不思議の国の■■■   作:Feles

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白ウサギは、お茶会に招いたのは帽子屋だと言います。

チェシャ猫は、この森が、帽子屋が如何に狂っているかを楽し気に語ります。

アリスは、重い足取りで会場へと足を進めるのでした。


迷いの森

「待てよ、白ウサギ!」

 

鏡を潜り抜け、辿り着いたのは反転した、さっきまで居た部屋だった。

白ウサギの姿は無い。

 

「何処行ったんだ…?」

 

まさか、置いて行かれたのだろうか?

 

「嘘だろ…」

 

とりあえず、家を出ることにする。

まだ、追い付けるかもしれない。

慌てて家を飛び出した。

 

「あいた!」

 

「いってぇ!」

 

すぐそこに居た白ウサギの後頭部に鼻から激突した。

引っ繰り返って、更に後頭部を打ち付けた。

 

「あいたたたた…もー、危ないじゃないかアリス、お転婆さんなんだから」

 

「ううぅ…いひゃい…」

 

「あはは、大丈夫?」

 

白ウサギは後頭部を擦りながら、残る片方の手を差し出した。

片手で鼻を抑えながら、手を取り立ち上がった。

…涙が出て来た。

 

「あーあー、泣かないで、せっかくの可愛い顔が台無しだよ~?」

 

「う、うるひぇ、誰のせいだと、こんなとこでジッとして、やがって」

 

「いきなり飛び出してくるアリスも悪いと思うけどな~?」

 

「う゛っ…」

 

白ウサギがジト目でこちらを見る。

さり気無くハンカチを取り出して目元を拭ってくる。

 

「わ、悪かったよ…でも、てっきり置いてかれたと思って…」

 

「あぁごめんね、一人ぼっちにして」

 

「ちょっと友達を呼んでてさ」

 

「そうだね、アリスは一人ぼっちが嫌いだもんね」

 

「本当に、ごめんね」

 

「いや、そこまで気にしては…」

 

また、頭を撫でられて、安心する。

恥ずかしさで下がった目に、しわくちゃのエプロンドレスが映った。

知らず知らずの内に握り締めていたことに気付いた。

自分が考えている以上にこの不安は大きかったらしい。

 

「大丈夫、大丈夫、約束するよ」

 

「ボクは決して、アリスを置いて行かないから」

 

「お、おう」

 

とても綺麗な笑顔だった。

 

「終わったかよ」

 

「うっわぁ!」

 

突然、横から知らない女の子が話しかけてきた。

 

「誰だ、お前!」

 

「さっき白ウサギが言ってたろうがよ」

 

「え…あっ、白ウサギの友達…?」

 

「そうだな」

 

猫耳を生やした茶髪の幼女だ。

か、可愛い…

けれど、ずっとニタニタ笑って…

 

「ちょっと待って…いつから見てたの…?」

 

「おまえが“いってぇ”って叫んでたところから」

 

「最初からじゃん!」

 

恥っずかっし!

 

「当たり前だろうがよ、オレが白ウサギと話してる時に、おまえが突っ込んできたんだから」

 

「えっ」

 

「それで?おまえはオレをガンスルーして?白ウサギと二人だけの百合園を造り上げてた訳だが?」

 

「あ、う」

 

「…おまえ、良い度胸してんじゃねェか、えェ?」

 

「ひぇ…」

 

ニタニタ顔に青筋が見える…

 

「ご、ごめんなさい…

 

言いながら膝を突いて、両手を重ねて地面に付け額を手の上に置いた。

恐らく年下の女の子に土下座をする自分の姿の、なんと無様なことよ。

 

「駄目だよ、チェシャちゃん、あんまり虐めちゃ」

 

「にゃはは、無理だろ」

 

「さっきのやり取り見てたら嗜虐心が擽られちまってなァ?」

 

「分かる」

 

「え?」

 

急に和やかになった。

というか今、白ウサギ、分かるって言った?

 

「おい、おまえ」

 

「は、はい!」

 

「おまえ、白ウサギの大事な人なんだって?」

 

「えぇ!?」

 

白ウサギの方を見る。

凄い勢いで頷く白ウサギが居た。

無視しよう。

 

「とすると、オレ達何度か会ってるのかもな」

 

「は、はぁ」

 

「だとしても、オレは覚えてねェ」

 

「はい」

 

「だから、名前を教えろ」

 

「え、えっと、アリスは…」

 

「なるほど、アリスか覚えた」

 

「え、違!?」

 

「アリス、オレが道案内担当だ」

 

「あ、はい…」

 

「オレのことは気軽にチェシャちゃんと呼べ」

 

「チェシャちゃん」

 

「殺すぞ」

 

「理不尽!?」

 

「にゃっははは、話を戻すぞ」

 

「白ウサギの家を囲むこの森はな、迷いの森つって」

 

「まぁ、まんまだ」

 

「一回迷ったら二度と外に出れねぇと思え」

 

「一日ごとに木が勝手に移動するわ、川は流れが変わったり逆流したりするわでイカレてる」

 

「え、こわ」

 

「そんな森の全容を知っているのが、オレだ」

 

「え、すごい」

 

「嫌でも頭に入ってくる、毎日毎日な」

 

「うわぁ…」

 

「こんな森のど真ん中でお茶会を開く帽子屋はもっとイカレてるぜ?」

 

行きたくなくなってきたな…

 

「安心しろ、行きは保証するぜ」

 

「帰りは!?」

 

「知るかよ、お前が選べ」

 

「なんだよ、それ…」

 

めちゃくちゃだ、この猫耳幼女!

 

「大丈夫さ、もうこの家に戻ってくることは無いからね」

 

「それってどういう…」

 

「とっとと行くぞ、ついて来い」

 

「ほら、行こう」

 

「はぁ~…」

 

自分では何も分からない、だから最初から、ついて行く以外に選択肢は無いのだ。




猫には、好きな人が居たのです。

しかし、素直になれず、ちょっかいをかける毎日でした。

ところが、ある日、行方不明の知らせを受けます。

大好きなあの子でした。

猫は日に日に弱り。

そして。

同じように行方を晦ましてしまいましたとさ。
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