき扉まで駆ける。

 

「いってらっしゃーい」

 

「白ウサギも行くんだよ?!」

 

「えー、だって怒られたくないし…」

 

「さっきと矛盾してるぞ!」

 

さっきまで抱いてたミステリアス美少女な印象を返せ!

 

「しかも案内役無しにどうやって会場に行くんだよ!」

 

「あーそっかー」

 

やれやれと言わんばかりの動きでこちらを向く。

 

「仕方ないなぁ」

 

「元はと言えば、白ウサギが起こさなかったのが悪いんだろがー!!!」

 

「そうカッカしないで、さ、行こっか」

 

「誰のせいだと!」

 

「こっちだよ」

 

そう言って白ウサギは鏡の中に姿を消した。

 

「…」

 

「えーーーーー!?」

 

鏡を見つめたまま、暫く呆然とするのだった。




白兎にとってそれは、ただの好奇心でした。

自分が居なくなったら、どんな反応をするのだろうと。

必死に自分を探す声が、近づくのが分かりました。

白兎は、観念して姿を見せようとしましたが。

足を踏み外し、崖から落ちてしまいました。

最後に見たものは、手を伸ばしながら自身の名前を呼ぶ───
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